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第七小節

朝練が終わり、奈緒子たちと教室へ向かっていた時、麗子が口を開く。

「柚、久住先輩と付き合ってるの?」

「え?」

柚より先に奈緒子が反応した。

「1年生たちがさっき盛り上がってた。」

すっかり忘れていた先日の帰り道での出来事を話す。

「柚はそれでいいの?」

奈緒子が心配そうに聞いてくる。訂正しても聞いてくれない1年生にどう対処したらいいかさっぱりわからない柚はお手上げ状態だ。

「私が何か言っても逆効果な気がする・・・」

気にしていない訳ではなかったが、華子のことを話せないし、特に支障があるわけでもないから、放っておくしか方法が思いつかない。

「噂話なんか、すぐに飽きるかなって・・・」

「そうだね!それよりコンクールのパート決まった?」

奈緒子の言葉に麗子が賛同して、話題を変えた。各パートで1st,2nd・・・とパート譜割があり、バランス見て決める。フルートパートは1stに久住と華子、2ndは奈緒子と柚に決まった。久住はピッコロも兼ねる為、1stが一人で吹くところもあり、このような構成となった。トランペットでは佐田も麗子も1stに決まったらしい。割と和気あいあいとして部ではあるが、パート譜割は実力重視で、2年生でもうまい人はソロを任されたりしている。課題曲のクラリネットのソロパートは2年生の永井が担当するらしい。

「いつかピッコロしたいなぁ・・・」

柚が呟いた後、ハッとして奈緒子を見る。

「柚、ピッコロしたいの?」

奈緒子からの質問に戸惑いながら、質問で返した。

「奈緒ちゃんはピッコロやらないの?」

「ピッコロにはあまり興味がないかなぁ・・・柚はピッコロしたいの?」

中学生の時はフルートのうまい3年生がピッコロを担当していた。今も一番上手な久住がピッコロを兼務している。柚よりも奈緒子の方が実力があるので、柚がやりたいと主張することに気が引けたのだ。

「中3の時、ピッコロしたことあって、すごく好きで・・・実は楽器も持っているの」

「聴きたい!今度持ってきて聴かせてよ!」

奈緒子が笑顔で応えてくれたので、柚はほっと胸を撫で下した。


次の日、柚はピッコロを持ち、ウキウキした気分で駅に向かうと駅の改札口に立っている久住が手を振ってきた。柚が挨拶だけして通り過ぎようとすると久住が並んで歩き出した。一瞬、柚は足を止めたが、久住の後ろに付いていった。

「いやぁ驚いたな」

電車に乗ると久住がいつもの笑顔で話し出す。柚は意味がわからず、戸惑う。

「俺たち、付き合っているらしい」

柚は目を強くつぶってから、ゆっくりと久住の顔を見る。

「すみません・・・否定したのですが、うまく収められなくて・・・ただの噂話なので、すぐに落ち着くと思っていたのですが・・・彼女さんにも申し訳ないです・・・」

久住は目を大きく見開いたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。

「彼女は柚ちゃんのことを心配していたよ」

「ご迷惑とご心配をおかけして、申し訳ありません」

下げた頭にぽんと手が触れる。

「俺たちのことに柚ちゃんを巻き込んでしまって、謝るのは俺の方だよ。ごめんね。できるだけ丁寧に否定していくつもりだけど、あんまり積極的に否定すると返って大きくなっちゃうから、なかなか難しくてね。こんなこと柚ちゃんに言うのもおかしいけど、女の子が多い集団はなかなか手強くて・・・男女のゴタゴタで部内が落ち着かない状況は避けたいと思っている。これでも結構気を付けているつもりなんだけれど・・・まだまだ修行が足りないみたいだ」

久住はそら笑いする。何も言えず、久住の顔を見ている柚の頭にぽんと再び触れる。

「柚ちゃんの彼氏のところへ詫びに行かないとな!」

「いませんから・・・」

なんとか小声で否定したが、柚の顔は赤くなっていた。

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