4‐FYL、玉ねぎ
毎日、家を出てからこの風景を見る。1年365日、いや一度として同じ風景の時はない。
点々と出てきた春の芽に、未だ厳しい風が容赦なくその頭を撫でていく。その風が俺の頬も撫でる。
鳥が鳴く。徐々に夜空が白ばむ。朝焼けの朱が奔る。
朋也「塩豚のポテンシャルの高さに全オレが泣いた……」
父さん「おはよう。」
朋也「あ、おかえり、父さん。
ちょうど味噌汁が出来たとこ。」
父さん「今日の具は……、玉ねぎとわかめか。」
朋也「マジ正解。
香りだけで味噌汁の具が何なのかわかるレベルを目指してた甲斐があった。ついにその頂に上り詰めてしまったか。」
父さん「それは……
実のところ、自画自賛だな……、トモヤ。」
朋也「他人の評価あって自身を顧みるってのは、当然だよ。」
父さん「また難しい言葉を……。
それにしても……、毎日、玉ねぎ、だな。」
朋也「あー、うん。
地産地消プラス、その時期の食材が一番体にいいらしいよ。
あと家計的にもね。」
父さん「また難しい言葉を。」
父さん「それで……、
次は何を作ってるんだ。」
朋也「塩豚で他人丼。」
父さん「赤の他人に……、壁ドン?」
朋也「違うよ父さん。
鶏と卵で親子丼、鶏の代わりに豚だから他人丼だよ。」
父さん「お前は……、ちゃんと俺の子だ。
母さんは出てってしまったが、けっしてお前は……」
朋也「オーケー、オーケー父さん。母さんのことはしょうがないよ。
お昼ご飯、作っておいとくから。
本当は食べる前に卵落としてほしいところだけど、んましょうがないや。温めてご飯にかけて食べて。」
父さん「そうか……、すまんな。
それにしても……」
朋也「うん。」
父さん「玉ねぎがいっぱい入ってるな。」
朋也「うん、そろそろ玉ねぎレパートリーの限界が近いかもしれない。」
父さん「レバー……、とり……。
今夜は俺が晩飯作る、焼き鳥を焼く。」
朋也「オーケー。
でもま、挟むのは長ネギじゃなく玉ねぎだね。」
父さん「それにしても……、毎日、玉ねぎ、だな。」
朋也「現段階でストックが20玉弱。
たぶん、来週にはまた10玉ぐらい増えるんじゃないかな……。」
父さん「しょうがない、玉ねぎの丸焼きも作るか。」
●玉ねぎ
特定の時期になると玉ねぎが10㎏、20㎏単位でお安く売られている。玉ねぎが常備野菜だとはいえ、大量購入は大家族じゃない限り消費ハードルが高い。なので僕は手を出さない。
だが油断してはいけない。あらゆる人からおすそ分けされるので、うん、毎日玉ねぎパラダイスです。
おかげで血液がサラサラです。たぶん。
ちなみに「玉ねぎの丸焼き」は皮のままホイルにくるんで炭火焼きにして塩、胡椒、醤油などで頂きます。BBQに最適な一品!