表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

第八小節

放課後はパートリーダの会議があり、個人練習だったので、奈緒子は柚を誘って空き教室に来ていた。

「一人で吹くのは恥ずかしいなぁ・・・奈緒ちゃんも一緒に吹かない?」

「一緒に吹いたら、柚の音、ちゃんと聴けないよ」

柚はゆっくりと壁の方を向いて、奈緒子が目に入らない状態でピッコロを構えた。

「後ろ向いたまま吹くの?」

「人前で吹くのが久々で緊張しちゃうから・・・」

奈緒子が笑っていたが、構わず吹き始めた。星条旗よ永遠なれのピッコロソロ。

30秒程度のソロパートを吹き終わり、振り返ると奈緒子がぽかんとしている。及第点には及ばなかったようで、柚は肩を落とした。

廊下から慌ただしい足音がして、久住が教室に入ってきて、柚の手元を見た。

「今のピッコロ、柚ちゃん?」

「そうです」

柚よりも奈緒子が先に答えた。

「もう一回吹いてみて」

久住から言われたが、柚は首を横に強く振る。

「恥ずかしいなら、私が一緒に吹くよ。ラデツキー行進曲なら出来るでしょ?」

「でも・・・」

小さな声で発するのがやっとだった。柚の両手を奈緒子が掴む。

「上手だと思う。音もとっても柔らかくて、ピッコロでこういう音を出すって凄いと思う!」

「楽器がいいから・・・」

奈緒子は褒めてくれたが、久住に聴かせるのは躊躇う。自分の方が上手いと主張しているように思われたら、そんな不安が柚にはあった。しかし、奈緒子の方を見ると、すでに準備を始めている。

「ラデツキー、聞きたいな」

久住に催促され、重奏する。

最初は緊張していたが、奈緒子と目を合わせながら吹くのは楽しく、柚の緊張も解けてきた。コミュニケーションをとりながら、早めたり、ゆっくり吹いたり、途中何度か間違えたりもしたが、最後まで吹き切った。

「楽しいね」

二人の声がシンクロし、柚と奈緒子は顔を見合わせて笑った。

気が付くと、フルートパート全員が集合し、拍手している。

「アンダーザーシー、全員で吹こうか」

久住の提案でパート演習の教室へ移動し、いくつか曲を吹いた。みんなで丁寧に合わせて曲を作るのも楽しいが、間違いも気にせず、楽しく音を合わせるのはとても幸せな気分になる。一人では絶対に味わえない。


「練習しておいて」

久住から譜面を渡される。コンクールの自由曲のピッコロの譜面だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ