↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錆びた剣の聖騎士 死のない世界で一度も死んではならない勇者の話  作者: 諸星すぎる
第三巻 影と装甲の軍団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/167

影との戦い 1

「ですが、騎士団はかなり厳しい状況のようです。今から出ても増援が間に合うとはとても……」


「ここで彼らを見捨てれば、ジリ貧になります。次は彼らも敵になるわけですからね」


 この10日間、訓練を共にしながら色々とこの世界から生きて家に帰る道を模索したが、どう利己的に考えたとしても、やはり俺がこの世界で生き残るには皆の協力があった方が良い。


 ラルド将軍の強さは亡者化したら間違いなくエリアボス級になるし、騎兵隊長や新人の刀の人だって初見は殺されまくるボスくらいの強さはあるだろう。


 そして初見も何も俺の命は一つしかないので、初見殺しだろうがなんだろうが、食らって死んだらそこで終わりだ。


 俺の強みはゲーム由来の経験と知識、それと地球人として一度も死んでいない命を持つが故に、聖剣を扱えるということだけ。


 それらを除けば、剣技や体術のような武力面はもちろんのこと、戦術や戦略、商売や政略のような頭脳方面も、この世界の専門家の足元にも及ばないのだ。


 たとえ死んでから蘇れたとしても、聖剣さんに見捨てられればそれまでである。


 生者でも聖剣使いでもなくなった俺に、この世界で生きていけるとは思えない。


 俺は所詮ただの腐れ大学生、ゲーム配信とかも試してみたけど全く受けなかったしな。カリスマ性とか、知略とか、ましてやこの世界でも通じる農法とか軍略とか欠片も持ち合わせてねえぜ。


 まあでも、正直俺が現代の政治家や外交官、軍人とかだったりしたとしても、事前の知識や経験もなしに、この世界で活躍出来るかと言われれば、答えはNOだろう。


 なにせこの世界のあらゆる生き物はデフォルトで不死身なのだ。常識も文化も違う。なんなら精霊系の誰かに通訳してもらわないと、言語すら違う。

 しかも土壌や大気も含めた全ての物質にエーテルという、ゲーム熟練者やこの世界の魔術の達人すらよく分かってない、不思議で危険な力が宿っている。


 俺の周りで敵を倒して敵がきっちり死んでいるのは、主に聖剣さんが敵が復活しないように敵の心身や魂を構成するエーテルをオートで分解吸収してくれているからだ。


 それがなかったら、凶悪な亡者連中と終わることのない地獄の消耗戦を強いられることになっていただろう。


 たとえご都合主義的な奇跡が起こって、自前の軍隊を引き連れていたとしても、永遠の戦いで物資が切れて詰むか、あるいは強敵に蹂躙されるか、といった所だ。


 今後ろで朝ごはんのサンドイッチをもむもむ食べているララベルさんだって、人食いリリィベル化したら、超有能なヒーラー兼召喚士が一瞬にして、人類の敵である。四六時中追跡されて安置やボスエリアにも入ってくるワンパンウーマンだ。


 しかも追ってくる時は霊体なので、エーテルのこもったこの世界の武器じゃないと、素通りしちゃって倒せないんだぜ? 銃も爆弾も効かないとか、生き残れる気がしない。


 戦闘力的には弱いオリヴィエ太守やエドガーすら、亡者化すればいるだけで、何度死んでも蘇って周囲の戦闘力を倍以上に跳ね上げる害悪モンスターになる。


 エルマ婆ちゃんは……考えたくないが、この人の職業を考えると、やはりこの人もボス級だろう。


 それもラルドさんのような直接戦う正統派タイプではなく、自分は透明化して悪霊モンスターを呼びまくり、やっとプレイヤーが本体を見つけたと思ったら即死級の大火力を投げつけてくる害悪ボスだ。心当たりがある。


 今は街で衛兵やってくれている頼れるマッチョマン達だって亡者化すれば集団戦法で殺しに来る厄介なスケルトン軍団に早変わりするし、一市民や農民すら松明亡者になれば、松明を使った回転剣舞六連を見せてくる。死ぬ。


 アレ見た目は松明を使った駄々っ子グルグルパンチなんだけど、実際は炎属性の高火力連続突進攻撃だからな……そんなもん火属性無効装備もなしに受け切れるか!


 結論、どう考えても仲間や市民の亡者化は百害あって一利なし。むしろ味方として存分に利用し合うべし。


「というわけなんで、騎士団の人も市民も出来る限り生き残って貰います。彼らを亡者にしたら、次死ぬのは俺たちです」


 俺が熱弁を振るうと、オリヴィエさんは口をきゅっと結んで増援の件を羊皮紙に書き込んだ。手の平をくるりと回して手紙を転移させる。


「分かりました。早馬を用意させます。何頭用意しましょうか」


「ラルド将軍たちはもう出てるんですよね?」


「ええ、騎兵隊長含め、主だった騎士たちは皆出撃しています。残っているのは衛兵隊だけですね」


「なら馬は一頭だけで十分です」


 即答した俺の言葉に、2人は目を丸くした。


「ちょ、ちょっと裕二さん? 私を置いていくつもりなんですか!?」


 ララベルが慌てて言ったが、俺は呆れて首を振る。


「主戦力を置いていくわけないだろ。ララベルは俺の後ろに乗ってくれ」


「衛兵隊は連れていかないのですか? それに相乗りだとしても、替え馬はあった方が良いと思いますが……?」


「いえ、ちょっと俺の故郷特有の乗馬技法をするんで、替え馬は大丈夫です。衛兵隊はオリヴィエさんと街の守備に残してください」


「それは……私はありがたいですが、大丈夫なのですか?」


「ええ。むしろ今回の敵には衛兵隊はいない方が良い」


 この世界は昔の戦略ゲームではないので、街をガラ空きにして全軍突撃なんて真似は出来ない。ある程度は防衛に残す必要がある。


 太守もその辺りは承知しているはずなので、おそらく自分や街の安全よりも俺とララベルが騎士団を短時間で救援することに賭けるつもりだったのだろう。


「敵はおそらく俺の知ってる連中です。あいつらは敵の数や能力、動きや装備をコピーしてきます。アイツら相手に数は用意しないほうが良い」


 影の軍団は魔王ほどではないが、それに次ぐ脅威となりうる危険な連中だ。

 元々は然程の脅威でもなかったのだが、dlc実装と同時に行われたアプデで森の環境が変わった結果、プレイヤーに真っ先に殺されることを宿命付けられた可哀想な連中である。


 逆を言えば対処可能な序盤の内にやらないと、こいつらが世界中を埋め尽くして大変なことになるということだ。


 奴らは脳みそもないのに謀略を張り巡らせ、そればかりか相対した敵の姿、能力、装備、動作などを全て忠実にコピーする。しかもその能力を持ったまま、敵の数だけ増殖することさえ可能だ。


 流石に魔王ガイウスや癒しの女神、聖剣さんのような神様連中の完全コピーは出来ないが、劣化コピーするだけなら十分可能だし、なんならラルド将軍や森の中に安置されているはずのdlc装備「霧の巨人の鎧」をコピーして量産されるだけでも、この世界は滅びかねない。


 駄剣世界は一対一が基本で、同じ能力のボスでもニ対一となると途端に難しくなる。


 ボスに三対一なんてされた日には接近戦はほぼ諦めてヒットアンドアウェイに徹するしかなくなるし、それ以上の数的不利は闘うことそのものが無謀と言える。


 それはこの世界でも変わっておらず、俺もラルド将軍が1人ならともかく、2人も3人もとなると、接近戦はかなりキツイ。出来ればやりたくない所業だ。


 そうなるとひたすら遠距離から魔法やバリスタでチクチク狙撃や爆撃を繰り返すしかなくなるのだが、影の軍団はそれすらコピーして多人数で撃ち返してくるから堪らない。


 1人で隕石爆撃するより、100人で隕石爆撃する方が強い。


 そんな当たり前のことを、彼らはプレイヤーに教えてくれる。


 なので奴らには、それ専用の処刑法を用意する必要がある。少々準備不足だが、やってやれないことはないだろう。


 アイツらがコピーラルド将軍やコピーガイウス、コピーフレアドラゴンで世界を埋め尽くす前に、奴らの首領、「影の大王」を片付けなければならないのだ。


「そうですか……分かりました。なら、今いる中で一番の馬を用意させましょう」


「ありがとうございます……時にオリヴィエさんは占いは好きですか?」


 俺はチラッと彼女の首にかけられた占い石のネックレスを見ながら言うと、彼女は首を傾げて答えた。


「占い、ですか? そうですね……個人的には好きですが、あまり政治の役には立たないと思っております。あの、それが何か……?」


「いえ、そのネックレスが欲し、じゃなくてこの戦いの間、お借りしたいなー、と」


「それは、構いませんが……」


「よっし! ありがとうございます!」


 俺はいそいそと彼女のネックレスをいただいて、自分の首につけ、指でつついてみる。


 白色の占い石が鮮やかな桃色へと変わったのを見て、俺は大きく頷いた。


「これで万全です。よし、行くぞララベル!」


「えっ、ええ!? ちょ、ちょっと、裕二さん! 話の流れが全く見えないんですが!?」


「何をごちゃごちゃ言ってるんだ! 時は一刻を争うんだぞ!」


「なら、さっきの会話は一体なんだったんですか!?」


 俺はネックレスがどうのと訳の分からないことを言っている彼女を連れて、厩舎に駆け込み、馬番さんから1番早い馬を聞き出して彼女を馬の後部座席に放り込んだ。


 俺もすぐさまそれに乗って、騎士がデフォルトで持っている乗馬スキルを発動。全速力で森へと駆け出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。