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継ぎ接ぎ人形ちゃんは奪いたい  作者: 陽碧鮮
第1章 誕生
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揉拉く

別視点


「じょ、女子会……っ⁉︎」


 突然にクシーが提案した発言に、思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまう。

 出会ったときから美しい姿に見合わず茶目っ気のある性格で無邪気な女性だと思っていたが――。


「女子会! ファウスティナさんも夜ご飯まだっすよね? 少し早いっすけど、せっかくならご飯食べながらもっと仲良く話したいなあって」


「だがダインが――」


 上目遣いでそう言ってくるクシーに一瞬心が動きかけるが、上でダインが重要な会議中であることを思い出す。

 パートナーが頭を捻っている中、私だけ先に食事に行くというのも憚られる。

 だが、クシーの話はここでは終わらなかった。


「いつになるかわからないですし、呼ばれていないのならいる必要ないっすよね? ファウスティナさんにも用事ができたんすからダインさんと変わらないっす。ほら、きっと高級なお茶菓子食べながら男子会みたいな雰囲気になってますし。あ、そうだ受付さんにちゃんと伝言していけばダインさんも困らないっすよ!」


「た、確かに一理ある……?」


「でしょう?」


 クシーのたたみかけるようなトークに、そうであるような気がしてくる。それに確かにこの職業柄同性で親しくなる者は少ない。

 せっかく彼女の方から声をかけてもらっているのなら無碍に断るわけにもいかないか?


「で、では行くか?」


 そう自らを納得させて彼女からの誘いに乗ることにした。


「やったー!」


 そう喜ぶ姿はやはり見た目に反して幼いもので。だが、両手をあげて喜ぶクシーを見てこの選択が間違いでなかったことを確信する。


「じゃあセンパイ、お疲れさまっす。ファウスティナさん、行きましょう」


「あ、ああ……」


 さらっと端で空気と化していたセンパイに別れを告げると、受付にダインへの言伝を頼んで組合を出た。

 可哀想なくらい冷めた別れだったが、まあクシーも同性と話したいことが積もっているのだろう。


「最近食べてみたかったものがあるんすよね〜」


 機嫌の良さそうな彼女の案内にわざわざ水を差すこともなく、通りを並んで歩いていく。

 ダインは私の場の読めなさについて時折苦言を呈してくるが、私だって何でも思ったことを口にするわけではないのだ。


 その矢先。


 少し歩くと視界の先で建ち並ぶ中からある店が目に留まる。それは蟷螂との戦闘から始まり、そこからずっと気になっていたことに由来するもの。

 だが、先ほど自賛したことを翻してまで行くのも収まりが悪い気がする。しかしやはり今行かないのも気持ちが悪い。


「……クシー、悪いのだが少しばかり寄ってもいいか?」


「あ、いーっすよ」


 クシーも私が声をかけることを察していたのか二つ返事で寄り道を快諾した。


 店の中に入り、私たちを迎えたのは様々な武具。奥に座る初老の男性は初対面だが仏頂面で、唯一の人間である彼こそ客を迎え入れる雰囲気ではない。


「お〜、色々あるっすね。なんか面白い武器はあるかな」


 そんな雰囲気の中でもクシーは一切気にした様子を見せずに店内を進んでいく。私も気にするタイプではないが、相変わらず彼女らしいなと思わず笑ってしまいながら後へ続いた。


「私は店主に用があるから武器を見て待っててくれ」


「承知っす」


 ほへーと聞いたこともないような間抜けな声を上げながら、おおよそ持ち上げることすら叶わないであろう大槌を眺める彼女を横目に店主の前へと向かう。

 そして、腰に差した刀を抜いて店主の眼前へと差し出した。


「刃こぼれを研いでもらいたいのだが」


 店主は私をチラリと一瞥すると手元の帳簿へ書き込みながら小さく呟いた。


「刃こぼれなんぞ素人の証だ。何と切り結んだ?」


「――六刃蟷螂」


 端的に答えると店主の動きが止まる。店主の言ったことは尤もで、私も六枚の刃相手だったからなどと言い訳がましいことを言うつもりもない。


「それ置いて三日後また来い」


「わかった」


 店主に思うところが何かあったのか、また小さくそれだけ呟くと再び帳簿へと書き込み始めた。

 私もそれ以上何か言うつもりもなく、刀を鞘に納めると店主の前の机に置いて店を後にしようとする。


「クシー、待たせ――」


 入り口付近で、なぜか恍惚の表情を浮かべながら茨のような鞭を両手で持って私へとポーズを取るクシーが目に入らなければ。


「……馬鹿っぽいからやめろ」


「自信あったのにそりゃないっすよ〜」


 文句を垂れる彼女を引っ張って店を後にした。



「それで、目当ての店はどこなのだ?」


 気を取り直して、周囲の店を見渡しながら問いかける。が、クシーからの反応はない。

 さ、先ほど冷たくし過ぎたのか? もっと彼女の冗談に乗ってやればよかったのかっ?


 色々な考えが脳内を巡り、混乱しながらも後方のクシーへ向き直ろうとした瞬間――。



 ――ふにゅ。



「んにゃっ――⁉︎」


 電撃が走るように突如として訪れた違和感。それは思わず言葉にならない発声となり。

 恐る恐る違和感のある胸部へと視線を移すと――包帯で巻かれた真っ白な両手が包むように私の胸に収まっていた。


「いやあ、中々のものをお持ちっすねえ。お餅みたいなだけに」


「なっ、なっ……」


 クシーが話す間も絶えず襲う胸部への未知の刺激。それは人生で初めての感覚で――。


「なっ、何をするのだぁ!」


 強引に振り解き、瞬時に三メートルほど距離を取る。

 そうでもしないと不味かったからだ。何がかは分からないが、あと少しでも続いていたら何かが不味かった。


 私の第六感系能力(スキル)――[野生の勘]も同意するようにクシーから邪悪な臭いを嗅ぎとる。

 昨日から続いていた、時折訪れる彼女からの邪悪な臭い。それはすべて私のむ、胸を狙い定めた(よこしま)なものだったのだ!


「ファウスティナさんのこと、もっと知る(・・)ことができたっす」


 間違いない。指をワキワキと動かしながら邪悪な笑みを浮かべる彼女は欲望の化身のようで。

 身体が硬直してしまったように満足に動かせない中、クシーが一歩ずつ歩み寄るのに対して私は足を擦るように後ずさるしかない。


「ふっふっふっ……」


 彼女から感じる覇気はまるで[威圧]を受けたときのような重圧で。六刃蟷螂なぞ比べものにならないプレッシャーを身に受けながら、ついには壁際まで押し寄せられる。

 ああ、どうすれば――ッ。


「やっ、止めるのだぁ!」



 ――ぽよんっ。



 思わず振り払った手は、弧を描きながらクシーの胸へと勢いよくダイブしていった。


「「………………」」


 流れる無言の時間。

 真っ白になった頭を無理やり再起動しようと脳を超過熱させていると、彼女が別の意味で発熱――顔を真っ赤にして一言。


「ファウスティナさんも、物好きっすね」


「違うのだあぁぁぁああ‼︎」


 なぜこうなるのだっ。もうよく分からないがそんな大きなものを持ってる方が悪いのではないか⁉︎

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