9‐FYL、じゃがいも
風に秋のにおいが混じり始める。四季の移り変わりを肌で感じる。
空が高くなる。空を羊の群れが移動する。
俺はこの地から動かずに移ろいを眺める。足の裏にこの地を感じながら、ただ眺める。
朋也「ガレット……。香ばしく輝く君の姿にオレはひれ伏すよ。」
父さん「ただいま。」
朋也「あ、おかえり、父さん。
今日は早いじゃん。てっきり農協の帰りだから飲んで帰ってくるかと思ってたよ。」
父さん「今日の晩飯は……、肉じゃがか。」
朋也「さすが父さん。
仄かな昆布出汁の香りだけで当てるとはね。他の匂いも混ざってるかと思ったけど。」
父さん「まったく……。また独り語とか。
いやトモヤ。その、あれだ。……誰かいないのか。」
朋也「ん? 誰もいないけど?
あぁ、路子? いないよ。バイトの面接に行くってさ。」
父さん「み、路子がかっ!」
朋也「んー、なんか閃いたらしいよ、自分の将来に。
これで脱無駄飯食い、社会復帰、引き篭もり脱却となると、いいねぇ。」
父さん「お前は、ど……、どうすんだ。」
朋也「は? いやま、応援しますけど? 一応、兄として。」
父さん「この……、禍々しいものは、その……
食いものか。」
朋也「見事な紫色だよねぇ。シャドークイーン。
味は当然ジャガイモなんだけど、料理を選ぶかもね。食べる? ガレット。
酒のつまみにはなると思うけど。」
父さん「ジャガイモ……、か。」
朋也「うん、ジャガイモ。」
父さん「まったく。毎日、ジャガイモか。」
朋也「贅沢言わないの。
ジャガイモの季節だからね。向こう一ヶ月は安泰だと思うよ。」
父さん「酒が……、進むな、これは。」
朋也「焦げたチーズがまたいい味出してるよね。」
父さん「路子は、上手くいくだろうか。」
朋也「上手くいってくれなきゃね。
眼鏡屋さんを選んだ段階で、何か目的が違う気もするけど。
本人は目が悪くないし。」
父さん「それは……、俺も気になっていた。」
朋也「んま、趣味というか好みと言うか、実益に結びつくこともあると思うよ。
好きなものこそ上手なれ、って言うしさ。」
父さん「お前はまた、難しいことを。」
●ジャガイモが「ジャガイモ」で売られていない
一口に「ジャガイモ」と言っても、流石は北海道。良く流通している品種でも十数種類、たぶん50種類以上は栽培されている。
店頭では「ジャガイモ」ではなく、男爵、メークイン、ホッカイコガネ、キタアカリなど品種名で売られているのをよく見かける。他にも「とうや」だとか「ゆきつぶら」、「ピルカ」「ノーザンルビー」「シャドークイーン」など、『これを登場人物名にして一本の短編書けるんじゃね?』ってぐらいのネーミングセンス笑
品種によって煮崩れしやすいだとか甘みが強いだとかあるので、使い分けられたら一流のジャガニスト。
ちなみに「インカのめざめ」は最早、別次元の旨さ。
煮物はもちろん、コロッケ、肉じゃが、ポテトフライ、ジャーマンポテト。もちろんじゃがバターも外せない。明太マヨやイカの塩からを乗せると居酒屋感が半端ないです。
そして、皮ごと丸々素揚げして塩で頂き、ビールで流し込むのが玄人流!




