ダークファンタジー世界で作る核ミサイルの使い方
意外かもしれないが、ファンタジー作品に核攻撃が、あるいはそれをモチーフにしたものが登場するのは珍しくない。
某最後の幻想とか、竜討伐とか、あるいはその元ネタになったと思しきゲームとか、そういうメジャーなタイトルにもバンバン出てくる。
魔法そのものが科学の産物だったり、魔法を解析して科学同様突き詰めた結果として、というパターンもある。
オカルト混じりの世界で主人公が、アトミックな武器や技を持ってるというパターンもあったし、変わり種にはメルトダウンした核燃料でハンマーを作って殴ってくる世紀末主人公なんてのもいたな。
そんな制作背景だからか、駄剣世界にも、核兵器はある。
それがフレア・ドラゴンと、フレイ・ボムを複数合わせて錬金進化させた核グレネードこと「フレア・ボム」、呪術「封じられた太陽」などである。
ドラゴンの方はドラゴンを雛から育成しないと使えないという目に見えた障害があるから良い。
きちんと育てられれば、魔王戦で見れたような強力な熱線で、敵軍を消滅させることが出来るようになる。
巨体なので、入れない場所も多いが、それをさっ引いてもなお強い。最強の核兵器である。空も飛べるしな。
逆にこのフレア・ボムと封じられた太陽、火力と範囲こそ大したもんだが、圧倒的な爆発力過ぎて、普通に撃つとほぼ確実に自爆する。
「封じられた」の名の通り、呪術の方は特殊な結界に閉じ込められた太陽の小さな欠片を、フレア・ボムの方は同じ結界を内部に発生させる封印壺を投げつけるのだが、人間の腕力程度では、核の圧倒的な攻撃範囲からは逃れられんのだ。
その攻撃範囲、およそ半径100キロメートル。ヤケクソとしか思えん馬鹿範囲は、実にホラーなことに割と現実に準拠しており、東京で使ったら、東京都はおろか関東6県がまるまる吹っ飛ぶ火力である。何に使うんだこんなもん。
魔王や大ボス相手には火力不足だし、普通の雑魚には火力過剰だし……という使い勝手の悪い兵器なのだ。
このゲームは敵味方以外にも、武器や宝箱、その他食器や建物にまで当たり判定やHPが設定されている。なので、これを使ったが最後、たとえ生き残ったとしても、何もなくなったクレーターで途方にくれることになるだろう。
作中の開発理由は溢れ過ぎた亡者を太陽神の力を借りて殲滅するためらしいが……肝心の太陽神が誰かさんのせいで跡取り含めて死んでしまったので、単なる大量破壊兵器にしかならなくなっている。
加護をくれる太陽神がいなくなったので、使っても亡者は一時的にしか殲滅出来ないし、致命的な高熱以外にも、毒電波という名の汚染をばら撒く。
普通の状態異常と違って目に見えず、蓄積すると発狂して身体中から血を吐いて死ぬ危険な状態異常だ。
深海や宇宙の深淵からやって来た連中が纏っていることでも有名で、対策にはきちんとした装備か耐性が必要な難敵であった。
まあ、それはともかく。
結局、核を武器として使い熟すには、貴重なアイテムもイベントもいーらないと開き直ってボンバーマンになり、使いまくって熟練度と収束率を上げて一箇所を集中爆破出来るようになるか。
あるいは、錬金術師のスキルを鍛えまくって、フレア・ボムそのものを生産、改良出来るようになるかである。
うん、どう考えても周囲を更地にしながら呪術の奥義を極めるより、適当に錬金連打してればいい錬金術師の方が楽だね!
スキルも魔法も熟練度を上げれば上げるほど、効果範囲を狭めて威力を上げたりだとか、単純に精度とスピードを上げたりだとか、融通が効くようになるのだが、現実で核で周囲を更地にしまくる男はヤバすぎるので、錬金術師一択であった。
……え? なんで、核兵器まであるのに、神や魔王が倒せないかって?
核兵器なんか鼻で笑っちゃうレベルの文明の持ち主から発射された、何で出来てるかも分からない星系破壊ビームを鼻で笑っちゃうような連中に、半径100キロ"しか"焼けない攻撃がかなうわけないやろ! 限界まで収束しても無理じゃ!
人間レベルではこのアトミックグレネードは笑っちゃうレベルで過剰火力だが、純粋なエネルギー量的には実は毎年日本にお通しのようにやってくる台風の1%にも届かない。
それも、日本にやってくる台風全部の合計ではない。
季節の風物詩的にやってくる台風、そのたった一つ分のパワーの、さらに百分の一もないのだ。このアトミックグレネードは。
いやまあ、俺が計算したわけじゃなくて、ネットの有識者の知識だから詳しくは知らんが、どうも計算するとそのくらいになるらしい。
ちなみに一般的な風神雷神はそんな台風やハリケーンの化身なので、お通し感覚で台風やハリケーンを投げつけてくるぞ。
というか、地上に降りてくるだけで、木星で350年間飛び続けてるような惑星規模の超巨大台風やハリケーンが発生する。
もちろん、ただの現象ではなく、神様なので、人間より遥かに賢いし、知識も多い。闘争本能も豊富だ。荒ぶる神だしな。
魔王連中はただの生物だった時代にどうやってこんな連中に勝ったんだ……? 今でも神様連中を狩り続け、世界法則をぶっ壊しながら、力を蓄え続けてるらしいが、ヤバすぎないか?
俺、こんな連中を聖剣一つで全部討伐しなくちゃいけないの……? つら……
そら、アルトリウスや半神の英雄も崇められますよ。俺だって崇めるだけで生きる災害から助けて貰えるなら崇めちゃうね。その方がお得だもん。
俺が人間のちっぽけさと、この世界の勇者パーティのブラックさを噛み締めていると、作業を手伝ってくれていた聖女さまと大守様が半目で言った。
「世界を滅ぼせそうな物を沢山持ってる人が、なんか言ってる……」
「絶対に暴発させないでくださいね。絶対ですよ。したら末代まで祟りますからね。一緒のお墓に入ってもらいますからね」
「大丈夫ですよ。安定した出力を出すために、暴発対策はガチガチに固めてありますし、この程度の火力じゃ一万発集めても月一つ壊せません。ましてや銀河系なんて、逆立ちしたって無理です」
「そういう壮大なレベルの話ではなくてですね。私が話しているのは、彼らとダンブルクが吹き飛ばないかということを……」
「あの、わたくしたちの背中にそんな物取り付けながら、暴発の話をするの、やめて貰って良いですか?」
「右に同じ。心臓が止まりそうよ」
お、不死者ジョークかな? それならかなりの大爆笑である。
「本音よ」
というわけで、威力と範囲が中途半端に高くて、使い辛いアトムの子供たちなのだが、燃料や電源、ブースターとして使うと中々に便利だ。
人間や霧の巨人の鎧を高速で飛ばしても余りあるパワーと持続力がある。
作り方や取り付け方はゲームで散々やったので、慣れたもんだ。
必要な物は英雄の剣槍と錬金術で、取り付け装置ごと揃えておいたので、あとはそれらを使って鎧と合体させるだけである。
「でも、ゆーじさん。社長さんの鎧、教会で一番強い代わりに、一番重い装備なんですけど、大丈夫なんでしょうか」
確かに社長の鎧は前回から変わっている。
玉ねぎみたいなデブい3段腹鎧から、如何にも聖騎士といった感じの重厚かつかっこいい全身鎧にクラスチェンジしている。
それも一般聖騎士ではなく、教会の最後の切り札として出て来そうな感じの、最終決戦仕様の聖騎士である。
大きさも人間サイズから巨人サイズまで変化可能らしいあたり、これ多分、ゲームで白教団本部跡地に乗り込むと、ボスとして出て来る巨人の鎧の亜種というか、それを参考にして白教が作っていた決戦兵器だよな?
灰色と金と黒を基調にしたデザインはかっこいいし、実際強いんだけど、こんなもん、ララベルはどこに何て言って借りて来たんだろうか。聞くのが怖いんだが。
「それでユージさん、本当に本当に暴発は大丈夫なんですね? 一発でも暴発したり、不発弾になったりしたら、私たち終わりですよ?」
「大丈夫、大丈夫。この程度、全く問題ないですよ。むしろ問題は出力があり過ぎて、社長が宇宙の彼方までカッ飛んで行かないか、ってことだから」
「おい!? 本当に大丈夫なのかこれ!? ちゃんと試験したのか!?」
「不憫ね……」
「いや、貴女も他人事じゃな……!? ふぉおおお!? なんだ、このエネルギー!? 推進力は!?」
社長が普段の丁寧さをかなぐり捨てて何か叫んでいるが、取り付け機械下部にある棒状の固定具を外さない限り、飛んでいかないから安心してほしい。
「ふむふむ、重量比からすると、出力が足らないな。やはり当初の予定通り、姿勢制御用にもう1個、いや2個足そう」
「うおおいっ!? 十分! もう十分ですって!? わたくしをどこまで速くするつもりだ!? 待て! 止まれ! やっぱりこの実験は中止に、あ"あ"あ"あ"あ"ーーーー〜〜!?」
一足早く、社長は空へと旅立った。爆発音にも似た音を立てて、城壁の上を爆走し、そこからジャンプするように、放物線を描いて山の方に飛んでいく。
実に簡単な話だ。装備重量が10倍重くなるなら、それ以上の推力で飛ばしてやればいい。小学生でも分かる理屈である。
「哀れね……。? っ!? っ!!??」
「あ、傭兵さん、だめですよ。今巨人の鎧を解除したら危ないので、解除呪文を一時的に凍結してるんですから」
「え、え? あの、そんなの聞いてな……」
ヒィィィイーーーン、とエンジン音がどんどん高まって行く。
「よし、良い音だ! 傭兵さんは社長より大型な分、4倍の16基積んだから、制御難しいかもだけど、教えた通りに頑張って!」
「ま、ま……ーー」
パチンと、ララベルが黒騎士のハッチを閉めて、ニッコリと笑った。
「それじゃあ、いってらっしゃいませ! 楽しい空の旅を!」
「待っ……た、たす、あああっ、あ、あ、……アアアアアーーーー〜〜ッッ!!??」
ダンブルクを囲う城壁の上を爆走し、空へとかっ飛んでいく。
こちらはダッシュジャンプという感じの社長と違って、滑走路を飛ぶ飛行機の挙動に近い。
「うーん、実験は成功だな。流石は英雄。一発クリアか」
「はい! 私も飛びたかったです!」
「ララベルは重い鎧を装備出来ないからなぁ……出来るならやっても良いんだけど」
「杖とかにはつけられませんか?」
「いや、ロケット付きのメイスとか錫杖とか、何の役に……いや、ララベルの腕力ならいけるか?」
「何呑気なこと話してるんですか!? 本当に大丈夫なんですかアレ!? あまりの速度に気絶とかしたら、そのままボッカーンですよ!?」
「それも大丈夫。ララベルが持続回復魔法をかけてるから、気絶しない」
「はい! 気絶なんて絶対させません!」
「そういう問題じゃないでしょう!?」
その後、実験は成功した。
流石は熟練プレイヤーでもパリィを諦める斧でレベルが100近く違う埋葬者相手にパリィを連続で決めてた社長と、初見で使い辛い霧の巨人の鎧を使い熟して空中戦までして見せた傭兵さんだ。
絶叫マシーンに初めて乗った人みたいなリアクションしながらも、数時間後には、しっかりジャンプブースターとサイドスラスターを使い熟して見せた。
流石はリアル英雄。俺とは基礎スペックが違う。まあ、ただのゲーマー俺や他のプレイヤーにも出来たんだし、この二人なら必ず出来ると信じていた。
サイドスラスターで前後左右に鋭く機敏に動き、その慣性が残ってるうちに出力の高いジャンプブースターを吹かせて、重装歩兵とは思えない連続大ジャンプを実現する社長。
それを16基のブースターで行うことで更なる高速化と、バレルロールする可能な、自在な飛行能力を手に入れた女傭兵さん。
まだまだ荒削りな所も多いが、少なくとも山や地面にぶつかって、潰れたトマトみたいになっていないし、上出来すぎる結果と言えるだろう。
まあ、そうなりそうなら、取り付けといた重力壺が働いて、一時的に無重力空間になるから、死にゃあしないんだが。
「次は予想しづらい障害物が多い市街戦の訓練だな」
日も暮れて来たので、試験と訓練の終了を告げて、城壁の上に帰って来た二人に駆け寄る。
鎧を脱いで、人に戻った二人は疲れてはいるが、充実した表情を浮かべている。
「おかえり〜! 空はどうだっ……」
「ふん!!」「はあっ!!」
「ぐばあっ!?」
俺は吹き飛んだ。
「何故殴る!?」
「「自分の胸に聞いてみろ(なさい)!」」
こうして勇者曰く、「真のDLC装備一式」こと、「核燃料ブースター」と「サイドスラスター」の取り付け作業は終わった。
あとは高高度強襲ミサイルだな。




