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Lv13―現パーティのステータス




 でも、この先は出口に続いているんですかね?

 空気化を解いてさりげなく会話に混ざった私はふと思った疑問を投げかける。

「出口に続いてなきゃ、どこへ続くのさ」

 ……………行き止まりとか?




 雪で埋もれ洞窟が陥没したせいで入ってきた穴はふさがれ、しかもその岩や雪が邪魔で通路がふさがれて反対側へ行けない私達はずんどこ歩き続けていた。方向的に山の中心に向かっているみたいだ。今までエンカウントなし。




 あっち側が出入り口につながってたらアウトだと思うんですけど。

「…………………………」

 考えてなかったな。

「ま、まあ、その時はその時、行き止まりだった時に考える」

 行き止まりじゃなくて竜の巣でこの先にドラゴンが待ち受けていたらどうするんです。

 ピタリとあるじの足が止まる。はっ、ヘタレが。

「ねぇ、ユニさん。もしかして、ドラゴンがこういう所に住んでたりする?」

「大丈夫ですよ」

 にこりとお姫様が未だにあるじにしがみついたまま笑う。先程の喧嘩(?)の終結でより好かれたみたいだ。

「近くなってはいますがいますが、まだまだ先ですよ」

「そういえば、竜の居場所が分かるって言ってたね」

「はい。シェイル・ジャルガ王家の魔力は【雪竜】の魔力と反応しあうので、それでそれで判断できるんです」

 そこでしゅんと項垂れるユニ。

「でも、それから感じる雪竜の【魔力】はいつも通り偉大で風格のある物で……………」

「つまり、体調に変化はない。魔術師が操ったりとかの線もなさそう、ってこと?」

 あるじの鋭い洞察に目を見開きながらも肯定する。

「そもそも竜という種は太古から生き続ける伝説です。一夜で国を滅ぼしたという伝承まである、膨大な魔力を持った存在で人どころか【天使】や【悪魔】でさえ歯が立たないらしいです」


 天使や悪魔、ねえ。ホントにいるのか? 聖書の中だけじゃないの。


「興味があるんだけど、竜って天使とか悪魔より強いの? 見たことある? 悪魔とか」

 ぶんぶんとすごい勢いで首を振るせいで銀色の髪の毛が踊るように振り乱れる。超否定だ。

「いえいえ! 100年前の封印大戦以来この世界に天使と悪魔が来た例はホントに少ししか少ししかないです! 封印大戦に携わった人ももうお亡くなりでしょうから、この大陸で会ったことのある人間はいないと思います」

 本当はいないかもしれない、少なくとも会うことはないだろう、とホッとしているヘタレ。

 だが、そんな安心を打ち砕く我らが賢い姫。

「強さはですね低級の天使・悪魔一人でこちらの兵士4、5人分の強さがあるらしいです。上級になるとそれこそ100人束になっても勝てないとか。竜は天使や悪魔が100人束になっても勝てないそうですです」

「…………………………へぇ」



 ねこねこ解説・格付けの図編。

 人間<<<天使(なんか優しそう)=悪魔(なんか強そう)<<<<<<<<<<竜(かっけー)。



 スゴい! 竜が強いのがよくわかる! そして私達の目的地は竜の部屋。

 …………………どうしよう、今さらだけど怪鳥にすら手こずった私達が敵う相手か? レベル上げをどこかでしておくべきだった。でもここから先は一方通行。レベル上げする機会はなさそうだ。



「ど、ど、どうした猫? び、びびびびってんのか?」

 全然。あ、あ、あるじこそ恐怖で声が震えてますよ。

「ね、猫こそ尻尾が立って右手と右足が一緒に出てんぞ」

 こ、これは猫流の健康ウォーキング法です。

 盛大にビビる私達を余所にユニはまた暗い表情になる。あれ、お先真っ暗とか思われた?

「ですが、私達にとって雪竜は氏神に等しいです。そんな竜が私達に牙をむいて、あまつさえあまつさえ…………」



 氏神ってのは死んだ祖先の魂のことだ。祖先が子孫を攻撃したからスグ除霊、ってのは優しい子孫としては割きれないのだろう。それに祖先が祟(たた)っているとも思いたくはない心情か。



「いい子だねえ、ユニは。頭を撫でてあげよう」

「ふぇ!?」

 私と同じことを思ったのか自分の体にしがみつく少女の頭を優しく撫でる。ユニは顔を赤くしながらも嬉しそうだ。




 でも。

【エルミニの雪遮竜壁】のオリジナル。竜の【魔法】。国を囲う【檻】。

 それがある限り竜が何らかの形で今回の騒乱にかかわっているのは間違いないだろう。

 それをわかっているから、あるじはお姫様の頭を撫でるのだ。

「あ、あのっ、気になるなることがあるんれすっ」

 流石に照れ臭くなったのか(でも撫でる手は跳ねのけない)話題を変える。最後をちょっとだけ噛んだ。

「あの、アル様は猫さんと会話ができるんですか?」

「ん?」

 ?

 意味がわからない。あ? あ、あー、あー、わかった。

 普通の猫はあるじにツッコみを入れたりできないですよね。

「そうだなボケたりもしないと思うぞ」

「? えっとえっと……………」

「ああ、うん。会話できるよ。な、猫」

 ふふん、トエイックで500点叩きだせる自信があります。鉛筆握れないから無理ですけど。

「アル様がいた世界の人ってみなさん猫さんとお話しできるんですか?」

「そんなことはないよ。僕だけ、じゃないけど数人しかいなかった気がする」

 私もあるじ以外とでは2、3人しか会話が成り立たなかった記憶がある。

「私も猫さんとお話できるようになりますか?」

「うーん、どうだと思う? 猫」

 個人的にはお話しできたほうが楽しいですけど、あるじだって私と会話できる理由がわからないのだから難しいものがある。会話できた人間の共通点は洞察力がずば抜けている、ぐらいしかないのだ。

 とりあえずミャオンと鳴いてみる。あるじが勝手に解釈してユニにフォローを入れる。

「がんばれ、だって」

「わかりました。がんばります猫さんっ」

 がんばりたまえー。

 そういいつつ猫とエセ勇者とお姫様の冒険隊はどんどん薄暗い洞窟を進んでいく。







 しかし、変な洞窟ですよねココ。

「どこら辺がだ?」

 だって、見てくださいよ天井。

「天井、って何もないけど」

 そう何もないんですよ。鍾乳石すらない、きれいな天井ですよね。



 あるじが手を伸ばしてジャンプしてもまだまだ届きそうもない天井は洞窟にはあるべき鍾乳石がなく、地面も歩きにくいものの、ならしてある気がしなくもないし、石筍(鍾乳石の地面からにょきっと生えたバージョン)も見かけられない。



「でも、そういうこともあるんじゃない? 洞窟専門家でもないんだから判断できないだろ。それともアレか。猫は『月刊・洞窟の友《今週の特集は洞窟の中で彼氏にささやかれて嬉しい言葉ベスト10!》』とか読んでたりするのか」

 なんで洞窟の中限定なのか気になりますね。まあ、確かに洞窟のことなんてたいして知りませんけども。

 でも大事なのは手が加えて有るにしろ無いにしろ妙にゴツゴツとしてなくて、何というか、住みやすそうなのだ。

 ひょっとすると、ひょっとして。魔物が棲みついてたり。

「…………………………………だ、大丈夫だって、【魔法】あるし」

 それが洞窟の主・スーパーベアーとかでもですか? あの怪鳥と同じ強さでもかなりきわどいですよこのパーティ。




 現在のパーティ。


 あるじ(朝凪・サバギィ・在名)。

 職業・エセ勇者。Lv52(強いのか弱いのか微妙……………)

 攻撃力C・防御力C・回避S・素早さA。

 装備・冬服装備一式。折れた剣×1。なんかよさげな剣×1。


 私(猫)。

 職業・魔法猫。Lv72(くくく、これぞ猫の強さ!)

 魔法力S・素早さS・回避S・防御力E。

 使える魔法・絶対防御魔法【エルミニの雪遮竜壁セツシャリュウヘキ】。【四文字魔法】。


 ユニ(ユニ・シェイル・ジャルガ)。

 職業・お姫様。Lv???(いざとなったら頼りになる…………か?)

 魔法力A・攻撃力E・素早さC・防御力D。

 使える魔法・王家秘伝の魔法【エルミニの雪遮竜壁】。その他、雷魔法とか。

 だけどMP少で使用回数限定。




 うわぁ………………………。

 物語序盤のなんの特技の無いエセ勇者と、魔法が使えない魔法使いとか、飛べない豚なみにあり得ない。というか絶望的。魔物と遭遇した時点で白旗あげた方がまだいいかもしれない。

 どうしよう。私だけでも戦線離脱しようかな。同じ動物として魔物も見逃してくれるかもしれないし。

 私がブルータスな計画を練っている間にどうやら洞窟冒険は節目を迎えるようだ。

「光? 出口かな」

 通路の先にほんのり光が見える。それは日光と呼ぶにはいささか暗い。

 あるじの少し安心した声をユニが否定する。

「そんなことは、ないと思うんですけど」

 落ちた地点から右折左折をせずまっすぐ道が続いていたので今は山の中心あたりに向かっているはずなのだが。

 とりあえず進んでみるか、とトコトコ先走る私の後を慌ててあるじとユニが追いかける。




 そしてせまい通路を出た先にあったのはさらに大きな洞窟。




 いや、洞窟というより空洞というべきか。照明はもちろんのこと、火すらないのに明るいのはヒコリゴケのようなものが壁にびっしり張り付いているからか。

「広っ…………………」

 それよりも特筆すべきは広さ。横に広いのは当たり前で高さもさるもので目をこらさないと見えないかもしれない。

 立体的に見れば半球状の部屋。あきらかに手が加えられている誰かの部屋だ。

 出入り口は私達が来た所と、他に二つ。そしてちょうど対角に一つだけ目立つ、小さなビルなら通れるんじゃないかと思うくらい大きな扉。



 そこまで確認した所で気がつく。

 部屋の中央には十歳くらいの少年があどけない笑みを浮かべて立っていた。金髪金目とその美貌もあいまって絵画にでも登場しそうな神秘的な雰囲気がある。


「こんにちは、お兄さんとお姉さん猫さん」


 彼の衣装は黒外套(ローブ)



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