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ユキナDiary-  作者: PM8:00
51/150

50日目 隕石訓練

 





「あいつの動きにまったく反応できなかった。それどころか何も出来ずに勝負がおわっちまった……なあ! お前なら知ってるだろ!? 強くなる方法を!!」


 両手に握り拳を作り、奥歯を噛みしめたような顔で【第二】に自分が何故ここに来たかの経緯を話す。その顔は強くなりたいという思いのどこかに、慌てているようにも見えた。いや、慌てていたのだ。自分の実力に気がつかされたこともあり、ユキナに言われたあの一言


『まだまだよ』


 この一言が何よりもショックだった。

 第二は護熾の必死の顔を見て、サングラス越しなのでわかりにくいが目を細めて話を聞いていた。そして何もないはずなのにまるで椅子に腰掛けるかのようにその場で中腰で座り、手を膝に置いて少し前屈みになるとうつむいていた顔を護熾に向け、


「知ってるよ、お前が言ってるのはいつもお前のそばにいるあのかわいこちゃんだろ?」


 第二が言ったことに必死な顔を少し和らげて、ハッとした護熾は 何で知ってるんだ?、と聞こうとして口を開くと、先に


「でもよ〜〜〜〜〜〜〜せっかくあの時の夜にさ〜〜〜〜全裸になってベットの上でキス求めてきたのにお前は何で拒否るんだよ〜〜〜〜〜〜?」


 急に知られたくない事情を口から出した第二に護熾は顔を猛然と赤くしながら人差し指を向ける。


「ちょっと待てえぇぇぇ!! 何でお前がそんなこと知ってるんだ!!!!?」


 牙を剥いたライオンみたいな顔で第二にずかずかと近づく、そしてすぐそばまで近づいても話は止まらない。


「あのまま行けばお前、美少女とアラビアンナイトを過ごすことが出来たのに。よ!! この初心満載の男!!」

「シャッラ〜〜〜〜〜プ!!!! だから何でそのことを知っているんだとこっちが聞いてるんじゃねえか!!」


 胸の当たりで両手の指を蜘蛛みたいに動かし、第二がその姿を見て、親指を立てながら『俺だったら即、Let'GO!なのに』と言ったのを床に思いっきり拳を殴りつけ、大きな音を立てて黙らせる。耳に小指を入れ、耳かきをしながらハアハアと息切れをしている護熾。


「そりゃ俺はお前の中にいるんだからお前が見たもんは全部知ってるよ。…………さてと、確かにあの子は相当な実力者だ…………お前があの子と肩を並べるには相当な訓練がいるな」


 少し真剣な口調で護熾の実力とユキナの実力を比べ、その差をしっかりと見極めているようで、そう話した。しかしこの話からすると、護熾がもっと強くなることを逆に証明していることにもなった。その話を聞いた護熾は嬉しそうな顔で空中に腰掛けている第二に身を乗り出したような姿勢で


「ホントか!? お前の言う“訓練”をやれば俺は強くなれんのか!?」



 第二は『ああ』と一言だけ言うと、その場からゆっくりと立ち上がり


「でもお前はやはり経験が少なすぎる。開眼を会得したときは見事に怪物を撃破したが、あのあとの【ガナ】の時にあの子に助けられなきゃ確実に死んでいたぞ。」


 第二にはっきりとした事実を突きつけられた護熾は少し悲しそうな顔をして下にうつむきへこむ。 今振りかえれば、知識持までは何とか自分一人で倒せるものの、それ以上になると手も足も出ない自分の弱さが鮮明になっていき、自然とまた奥歯を噛みしめた顔になる。

 

「お前の攻撃は重くてすっげー強力だけど直線すぎるんだよ。お前は能力をしっかり使いこなせているが、何度もチャンスを取り逃がしている。あの時の夜みたいによお!!」

「…………いや、その例えやめろ!!」





 

 護熾の自部屋にて、もうすぐ12時を差し掛かる前にベットで気持ちよさそうな寝息を立てていたユキナは目を開き、擦りながらトイレに行くためにベットから降り、部屋のドアに向かおうとしていた時だった。


「あれ? ……護熾まだ帰ってないんだ……」


 まだ護熾が戻っていないことに気がついたユキナは眠そうだった目をカッと開き、すぐさま机に置いてあった自分の制服を身につけ、窓まで行ってガラガラと開けて縁に手を掛けると


「どこいったのよもう!」


 跳び箱を跳び越えるかのように片手で自分の体を持ち上げて窓を乗り越え、空中に足をつけるとまだ戻らない護熾の行方を探るかのように目を閉じ、暫しの間目をつむって空中で動かなかったがやがて頭の中に緑色の炎が浮かび上がる。


「いた! 山のほうにいるわね」


 パッと目を開け、すぐに山の方に顔を向けると宙を蹴り、真っ直ぐ頂上へと走っていった。深夜の夜はどこか不気味で、護熾に何かあったんじゃないかという心配をさらに大きくしていた。ほぼ全力疾走に近い走りで下に広がっている住宅を過ぎ、たーん、と音を立ててその場で跳躍して高度を上げながら頂上へと近づいていった。









「いいか? 最初にお前がどのくらい自分の能力を使えるか試してやる。自分の限界値をまず知るんだ。」


 そう伝えるかのように言うと指パッチンを響かせる。

 すると耳に火が燃えているようなパチパチとした音が聞こえたのでその方向へ顔を向けると遙か斜め上に無数の小さな光がポツポツと出てきたのが目に入った。

 

 しばらくそれが何なのかじっと見つめていたが段々ちいさな光が大きくなっていくのに気がつき、さらに目を凝らして見ると大きくなるにつれ、音もだんだん大きくなってきていることにも気がついた。

 そして護熾は光が大きくなってきているのではないと分かった。

 近づいているのだと、

 無数の光が大きくなり、音もだんだんはっきりしてくると一つが護熾に向かって凄いスピードで落ちてきた。

 その光は光なのではなく一抱えほどもある大きな岩が燃えているような物体だった。


 ―――隕石だぁーーーーーーーーーー!!!!!


 それが隕石だと分かると横に力一杯跳び、さっきまでいた場所に大地が響くような轟音を立てて隕石が床に大きなクレーターを作り、煙をばらまいて埋まっていた。

 もし直接当たっていたら護熾は木っ端微塵になっていただろう、隕石の速さはかなり速かったが“超感覚”のおかげで体が即座に動き、命を救った。


「おっ!? 何とか避けたな」

「あぶね〜〜!! なんちゅうもん降らせてんだ。てめぇ!!!」

「何ってこうする方がお前にとっての生命の危険を味わさせるのに一番いからだよ。ほたドンドンいくぞ」


 第二はそう言い、心臓がマシンガンみたいにバックバクの護熾は胸に手を当てて、ハアハア息をしながら埋まっている隕石を見下ろしていた。だがまた燃えている音がすると咄嗟に上を見た。しかも今度は一個ではなく今度は全てが襲いかかっており、追尾ミサイルみたいに護熾目掛けて雨のように降ってきた。例えていうならまさに火の雨。


「冗談じゃねえぞ!!」


 護熾が走り出すとすぐいた場所に隕石が突っ込んできた。

 続いてもう一個、もう一個とその場に一秒でもいれば即あの世行きの状況になり、体が強化されていて、持久力も馬鹿になっているがそれでもぎりぎりの状態であった。

 何十個も降ってきたが止む勢いはまったくない。このままおわっちまうのか!?そう頭に諦めの疑念が浮かんだとき、一つの言葉が耳に響き渡る。

 

『まだまだよ』


 命の危険。鼓動の高まり。

 全身の細胞が活性するように熱くなる。

 

 〜〜臆するな! 退けば死ぬ! 立ち向かえ!! 全てを守れ!!〜〜


 突然、降ってきた隕石がピシピシと音を立てて輪切りにされたかのように中心から勢いよく割れ、まな板の上で切られた果物みたいにパカッと開いて横に転がっていた。

 

 しかし隕石の数はまだあり、続けざまに同じ場所へと容赦なく降ってくる。

 だが隕石はある地点を境に中心から割れ、小さな石ころへと姿を変えながら護熾のいるところを通り過ぎて向こうへ転がっていった。

 ある時は横にはじき飛ばされ、ある時は床に着く前に木っ端微塵になったりと護熾が倒れているところを中心に戦場にでもなったかのような瓦礫の山が周りに築かれていった。


 そして最後の隕石が炎を揺らめく音を立てて落ちてきたときに隕石に向かって飛びかかる人影が瓦礫から勢いよく飛び出してきて、右の拳を隕石に突き出し、当たった部分から砕け、突き抜け、風船が割れたかのように周りに飛び散らせるとその人影は一つの瓦礫の山に降り立った。


「ぺっ、やってやったぞ」


 護熾は見事、生命の危機に発する力を利用して乗り越えてしまった。

 そして額を腕で拭うと瓦礫の山から飛び降り、瓦礫の上を歩きながらその眼は真っ直ぐ自分が生きていることを証明していた。


『俺はまだまだ、強くなれるんだ』



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