8‐OYA、南蛮
透き通るような天空を覆う蒼を見上げる。
額から汗が流れる。拭っても拭っても流れ落ちる汗。無駄と思い無視を決め込むも、勝手に腕が汗を拭う。
ゆっくりと流れていく雲。純白な柔らかさを持った一塊の雲が流れゆく。
拭っても拭っても拭いきれない汗に、失われていくものを僕は想う。
流れていく雲に時が流れていくことを、僕は知る。
里美「ねぇ。
夏休みなのにさぁ、炎天下なのにさぁ、花の高校生男子が畑いじりってどうなのよ。」
朋也「花じゃねぇし。
野菜だっつうーの。生命の喜びにマジ歓喜だっつーの。」
里美「喜んでるようには見えないけどね。
つかさこれ、家庭菜園の域を超えてるよね?」
朋也「母さ……、
父さんが片手間に始めた菜園だけどさ、引き継いで色々と育ててたらこうなりました。」
里美「トモヤさー、酪農より農家の方が向いてるんじゃない?」
朋也「うーん、
同じもの、商品をたくさん作るよりも、作りたいものを色々とやりたい性質だからな。」
里美「チェッ
うちの父さん結構「トモヤ君も野菜の声が聞こえるようだね! はっはっはっ!」って喜んでたんだけどなー。」
朋也「跡継ぎ問題ねぇ。
おじさんのアドバイスは非常に助かってますですよ、はい。
んで、お姉ちゃんは野菜の声が聞こえる彼氏とか連れて戻ってこんの?」
里美「無いない。
きっと情に尽くしてダメ男と結ばれると見たね。」
朋也「辛辣な意見ですこって。」
里美「麦茶ここに置いとっからね。」
朋也「勝手知ったるウチの台所というね。あんがと。
路子は?」
里美「さっきコテンパテンにやっちゃいましてですねぇ。
武者修行の旅に出ると、家を飛び出してしまいました。
はは、ちょっとコンボ極めすぎちゃいました!」
朋也「外に出る原因が格ゲーじゃなきゃ言うことないんだけどな。」
里美「ねぇトモヤ、そろそろお腹空かない?」
朋也「それは「お腹空かない?」ではなく、「お腹空いた!」だろ。
父さんいないし、パパっと素麺でも茹でっかな。」
里美「親父さん、無類の米派だもんねぇ。」
朋也「夜は食べないんだけどねぇ。」
朋也「素麺、夏野菜の天ぷら、大根おろし。そして山菜漬け。」
里美「天ぷら揚げたの?」
朋也「昨日の夜の残り物。
うちの事後処理にご協力ください。」
里美「それは良いんだけどさぁー、トモヤさー、
普通、麺つゆにラー油と南蛮入れる?」
朋也「これがハマるんだって。蕎麦でもいけるよ。」
里美「変化球にハマる時期ってあるよねー。
ファーボールに誘い込みだなー。」
朋也「ホームラン打たれるよりましだっつーの。」
●南蛮
唐辛子のこと。
最近までそれが北海道弁だとは知りませんでした。語源は「南蛮辛子=舶来品のからし」という、由緒正しき? 日本全国基準の言葉なはずなんですがねぇ。
セイコマート(北海道の有名コンビニ)で売ってる「チキン南蛮弁当」を食べて、辛くないじゃん! とか思い、何気なく調べてみたら驚きです。チキン南蛮は宮崎県の郷土料理だったんですね。
いやそこじゃなく。「南蛮=唐辛子」は道民には普通なんだけどなぁ。
どうやら南蛮入りの甘酢に漬けた鶏肉の唐揚げが「チキン南蛮」の定義らしい。
ちなみにザンギ発祥の地、釧路には「ザンタレ」という甘辛いタレをかけたものがあったり、函館にある「ラッキーピエロ」のチャイニーズチキンは甘辛い作り。南蛮使ってるよ?
あー、食べたくなってきた!




