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魔術が使えない少女 ケースA

俺は気が付いた時には転生をしていた。

別にトラックに轢かれたとか神様の手違いで死んだとかそういったことではなく気が付いた時にはド田舎の一般家庭の家の赤ん坊になっていたのだ。


生前、何者だったとかの記憶は特に覚えていなくてただ生前の地球の日本での生活をしていたことだけはただ覚えていた。


生まれ変わって育ってきてわかったことが周りの世界が認識できる頃にはこの世界が異世界だとわかるようになってきた。

なんせ生活のほとんどが見たことも無いようなものであふれているからだ。


コンロやIHもないしエアコンもテレビもない。

その代わり魔道具なるものが生活を支えているからだ。

とはいえその魔道具の数も少ないようなので案外入手が難しいのかもしれない。


他にも火を出して物を燃やしたり水を作り出したり、とても持てないような大きな荷物を軽かる運んだりするようなありえない風景がそこらで見られればすぐにでもここが異世界だとわかる。


俺が自分で走ったりできるぐらい大きくなるころには自分の境遇もなんとなくわかるようになってきた。

父は黒髪の前世でいう日本人のようなアジア系のように見え、母は水色の綺麗な髪形の前世いうザ外国人問いった具合だ。

そういう俺は父譲りの黒髪に母譲りのとても綺麗な水色の目をしていてそれぞれの特徴を継いでいる容姿になっている。


そして住んでいる地域と言いうのは100人は超えているがそれ以上いないいわゆる村のようなところに住んでいて、俺と同年代の子どもも何人かはいるようだ。

別段何かあるわけでもなくただただ村中の人間が集まるような広場や商店街のような場所に協会などの平凡な様子。

人数もそんなに多くないので村中での住民の交流関係はとても良好で基本的に事件など起こることはないと思われる。


さて、普段の俺の生活は至って何もない。

両親は仕事や家事で忙しいし同年代の子どもたちとは精神年齢が違うため遊ぶことも無いからただ町はずれの川付近にある木の下で涼しい生活をしている。


そんな生活を毎日していて暇ではなかったのか?という疑問も思い浮かぶだろ。

実際、初めの頃は日まで仕方なかったのだが気が付いた時には小さな光のオーブのような存在がいることが分かったのだ。


初めはただただ「見たこと無い光が飛んでいるなー」なんて思いながら気によりかかりながらその光たちを見ていた。

光たちを見ていると様々な光の種類があることが分かった。水付近になら青っぽく、植物の周りなら緑っぽいなどなんというか自然の色をしていることが分かった。


光る物が見えるようになって数日。いつもの様にぼーと光を見ていると一個の光が近づいてくるのが分かった。その光は黒く、普段見かけることがない色をしていた。

その黒い光はふら~と飛んでおり、そして俺に近づいてきた。


初めはただ俺の顔の前でふらふら飛んでいてずっと見たが次第に邪魔になってきたので手で払う動作をした。すると、その黒い光は突然ビクッと動いたかと思うとますます俺の周りを飛ぶようになった。

その後も俺の前を飛ぶ黒い光をずっと見ていると空も夕焼けに染まりだしそろそろ支度する時間も近づいてきたので俺は帰ろうとするが、黒い光は帰宅しようとしている俺の後をついてくるのでどうしようも出来ないので何もせずに帰ることにした。


家に帰ると帰宅した俺を見て母が驚いていた。正直何を驚いているのかわからず「どうしたのかと尋ねると「精霊が付いている」と教えてくれた。どうやらこの黒い光、いやこの沢山の種類の光たちの正体が『精霊』なんだと俺は知った。


精霊がどんな存在なのかわからないので今日こいつと出会ったことを伝えると話に参加していない父も驚いた表情に変わった。

全く状況を理解していない俺に父が精霊は素質がないと見えない存在なんだと教えてくれた。そのまま母がその精霊が見える素質を持っているとも教えてくれた。


精霊の事を詳しく聞くとどうやら自然の存在には必ず精霊はいてそれぞれがそれぞれの場所で普段は生活をしているようだ。

中には種族単位で精霊が見える種族もいるそうでその種族は精霊と仲が良く魔術を使う時に協力してもらうことが出来るそうだ。

なので精霊が付いているということは別に悪い事ではなくむしろ良いことなそうなのでじゃあ気にしないでいいかとその黒い精霊の事を気にしないことにした。


精霊に付かれて数年、俺はもう少しこの世界の事を知ることが出来た。人以外にもエルフや魔族、ドワーフなどの複数の種族がいるそうだ。そしてどの種族も10から12歳の間に協会で祝福を受けその世界で初めての”スキル”を受けることになるそうだ。


このスキルというのはゲームなどと同じくいわばその人が使える特技のような物らしい。

勿論、祝福を受けないと使えないというわけではない。

その人の技術力での熟練度が高まるとスキルに昇格へと昇格するそうだ。


つまり初めから力を授かるスキルの祝福と技術力で学ぶスキルの二種類が主な物らしい。

主なものといったのは他にも家系で受け継ぐようなものもあれば種族が受け継ぐもの。

他にも何らかの理由で覚えたりと何種類かのパターンがあるそうだ。




そろそろ俺もその祝福を受けるころには俺にも友達が出来ていた。

黒の精霊であるクロだ。こいつは結局俺にあの日からずっとついてきているのだ。

だから俺はこいつにクロって呼ぶことにした。


あれから俺たち、二人で川辺過ごす日々が日課だったのだが今ではそこにもう一人姿が見えるようになっている。


もう一人というのが友達になったリリィだ。

リリィはエルフの様で数年前にこの村に家族と引っ越してきた子供なのだが内気な性格なのかもうグループが出来ている他の子どもたちとは馴染めなっかたので可哀そうに思った俺は声を掛けてあげ他の子どもたちと遊べるようにしてあげたらどうやらなつかれたらしい。


そうそう、友達とまでは言えないが他の子どもたちもわずかながらに年齢を重ねたので俺は彼らとも話したり遊んだりすることが増え。そのことに両親は安堵しているようだった。

どうやらいつも一人(精霊は他の人たちに見えないから)で過ごしていることに大丈夫なのか不安だったらしい。


そして俺たちが祝福を受ける日がやってきた。

祝福を受ける協会にはいつもは楽そうな恰好の神父様がまさに正装というべき姿になって親たちに見守られる中一人一人に祝福を与える儀式を行った。


俺はどうやら『アーツ』と呼ばれるものだった。

俺のアーツとやらは未知のスキルの様で何より俺には魔術が使える可能性が高いとの事だ。

どうやら俺の魔力量というのはかなり多いそうでそれに魔術を使える可能性まで高いとのことで神父は魔術学校への入学はどうかと勧められた。


どうやら国は未知のスキルや魔術に対して高い才能を秘めたる子供達には無料で魔術学校に入学できるように推薦を与えらるそうだ。


因みに。魔術学校は魔術と名前がついていることから魔術を学ぶところではあるが他にもスキル関係で剣術などの武闘派っぽい内容なども受けることが出来る大きな学校らしい。


神父はその話を両親に話、家へと帰宅した。

そして俺は折角の機会なので魔術学校に行きたいとお願いした。

正直まだ若い俺が両親の元から離れて生活をすることを心配しているようだったが俺の説得に渋々応じ俺は魔術学校に行くことにした。





結局、この村からは俺だけが魔術学校に入学することになった。

俺が入学する魔術学校がアルバス魔術学校というところでどうやら俺たちの村がある国でもトップクラスの学校らしい。

そんな俺の学校での生活はとても楽しかった。


俺は寮生活で学校生活を送り、ある程度この学校生活だけで日々を生活できるぐらいの待遇での生活だった。

俺は精神年齢は高いが魔術に関しては全くの未知なので授業で聞く内容すべてが面白かった。

しかも、俺はめちゃくちゃ頭が良いのか聞く内容がすんなり頭に入りいわゆる1知ると10しるような状況であったためその年に入学した人たちの中では断トツの成績優秀者と言われるほどだった。


なかでも魔道具関係の授業は楽しかった。

魔道具は自分が作り出すもの以上の力を持っているのだ。

魔力さえあれば誰でも作り出すことが出来るし、一個世界を変えるような魔道具を作り出すことが出来れば一生稼げるようなお金が手に入ることが出来るとも。


勿論、魔道具絵を作るにはその魔道具を作るための知識、その魔法を扱うための素材と魔術構成、魔道具に刻む刻印、そしてそれを魔道具として作り出す技術者としての技量。

なのでこのどれか足りてない人が魔道具を作ろうとすると失敗したとき、その時に起こる事故が危険を伴うので、その利用者の安全を保障するために資格がいり、その資格を手に入れることで一定の技量を持つ人として魔道具を売り出すことが出来る。


俺にはその魔道具を作り出すための才能があったのかどの魔道具を作り出すことになんの苦労もなく作り出すことが出来た。多分、俺のスキルであるアーツがその魔道具絵尾作り出す”技術”を持っているのだろう。


俺はその自分の手で作りだす魔道具に引かれた俺はその魔道具を作り出すために全部の魔術関係の授業に出ることにした。

けれど勿論、授業自体は別に問題ないのだがその魔術関係の授業には実技関係も行う。

その実技関係において俺は一切の成績を出す出すことが出来なかった。

それも全ての魔術関係の授業には出ているから学校の同級生には俺が魔術が使えないことをほとんどの人に知られたため、「頭だけは良いガリ勉」のイメージが付いてしまった。


筆記的な成績と魔道具や錬金術などの魔力さえあれば出来る授業以外は、完璧な成績だがそれ以外は全くできないという人物になってしまった。


それでも学校生徒との関係は以外にも良好なものだったんだと自分でも思う。

別に高い身分の人間でもないし、知識があるからなのかわからないが他人が魔術が上手くできな着ない時に助言出来たり、悩みを解決したりなどしていたら先生にも生徒にも仲が良くなることが出来た。

勿論、すべてではない。中には差別的な考えの”魔術差別”なるものがある。

どうやら、魔術が使えるべき人間は高貴な人間だけでいいみたいな考えらしい。

他にも魔術学校なのに魔術が使えない人間だからという理由で嫌われている人もいる。


そしてある出来事がきっかけで俺は学校にいずらい立場になってしまった。

別に嫌われているなんて事はない、むしろ心配してくれるような人もいるぐらいには大丈夫だ。

けれどその出来事を切っ掛けに俺は学校を去ることを決めた。


もう既に魔道具作成の資格や錬金術などの資格などももう取ってあったので学べる機会がなくなる

のは寂しい事ではあるがそれ以外にはあまり未練が無かったので俺は学校を辞めた。


学校を辞めてからは知り合いの伝手をかり、魔道具を販売する店を開くことにした。

ぶっちゃけ年齢も若いし、特段良いものが作れる評判も世間には浸透していないのでほとんどは学校関係の人ぐらいしかお店に来ることななかった。

そんな日々を数年俺が続けたのだ。











眠りから覚めた。

目を開ければ外には少し高く太陽が昇っており、まだ朝がきて少しなのだろう。

そのまま少し眠気の余韻に浸ること数分、俺はベットから降りた。


リビングに行けばソファの上に一匹の黒い猫が起きて外を見ていた。


「おはよう、クロ」


『おはよう、シロー』


そう、この猫は幼い頃に取り憑かれた精霊のクロだ。

クロは学校に行くときも実はついてきていてずーっと俺の傍にいてくれたのだ。

クロがなぜ猫の姿をしているかというとクロと契約を交わしたからだ。


ここでいう契約はクロは俺が死ぬまで傍にいて俺に協力をする、逆に俺はクロがいる間ずっと魔力を提供し続けるというものだ。


前に魔力を使い、道具を作成している時にその魔力をクロが吸っていたのだ。

その時の俺は何してるのかわからないからそのまま吸わせ続けていると突然声が聞こえるようになりその後に、契約の事を知った。


精霊との契約というのはとておこの世界ではよい事なのだ。

なんせ精霊は自然に存在するものなので逆に言えば自然そのものと契約を交わしたともいえ、その系統の魔法を使う時に沢山の恩恵を受けれるためそういった人は少ないそうだ。


『今日は何か用事あるの?』


「今日も特段何の仕事もないねー」


そう苦笑いしながら俺は俺はコーヒーをコップに注ぎ、クロの隣に座った。

そうして朝のコーヒータイムを堪能し一階の事務所へと向かった。


仕事は特に入っていないので事務所に届く新聞を読みながらいつもの様に座っているとクロから声を掛けられた。


『シロー、お客さんだよ』


「ん?」


そう聞いて俺は入り口付近を見ると俺より年齢が少し下ぐらいの女の子がいた。

銀髪の髪に雰囲気からどこかのいいとこのお嬢さんだろうなー、そして彼女がアルバス魔術学校の制服である服を着ていたのでこれは仕事案件なんだろうなと腰を上げた。




中に通し、俺は飲み物を用意し仕事へと移った。


どうやら彼女は魔術が使えないとのことで魔術学校の理事長からここのお店なら悩みが解決できるとのことで教えて貰ったらしい。


「……なんです。 どうにか出来ませんか?」


「わかった。では君のその問題を解決するための魔道具を渡そう」


ぶっちゃけ俺は話を聞きながら彼女の症状には思いあたりがあったので問題はすぐに解決できるだろうなと内心思っていた。

実はもう既にその類の魔道具を作成してあったので俺はすぐにその魔道具を取りに奥へと向かった。


「えーと、あの魔道具はどこだったかなー」


奥の部屋には沢山の魔道具たちが並んであった。

家の大きさには似合わない程の広さに沢山の魔道具たちが並んでいる。


「おっ、あったあったコレコレ」


そういい俺は杖の形をした魔道具を手にもち彼女の元へと向かっていった。


戻ると彼女は今か今かと俺の手にある魔道具に目をやっていた。

まあ、俺も魔術が今まで使えなかったのに使えるようになるなんて言われたら待ちきれないだろうな。


「これがその魔道具だ」


「杖、がですか?」


「そうだ」


そんな彼女に魔道具を渡すと仕事が終わったと判断したのかクロが膝に乗ってきたので俺はクロを撫でてあげることにした。


「値段はいくらですか?」


クロを撫でているとそう聞かれた。

その声はどことなく怒っているような声だった。

俺は「5万Gだよ」と伝えると彼女はお金を机の上におき、そのまますぐに店を出ていった。


「どうしたんだろ?」


俺は本気で怒っている理由がわからなかったので言葉にすると膝にいるクロからジト目で見れらていることに気が付いた。


「どうしたクロ?」


『シローはほんとに鈍感だね』


「ど、鈍感!? なんの話だよ」


そう聞きなすと猫の見た目をしたいるのに明らかに肩を上げるような動きをしやがる。そのまま膝から降り、向こう側の椅子に移ると俺と対面するように座った。


『問題です、ここはどんなお店ですか?』


「そりゃー魔道具店だ」


『第二問、さっき渡した魔道具はどんな形でしたか?』


「うーん杖みたいな形だな」


『第三問、彼女は魔道具と言われたのに杖が出てきました。どう思いますか?』


「……」


二問目の時点で正直言葉足らずだったんだとわかった。

そりゃそうだよな。自分の体質が治ると期待したのに出てきたのが杖なんだから。

ちょっと考えなしだったことは後悔した。


『それにあの魔道具、あのままじゃ使えないよね』


「あ!! そうだよ、ヤバい。このままじゃ杖を5万Gで買わせたインチキ野郎じゃん!」


そうなのだ。あの杖みたいなのは正真正銘の魔道具なのでちょっと特殊で設定が必要なのだ。

そう言われてすぐに店を出たがもう外には彼女の姿が無かった。

彼女の名前も知らないし。どこに住んでいるかも知らない。

どうしようかと悩んでいたがあることを思い出した。


「彼女、アルバスの生徒だったな……」


彼女の来ていた服は確かにあの魔術学校の服だ。

それを思い出した俺は今日は学校がなく明日は開いていることを思い出したので明日謝罪と共に設定をすることにした。











「ここに来るとはなー」


翌日学校に俺は来ていた。

とは言え無関係の人間なのでまずは入場の許可を取らないといけない。

なので入り口にいる窓口に向かった。


「すみませーん」


そう声を掛けると警備員の方がこちらに気づき来てくれた。


「どうしましたか?」


「すみません、実は先日ここの生徒が私のお店の魔道具を買ってくれたのですがまだ魔道具を使う設定を行っていないことに気が付いたのです。なのでその設定を。彼女の名前も知らないのですがここの制服を着ているのだけは覚えていたのでどうにかなりませんか?」


「そういう事ですか。わかりました。では身分証明の提示をお願いします」


俺は魔道具製作の資格を警備員に渡し、警備員室に戻っていった。

待つこと数分後警備員さんが戻ってきて俺に返してくれた。


「ではこれを持ってきてください。学校側にも許可をいただいたので何か言われたらこれを見せてください」


「わかりました」


そういい俺はよくみる首掛けをつけた。


「でも学校にも沢山の生徒がいますからね、探すのは大変ですよ」


「あぁそれなら彼女銀髪で魔術が使えない生徒ですよ」


そう伝えると警備員さんはすぐに思いついたのか俺にその生徒の名を教えてくれた。

どうやら魔術関係の名門貴族らしく、彼女の家族には騎士団や魔術団などにも所属している名門中の名門らしく他にも魔術関係ではかなりの有名さを誇っているらしい。

そんな家の子がこの学校に入学したことは有名でその彼女は魔術が使うことが出来ないとわかると学校では大変有名な事らしい。


その彼女はどうやら実技の授業をしているとの事なのでそこへ案内してもらった。

歩いて数分授業をしているところに付くと、施設の隅で一人彼女が魔術を使おうとしているのが見えた。


「彼女がいました。ありがとうございます」


「いえいえ、それでは」


そういい警備員さんと別れた俺は彼女の元へと歩いていった。

そして彼女の前まで来ると彼女は近寄ってくる存在に気づいたのか顔を上げた。

そんな彼女に俺は手を上げて声を掛けた。


「よっ」











「何しに来たんですか?」


そういう彼女はもう俺の顔などみずに刺々しい言葉で俺に声を掛けた。


「済まないね。まだやり残した仕事があるのでそれをやりにね」


「この何にも使えない杖なのに?」


俺に対する反応はもう完全に悪いものだった。

まあそう思われても仕方ないから仕事をしないとな。


「そうそう、その魔道具の仕事をね。じゃあさっそ「あなた誰ですか」あーそうだった」


早速仕事をしようとするとこの授業の担当であろう教師が声を掛けに来た。


「許可証は持っているようですが彼女になんの御用で?」


「あぁそれはですね、私は魔道具店の店主なのですが、彼女は僕のお店のお客様でしてね。しかし最後の設定の仕事を行っていなかったのでその最後の仕事をしに来たんです」


「設定?魔道具の?


「はい、魔道具の」


そういう女教師は俺を不審者のように見つめる。

そりゃそうなんだろうな。魔道具は魔力さえあれば誰でも使えることが当たり前なのにそんなこと言われれば不思議に思うだろう。

そんあ事は放っておき俺は彼女に向き合った。


「ではちょっと魔道具を貸してくれる?」


「えぇ、はい」


そういい魔道具を渡されるとすぐに設定を行う。

魔道具に魔力をながし魔道具を起動する。そして起動した魔道の頭部分を触り魔道具を動かす。


「はい、これでこの魔道具に君の魔力を流してくれる?」


「これにですか?でも……」


「いいからいいから、さあ」


そう不安になる彼女に魔力を流すことを促した。

魔力を流し始めると魔道具に刻まれた刻印が光りはじめた。


「わぁ!」


「びっくりするでよ、そのまま魔力を流し続けておいてくれる?」


さっきまで不機嫌な態度の彼女は子供っぽく面白いものをみた驚きに変わった。

魔道具を喜んでくれるのは嬉しいが魔力を流し続けてくれないと設定が終わらないのでそのまま続けてもらうよう伝える。


そのまま刻印が光り続けること一分ぐらい。次第に刻印が光を無くし魔道具の設定が終わり、本格的に魔道具の使えるようになった。


「では、説明しよう。この魔道具は本来細かい魔術運用を行うためのトレーニング魔道具なんだ」


「トレーニング魔道具?」


「ああ、トレーニング魔道具だ。魔術は行う時に魔力を消費することで魔術を行使することが出来る。その魔術は魔力の消費量によってある程度コントロールすることが出来る。その魔術を行使するための魔力を正確に使うための魔道具なんだ。」


そう。これは優秀な魔道具になるためには必須のコントロールを身に着けるための練習の魔道具なんだ。


「さっきまでの設定は君の魔力の総力を把握するための物。そうすることでトレーニングを行うための制限をつけれるようになる」


「でも魔術が使えないのにそれって必要なことなんですか?」


「そう君は魔術が使えない。いやそれは正確にはまだ魔術を行使するための杖が耐えられなかったんだ」


「杖が耐えられない?」


「そう耐えられなかったんだ。君の魔力の総量はこの世界でトップクラスのものだ。そんな君には使う魔術はどれもがかなりの魔力を使っていたんだ」


「では、魔力の使用量を下げれば私は使えていたのではなかったんですか?」


「それは違う。君は最低まで魔力の消費量を下げてもその最低魔力消費量がそこらの杖では耐えられないくらいの才能なんだ」


「私に才能が……」


そう。俺もかなりの魔力量があるが彼女は俺に匹敵するくらいの魔力を保有している。そして家系が名門の魔術家系が要因なのか相当強力な魔術を行使する才能を秘めており、その結果杖が耐えられなかったということだ。


「君の家は名門の魔術家系だと聞いた。しかしその家が用意した杖さえも壊す程の才能が君にはあるだから君は今日から、いや今から魔術を使えるようにしてあげたんだ」


「本当に?本当に私にも魔術が使えるようになるの?」


「うん、なるよ。じゃあ説明を続けよう。俺が作ったその魔道具は自分がいうのもなんだがかなりうのものだと思う。ではまず杖を持ってくれ」


「は、はい!」


彼女は杖をもち立ち上がった。その顔は先ほどまでとは違い、やる気にあふれている顔だ。


「ではまず杖の上の方にあるスイッチの押してくれ」


「はい」


すると魔道具の上の空中に『100%』の画面が浮かび上がった。


「その画面が出てきたらまずはそうだね。25%くらいまで画面の左側を触ってくれる?25%までしたら再度、上のスイッチを押してくれればいいよ」


「こうですか?」


そういい彼女は25%まで数字を変更しスイッチを押した。そして空中に浮かんでいた、画面は消え先ほどの状態に戻った。


「はい、これにて終了です。ではこのままま魔術を使ってみますか」


「え?これでもう魔術が?」


「今のは君の魔力の使用量に制限を掛けたんです。本来ならそういった使い方じゃないんだがこうすることで少量の魔力量で魔術を使えるようになるんだ。さっきの数字はそのまんま君にかけている制限だから慣れてきたら数字をどんどん多くしていけば良いよ。」


「じゃあ魔術使ってみよっか。風の初級魔術わかる?」


「わかります。では挑戦してみます」


そういい彼女は杖を両手に持ち大きく深呼吸した。

先ほどの騒ぎのせいか周りの生徒たちも練習することをやめこれから魔術を使おうとする彼女に注目しているが彼女はそれに気が付くことも無く集中している。

一息ついて決意を決めたのか彼女は杖を構えそして呪文を告げた。


「ウインド」


静かに告げられた呪文。その静かさからは想像も出来ないような風が巻き起こった。

早速風と呼ぶには似合わず、それはもう暴風といっても過言ではなかった。


「   」


巻き起こった風に誰一人喋ることはなかった。

本人は自分が魔術を使えたことといきなり想像以上の風が起こったことに。

クラスや教師は今まで使えなかった生徒が本当に魔術を使えたことに。


ただ一人魔道具の作成者であシローは以外は。


「いやー、これはこれは。25%じゃまだまだ強かったようだね。じゃあ10%まで数字を下げようか。あれ?どうしたの?」


「はっ!本当に私が魔術を使った。使えたは魔術を」


「だから言ったでしょ?今から使えるって」


「うん、うん。本当に、本当にありがとう。魔道具屋さん」


そういい彼女は目に涙をためながら俺に笑顔を向けた。


「どういたしましてお客さん」


その彼女に俺も笑顔で答えてあげた。











「という事で今では家族と一緒に魔術の練習も出来てますます魔術の制度がまして来てるんですよ」


そういう彼女は楽しそうに俺に話してくれる。

そうあれからもう数日はたっていて今は俺の事務所にその後の報告との事で彼女、フィーナは俺に楽しそうに話してくれている。


「そうか、それは良かった。魔道具を作った職人としては嬉しい限りだよ」


あの日魔術を使った日、すぐに周りの人たちも動き出し現場は騒然とした。彼女の周りには友達であろう女生徒たちが群がり、男子生徒もその周り群がっている。

中には罰がわるそうな顔をしている生徒たちがいた。


その光景を見届けた俺はその場の誰にも声を掛けずに静かにその場を去った。

そして次の日に彼女は再び俺の店にお礼を言いにやってきた。

当然俺は彼女が望む魔道具を提供したのだからそれ以上の感謝はいらないと話した。

その日から彼女は俺の事務所にやってくるようになり来るたびに近況報告をしてくれるようになり

次第に名前を呼ばれないことを彼女は嫌がりそれからフィーネと呼ぶようになった。


彼女の報告ではどうやら魔術が付けるようになった彼女はあの日から魔術が使えなかった日々を取り戻すがごとく魔術の練習を行いみるみる才能を発揮しているそうだ。

その魔術の才能はそこらへんの生徒はすぐに超しもう同学年でも上位の成績までになったそうだ。

そのおかげかもう彼女の悪口を言う人はいなくなり、むしろ彼女が魔術が使えるようになったことでますます美しさに磨きがかかり今では違う意味で話しかけることが出来ないようになっているらしい。

なのでたまに目を合わせるどころかいそいそと逃げるような生徒も同級生にいるらしい。


しかも家族は前から魔術が使えなかった自分に気を使っていたが魔術が使えるようになりそれからは楽しく家族と魔術の話をしているそうで毎日が幸せになったとのこと。


「そういえば、この魔道具がないと私は一生魔術が使えないのかしら?」


「そんなことはない。それはあくまでトレーニングを行うための魔道具だし何より君の魔力消費に耐えられるような耐久度を持つ杖を手に入れれば問題はないさ。けれどまだ当分はその魔道具を使っていた方がいいよ」


「なんでなの?」


「君は才能はあるがまだ魔術を使い始めたばかりの初心者だ。普通の人ならば魔術行使になんの問題もないけれど君は25%であれだけの魔術を使っていたのだからもしいきなり普通の杖を使うとコントロールも出来ない君がもし魔術を使うもんなら建物でも破壊してしまうだろな」


「な、なるほどね。当分は制限化で魔術に慣れていって完璧に使いこなせるように頑張ります」


「そうしてくださいなー」


そう苦笑いをしながらフィーネはクロを撫でて幸せそうな表情を浮かべている。

そんな二人?(一人と一匹?)を見ながら俺はコーヒーブレイクを楽しんだ。



こうして、俺は一人のお客様の悩みを解決することが出来たのだがこの出来事を切っ掛けに俺の店に魔道具以外にもどんどん依頼が来るようになってしまうとはまだこの時は思いもしなかった。



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