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2-14 残党狩り

「なあなあ、次はー」

「ええい、今日はもう疲れたから帰るわ。何か判断ミスもあったし。お肉の換金よ」


「へえ、そっちも見たいな」

 俺達は宿屋に戻ると、眼帯の主人が出迎えてくれた。


 このダンジョンはワンフロアが直径一キロメートル前後なので帰るのは楽だ。洞窟ダンジョンだと、そのあたりが洒落にならないところもあるらしい。


「おや、ミルさん。お早いお帰りで」

「ただいま。もう今日は散々だったわ」


「おやおや、まあそういう日もありますて」

 そして奥へ行ってしまおうとする。どうやら、戦果が坊主だと思われたらしい。


「あ、待って待って。買い取りをしてほしいの」

「おや、獲物は獲れましたので?」


「あー、獲れたというか、なんというか。スサノオ、見せてやって」

「こんなところで?」

 こんな玄関口で、あの量を出したら凄い事になってしまう。


「あう、えーと。すみません、解体場の方でいいですか?」

「ええ、よろしいですが」


 おっさんは不思議そうな顔で訊き返してくる。まあ、わかんないだろうな。そしてそこで出してやった魔物の山。


 解体場と呼ばれた、やや広めの石造りの床の上にスペースを埋め尽くしていく、ウサギと鳥(爬虫類系)。


「こ、これは。まさか、やっちまったのかい? お嬢ちゃん達」

「あ、うん。そこの馬鹿狼が」


「残党は?」

「まだいると思う」

 あれ、なんか妙な雰囲気。俺が首を傾げているとシンディが説明してくれた。


「一旦出現した魔物は消えないんだよ。ああやって現れた大量の魔物はトルネードと言って、根絶やしにする決まりなのさ。そうしないと、駆け出しなんかがやられちまう。ウサギは特にここでは強者だからな」


「へー、じゃあ俺はもう一回行ってくるよ」

「大丈夫かあ。あんたが行くと、また余計に魔物が湧いてくるんじゃないの~」

 ミルがこっちをジト目で見ている。


「相手を挑発しなきゃあいいんだろう?」

「まあ、そうなんだけどさ」


 まあ、鳥みたいに勝手に湧いてくる可能性もあるんだけど。最初に激しく刺激しちまったみたいでなあ。


「ところで、そっちの獲物達は出しっぱなしでいいのかい」

「ああ、わしは収納持ちだから、この体でも仕事を任されておる」


「そうかい。じゃあ追加分の狩り取りに行くかな。しっかりと勘定しておいてくれよ」

「あれを雑草扱いなのかよ……」


 呆れたようなベルミの声に見送られて、いそいそと出かける俺。一緒に行きたそうにしていたシンディを年下のアマンダが窘めていた。


 俺は草薙を装着し、今度は無言で足元の音を立てないようにロイに視させた場所を襲撃した。なんとウサギの奴ら集まって休憩していやがった。


 ああやって座り込んでいると、あいつらも可愛らしいよな。だが遠慮なく狩る。


 突然の襲撃に奴らはパニックになった。思い思いの方向に跳ねようとして互いにぶつかり互いに失神する奴。


 そして何を思ったか、仲間に向かって放電している奴。大概は無駄に終わるのだが、強烈なのを食らって失神している奴もいる。


 そいつらは後回しにして、跳ねている連中が逃げ出さないうちに手早く倒す。電光石火の早業でとにかく狩りまくって、一割ほどの数が依然として失神したままなので遠慮なく撲殺していった。


『どうだ、ロイ』

 おれは退避させておいたロイを呼んで視させた。


『ええ、もうあの大量出現する前の状態に戻っています。もしかすると、ああやって纏めて出現した連中は、あいつらだけで固まっているのかもしれませんね。あとは鳥連中ですか。探しますか』


『頼む』

 すぐにロイが見つけてくれたので、あっさりと急襲した。


 そして俺が走り回らなくていい分、早々と決着した。数が多いだけの相手で思いっきり油断しているからな。


 こんなに楽な仕事はない。あの第一王妃の手の者と比べれば、なんという事もない相手だ。悪辣過ぎて人間の相手は疲れる。


 あの王妃ってば、もう牙を抜かれて大人しくなったかねえ。バックについてた母国も執念深そうだしな。


 こいつらは針の雨をリサイクルしながら降らせるだけなので、相手の場所さえわかっていれば物陰に隠れたままやれる、楽しいというか楽なお仕事だった。


『終わったかな』

『大丈夫です。後は正常な魔物分布ですね』

『そうか、じゃあ帰るか』


 お昼は、さっそく唐揚げを試してみるか。果たして、あの唐揚げ通の、うちの連中に通用するだけの肉なのだろうか。


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