7‐FYL、ロールちゃん
道路の水溜まりを追いかける。追いかけたいわけじゃないけど追いかける。
暑い日差しが照り付ける。「何度目の夏だろう」、そんなことを考える。
逃げ水、地鏡。
逃げ水がボクから逃げる。地鏡が映すのは過去だろうか、それとも未来だろうか。
追いつけないボクは、いったい何処へ向かっているのだろう。
朋也「センセー!」
司書「いやはやトモヤ君、ボクは先生ではないよね。」
朋也「いやー、師匠!ってのもあれだし、僕にしてみたらやっぱセンセかなと。」
司書「まぁ好きに呼んだらいいよ。
それでトモヤ君、何か用事かな?」
朋也「こないだセンセに貸してもらった沖縄料理の本あったじゃん?
んで、載ってたゴーヤチャンプルを作ろうと思ったんだけど、ゴーヤが手に入らんかったんでブロッコリーチャンプルにしてみました!」
司書「ほうほぅ、それは丼にしてご賞味頂きたく存じ上げますな。」
朋也「そう言うと思って、白米と丼ぶりをこちらに。
そしてブロッコリーチャンプルは味濃いめにしておきました。」
司書「準備は整っていると。」
朋也「では。」
司書「では。」
朋也「いただきます!」
司書「頂きます。」
朋也「やっべ、長ネギ辛っ!」
司書「まぁ、長ネギの火の通し具合だとか、生っぽいとか辛みだとかは好みだよね?」
朋也「センセはいける口ですか?」
司書「比較的。
玉ねぎも辛みが残ってる方が好みです。」
朋也「あー、僕は唐辛子だとか山葵だとかの辛いの全般は好きな方ですけど、
うーん、葱系の辛さはなぁ。」
司書「んま、好みだよね。」
朋也「ところでセンセ、こんなところで何してたんすか?」
司書「うん。
あの牧草地のロールちゃんを眺めてたよ。
たまに外の空気吸わないと息が詰まるしね。」
朋也「そうかもしれませんねぇ。」
司書「あれを見ると、お菓子のなんだっけ? あれ。」
朋也「あー、あれですね。
思い浮かびますよねぇ。」
司書「ところで君。
君は確か、料理の腕も良いと存じているけれども、スイーツもそれなりなのだとか?」
朋也「どこからその噂を。
まぁ、嗜み程度には食後のデザート的なものも手掛けますが。」
司書「ということは。」
朋也「……、やっぱり?」
司書「ロールケーキも作れるってことじゃないかなぁ。」
朋也「そう言うと思いましたよ。
明日持ってきます。」
司書「個人的にはだね、ココア系の生地にチョコチップ入りのクリームだとか、
うん、チーズ推しで、レアチーズな感じの酸味もいいかもね。」
朋也「注文が細いなぁ。」
司書「それだけ君の腕を買ってるってことじゃないのよ。」
朋也「乗せるのも上手いなぁ。」
●草原に点在する巨大な丸いやつ
麦稈ロール、又は牧草ロールが正式名称。
初夏の晴天が続く日にドライブすると見ることが出来る、夏の風物詩。(初秋にも見れるけど)
壮大な牧草地に点在するロールちゃんを見ると「あぁ、夏が来たんだなぁ」って思います。
牛の餌なわけですが、外に晒して適度に乾燥させ、発酵させて冬の餌にする。
なので酪農家の方々にしてみたら「牧歌的なほのぼのとした風景の一つ」なんて軽いものではなく、牛さんの貴重な栄養源。なので、出来不出来が死活問題だったりします。
昔はサイロ(煉瓦で出来てる塔みたいなやつね)で発酵させていたわけですが、現在は白や黒のパックにして積み上げて発酵させてます。
あのパック詰めのロールちゃんを見ると、宇宙人的な、未来的な人工物を連想してしまうのは僕だけなのでしょうか。




