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ユキナDiary-  作者: PM8:00
48/150

47日目 久々の……

 



 始業式が終わり、各教室に戻ってきた生徒達は10分間の休憩の中、夏休みでの旅行先で買ったお土産やその場所で撮った写真、思い出話、面白い出来事、宿題ちゃんとやってきた?

 など、お互いにあげたり見せ合ったりして次のショートホームルームの時間まで楽しくやり合っていた。


「よ〜し、じゃあこの手土産を!」

「この饅頭を!!」


 教室の真ん中あたりの席に集まっていた男子達は口々にそう言い、片手にそれぞれの旅行先のお土産の一つを持つと、みんな一斉にある方向へと顔を向けた。


「木ノ宮さんに!!!」


 夏休み前に現れた天使ことユキナと仲良くなろうと、護熾の隣の席で売店で買ったあんパンを両肘をつき、両手で持って美味しそうにほおばっているユキナに固まって動こうとしたときに沢木がその中の男子一人の肩を叩いて勝ち誇ったような顔をして、男子共の足止めをする。


「ちっちっ、君たち甘いな〜、俺はあの木ノ宮さんと一緒に海に行ったんだぜ!!」


 自慢げに言った沢木にその話を聞いた男子達が取り囲むように瞬時に集まってきた。集まってきた男子は真剣な目で続きを聞こうとするが中には、


「そんなの嘘に決まってるだろ!?」


 と反論する者がいたので沢木は本当だと分からせるために詳しい話をし始めた。

 男子達は他の女子に漏れないように身を寄せ合って耳をすませる。


「夏休みの時、俺達はちゃんと打ち合わせをして行ったんだぜ〜?」

 

 男子の中からやっぱうそじゃねえか?と声が上がったがすぐに『シャッラップ!!』と叫んでそれを黙らせる。


「でよ、水着を着た斉藤さんや木ノ宮を見てきてもうウハウハ! やっぱ青春はこうでなくちゃな! なあ海洞!!」



 沢木が話しの最後で護熾の名を呼んで、ユキナの隣の席で頬杖をついて昼食のメニューを考えている護熾に男子の注目を集めた。

 護熾は一斉に黒いオーラを禍々しく纏っている男子がこちらを見たことに気がついたので少し慌てた様子で『何だ?何かまずいことしたのか俺?』と自分に近づいて来る男子一行を見ながらそう言ってみせる。

 そして隣にいるユキナからは見えないように取り囲むと男子達による護熾への【尋問】が始まった。

 まず、沢木が席に座っている護熾の肩に腕を乗せるようにすると耳打ちをする。


「おい、海洞。どんなコネを使って木ノ宮さんを海に連れて行くことが出来たんだよ?」


 もうヤクザみたいな乗りで護熾からユキナをどうやって誘い、連れてきたのかを聞き出そうとする沢木に同じ意志を持つ他の男子達も耳を立てる。


「あ? いや、普通にだけど? ユキナが海に行きたいって言ったから」

「相談受けたのかよ!? うらやましいなお前は〜〜〜〜〜ちくしょーーーー!!!!」


 沢木は悔しそうに腕を護熾の首に回すとコブラツイストみたいにして左右に護熾の首を揺らした。護熾が『やめろ』と言ってもまだ続けている。他の男子達もさらに顔を近づけ『なあどんな誘いのテクを使ったんだ?』とか『伝授して下さい!!』とか『どんな水着を着てたの!?』などと沢木に首を振り回されながらも聞いてきたので護熾の額に血管が浮き上がってきた。


「うっせーーーーーー!! 人がせっかく昼食のメニュー考えていたのに邪魔すんじゃねーーーーーーーー!!!」


 とうとう怒った護熾は席から立ち上がり、沢木を振り落として『今はそんな事考えるんじゃねえよ!!』と自分の周りに集まっている男子達にしかめっ面で指を指して叫んだ。


「そう、その通りよ海洞、今はそんな事を考えるんじゃないわ」


 声がしたので護熾を含む男子達は一斉に声のした方向へ目をやる。

 視線を向けると近藤が黒板の方に仁王立ちで立ってこちらを見ており、


「今月は何があると思ってるの!?“体育祭”よ!?」


 その言葉を聞いた男子達はお互いの顔を見合わせてそれぞれ『体育祭か……そんなのあったんだ?』『うわ〜〜〜まだ暑いのにそんな地獄のような行事があったとは』などなどあまり乗り気ではない言葉を次々と発した。

 その時、ちょうど休み時間が終了したことを告げるチャイムが鳴ったので護熾の席に集まっていた男子達は渋々自分の席に戻っていった。

 まだ担任が現れていない教室でユキナが席から身を乗り出すように護熾に聞いてきた。


「ねえねえ、近藤さんの言ってた体育祭ってどんなことやんの?」

「ん? ああ、お前知らねえのか。体育祭っていうのは学校中の生徒がチームを四等分にして互いに決められた競技で勝ち合って得点を競う行事のことだよ」


 護熾の説明を聞き終えたユキナは子供みたいに目を輝かせる。


「それでそれで!? そんな面白いことが今月中にあるの!?」

「ああそうだ、正直俺は乗り気じゃねえんだけどよ」

「よーし! 護熾! 修行を兼ねてがんばりましょ!!」


 手で握り拳を作り、護熾に決意の眼差しを見せて気合いをいれるユキナ。護熾はそれと対照的に不機嫌そうな顔をして黒板の前にある教卓を『やれやれ』と言いながら見る。

 そして前に向いたときにちょうど、教室の引き戸がガラリと開けられ、出席簿を持った先生が教室に入ってきた。


「じゃあホームルームを始めま〜す。皆さんちゃんと宿題やってきたかな? ではまず宿題を集めたいと思います。教卓の上に各宿題ごとに集めて下さい。」


 先生が生徒にそう告げると生徒達はカバンから夏休みの宿題を出して教卓に置きに来はじめた。護熾もユキナもちゃんと全部やってきており、教卓に置きに席を立って移動する。

 そして全員が宿題を置いたのを確認した先生は教卓の縁に手を置く。


「では、今日から2学期が始まりますが今月中に体育祭があります。体育祭がありますのでその間までには練習が行われると思うのでケガなくやって下さいね。」


 そのあと2学期はこんな事をやりますよとスケジュールを伝えた後、授業を終え、生徒達はカバンを持って帰りの準備をし、友達と一緒に教室から出て帰り始めた。

 護熾とユキナもカバンを持って教室から出ようとすると

『待って待って! 一緒に帰ろうぜ!!』『私たちも!!』と沢木達&近藤達がカバンを持って護熾達と一緒に帰ろうと小走りで来た。



 




 そして校門を歩いていると沢木が近藤達には聞こえないようにして護熾に話しかけた。


「なあ海洞、海に行ったときの木ノ宮さんの水着どうだった!?」


 急にユキナの水着姿について話しかけられたので護熾は一瞬息を詰まらせてから


「おい沢木、俺はそんなことには興味ねえ……」


 と、あからさまに呆れた様子で沢木にそう言った。

 しかし沢木は何か分かったのかのように胸の前で腕を組む。


「そうか〜〜〜〜? 確かに木ノ宮さんは背も【胸】も小さいけどあのかわいい容姿で水着って脳殺もんじゃね?」

「ねえ? 何の話をしてるの?」


 ユキナの容姿を熱く語ろうとしている沢木と呆れている護熾の顔を横から覗き込むようにしてユキナが尋ねてきたので二人は慌てて『いや! 何でもないです!』『気にするな、くだらねえことだから』とその場を受け流した。


 



 そして途中、近藤達と横道で別れ、さらに進むと沢木達がT路地で護熾達が右に行くのに対し、左に行ったのでそこで別れることになった。

 護熾の自宅に向かって歩いている二人は沢木達の姿が見えなくなるとまず、ユキナから話しかけてきた。


「ねえ、このあとどうする?」

「ん〜〜〜〜〜〜まずは昼飯を食べてからかな?」

「食べ終えたらいつもの山に行きましょ」

「まあ〜〜〜〜〜〜そういうことになるな」


 二人は午後に何をするのかを決めた後、ユキナのお腹が ぐ〜〜〜〜と鳴った。

 顔を赤らめて片手で腹を押さえているユキナに護熾がにやつきながら『お!?こりゃ〜早く家に戻った方がいいな』と言い、走り出したのでユキナは『あ〜ん、ずるいよ護熾〜こっちはお腹がすいて走れないのに〜〜〜』と、顔を膨らませて前の方で『早く来いよ〜!』と嬉しそうに手を振っている護熾のとこへふらふらと歩いていった。







 ―――午後

 結界の中に入っている二人はすでに山の頂上で西部劇のガンマンみたいに対峙をしていた。夏が終わろうとしているのを伝えるかのように枝へのくっつきが弱くなった葉が少し強めの風でたくさんバラバラ二人の間に落ちてきた。その強めの風がユキナの髪を優しく撫でるように吹き抜け、また護熾の髪も芝生みたいに揺らした。



「ここに来るのは結構久々だな」

「そうね、この世界に戻ってから一度もここに来なかったもんね」



 会話の終了が合図のように、護熾は両手に拳を作り、ユキナに対して体を横に向けるようにして構え、ユキナはまるで居合いを今、しようとしている武士みたいに片手を腰に添える。


「今回は“刀有り”でやらせてもらうわ、あなたもそろそろ腕を上げてきただろうし」

「へっ! 上等だ。こちとらもう刃物相手には一度戦ったことがあるからな」



 護熾はF・Gでもイアルとの試合のことを思い出しながらそう言う。だがイアルの場合はかなり強かったにしろ一般人であるためユキナのように全身が強化され、なおかつ鎌ではなく大太刀なのだから正直ちゃんと戦えるかどうか不安だった。護熾のこめかみの辺りに一筋の汗が流れ、自然と緊張感を伝えていた。


「じゃあお構いなく」


 ユキナが少し微笑んで言うと、ブワッ、と一瞬で瞳の色と髪の色を鮮やかなオレンジに変える。発動した後に腰に添えてた手を胸の前で横に薙ぎ、光の軌跡を描いてギュッと拳を作るように握ると鞘に収められていない日本刀が出現して、それは鏡のように自分の姿を刀身が映し出していた。


「さあて、どこまでいけるのか試させてもらうぞ」


 護熾も歯を見せながら笑うと瞳の色と髪を鮮やかな翠色に変える。そして気合いを入れるかのように片方の手でパーを作り、片方の手をグーにしてパンッと乾いた音を出すようにグーにした手をパーにした手にぶつけた。


 戦闘準備が整った二人はじりじりと近づくように距離を縮め、ある程度の近さになったら互いに俊敏に地面を蹴り、前に大きく跳躍し、護熾は刀の動きを見ながら、ユキナは本当に斬れたらまずいので峰打ちの構えで、互いに空中で交差をし、衝突した。


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