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ユキナDiary-  作者: PM8:00
72/150

エピローグ ユキナDiary-









「あん時とは……逆だな……」

「お願い、……喋らないで護熾」

 

 ぼんやりと開いているその瞳には涙ぐむユキナの顔が映る。護熾はゆっくりと腕を持ち上げ、優しく、ユキナの頬を撫でる。柔らかく、肌触りの良さが手に伝わる。


「でも、ゴホッ……助から…ねえ……みてえだ」

 

 ユキナは自分の頬を撫でている護熾の手を取り、握るとそれに応えて少しだけ握りかえしてくれた。ただ暖かい小さな手が少しだけもどかしい。


「…………死なないで」

「なあ、………頼みがある」


 胸の中で抱かれている護熾は口だけを動かして喋り続ける。

 

「あいつら……無事か…どうか……確認………して来てくれ」


 光が失われつつある瞳を向け、そのまま続ける。例え自分が死のうと今伝えることができるのは目の前にいるユキナだけ

 

「だから……生きろ……生きて帰るんだ……」

「お願い!!もうそれ以上は喋らないで!!」

 

 ユキナは喋らせまいと残り僅かの命を長らえさせるために強く抱きしめて止めさせようとする。体温が徐々に失われていくのが分かった。護熾は構わず細い声で言う。


「もう……いい……ダメだ……何も…見えない……」

「…………護熾」

 

 ユキナの目からポロッと涙がこぼれ落ちる。落ちた涙は握り合っている手に落ち、小さくはじけた。護熾は柔らかく微笑み、空いている手をユキナのつややかな黒髪に伸ばし、愛しそうに撫で、


「お前は……髪が………きれい…だから……大事に……しろ…よ。へへっ」


 よく手入れされているもう目では確認できない美しい髪を手探りで触った後、くすぐったそうに笑った。


「そんなことはどうでもいい!だから、護熾生きて!」

「………すまね……たの…ん…だぞ」


 手の感覚がなくなっていき、そして力が抜けて、地面に落ちるのが分かった。もう、何も聞こえなくなる。あれほど五月蠅かった爆音も、ユキナの泣く声ももう聞こえない。


「…お前…に…会え…て……本当に……よかった……じゃ…な……」


……ああ、もう少し一緒に……あんパンも作ってやりたかったな…


 完全な闇が、護熾を覆い尽くす。生命が消えゆく瞬間を体で感じながら護熾はそっと目を閉じ、まるで波のように体全体を包む“死”を受け入れ、そして自分の思い残しをユキナに伝えて命を鎖していった。




 






 死んだ……俺は死んだのか?何も感じねえ……ただ、冷たい感覚があるだけ。

 …………あいつら……無事か?……ユキナは?みんなは生きてるのか?……分からねえ…


 まあ、でも……俺の命でユキナは死なずに済んだ……これで……






「「ソレデイイト思ッテイルノカ?オ前ハ?」」


 !!……誰だ……声が……


「「来イ!!マダ死ンデハイケナイ!」」


 うおっ!………何だ!?……光が……眩しい

 

 謎の声が護熾を呼ぶと突如、暗い空間に白い光が現れて護熾を包み込むようにする。







 そしてふと目を覚ますと、暗い空間、地面に銀河を流し込んだような光景、そして護熾を取り囲むようにしている水晶の群れ。一つ一つが様々な色をしており、とてもこの世の物とは思えない光景を作り出している。

 しかしここは内なる理とは少し違う。


「よお、護熾。気分はどうだ?」


 ふと後ろから声がしたのでその方向に体を向けると黒髪でサングラス、若い男風の護熾の精神世界の住人、第二が呼びかけていたので護熾は早速、ここはどこだ聞くと


「ここはお前の世界でもどこでもねえよ。強いて言えば“生”と“死”の狭間の空間ってとこか?」

「そう、ここは無の世界よ」


 また別の声。すると第二の後ろの方からまるで陽炎のように姿を現したのは上半身だけを鎧に纏い、背中には長剣を差し、髪はオレンジ色に染めた女性。かつてユキナの師として第二解放の力を授けたあの第二。女性の第二はサングラスの第二の横に並ぶと顔を微笑ませ、


「あなたが護熾ですね。大丈夫ですよ。ユキナは第二解放をしてみんなを助けました。」

「ユキナが第二解放を!?…………そうか……じゃあみんなは無事か」


 伝説の第二解放、とうとうやったのかあいつ。

 護熾はとりあえず全員が無事だということを伝えられ、ほっと息をつく。これであいつらの未来は護られた。これでいい、これでいいんだ。


「お前、自分が今どんな状況にいるのか分かってんのか?」


 全員が安心している護熾に第二が珍しくやや怒り気味の声で言う。護熾は今回はいつもと様子が違うなと思いながら口を開く。


「ああ、俺は死んだんだろ?」

「恐くはねえのか?」

「……ああ、不思議なくらい全然な」

「……そうか」


 恐怖なら、戦いの前に捨てた。中途半端な覚悟はドブに捨ててきた。それくらいの覚悟でなければ結果は全員を救うことはできなかっただろう。しかし少しの後悔を残しているのもまた事実。


「家族はどうするんだ?」

「…………」


 そう、一樹と絵里の事が気がかりだった。あのまま絵里に家事を頼んだまま、自分が死んだと伝わればも形容しがたい悲しみが彼女らを襲うだろう。もう後戻りはできない。自分はマールシャの攻撃で死んでしまったのだから。

 しかしここで、第二は真顔でこう言ってきた。


「お前、生き返りたいか?」

「!!…………そんなことできるのか!?」

「ああ、お前が臨めばな」


 第二からの突然の提案、これに乗らない手はない。自然の摂理を揺るがす破格で冗談みたいに思えるが今はそんなことどうでもいい。息を飲み込み、その言葉を信じたい護熾はどうするんだと聞こうとすると、第二は掌を護熾に向け、


「まあ待て、お前に伝えることがあるから。お〜いみんな!出てこい」


 第二が後ろに振り返って大きな声でこの空間に響かせるように叫び、一瞬の沈黙の後、周りからこちらに近づいてくる足音が聞こえ始めた。だがその数は数人ではなく何十人もの足音。

 しかも全方位からこちらに向かって近づいてくるので護熾は忙しく首を回して音を出している正体を目に映そうとする。

 そして、現れた。

 全員性別も歳も表情もバラバラで時には自分と同じくらいの人が護熾と第二達を取り囲むように水晶の包囲網の外で足を止める。


「なっ……何だこの人達は……」

「ん、こいつらは……ちょっと失礼か。この人達はかつての“英雄”とも呼ぶな」

「え、英雄って……」

「そう…………そして俺もかつては“焔眼”と呼ばれていてな」


 第二は周りの人達をグルッと見渡してから護熾の方に顔を向け、サングラスに手を掛けて外す。そして髪に手を置いてワサワサと激しく動かしてから改めて護熾を見ると





ユキナが世話になっているな、護熾」


 




 その顔、ユキナの家で見た写真に写った若い男。護熾は息が止まり、大いに驚く。かつて13年前の大戦から人々を救い最初の第二解放を成し遂げた武人―――アスタ

 

「あ、あんたその顔………ユキナの…親父!?」

「おっ!良い反応だな!」


 いつもふざけ、時に護熾に訓練をやらせ、時に大切な心構えを教えてくれた人物が、英雄でしかもユキナの父親。護熾は口をポカンと開けて自分の師の正体に暫しの放心し、沈黙の後、


「あんた娘を俺に襲えって言ったよな!?」

「ああ、言った言った!俺的にはお前がユキナとくっついてくれれば安心だから――」

「ここで何考えてんだよエロ親父」


 例え相手があのアスタでも調子を崩さないのが護熾である。第二、及びアスタは『いやいや、ホントユリアに似ていてびっくりだよ』っと親バカ振りを披露するので護熾は呆れた顔で『お前!自分の娘のことかわい娘ちゃんって前言ってたよな!?』とアスタの無責任な発言を追求していく。

 と、ここで隣にいた女騎士の第二がアスタに急かす。


「こら、アスタ。さっさと伝えるのよ」

「おお、そうだな。護熾、ここにいる人達はかつての“眼の使い手”だ」

「―――この人達全員がか!?」

「ああ、護熾。今から話すことに聞く覚悟はあるか?」

「…………おう、死んでっから今何を言われようと別にビビリはしねえけど」

「……その意気だ。じゃあよく聞けよ―――」




 遙か昔だ。

 かつてまだ空間も時間もない時代に突如、全てを掌握し、見守る超物質【理】が生まれ、世界は産声を上げて時を刻み始めた。そしてやがて、人間という生き物が生まれ、だんだんと知性を身につけ始めたので理は利用されるのを避けるために自らの場所と安息を求め、世界を“二つ”作り、その狭間に身を置くことで、悪用されるのを防いだ。

 だが、四百年前、どうやってそこに入り込んだかは不明だが“奴”はやってきた。奴は理を手中に収め、そして人間達を材料にして異形の化け物へとどんどん変えていった。

 そして奴の跋扈に危機を感じた理は、奴と同じ“人間”に救済を求め、力を与えることにした。それが【開眼】の力。

 そして理は、その力をもうじき使い果たそうとしている。


「それって……」

「そう、つまり理が崩壊すれば橋はなくなり、互いに世界同士引き合って――」






“世界は崩壊する”







「なっ、そんな……どうすれば」

「だからお前を生き返させるんだろ?だってお前には―――」


 アスタから伝えられる衝撃の事実に護熾はショックを隠せずに茫然とするが、さらに告げられたことに全身の血の気が引いていくような感覚に襲われる。心臓が高鳴るのが聞こえ、同時にそんなことがあり得るのかと疑うが、信じる要素もなければ否定する要素もないのでどうとも言えない。そして“それ”があるから生き返ることも可能だと言う。


「そうか、だから俺は………開眼ができるのか」

「そうだ、だから“気”も大きい」


 自分に何があるのか、そこを理解した護熾はそれを認める。


「どうだ?臆したか?」


 アスタがからかうような口調で護熾に話しかける。護熾は押し黙り、そして顔をアスタに向けるとそれが何だ?という顔をして不敵な笑みを浮かべると


「いや、大きすぎて逆に笑えるな。でもそれが俺の“役目”なんだろ?」

「うん、そうだ。」

「だったら四の五の言ってる場合じゃねえな?」

「ああ」

「あんたら、どこでそんなことを?」

「ここは狭間の世界、情報なら簡単に手にはいるが伝える相手がいないからな。でもお前に伝えることができた。向こうでも頼むぜ」


 そう言ったアスタはトンと護熾の前まで軽く跳躍し、地面に足がつくなり突然、手をバッと護熾に翳す。


「今からここにいる連中と力を合わせてお前に“一年”の時を与える。覚悟はいいか?」

「……どうせ俺ができねえっっつったら…誰もやる奴いねえんだろ?」


 大きく肩で息をし、ムスッとした顔で睨みに近い眼差しで


「しょうがねえっ!やってやろうじゃねえか!!」


「……さすがだな……むこうに帰ったらユリアとユキナによろしくな」


 そして、アスタの目が灼熱の色に変わり、同時に髪の色も燃えるような炎に変わる。そして次に、稲妻のような火花が出たかと思うとアスタの体に赤い緋色のコートが羽織られる。伝説を成し遂げた男が見せる第二解放。護熾はその姿に感心に近い気持ちを抱く。

 そしてふと、周りの人達も開眼状態になっているのに気がつく。

 光溢れるその姿は、まるで色のついた銀河。そして静かにそのオーラがアスタを通じて自分に流れてくるのが分かる。不思議と、心が落ち着く温かい気持ち。


「いいか?これからお前に“二つ”の力を課す。そしてお前の力は他に影響を与えるから気をつけろよ」

「ああ、分かった。準備完了だ」


 いよいよ光が一段と強さを増し、護熾が生の世界へ送られるというところで


「あ、それと一回生き返らすのはいいけど自我が茫然としてるから困難極めるけど頑張ってね♪」

「!!!そっちを早く言ええええええ!!!!!!」


 突然、爆発的に光が広がり、ばしゅんと何かが弾け飛んだ音がしたかと思えばもうそこに護熾の姿はなかった。アスタは溜息をつきながら成功だと周りに伝え、そして向けていた手を下ろすとポツリと


「頑張ってくれよ、俺たちの“希望ひかり”よ」


 一人の少年に世界崩壊の危機の救済を託し、そして静かに消えていった。







 



 あれ?何もねえ………暗い………俺って?誰だ?……


 死んでいるのか?………いや、生きてる……それだけは分かるけど俺は……………



 …………俺は……ご……おき?……かい……どう……ごおき……俺は海洞護熾だ!!!!



 




 自分が何者なのか思いだせた。その喜びで顔を思わず上げると天井があり、そこに頭がぶつかると突然、辺りが光に包まれ、自分がどこにいるのかが明らかになる。木で作った人が入れるほどの棺桶。護熾はそれに驚いていると


「え、あれ…………きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


 突然、女の悲鳴が横から来たと思えばそれは丁度お花を添えに来ていたミルナで、そしてその声を聞きつけてドアを蹴破って入ってきた懐かしのメンバー。






「じゃ、じゃあお前はホントに護熾なのか」

「ああ、紛れもなく護熾だ」

「ホントか?もずく」

「誰がもずくじゃこらああああ!!!」

「……本物だ」


 何故自分が生き返ったかをイアルユキナ抜きで棺桶をイス代わりにして話し終えた護熾にラルモが涙を潤ませた目で尋ね、ガシュナが悪口を言って本物かどうか確認し、そして全員が黙り込んだ。そしてシバは


「でもお前は一年という寿命しかないんだろ?でもそれを除いたら護熾何だろ?」

「そうです。シバさん」

「………あはっ………よく帰って来てくれた!!!護熾!!!!!!!」


 込み上げる気持ち、表すことのできない喜び。シバはその気持ちに身を任せ、護熾に飛び掛かるようにするとギシッと包み込むように抱きしめると


「よく!よく帰ってきたな!!!護熾〜〜〜〜〜!!!!!」

「うおおおっ!何だ急に!!」

「ああ〜〜!!シバ先生ずるいだもんよ!!!俺も俺も!!」

「護熾さん!!!!!」

「うおおおおおお護熾〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」

「護熾さん!!!!」

「護熾さん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」


 理由はともあれここに護熾は戻ってきた。その喜びに今は体を浸したい。なのでガシュナとアルティ以外のおなじみのメンバーは雪崩のように護熾に抱きつき掛かったので護熾はとうとうその勢いに押されて後ろにドスンと倒れてしまった。そしてあまりの嬉しさに泣く者、頬擦りをかます者、などなどそれぞれやりたいことをやっていると


「あ、そういえば傷は?」


 護熾の上で人団子になっている状態からミルナが怪我の様子を尋ねる。あのマールシャ戦で負わされた大きな傷は、今は大きな傷跡になっていて完全に消すことはできなかったが護熾は息ができず、青ざめた顔になりながらも


「と、とりあえずは平気だ……でもみんな……そこ退いてくれ!!!」







「護熾……それで生き返ったの?」

「ああ、だけどさっき言ったみたいに、俺はあと“一年”しか生きられねえ」

「延ばすことは?」

「無理だ、道理に反してるしそれにその時が来れば俺は“完全消滅”する」


 ユキナとイアルにシバ達に話したことと同じ事を伝えた護熾はあと一年しか生きられず、しかも時が来れば自然と姿を消すようになっている。しかし護熾はそんなことに決して身を退くことはない。それが自分の運命、そう決めて戻ってきたのだからどこにも諦めの色はない。


「でも、あぅ、ぐすん、護熾なのよね?」

「ああ、そうだ。イアル」

「ぐすん、ごめん涙で前が………」


 恥ずかしそうに言ったイアルは泣き顔を見られるのが恥ずかしいらしく『ちょっと紙もらってくるね』と言ってそそくさとすぐ近くにある建物に貰いに行ってしまった。

 あとに残されたのは二人。

 イアルがいなくなった後、ユキナはフラフラと一歩、一歩、護熾に手を伸ばしながら目に涙を浮かべる。本当に会いたかった人物が、目の前いるからだ。


「ごおき……ホントに護熾なのよね?」

「ユキナ、遺言は取り消しだ。心配掛けたな」

「………………ごおきいいいいい!!!!!!!!!」


 自分を救ってくれた少年、自分に温もりを思い出させてくれた少年。いつも怒っているような顔をし、共に戦い、共に笑った大切な人が、自分の前にいる。

 ユキナは走り寄り、そして護熾を思いっきり抱きしめる。護熾もそれに応じて両手を広げてそして飛び込んできたその小さな体を包み込むようにユキナを抱きしめる。


「うう……うう……お帰り……ホントにお帰り護熾」

「ただいま、ユキナ。第二解放おめでと」


 その大きな胸に顔を埋めると耳に心臓の鼓動が届く。この少年は確かに生きてる。そして知る。自分には護熾は必要なんだと。護熾がいなかったらダメなんだと知り、確信する。

 第二が言った紅碧鎖情之太刀を解き放つ条件は護熾に対する想いを解き放つこと、つまりその想いとは





――私は、好きなんだ、護熾の事がとても好きなんだ――


 



 いつの間にか生まれていたもどかしい気持ち、それは護熾を家族だと見ていた気持ちがやがて異性を見る気持ちになり、そして今、ユキナ自身、確信した。初めて知る恋の気持ち。とてもくすぐったくて何よりも甘い気持ち。

 護熾はユキナの両肩に手を置いて、体を離すようにすると目を見つめ、


「ユキナ、帰るぞ。家によ!」

「うん、うん。一樹君達、待ってるもんね。………ちょっと待っててくれない?」

「?いいけど早くしろよ」


 ユキナはここで待つように護熾に伝えるとまずはまだ病院内にいるユリアの元に行き、そして一旦自宅に連れて行って戻る。


 




 自宅についたユキナは家の中でユリアにある物を頂戴と言い、そして勇気を出して自分は護熾のことが好きなんだと告白するとユリアは口に手を当てて大層驚き、そして顔をほころばせると


「あら、あらあら。とうとうあなたも恋をしたのね……その初恋の相手が護熾さんなんて……やっぱりそうだと思ってたわ」

「うん、でもねお母さん。他にも二人、護熾のことが好きな女子がいるんだよ?しかも私よりスタイル良くて……」


 ぷうと頬を膨らませてやや拗ねる態度をとるユキナ。ユリアは『まあ護熾さんってモテるのね』とくすくす笑ったあと、棚から何かを引っ張り出しながら


「でもね、護熾さんは心を見る人だと私は思うわ。ほら、これでしょ?」


 そうユリアから渡されたのはまだ使われていない“日記帳”。よく小学生が使うような物で絵も描けるスペースがある。


「そう!これこれ!ありがとお母さん!」

「どういたしまして。でもユキナ、どうして日記帳なんかを?」


 ユリアが怪訝そうな顔で尋ねるとユキナは胸に日記帳を抱きしめながらしゅんと悲しそうな顔をして下に少し俯き


「お母さん、護熾があと一年しか生きられないのは知ってるよね?だからその間の時間を、大切な時間をこれに書いて残しておきたいの。それが、私のできる唯一のことだから」

「いいえ、確かにそれはいいことだけどそばに居てあげるのもあなたにできる立派なことですよ。ほら、護熾さんが待っていますよ」

「うん、行ってくるねお母さん!!」



 中央裏の霊園にて、祈念碑の前に護熾は見上げて立っていた。

「アスタさん、俺、必ず果たしますからね」

 そう短く伝えると、護熾はその場から立ち去っていった。





「じゃあ、元気でな二人とも」

「ああ、みんな、みんなを救ってくれてありがとよ」


 中央の庭にて、向こうとこちらの通路になる繋世門の前で護熾は一同を一人一人見渡してから別れを告げる。あの戦いは終わった。そしてみんなが生きている。

 さらわれたみんなは無事だろうか?あとはそれを行って確かめるだけ。

 護熾はちらりと隣にいるユキナを見ると何やらノートみたいのを持っていることに気がつくが、あえてそれは聞かず、そして最後にイアルの方に顔を向けるとまだ涙が止まっていないらしく、しきりに指で目を擦りながら


「また、会いましょうね海洞」

「ああ、また会いに行ってやるよ。ユキナ、いこっか」

「うん!」


 





 そして二人は門へと体を潜らせていく。そして二人が潜り終えると、門は陽炎のように閉じ、そして門を発生させている装置がポトリと地面に落ち、役目を終えた。

 護熾とユキナがまた向こうに行ってしまった。イアルは護熾があと一年しかいられないことを改めて思い出すともう居ても立ってもいられず、彼女の心の中には一つしかやることが浮かばなかった。


「〜〜〜〜〜ユキナだけずるいわよ」

「ん?何か言ったかもんよイアル……ってどこ行くもんよ!!」







「護熾、みんなはきっと無事だよ」

「ああ、早く確認しねえとな」


 異空間を潜りながら前を走る護熾に声を掛けるユキナ。その背中を見ると、どこまでも力強く、そして自分が惚れた男だと思うと自然と頬が赤くなり、顔を下に俯く。

 



 これから一年、その命が尽きるまで自分の使命を成し遂げるためにこの世に帰ってきた少年、護熾。そして護熾を改めて好きだと確信し、そしてその背中を見ながら、その大切な時間をつづることに決めた少女ユキナ。

 新たな日々は、“Diary-”に書かれて紡ぎ出されていく。


――護熾、私は書くよ、あなたに対する想いと共に、だからそばにいさせてね。私はあなたのことが好きです――



〜〜Fin〜〜


 最後にFinとか書いてますが決して終わりではなく、これで“上”が終わったと捉えて下さい。なので決して終わりなのではなく次話からは新たに一週間後の世界を書きます(短っ!)

 さてと!とうとうユキナが想いに気付いたし、これでタイトルの由来が分かったと思います!この後の展開はよくは考えていませんが、できる限り更新は早くしますので残り半分、どうかお付き合い下さいね。

 では皆さん!新たな『ユキナDiary-』をお楽しみに!では!!

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