3‐Just Now
僕は耐えていた、冬が終わるのを。僕は待っていた、雪が降り止むのを。
閉じていた眼を開ける。
心を芽吹かせる。前を向く。口元を結ぶ。
手を伸ばす。
大切なものを失わないために、君を掴むために。
春が来る。
僕は僕の大切な人へと、君へと手を伸ばす。
二度と失うことが無いように。ずっとこの手に君を感じられるように。
春が来る。
君へと芽吹く。
里美「……、遅いよ!」
朋也「ごめん。
待ち合わせ場所がその、なんていうかさ。」
里美「……。
木、無くなっちゃたんだ。」
朋也「うん、ちょっと色々変わっちゃったかもな。」
里美「トモヤさ、背、伸びた?」
朋也「いやいや、成長期はとっくに終わってるし。
う~ん、変わった?」
里美「……。
大人になったかも。」
朋也「そりゃあね。少しは成長っていうか、うん。
……。サトミは、髪伸ばしたんだな。」
里美「変かな? お姉ちゃんにやってもらった。」
朋也「いや、良いよ!
その……、うまく言えんけど……、良いよ!
あ~、
お姉ちゃん元気?」
里美「相変わらずかな。
彼氏が毎年変わるし、草食動物みたいなのばっかだし。」
朋也「元気そうで何より、だなぁ……」
里美「家はまだ……、あるんだね。」
朋也「父さんが買い取って、
つうか今は共同農園として運営してるよ。」
里美「知ってる。」
朋也「知ってるなら聞くなよ。」
里美「だって……、家も無くなったかと思ってたし。」
朋也「……、寄ってく?」
里美「ううん、いい。
なんか……、あれだし。今度にする。」
里美「ねぇ、
ザンギ食べたい。」
朋也「持ってきてねぇ、つーの。」
里美「5年も待ったのに?」
朋也「僕だって……、
いや、そうだな。
作るよ。
あれからさ、色々とバージョンアップはしたんだけどさ。
昔のレシピ思い出して作るかな。」
里美「うん。
あのザンギが食べたい。タッパ1杯分。」
朋也「ははっ。どんだけ食べるつもりだよ。」
里美「5年分……。」
朋也「行こっか。」
里美「うん。」
朋也「……。
おかえり、サトミ。
ずっと言えなかったけど……
サトミのことが好きだ。
離れていたけど、時間は経ったけど、色々と変わったかもしんないけど。
この気持ちだけは変わってないよ。
もう離れたくない。もう離さない。
おかえり、サトミ。」
里美「……。
ただいま、トモヤ。
うん、私も……
バカ! バカトモヤ!
……、早く帰ってザンギが食べたい!」
朋也「はははっ!
うん。ずっと作るよ。ザンギだって、お弁当だって。
ずっと作るよ。これからもさ。」
●復興
春の風に 動植物たちが一斉に躍動し
夏の日差しに雨に 一喜一憂する
秋の実りに この世の成熟を成就を感じ
やがて来る冬の雪に その身を閉ざす
全てを白で包み込み
なにもかにもに終わりを伝える
静寂を与える
眠りを伝える 雪
その雪の
溶けだした水が我々を潤す
命となってまた廻る
春が来る




