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ユキナDiary-  作者: PM8:00
135/150

ユキナDiary--その前シリーズ ~千の夜を越えて(前編)~

どうも、非常に遅くなって申し訳ありませんでした。

今回このお話の最後を締めるこのお話ですが、風邪やあまりにも予想外な字数でやむなく前後に分割しました。最大字数が六万くらいだったらよかったのにな~っと、利用させてもらっている身なので文句は言いませんが、とりあえずは前編をお楽しみください。










 そこは、4-10℃程度の真っ暗な世界であった。そこには様々な物体が置かれている。

 さらにそれらはありとあらゆるモノが透明なケースや膜のようなもので包まれて鎮座している。

 不思議とそこには一つだけ何かが回っているかのような音が響き渡り、一定の温度を保ち続けていた。

 するとこの空間へと何かこちらに近づくような足音がずんずんと聞こえ、すぐ手前まで来ると音が止む。

 それから姿勢を低くしたのか、床が少しだけ軋んだような声を上げ、何かを掴むような音がした。

 そしてパカッと気の抜けた音と共にこの空間に光が差し込み、同時にそれが合図かのようにさらに強い光が反対の方から照らし始め、暗い闇が完全に消滅していった。

 そう、ここは――――


「あー、ちょっとこれをこっちに退かさねえとな」


 そうぼやきながら護熾は片手でそそくさと冷蔵庫の中にあるラップで包まれた食品を別の棚に退かしてスペースを作る作業に入る。

 もう片方の手にはもちろん、アップルパイの入った容器を持っており、アプリコットジャムを塗ったおかげで艶が掛かっていて焼きたての匂いと甘い匂いをラップ越しから漂わせていた。


「どっこいせっ。さて、これでどうだ」


 上手くパイ全体が入る隙間を作り、そこにソッと仕舞い込んだ護熾は冷蔵庫のドアを閉め、一仕事終えたという感じで背伸びをする。

 背伸びを終え、それから急に護熾は少し黙り込むような表情でその場に佇む。

 

 先程まで、護熾は意気消沈の状態であったが、今は精神的にはやや回復はしている。

 しかし彼にとって、やはり彼女にああいう風に言われることは、何よりも衝撃的なのだ。

 


「うん? これなんだろ? 甘くて美味しい」



 護熾がテーブルの方に顔を向けると、丁度そこにはユキナがいた。

 彼女は何をしているかというと、先程アップルパイにアプリコットジャムを塗るのに使用したスプーンを舐めているところであった。おそらくその匂いに釣られて味を確かめたくなったのであろう。


「何舐めてんじゃお前は」

「うーん、スプーンのお掃除」

「どっちにしろ洗うんだから意味ねえし」


 スプーンを咥えたままでいるユキナに対し、やや呆れ顔で側まで近づいた護熾は補足をする。


「因みにそのアプリコットジャムは杏で作られたジャムだ」

「へえー……杏って食べたことないから分かんない」

「一応夏に取れる果物らしいけどな。まあ今度機会があったら喰わせてやるよ」


 アプリコットジャムの特徴としてはイチゴジャムのように甘さに特化しているわけでもなく、かと言ってマーマレードのような酸味が強めというわけではなくその中間くらいの甘酸っぱさを誇る。

 因みに杏には疲労回復や食欲増進、便秘などに効能があるといわれ、また身体を温める作用もあり干しアンズは古くから冷え性に良いと言われている。


「とりあえずパイは仕舞い込んだ。あとは夕食が終わった後がお楽しみだ」

「うん。二人で作ったもんね! うん、二人で……二人で?」


 意気揚々と両手を挙げて喜んでいたユキナだったが急にある単語に反応して不思議顔になる。


「ん? どうした?」

「え? あ、いや、何でもない! 何でもないだかんね!?」


 護熾に訊ねられたのに対し、ユキナは顔を真っ赤に染めるとピューッとその場から逃げ出し、居間まで逃げると見事な前面スライディングでコタツの中に滑り込んで隠れてしまう。

 そんな器用なことをする彼女を目で追っていた護熾は怪訝そうな表情で、


「……? 変なの」


 そう言って護熾は夕飯に向け、あらかじめ調理器具などを出す作業に移る。

 頭の中で覚えている機具を取り出すために台所にあるあらゆる棚から棚を開き、手際よく取り出していく。







 そしてそれらほとんどを食卓の上や台所に置いた護熾は一休みのためにイスに座って休憩を取っていた。あとは夕食の時間に合わせて調理を開始すればいいのでここでの仕事はもう既に無かった。

しかし護熾は十分経ってもそこから中々動かず、何かを考え詰めるような表情でいたが、


(……ったく。自分の事ばっか考えてんじゃあ、情けねえよな)


 そう頭に浮かべるとゆっくりと重い腰を持ち上げ、その場から移動するように居間へと向かう。


 彼が考えていたことはもちろん、あの過去の世界で彼女に言われたことであろう。

 自分の愛する人物に、一番言われたくないことを言われたのだから、見た目以上に彼の心を抉っていた。しかし彼自身もまた、そう言った心の傷をいつまでも引き摺っているような輩ではないのでその考えを振り切るべく、彼女のテリトリー(しつこいようだが彼女が来ると居間は縄張りと化する)に踏み込む。


 居間にはいつものようにテレビと大きめのコタツだけが鎮座しており、妙な静けさを保っていた。

 しかし足音で気づいたのか、もそもそとコタツの掛け布を頭で退け、顔だけ出して大きな両目がこちらを捉えてきた。


「ん? 準備済んだの護熾?」

「……ああ。さて、どっこい―――」


 猫はコタツで丸くなる、を人間Ver.現在進行形で行なっているユキナはそう訊ねると護熾はそれに対しての返事をしながらゆっくりと腰を屈める。

 そして腰を屈めた後に、

 

「しょっ!」 


 身体を前面に押し出すようにして足を伸ばすと護熾は頭からコタツの中へと侵入する。

 そしてユキナの身体の横を通り過ぎ、反対側の方に頭を突き出すと丁度大雨になっている景色を映し出している窓が視界に現れる。それと同時に身体の中心当たりが温かくなり、寒さを忘れさせてくれる。しかし身長が高いため、足の先の方はどうしてもはみ出してしまうが。

 すると自分のすぐ真横で、もぞもぞと何かが動き、身体にピッタリとくっつくと同じく顔を出してきた。


「ぷはぁ。もうびっくりしたよ。護熾がコタツに入ってくるなんて」

「おお。急にすまねえな」


 出していた顔を引っ込め、コタツ内で身体の向きを変えて窓側に頭を出してきたユキナに対し、護熾は謝罪の言葉を並べる。しかしユキナの方は護熾がコタツの中に潜ってきてくれて嬉しいのか、身体を目一杯寄せてくる。


「……にしても止まないな。雨」

「うん、そうだね。ざーざーだね」


 身体が密着しているのはともかく、二人の視線の先には雨のカーテンが喧しい音と共に降りており、分厚い雲によって日光が遮断されているのでまるで夜になったかのような暗さが広がっている。そして風も強いのか、窓の隙間を無理矢理入り込もうとするような音やガラスを叩き付ける音などが絶え間なく聞こえてきていた。


「……大丈夫かね。電線ぶっち切れて停電にならなきゃいいけど」

「ん。大丈夫じゃない? うー、それにしても寒い~。えいっ♪」


 だきっ


「相変わらず好きだなお前は」

「えっへへ~♪ だってこの方がもっと温かいんだもん」


 停電を心配する彼に対し、ユキナは寒いという口実で護熾に抱きつくようにする。

 一方抱きつかれた彼はそんな彼女に対して頭撫で撫ででそれに応える。すると彼女は幸せそうな表情でゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らして顔を胸に埋めるようにしてくる。


「ふんふん。護熾の匂い~」

「さりげに嗅ぐんじゃねえよ」

「いいじゃん。そういえば護熾の匂いって、お母さんの匂いだよねー」


 一家の家事全てを担っているのだから、洗剤の匂いなどが染みているのであろう。

 

「……何だろうな。ティアラにもお母さんみたいって言われたことあんだけど」

「へぇー。まあ確かに一緒にいると安心感あるもんね」


 そう言ってユキナは顔をすりすりとさせ、母親の匂いが染みた彼氏の匂いを感じ取る。

 護熾の方は男として何だか複雑な気持ちではあったがポンポンと軽く頭を叩いてみせる。

 それが心地よいのか、彼女は眼を細めて嬉しそうに微笑んでくる。

 すると一瞬、視界の全てが青白く光った。


「うおっ!?」

「え? 何!?」


 急な出来事だったので二人は驚いた表情で互いの顔を見て、それから窓の方に視線を移す。

 窓の外は景気の良い滝のような大雨が降っているだけで、特に変化はない。

 しかし護熾の方はすぐにさっきの青白い光が何なのかを理解し、口に出そうとしたときだった。

 




 ヴァリ、バリバリバリバリバリバリバリッ――――――――――――――!!





 何かが遠くで爆発したかのような、具体的な言葉では言い表し難い音が後から盛大に響く。

 それは窓を少し振るわせ、鼓膜を波打たせるように響き渡り、すぐに音は止んだ。

 するとその爆音によって掻き消えていた雨音が、思い出したかのように再び耳に入ってきた。


「…………雷、か」


 護熾はその自然現象名をボソッと呟く。

 何しろ大雨が降るほどの天候なのだから雷が降ってくるのは何ら珍しいことではない。

 むしろ近くの落雷によって停電や火事が起きる心配をするほうが今できる配慮ではある。

 そんな海洞家の支柱を担う彼はそんな思考を展開させつつ、妙にお腹の辺りに違和感が生じていることに気がつく。

 何かこう、受信中でマナーモードの携帯を腹にくくりつけられているような、そんな感じである。

 なので見下ろしてみると、黒い塊が思いっきり胸に押し留まっている光景がそこにあることが分かった。しかも小刻みにブルブルと震えているのが肌を通して感じられた。


「…………ユキナ?」

「………………(ぶるぶる)」


 不思議顔で護熾は彼女に尋ねるが、ユキナは顔を上げず震えてばかりでいる。

 しかしそのすぐ五秒後に、彼女は顔を上げて護熾の顔を見る。ただ、その大きな瞳を潤ませながら。


「……、………ないもん」

「………………はっ?」

「……べ、別に雷怖くないもん!」


 意外な返事だったためか、護熾は一瞬キョトンとするが、すぐに理解した。


「……もしかしてお前、雷苦手?」

「ちょっ、ち、違うの! 別にその……寒かっただけで……」


 護熾に核心を突かれたことに慌てたのか、ユキナは視線を左右に踊らせて勢いの無くなった口調で否定の言葉を並べる。だが抱きつきの強さと涙で潤ませた大きな両目の所為で説得力が無く、護熾はほぼ彼女が雷が苦手なんだという新たな事実を確信していた。


「と、とにかく! 雷なんて怖くもないし、直撃しなければ平気よ! あんなのが当たるなんてこんな日に外に出る人だけよ! そう言う人はまぬけよまぬけ!」


 雷使いの虚名持と戦ったラルモ涙目である。

 ともかく彼女は、雷が苦手だと言うことを隠したいようである。

 どうしてこんなに否定するかは分からないが、おそらくは雷が怖い=幼稚である、という彼女の勝手な方程式ができあがっているのではないかと思われる。何しろ彼女は見た目が見た目なので、せめて中身は大人っぽくありたいと考えているのであろう。(だが既に色々遅いと思われる)


 だが次の瞬間、近くに落ちたのか青白い光と共に先程の数倍の爆音が響き渡り、家全体を揺るがす。


「おわっ近っ!?」

「!!」


 さすがに不意打ちも兼ねて近くで落ちたというインパクトに護熾はかなり驚き、ユキナの方も水を引っかけられた猫の如く驚愕し、顔を隠すように護熾の胸に飛び込む。

 幸い近くに落ちた雷は近くに落ちただけらしく、停電などは起きてはいない。

 近所が火事になってなきゃいいなと思いながら護熾は、改めて彼女を見てみる。

 先程の落雷が相当応えたのか身体を震わせているばかりで、その姿が可愛らしいと思ってしまうのはご愛嬌である。

 なので少しでも彼女を安心させようと、ソッと両手で包み込むように抱き締めると背中をトントンと叩き、


「とりあえず移動しようぜ。窓際だとモロに音が来るから」

「…………うん」


 その意見に賛同したユキナは軽く頷き、二人同時にコタツの中に潜伏する。

 そして食卓側に顔を出した二人はとりあえず一安心し、彼女の方も震えは止まってきていた。


「それにしても意外だな。雷苦手だとは思わなかった」

「だ、だってそう言う日は結界の中で避難してたから慣れなくて……」


 過去の任務期間中において、そう言う日は人は中々外に出ないので怪物も出なかったのであろう。だから天候に影響されない結界内で待機していればいいので夜の暗さには慣れていてもこの自然現象には慣れることはできなかったのであろう(ついでに冬の寒さも)。


「まあ、怖ければ怖いって言いな」

「むぎゅっ」


 彼女にだって怖いモノはある。例え五年間、独りでいて精神が鍛えられようとも。

 ならば安心させられるのはこの場にいる自分だけと思い、抱き寄せてすっぽりと胸に納める。

 彼女の方は頬を少しだけ朱に染め、甘えてみせるかのように軽く頭を小突いてみせる。どうやら抱き締められたことですっかり恐怖心は和らぎ、甘えるくらいに回復はしたようである。

 しかしそんな平穏は長くは続かず―――――、


「雷!!」

「わー雷だー!!」

「!」


 喧しく怯えた声を上げながらドアが開けられ、その音と同時にユキナがズボッと護熾の抱擁から抜け出る。それから隠れるかのようにコタツの中へと潜伏してしまう。彼の方は何だ何だと首を回しているとドタドタと一樹と絵里がこちらに向かって走ってきており、すぐ真ん前まで到着すると、


「護兄雷怖い! ちょっと一緒に居させて!」

「僕も僕も! おへそ取られちゃう!」

「まったく、お前ら可愛いな」


 そう言ってコタツの中に潜り込み、護熾にピッタリと寄り添うようにする。

 どうやらこの家には護熾以外は雷が苦手な人間が多いようである。

 三人がピッタリとくっつく中(ユキナは足にしがみついている)、護熾はやれやれと言った表情で雷と大雨が和らぐ一時間後まで一緒に居て上げることにした。






 





 少女が一人、人々が行き交う町中を歩いていた。

 顔立ちは整っていて可愛らしく、又は勇ましいとも呼べるモノであったが今は無表情に近い表情を顔に出して歩いていた。

 それに、よく観察してみれば少し足取りも悪い感じであった。

 だが決して戦闘で傷を負ったとかではなく、何か精神的なダメージから来ているように思える。



(……………………………………また、一人になっちゃった)



 少女は、ユキナはそう思い、足を止めることなく行く。

 先程彼女は、自分より年上と思われる少年と別れた。

 少年は、自分では気がつかなかった奇襲から身を挺して庇ってくれた。

 だが、少年が受けてできた傷は明らかに普通とは異なる代物であり、本人も何が起こったか分からず狼狽えていた。

 しかし自分はそのあまりの光景に、自分の希望が打ち砕かれたと思い、思いっきり彼に対して叫んだ。

 化け物、と。

 その言葉を受けた彼は、凍り付いた表情でいたが、やがて自分から逃げるように立ち去っていった。

 悪い、と一言残して。

 だけど自分はその姿を追うことなく、完全に見失うまでその場に佇んでいた。


 そして彼女は一人で町中を歩いていた。まるでそれが当たり前だったかのように。

 いつものことだ、と彼女は頭の中で言い聞かせていた。

 今回の件は少し特殊な例だったに過ぎない、とも言い聞かせていた。

 だったら彼を野放しにしておくのは危険ではないか、と自問自答をする。

 その質問に対し、答えは今のところ彼は怪物との関連性はほぼ皆無と見られ、危険性は極低と判断するものであった。

 そう、彼は人間ではないかも知れないが、少なくとも護ろうとする意志だけは強かった。

 だがもう、そんな彼もここにはいない。




(………………そう、これが当たり前なのよ。って、さっきから彼のことばっかり)




 足を止めたユキナは先程から頭の中で繰り返される思考に対し、呆れを感じていた。

 今までもそうだったじゃないか。どんなに親しくしても、その人とはもう二度と会えなかったことを。

 次の人と親しくなったって、またその人も消えていく。自分を恐れおののいた人だっていた。

 さながら自分は不死身になって悠久の時を過ごす存在で、相手は百年ごとに死んでいなくなるかのような関係であった。さながら本当に自分は怪物なのではないか。まあ、開眼者であるので普通の人間より存在を一線越えてはいるが。



「……………………あっ」



 そう考えたところで思わず、声が出た。

 自分は、あの少年に対して何て言ったのかを、思い出す。

 そう、化け物、と。自分も普通の人から見れば化け物なのに、彼にそう言ってしまった。

 しかし彼は、血の一滴も出さずに結晶の欠片でできた身体をしていた。少なくとも血の通っている眼の使い手から見ても十分化け物であった。

 しかし彼は、自分よりも人間くさくて、特別優しいというわけではないが気に掛けてくれたり、時にはまるで本当に友人のように接してくれて、しかも非力なのに怪物相手に引けを取らずに立ち向かったりと、身体の構造以外はまるで、人間であった。

 しかし自分は、彼の存在そのものを否定してしまった。

 誰だって、人間じゃない姿を見せられたらああいうに決まっているという言い訳は思いつくが、いざ終わってみると自分は何かとんでもないことを言ってしまったのかも知れないと焦燥が生まれる。

 だが、もう遅い。


 

「…………? そう言えば、さっきから妙に静かね」



 しかしすぐその思考を切り替えるかのように、ユキナは空を見上げて呟いた。

 そういえば先程、怪物達は理の狭間の空間と結界を突き抜けて一気に奇襲を掛けてくると言う知能の高い行動を起こしていた。普通の怪物達では到底思いつかないような、誰かに指示されて動いていたかのようなそんな感じ。それに先程から、暗影に潜んでいた闇が一斉にどこかに姿を消していってしまったかのような見えない光景に、少なからずとも何か不吉なことが起きているのではないかと思わせられる。



(とにかく、調査をしなくては)



 そう自分の中で完結させると止めていた足を再び動かし、前に進み始める。

 もう隣には誰もいないが、自分は進むしかない。

 あのとき彼を追いかけて、話をしていれば何かが変わったかも知れない。でも何もかもが遅い。

 彼女にとって優しさなど邪魔に思えるから、解って欲しいなんて一度も思わなかった。



 でも、寂しいと思うこの気持ちは、いつまでも忘れられなかった。

 


 だから少女は、その気持ちを紛らわせるために戦場に赴く。











 思っていたよりも早く空は橙色に染まり、そして色を藍に変え、紫に変え、やがて黒となる。

 冬の日没というモノは一年の中で一番早く、そして何よりも空気の冷たさを加速させてくるのである。

 そんな中で、人間、特に日本人というモノはコタツなどに入りながら夕飯を食べるのがある種のお決まりのようになっている。そんなこんなでここ海洞家も例外ではなく、コタツを四方から囲んで食べる夕飯作りが始まっていた。

 その名をすき焼きという。

 家庭豪華料理の一つである。

 そして翌朝には牛丼にして食べることができる一石二鳥料理であることで有名である。


 まず始めにだが、すき焼きには関東風と関西風が存在する。

 一部の県では鶏肉を用いたすき焼きがあり、『ひきずり』と妙に怖い名称で呼ばれている。

 海洞家はもちろん、関東地方に住んでいるので関東風が妥当ではある。

 そんな関東風の特徴としては『割り下』と呼ばれる醤油・砂糖・みりん・酒を混ぜた出し汁で肉や野菜等を煮て作り、美味しく食べるのが普通である。

 材料は牛肉、白ネギ、しらたき、シイタケ、豆腐、シュンギクが基本であるが今回はここに豚肉と白菜が追加される。


 まず最初に材料は食べやすい大きさに切る。

 しらたきは湯通ししてから切り、シイタケは十字の切れ込みを入れ、ネギは斜めに切ることを忘れずに。この際豚肉は白菜の中に仕込むように交互に挟んでおく。

 それから調味料を全て混ぜた割り下を作るのだが、この割り下には味噌や赤・白ワインを加えたり、ビールを加えたりしてと各家庭で違いがある。護熾の場合は風味と甘さを抑える意味で味噌を少し使う。


 つづいてすき焼き鍋を熱したら牛脂を入れ、その後に牛肉とネギを入れて少し焼くようにする。このとき牛肉をあまり焼きすぎないように気をつけること。

 そのあとに割り下を入れ、煮立ったら見栄えが良いように各材料毎にスペースを決めながら入れる。

 その理由としてはシイタケのように出し汁が煮てる間に出るような食材の隣に白菜やしらたきなど出し汁を吸収して味を蓄える食材を置いた方がより美味しく食べられるからである。但ししらたきと牛肉は一緒においてはいけない。一緒だと固くなってしまうからである。そんな細かい配置を決め、頃合いを見て火を弱めればあとは食事を開始するだけである。


 熱さを忘れさせるためのお茶や生卵、ホカホカの白いご飯も用意。

 取り皿に生卵を入れ、箸でカチャカチャと溶けば準備完了である。

 


「えー、それでは。いただきます」

「「「いただきま~す!」」」



 手を合わせて頂きますをする。

 それからコタツの真ん中でぐつぐつと煮えるすき焼きを囲み、海洞家の夕飯は始まった。


「おお~これがすき焼きなのね!」


 すき焼きが今回初めてのユキナは眼を輝かせ、興味津々でいる。

 そんな彼女に護熾はヒョイヒョイと取り箸で牛肉と野菜を五分五分に取り、それを差し出す。


「ほい、まず最初に偏りがあっちゃあれだからな。あとは自分で取りな」

「は~い」


 護熾に渡されたすき焼きを、ユキナは前に言われた生卵をくぐらせて食べるという作法をやってみる。

 そして口に運ぶと、彼女にとって初めての味覚が舌の上で広がる。

 ほんのりと桜色が残る、脂がとろけだした牛肉に肉の旨味が染み込んだ旬の野菜、それらを閉じこめまろやかに仕立て上げる生卵を絡ませて食べた味は、とても美味しいもので、その後にご飯を食べれば満足感しか生まれない。


「お、おいし~~~!!」


 素直な感想を述べ、味に感動しながら取り箸で今度は白菜で挟んだ豚肉を取り、それも食べてみる。

 牛肉とはまた違った柔らかさや旬の野菜である白菜に染みこんだ旨みが別の顔を覗かせてくる。


「どうやら、気に入ったみたいだな」

「うん、美味しい、美味しいよ~~! うん、はむ、あむ」


 食べるのが好きな彼女は護熾に微笑んでそう応え、あむあむと肉も野菜も食べる食べる。

 護熾の方は彼女が美味しそうに食べていることに内心喜び、絵里も一樹も美味しそうに食べているので味付けは成功したと確信した。

 さて次は、デザートだな、と思っているとどんどん牛肉が偏って取られていることに気がついたので、


「こら! 肉ばっか喰ってる奴がいるな?」

「護兄、それユキナ姉ちゃん」

「うにゅ?」

「すき焼き初心者ありがちな肉独占をしてんじゃねー!」


 口いっぱいに肉を含んで隠そうとするユキナに対し、護熾は次回は野菜のみの罰を宣言する。

 今回の夕食は、ユキナの初めてのすき焼きで、そして鍋には明日の朝食用に少し残し、この日の食事は終わった。






 温もりを含んだ湯気が、部屋一帯に広がる。

 その温もりは、冬の寒さなど忘れさせ、心地の良い温かさを全身に浴びる。


「ふう~~」


 護熾はその温もりに対し、長く息を吐いて落ち着いた様子でお湯を被る。

 ここはお風呂場。日本の冬において温かい鍋料理のあとは温かい風呂が定番である。これで中も外も暖かくし、この後の夜に備えるのだ。

 一樹と絵里が入り終わった三番目に入った護熾はお風呂に入り、肩まで浸かる。

 風呂には入浴剤が入っており、青白い液体と化したお湯が身体を温めてくれる。


(さてと、で、この後アップルパイを食うのは良い。だけどホラー映画見ながらってあいつらなー)


 そう、実は全員が風呂に入り終わった後の夜九時からは『冬の寒さをもっと! ホラー週間』という名目でホラー映画が三週にわたって放送され、そのうちの一つを一緒に見ようと言うことをユキナが提案したので怖いモノ見たさの一樹と絵里は眼を隠すための毛布を用意している。

 因みにユキナの方は、今は外である。

 何故寒さ嫌いの彼女が外に出ているかというと、修行である。

 そう、彼女は大戦が終わり、怪物達がこの世から消えていようとも彼女は自分を鍛えることを忘れてはいない。

 理由としては、護熾を護りたい、この一言に尽きる。

 怪物無き今、普通の高校生に戻った彼をもう失いたくない意志で今日も彼女は温度のない結界内で鍛錬を続けているのだ。別に護熾はしなくてもいいぞとは言ったが、彼女は首を振るので特に口出しはしていない。


 と、ここで洗面所の方で誰かが入ってきた音がしたのでそちら顔を向ける。

 スモークガラス越しから見える向こうには黒くて小さな影が映り、髪の長さからすぐに女子であることは解った。

 

『護熾入ってる?』

「ああ、ユキナか。修行終わったのか?」

『うん』


 声からして本人であろう。

 では何故洗面所に入ってきたのか。その理由は外に行っていたのだから手洗いに来たのであろう。

 護熾はそう結論づけ、首の辺りまでお湯に身体を沈める。


「にしても外寒くなかったか?」

『うんとっても寒かったよー! もうやばいやばい!』


 寒がりな彼女がそう言うのならば本当にやばいのであろう。

 彼女の感想を聞き、今日は買い物に行かなくて正解だったなー、と彼は思い、風呂から上がり、バスチェアーに座って身体に石けんを擦り始める。するとふとドアの向こうで何かゴソゴソと動いていたので気になって声を掛ける。


「そこで何やってんだ?」

『ん。ちょっと着替えを』

「次に入るつもりなのか?」

『うんとね。まあそれに近いかな?』

「ん? それってどういう意味?」

『こういう意味』


 するとバッとドアが開けられ、風呂の外から冷たい空気が流れる。

 それと同時に風呂場の中の湯気が大きく動いたため一瞬、真っ白な世界になる。

 護熾は何が起こったのか暫しの間理解できなかったが、やがてドアが閉められ、湯気が晴れた瞬間、目を大きく開いてその場に固まった。



「ええっと、お背中流しに来ましたー」



 目の前にはバスタオルを身体に巻いたユキナが立っており、少し恥ずかしそうにもじもじとしていた。

 それに髪型はいつものセミロングではなくゴムで一括りしたポニーテールになっていて護熾は一瞬誰だが解らなかった。

 そして相変わらずの小柄な身体ではあるが、はみ出た肩やうなじなどは綺麗な肌をしており、タオルから伸びる二の足も少女らしい細さである。

 って、何そんな分析してんじゃーい! と護熾はようやく理性を取り戻し、タオルで下半身を隠しながら叫ぶ。


「おまっ!? ちょっ!? 何で風呂場に入ってきたんだよォ?!」

「それはもちろんさっき言ったとおり背中流しに来たんだよーん。だって私たち、恋人じゃない?」

「夫婦でもやんねーよこんなこと! ほらほら出口は向こうだ」

「ふーん。ほれほれ」


 護熾がそう言うことを予想していたのか、ユキナは少し意地悪な表情で身体に巻いたバスタオルをヒラヒラとしてチラリズムを行なってみせる。その行動に対して護熾は顔を紅くして明後日の方向に向ける。

 

「んっふふ~ん。もう、護熾ったら相変わらず恥ずかしがり屋さんだよね」

「ほっとけ!」

「でもそんな護熾が可愛い~。因みに……」


 彼氏の恥ずかしがる姿を存分に堪能した彼女はそう言うと、いきなり身体に巻いたタオルを取り去る。

 この行動にはさすがに護熾も予想外であったのか、眼を丸くして見ないようにする。

 だが見た場所は運悪く、壁に貼り付けた鏡で、しかも先程ドアが開いて冷えた空気が入ったためか湯気が無くなってクリアになっていた。

 そう、彼女のあられもない素肌が見えてしまう――――と思われたが、


「じゃーん。どうせ裸だと護熾が駄目だから水着を着てきましたー!」


 そこには水色のビキニを纏ったユキナが立っており、えっへんと言った表情で腰に手を当てていた。

 その姿を鏡越しで見た護熾は安心したという思いと、何かこう男として騙されたかのような、自然とどこかがっかりしたという気持ちが込み上がる。とにかくそれらを一回の溜息で済ませた護熾は振り返り、彼女を見る。


「…………で、背中を流しに来たんだよな?」

「むー。もうちょっと喜んでもいいんじゃないの? せっかく水着披露したのに」

「いや、まあ」


 確かに水着姿の彼女は美しく、可愛い。だが彼はそれをいちいち口にする輩でもない。 


「はいはいとりあえず失礼しますよー」


 そう言ってユキナはスポンジにボディシャンプーを付け、早速それで護熾の背中を擦る。


「お、おいっ!? 何か背中に当たってんだけど!?」

「ふふっ、当ててるの」


 途中でユキナがふざけて背中に張り付くようにするが、実はまったく分からないというのは内緒である。それに言っては駄目だが相変わらずの幼児体型である。いわゆるキュッ、キュッ、キュッである。

 そのことに気がついたのか、ユキナはムスッとした表情で頬を膨らませる。


「こ、これでも1cm胸が大きくなったんだからね!?」

「誰も聞いてねえよそんな情報!? ってか大きくなったのかよ!? 計測ミスってねーか?」

「だったらその身でもう一度受けてみなさい! とォーーー!」

「おわっと!?」


 座っていた護熾に対し、ユキナは飛びつくように首に手を回して思いっきり背中に張り付く。

 こういった背中に張り付くことは結構当たり前にやっていることなのだが今は露出度が高い。

 なので護熾は固まった表情でしかも頬を赤らめる。ユキナの方はスリスリとしてみせる。


「ちょっ、おまっ、流石にやりすぎだろそれは」

「むっ。じゃあティアラちゃんはいいわけ?」

「…………はぁ?」


 突然一国のトップの娘の名が上がったことに護熾は不思議顔になる。

 それとは正反対に少し怒っているかのような表情をしているユキナは頬を膨らませて頭を小突く。


「あのとき私は脱水症状で起きたばかりもあって聞き逃しが多かったの。そう、護熾がティアラちゃんを抱き締めて寝たって話に一番驚いたのよね。あのとき」

「いや、あの、それはだな」

「いいの。だってあの子一人でずっと過ごしてきたんだから優しい護熾がそうしても可笑しくはないの。でもね――――」


 自分も護熾に抱き締められながら何度も寝ているのであの安心感は共感できるのであろう。

 ただ、この空気の流れは決して良い方向に流れているとはだれも言ってはいない。むしろ悪化していると言っても良いであろう。

 そして彼女が一番何が言いたいのかを彼に向かって黒い笑みで言い放った。


「一緒にお風呂入ったっていうのはどういうことなの? ねえねえ?」

「…………………………………ィャ、アレはその……」


 何という記憶力であろうか、と護熾は全身脂汗を浮かべてそう思った。

 そう、確かにティアラはあのとき恥ずかしそうにサラサラとそう言ったことを述べてたし、嘘ではない。ただ開始一分で護熾の方から逃げ出したというのも事実だが今の彼女にそんな言い訳したって焼け石に水なのは目に見えている。


「ん? お風呂だからってもちろん裸じゃないよね? ねえねえ?」

「はーいその話は無し無し無し!! 風呂に入る!」


 ここまでドス黒い笑顔で訊いてくる彼女に恐怖心を覚えたことがあるのであろうか。

 そこから逃げたくて護熾は無理矢理立ち上がると彼女の抱擁から抜け出し、ちゃっちゃと風呂にもう一度はいる。一方タイルの上に残された彼女は不機嫌そうに頬を膨らませており、


「ぶ~。もう、だから私もこうして一緒に入りに来たの!」


 そう文句を垂れつつもボディシャンプーで身体を洗った後に、護熾のお隣を失礼する。一方護熾は隣を空けるためにタイルの方に身体の向きを変え、隅に寄る。

 この風呂は決して大きいわけではないのでお互いピッタリと寄り添うような姿勢になって入らないと収まらないのだ。そんなこんなで身長差のある男女のカップルの敷き詰めがここに完成したのである。


「…………」


 無論、素肌同士が密着しているので何となく落ち着かず、彼は無言のままただそこにいた。

 ユキナの方も同じ気持ちなのか、若干恥ずかしそうであったがやがて顔を横に向けて彼を見ると、


「護熾って、今裸なんだよね?」

「それ訊くのかよ。ホント今日入浴剤使われていて正解だったよ」

「…………まあ私は別にお湯が透明でも……」

「…………何?」

「ううん何でもない。こういうのもいいなって思っただけで……それに」


 そう言うと護熾の肩により掛かるよう頭を傾けてから、


「こういう体験も今のうちにしかできないんだから、やっておくべきだと思ってさ」

「方向性違わねえかそれ?」

「いいのっ。それに護熾は知らないでしょ?」

「何が?」

「一週間単位で一回しか会えないんだから、私とても寂しいんだよ」


 因みに言えば、護熾が不倫していないかどうかの心配もそこに含まれているわけで。

 その言葉を受けた護熾は一瞬キョトンとした表情になった後、少し考えるようにし、それから、


「………………………………………………………………………………そりゃ、俺だって……」

「ん? 何聞こえない」

「あーハイハイ! 今の無し! 頭洗って上がる!」

「ちょっ、護熾まだ早いって!?」


 ザパァっと勢いよく立ち上がった護熾は引き留めようとするユキナを退け、しゃっしゃかこの場を出るために立ち上がり、頭洗うとあっという間に風呂場から出て行ってしまった。

 一方取り残されたユキナは一人ぽつーんとしており、その後少しだけ顔をお湯に沈める。

 ただその表情は寂しそうではなくどこか嬉しそうな表情で、


「ふふっ、素直じゃないんだから……」


 聞こえないふりをして聞いていた彼の言葉を思い出し、その言葉とお湯で身も心も温まる感覚を彼女は確かに感じ取っていた。






 そんなこんなで20:58、夜九時近くである。

 台所に立った護熾は早速冷蔵庫からユキナと一緒に作ったアップルパイを取り出し、それを四人で食べられるように適量の大きさに切って皿に盛りつける作業に取り掛かり始める。

 今回のアップルパイのできは、中に仕込んだカスタードクリームの粘度に懸かっている。

 因みに居間では他の三人がテレビを付けようとしたがリモコンが隠れんぼをしてしまってその探索中である。


「さて、どうだ?」 


 包丁を片手に持ち、パイの中心にソッと突き立てるようにする。

 すると切り口から黄色いソースが零れ落ち、皿の上に徐々に広がっていった。この様子だと大方成功の部類に入るであろう。ただ、護熾は少し苦い顔をし、


「うーん。やっぱ親父みたいにサラサラじゃねえのか」


 やはり自分の父親の腕を越えるのはまだまだ先か、とそう思い四人分に切り分けようとする。

 そして四人目の分を切り終えようと面積の減ったパイを手で押さえながら包丁を差し込もうとしたときだった。


「つッ、あ、やべ切った」


 丁度左手の中指の先っちょが刃に触れて切れたのか、護熾は反射的に中指を口に含む。

 若干、錆びた鉄の味。そして舐め摂ってから改めて指を見るとほんの少しだけ切れているのが分かった。


「あちゃー、最後の分でよかったけどとりあえず消毒と絆創膏だな」


 切った指のまま調理などは衛生上よくないので、片手押さえ無しでパイを切り分けるとさっさと薬箱のある居間へと足を運ぼうとする。

 だがふと、あることに気がついてその場で足を止めた。

 


 切った指からちゃんと血が出た。

 あの過去の世界において、自分がケガをしたときは血など一滴も出ず、結晶が散らばった。

 でも今は、海洞護熾という存在が人間であるという証明のように紅い雫が指先からにじみ出ていた。

 ごく当たり前のようで、大きな違い。



「………………化けもの、か」



 だが今更この証明は遅い。

 


「…………………別れたんだよな、もう」



 何故ならあの時の彼女とは別れたのだ。

 自分の存在を否定し、また一人となった彼女ともう一度会おうとも、また否定されるであろう。

 もう、愛する彼女の口からあんな言葉を聞くのは懲り懲りなのだ。



(さて、とりあえずは手当だな)



 そう思い、とりあえず怪我を手当てするべく足を再び動かし、居間に足を踏み入れる。

 すると、居間の方では何やら騒がしくしており、突然コタツから一樹が飛び出したかと思えば右手に持っている長方形の物体を高々と天井に向かって突き出す。


「あ、あったー! コタツの中にあったよお姉ちゃん!」

「あー、でも電池が片方ないよ!」

「ああ、大丈夫大丈夫こっちの電源付けるからさ」


 丁度九時になる頃、コタツの中に隠れていたリモコンを探したあてた姉弟だが電池が今度は隠れてしまったようである。

 なので仕方なく、テレビの近くで探していたユキナはテレビの下の方に付いている長方形の主電源をポチッと押す。すると電源が入った音がし、そしてぱっと映像が表示されると、



『ウアオォォォォォォォオ―――――!』

「!!」


 タイミングが良かったのか、丁度映画のあらすじ紹介のようなものがされており、白目を剥いた長い黒髪の女性が画面に張り付くようにして呻いていた。

 しかしユキナの方としてはタイミングが最悪で、丁度テレビ画面の間近にいたためびっくりしたのかその映像が流されてもその場で固まったままであった。


「お、おーいユキナー、大丈夫かー?」

「………………」


 その小さな背中に対して既に手当を済ませた護熾が近寄る。

 そしてすぐ側まで行くとユキナはようやく顔を振り向かせてくれた――――今にも泣きそうな表情で。


「う、うぅご、護熾~。心臓が、心臓がやばいよー」

「ああ、はいはい。日本ホラーはびっくり系の集大成だからな。俺でもあのタイミングはやばい」


 そんな泣きそうな彼女に対し、護熾は頭を撫でて慰めるようにする。

 少しの間撫でると、ようやく落ち着いたのか涙目はなくなり、


「ん、ありがと護熾」

「よし、じゃあアップルパイ喰うぞお前ら」

「「「おおー」」」


 一致団結で口を揃え、映画の肴にみんなでパイを食べることにした。 

 アップルパイの味の感想としては、まずしゃっきりと水分を残した部分と火が通って柔らかくなり甘みが増したリンゴ、理想通りにはいかなかったが甘いカスタードクリーム、そして薄いパイ生地はフォークで突き刺せばサクッと気持ちの良い音を立て、果汁やクリームと混ざって舌の上で溶けていくようであった。


 そんなこんなで怖いシーンは耳を塞いでコタツの中に隠れたりしながらホラー観賞をしたのであった。









 ホラー映画に翻弄されながらもデザートを済ませた海洞家は就寝を迎えようとしていた。

 びっくり系の多い日本ホラーだったので一樹が怖がって絵里と一緒に寝ることになったのはまあ、自業自得とも言えるがと歯磨きを終えた護熾はあることに気がついて絵里に声を掛ける。


「絵里、ユキナの奴どこ行ったか分かるか?」

「ん? ユキナ姉ちゃんならもう二階へ行ったよ」

「そうか、ありがと。んじゃあお休みな」

「うん。お休み護兄」

「一樹を頼んだぞ。あいつ布団から足が出せないって言ってたから」

「あはは、了解」


 妹にお休みの挨拶をしてから別れ、護熾は早速二階の自室へと向かう。

 二階にいると思われる彼女はあの後、泣きそうになるほど驚いたのは最初だけで、後は普通に二人で作ったアップルパイをもぐもぐと食べながら楽しそうに映画鑑賞をしていたのだ。もちろん一般人が思う恐怖感というのは感じたと思われるが流石に眼の使い手、例え見た目が幼い少女であろうと雷以外は極端に怖がらない精神力があるのである。


「で、あいつはいつも通りもう布団に籠もってんのかねー」


 一緒に寝るときはいつも彼女の方が早く布団に潜り込んでおり、理由を聞くと温めているそうである。









 それはさておき、階段を上りきった護熾は自室のドアの取っ手に手を掛け、回しながら開ける。 

 そして中にはいると、いつものようにユキナはベットの上にいた。

 ただ、いつものように布団や毛布に潜り込んではおらずその場で正座するように座っていた。


「よう。何か待たせてたみたいだな?」

「ん。まあいつものように待ってました」


 片手を上げてそう言う彼女はそれからやや恥ずかしそうに顔を横に逸らす。

 護熾は急に頬を朱に染めた彼女に対し怪訝そうな表情を向ける。今のやりとりのどこに恥ずかしがる要素があったのだろうかと思考を張り巡らせてみると、急にユキナの表情が凛々しくなり、こちらをまっすぐ見つめてきたので護熾も目を合わせてみる。


「護熾」

「お、おお何だ急に」

「そ、その」


 凛々しい表情からまた頬を朱に染めると弱々しい声になり、しかし精一杯の思いを込めて言った。



「ふ、ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします!」

「…………………………いや、いや待て待て待て待て待て待て待て!! 待って今さっきの流れからして何でそうなってんの!?」


 

 初め彼女が何を恥ずかしそうに言ったのかを理解できなかった護熾であったが、やがてじんわりと内容を飲み込むと慌てた様子で彼女に訊ね返す。

 一方彼女は自分で何を言ったのかを自覚しているのか先程よりももっと顔を紅くしており、弱々しい声でこう言った。


「だ、だって今日の護熾ったら…………妙に抱き締めてくる回数が多かったからその、欲求不満だと思って……」

「いや、あれはその……」


 過去の彼女に否定されたことが怖くなり、寂しさを紛らわそうと自分を認めてくれるユキナに対して確かに自分から彼女を抱き締めたりすることは多かった。

 ただ、その行為は彼女からしてみれば身体と身体の触れあいなのでそう解釈されても仕方がない。いやむしろそう思わせてしまうこと自体を注意していなかった護熾の所為でもあるが。

 とにかく、この場を何とかせねばと護熾は思考を整理させ、ユキナに顔を向ける。

 

 一方、ユキナは戦闘準備よとぎのためにパジャマの一番上のボタンに手を掛けようとしていた。


「だァああ! 危ねえええ!」


 彼女に準備完了をさせないために護熾は急いで駆け寄って準備の停止を兼ねて思いっきり抱き締める。

 一方抱き締められたユキナは驚くと共に突然彼氏に抱き締められたことで瞳をトロンとさせ、その広い胸に納まる。



「ストップストップユキナ! 俺はその、別にそう意味で今日抱き締めまくったんじゃなくて、あ、もちろん今もそうだからな!」

「…………」


 何とか彼女の行為を停止させられた護熾は慌てながら誤解を解こうとする。

 それを無言で聞いていたユキナは少しの間黙っていたが、やがて、



「はーむっ♪」



 かぷっ。っとユキナは口を開け、その小さな口で護熾の肩に甘噛みをした。



「…………」

「…………」



 ユキナが肩に噛み付いてくるのはもっと抱き締めて欲しいという合図である。



「…………」

「……………………何か知らんが、落ち着くべきなのは俺だったみてえだな」



 しかし同時に護熾の方にも何かしらの効果を発揮するらしく慌てていた思考を冷静にさせた。

 それからユキナは口を離し、護熾の腕の中で彼の顔を見上げるようにする。


「ねえ護熾、じゃあ何で護熾はあんなにハグハグを求めてきたの?」

「いや、それはその…………」

「特に午後私を抱き締めて寝て、そして起きた時の護熾、何だか怯えてたね」

「!」


 彼女も気になっていたのであろう、初めて見る子供のように震える彼を。

 

「手も震えてたし、怖い夢でも見たの?」

「いや、まあ、そうだな……」


 夢の内容については詳細は述べられないが、とりあえずそう言ってみせる。

 すると彼女はソッと、両腕を伸ばし、護熾の首にしがみつくようにする。

 突然のことだったので護熾は呆然としたが、腕を巻き付かせてきた彼女を見下ろしてみると、彼女はそっと身体を持ち上げて彼の肩に顎を乗せてきた。



「大丈夫だよ、護熾。護熾が怯えるくらいなんだからとっても怖かったんだね」



 そう言って彼女は優しく、本当の母親のように、護熾の黒髪を撫でる。



「大丈夫、大丈夫だよ。私がいるから。側にいるから」



 そう何度も穏やかな声で、安心させようと、ギュッと抱き締めてくる。

 そんな彼女の行為に、護熾は心に引っかかっていた錘のようなものが外れていくような気がした。

 たとえ自分が二度この世から消え、そして帰ってきても普通に、一切拒むことをしなかった彼女の存在は、無くてはならないものだと改めて感じさせてくれる。

 だからこそ、自分は彼女の気持ちに応えることができる。


「…………ありがと、ユキナ」


 護熾はそう言い、彼女の背中に手を回して、抱き締め返すようにする。

 すると彼女は肩から顔を離し、彼の顔を見て微笑む。


「んっふふ~ん。何か結構良い雰囲気になってない?」

「……そこで話を歪曲させんなよ」

「んー? でも護熾は安心したように見えるけど?」


 良い雰囲気になったかどうかはともかく、彼女の気遣いのおかげで護熾は楽になった。

 それは紛れもない事実。

 今の彼女なら、例え内容を話しても返ってくる答えは一つであろう。

 いや、その答えは既に、大戦の終わったあの日に聞いたではないか。

 そんな彼女に、自分は救われる。


「……ああ、お前ってすげえよな。良い母さんになれるよ」

「!?」


 そう彼がお世辞を言ってみると、途端に彼女は顔を真っ赤にした。

 この瞬間、護熾も自分で何を言ったのかを自覚し、同じく頬を朱に染めて視線を逸らす。

 初心満載の二人は少しの間無言タイムを続けていたが、やがて護熾の方から声を掛けた。


「その、ユキナ……」

「な、何……?」


 顔を赤らめた男女が互いを抱き締めた状態で、部屋で二人っきり。しかも場所はベットの上である。

 簡単に言えば、護熾がそのまま押し倒してしまえば、準備完了である。

 ユキナは頬を赤らめながらも彼を見つめ、自分の胸がドキドキとしているのが直に聞こえてくるようであった。

 そして護熾は、ゆっくりと身体を傾け始めてきた。

 ユキナは心の準備をしながら眼を瞑り、腕に抱かれるがままにその身を彼に預ける。

 それから身体がベットの上に倒れる際、彼はこう言った。 



「寝るぞ」

「…………え? っておわっ!?」



 そう言って護熾は彼女を抱いたままベットに対して横に倒れ、布団を被り、電気を消す。

 

「明日お前帰りだろ? あんま夜更かししてっと帰る時間遅くなるからな」

「…………」


 彼氏からの明日の予定のことについて言われるが、ユキナは無言であった。

 残念ながら、やはり彼はそう言ったことには鈍感な部分がある。


「……? どうしたユキナ?」


 暗闇の中で彼女の様子に気がついたのか、護熾は抱き締めた彼女を見下ろす。

 すると腕の中でもぞっと何かが動き、自分を見上げたような気がした。

 しかも、割ときつい視線で暗闇の中で目が光っているかのようにも思える。


「護熾、護熾」

「ど、どうしたユキナ。何かお前からこの部屋の暗さよりドス黒いオーラが流れているような気が……」

「うん、何でだろうね? 期待した自分がバカだったのかな?」

「……? 何か期待してたのかってオフゥッ!?」


 鈍感彼氏に対し、自分は制裁を加えなければいけない。そう、アッパーカットという名の制裁を。

 そんな彼女の小さな拳から繰り出された技で顎を殴られた護熾は一瞬天を仰ぐようにする。

 それからいてて、と顎をさすりながら暗闇に慣れてきた眼で彼女を見下ろす。

 案の定、暗闇の中でも頬をお餅のように膨らませた彼女が怒った表情でそこにいた。


「護熾の、奥手」

「……………………………………あー、お前、そういうのを期待してたのか?」

「ふーんだ。もうそんな気分じゃないから知らないもん!」

「ええっと、そうだなー……」


 怒ってしまった彼女に対し、護熾は困ったような声を上げる。

 確かに彼女の期待を裏切ってしまったのには謝るが、ご生憎自分はまだまだ初心なもので。っと護熾はそう思いながらソッとユキナの黒髪を撫で、それから邪魔にならないよう耳の後に退かす。

 何の邪魔にならないようにするかというと――――、


「うん? 護熾、何して――――」


 ユキナが彼の行為に疑問を持ち、それを訊ねようと――――自分の額に温かいものが押しつけられる。


「!」

「…………っと、まあお休みのキスくらいなら」


 ユキナのおでこに口づけをした護熾は若干照れながらもそう言い、軽く微笑む。

 一方、彼からのお休みのキスを貰ったユキナは顔を紅くしながら黙り込んでしまったがやがて――――



 ちゅっ。



「んっ!?」

「護熾の、バカ………………ふふっ、お休み♪」


 彼女からはお返しに、頬に軽い口づけがされ、今度は護熾が固まる。

 そしてユキナは満足したのか、寒さを紛らわせるかのように身体を小さくして彼の胸に納まり、一足先に眼を瞑って就寝をする。

 そんな可愛い寝顔で寝始め、完全に眠ってしまった彼女に対し護熾は少し固まっていたが、やがてソッとその艶やかな黒髪を撫でた後、一言だけ添えた。



「…………ありがとな、ユキナ」



 決して届かないお礼の言葉を呟いた後、護熾も彼女を抱いたまま眼を瞑る。

 胸の中にある温かな体温は、優しい眠気を誘ってくる。それは深く、静かで、視界を暗くさせる。

 





















 

 風を感じ――――護熾は眼を開けた。



 眼を開けるとそこは青黒く染まった建物と地面。

 そして路地裏の決して人が来なさそうな陰気な場所であった。

 それから耳からは、少なくなった自動車の音、肌からは人々の静かになる気配が感じ取れた。

 


「…………また、ここに来たのか……」



 護熾はそう言いながら身体を起こし、片膝を立てて座るようにする。

 ここは紛れもなく二年前の七つ橋町――――彼女と別れ、意識を失った場所であった。

 今は深夜近くなのか、人の気配は近くに全くなく、ただ一人ポツンとそこにいるだけであった。



「…………俺に何しろ、っつうんだよ」



 何故この世界に来るのか。何の目的でこの世界に送られているのか。

 疑問ばっかりであるが、おそらく鍵を握っているのはあの少女に違いないであろう。

 しかし護熾は、あの彼女に会うのには少々抵抗感があった。理由は勿論、もう一度会ったとして、それでどうすればいいか分からないからだ。

 


 とにかく、彼女とはあそこで縁を切った。

 この世界で偶然会ったにしろ、彼女は怯え、自分を否定した。

 そんな怯えを見せつけられたまま、彼女に会いに行くなんて行為なぞストーカーか変態だけである。それでも心には小さな棘が刺さったかのような痛みがよみがえってくる。

 彼女は眼の使い手で、自分は元眼の使い手のただの高校生で。もう既に何の意味も成さないと言うのに。



『ずっと一緒にいてくれると思ったのに!! 何で、こんな化け物なのよ!!』



 不意に彼女のこの言葉が頭の中で繰り返される。

 冷静で、あまり感情を露わにしない彼女が言い放ったこの言葉がずっと小さな痛みとして残る。

 そう、自分の期待が裏切られたかのように、涙目で、自分に向かって叫んで。


 まるで――――――普通の人間だったらよかったのに、と言わんばかりに。





「………………………………ん?」





 彼女が言った言葉を思い出し、護熾は何か妙に心に引っかかる部分があることに気がつく。

 彼女は確かに、―――――ずっと一緒に居てくれると思ったのに、と叫んだ。

 それが何を意味しているのか、最初は正直分からなかった。

 では何故、彼女は自分を化け物呼ばわりする前にこのことを叫んだのであろうか。

 


 だって彼女は、ずっと一人で、誰とも交わろうとせずにいた。

 しかし、自分が鉄パイプにやられたあとは、自分がよく知る彼女が垣間見えていた。

 じゃあ何故一緒にいられると思ったのか? その答えは自分がどう答えたのかを思い出せばいい。



 護熾は確か、適当に誤魔化すようにしたら彼女は大戦で家族を失った孤児のように思いこんだ。

 それに帰るべき家がないとも言っていた。

 そして、彼女は尚かつ護熾のことをガーディアンでも兵士でもないことにとっくに気がついていた。

 それなのに、いやそれだからこそ、彼女は希望を抱いたのではないか?

 


 彼女は、どうせいなくなるんだから関わらないでと最初に言った。つまりそれは、例え仲良くなったとしてもすぐに異世界に帰ってしまって、二度と同じ人が来ないからそう言ったのだ。

 いくら人と仲良くしても、それ以上は仲が良くなることなど有り得ず、一人なのと変わらなかった。

 しかしそこに、カイドウという身元不明だが危険性がほとんどなく、しかもずっと一緒にいてくれるかもしれない可能性を秘めた人物が現れたとしたら? 

 ずっとずっと、見た目通りの少女で、寂しい思いをずっと隠してきていたとしたら?

 そして―――――――自分は、化け物という形で裏切ってしまった。



「…………………………………………………………………………………あー」



 そこまで考えて、護熾は少し間抜けた声を口から絞り出した。

 要するに彼女は、――――――――寂しかったのだ。

 五年間という悠久にも思える長期特別任務を、歳もまだ若すぎる少女がこなすには精神が幼すぎる。

 本来ならば同じ歳のみんなと笑い、楽しい学校生活を送っているはずなのに、ずっと一人ぼっちでいるのだ。



「………………ホントの馬鹿野郎だな俺は…………俺の何百倍も辛い思いをしてんのはあいつの方なのに……俺は自分のことばっかりだ」


 

 自分の存在を化け物扱いされる事に対してはやっぱりというか、正直心は痛い。

 しかしそれ以上に、彼女の方がずっとずっと痛いはずなのだ。

 自分の望みを絶たれたその痛みは、他人には分からない痛みなのだから。


 しかしそれが分かったところで、自分は何ができるというのか。

 自分には、気を感じ取ったりすることができて、この世界では傷を負っても死なない身体を持っていて。



(…………ん? 何か一箇所に連中の気配集まってねえか?)


 

 不意に、そんな気配を感じ取った護熾はその方角に顔を向けてみる。

 この気配は、明らかにこの世の影に潜む怪物達の気配であった。

 その中に一体、そこらの怪物よりも強い気を感じ取る。

 そう、ということはその場に、あいつがいるに違いない。

 この街の守護者として、誰一人知ることがない幼き少女が戦場に立っているのだ。



「…………とにかく、もう一度会わないと事が進まねえみたいだし……」


 

 正直、自分があの戦場に行くのには邪魔すぎる。

 しかし、何か一刻を争うような、そんな嫌な予感が同時に胸に過ぎる。

 まるで、誰かに用意されたかのような絶対不可避の事態があからさまに見えているかのように。



「まあ、もう一度会ったときは、その時はその時だ」



 もう一度彼女と会ったとき、彼女は一体どんな顔をするのであろうか。

 きっと、良い結果が待っていないと思う。 

 それでも、自分は彼女に会わなければ行けない。

 彼女に一言だけ言いたいことが、自分の胸の中にあったことに気がついたから、それを伝えに彼は寝静まろうとする町の中を走り始めた。

 


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