6‐FYL、直線道路
朝靄の中、牛舎へと向かう。一頭一頭の牛に声にしない言葉をかける。
体調不良は無いか、ストレスは無いか。新しい藁は居心地が良いか、隣の新入りとうまくやっているか。
歩き、目を合わせ続けながら俺はこいつらに感謝する。こいつらから少しづつ少しづつ命を分けて頂いている。俺は今日も生き永らえている。
朋也「ニラ醤油、君はなんて罪深いんだ。
今までのオレの料理に対する努力は何だったのか、
ってほどの美味さ! 『臭いものは旨い』の先兵か己は!!
冷奴、納豆から、炒飯、野菜炒めまで何にでも使える万能調味料だな。」
父さん「……。
独り言か、トモヤ。」
朋也「あ、父さん。
食材に話しかけてると言って頂きたいね、この場合は。」
父さん「……、その、なんだ。
お前にはいつも世話になってるな。」
朋也「なんも。変な気まわさないでも大丈夫だよ。料理は楽しいしね。
もう出れる感じ?」
父さん「あぁ、車出せるぞ。」
朋也「おけー。んじゃ、これラップしたら行くわぁ。車で待ってて。」
朋也「雨上がったか。今年は雨が多いね。」
父さん「あぁ。
今年は雪が、少なそうだな。」
朋也「うん。」
(※夏に雨が多いと冬は雪が少ない、冷夏だと暖冬という観天望気はよく地元で言われます。)
父さん「お前は、そのなんだ。将来どうすんだ。」
朋也「ん、継ぐよ?
でもまぁその傍らで、うちのでチーズとか地元の食材で料理とか作れたらいいなって思う。」
父さん「そうか。
俺は……、こないだのやつは、苦手だ。他のはいいんだが。」
朋也「あー、ブルーチーズね。あれは癖強いよね。
あまり主役で使わない方が万人受けかもなぁ。うまい使い方、センセに聞いてみっかなぁ。」
父さん「無理して使わなくても……、いいと思うんだが。」
朋也「あー、トラウマになっちゃったかな……。」
朋也「なんかさー、この道走ると空まで飛んで行けそうだよね。」
父さん「お前はまた……、縁起でもないことを。」
朋也「いやいや、一直線にどこまでも行けそうって意味だよ。」
父さん「どこまでもか。」
朋也「うん、どこまでも。」
父さん「やっぱり縁起でもないな。」
朋也「大丈夫だって。
僕はこの土地から離れる気は無いよ。ここが好きだし。」
父さん「……、そうか。」
朋也「うん。」
父さん「買い物は……、どれぐらいかかる?」
朋也「んーと、調味料とか一通り買って魚介類見てくるかな? 30分もかからんと思う。」
父さん「そうか。
じゃあホーマック(※北海道釧路市発祥のホームセンター)にいる。」
朋也「ねぇ父さん。」
父さん「なんだ。」
朋也「そろそろそのニット帽は暑くないかなぁ。」
父さん「……。
お前はまた、細いことを……。」
(※北の国からの五郎さんの帽子。ニット帽もキャップ帽も売ってます)
●直線道路
日本一長い直線道路は北海道にある。(札幌~旭川間を結ぶ国道12号線の中間ぐらい)
その距離29.2km、車で40分間ぐらい。ただ市街地を延々と抜けてくので景観はそれほど良くない。だが心配することなかれ、北海道らしい景観の直線道路が道内の至る所に点在する。地平線まで伸びるものから、アップダウンによって天空まで登るように見えるものまで、一点透視図法な直線道路はほんと絵に描いたみたいな冗談さです。ほんと広大です。
ちなみにドライブすると気づきますが、道内の信号機は縦型のものがほとんど。理由は雪が積もる面積を減らすためだとか。