後編
この作品はフィクションです。
次の人生も童貞のまま終わったので怒られた。
案の定というやつである。
『そこまでわかっていながら、どうしてこの人は! この人は!』
ギブ、ギブギブ。
こちらとら死にたてで魂も死後硬直気味なんですからプロレス技は勘弁してください。
『せっかくの異世界なのに地味に暮らしたんですね』
異世界つーても、あれですよ。
元の世界の口減らしという側面があったじゃないですか。額面上は人口15億人前後ですよーって主張してた国が二つほど。
額面上は、ですけど。
『実数を告知したら世界大戦不可避でしたよ? あとは穀物メジャーが悲鳴を上げて逃げたと思います』
そっすね。
有料動画配信してるセクシー女優だってもう少し遠慮しながら鯖読みますからね。年齢に関する数字でも。
彼ら、セクシー女優じゃないですからね。
人類史において偉大な発明をしまくった国々の末裔の筈なんですが、同時に血生臭い歴史を勝ち抜いてきた戦闘民族でもある訳ですしね。
転生という概念をぶっこんだら色々とマズい事態になるのは分かるんですけど、事前説明もなしに合計40億近い人間を異世界に放り込むとかやりすぎだったと思いますよ?
『書類上は彼の国々からは人口は全く減っていないことになっています』
ですよねー。
色々と見てましたけど、逞しい民族ってのは本当に強いです。
文明の勃興と言いますか、基礎知識がある分だけゼロからのスタートよりも圧倒的に早い。それに人口が沢山いるので失敗を恐れないというか、人身御供を躊躇しないので未知との遭遇に対する即応力が桁違いに高いと言いますか。
『……まさかゴブリンが絶滅危惧種になるとは思いませんでした』
ゲームっぽい世界観だからって神様が用意した魔物ですからねー。
頑張って魔石という資源を埋め込んでいるのが気付かれた途端に大量殺戮ですよ。化石燃料の代替品だけでなく、適度に増えるから食料としても利用できる。数千年レベルの生薬医学に料理の歴史が備わってる連中にとっては、緑の肌の小鬼なんてのは二足歩行の仔羊同然でしたわ。
『ご存知でした? 最後の方は、貴方の暮らす島にしかゴブリン種は生息していなかったんですよ』
逃げ込んできた連中を受け入れはしましたが、そこまででしたかー。
『コボルト達は途中で愛玩動物として生存を試みようとしたのですが、食文化的にゴブリンよりも食材としてとっつきやすい分だけ移民達も遠慮がなく』
あの、自分がいた島にもそれほど多くはいないけど一応コボルトいましたが。
『貴方の島にいたコボルトが最後の一族です。オークも、オーガも、トロウルも、ピクシーも、スライムもです』
女神様めっちゃ凹んでますね。
『担当神が最後の方は貴方の島に引きこもり、貴方を何とか不老不死にしようと申請書をこちらに送りまくった理由がよく分かりました』
一応、遺言代わりに最期の助言は遺しておいたんですよ。
第一世代は移民だけど、現地で生まれた第二世代以降は体内に魔石が生まれるようにしても良いんじゃないかと。
そうそう。
五世代目くらいから最大サイズで、オーガよりも大きな魔石が採れるように。
さあ、現在のかの世界を御覧ください。
『……うわぁ』
あれ、ドン引きされている?
次の人生でも童貞のまま終わるようなら邪神の一柱として女神様の使いっぱしりにさせられる契約を結ばされた。
しかし意中の相手に監視された状態で他の女性相手に童貞捨てられるほど度胸はないので、次の人生は邪神見習いとして下積みを頑張ろうと考えていたら着任先の神様にベテラン扱いされてしまった。
解せぬ。