表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユキナDiary-  作者: PM8:00
134/150

ユキナDiary--その前シリーズ ~700日前後の物語~

どうも、予定より遅れて申し訳ございませんでした。

……っていうか、最近更新するたびにこれを言っているような気がしますがまあそこは気にしません。うん、気にしませんよ(汗。

 さて、続きは後書きでしますのでどうぞお進みください。

 因みに今回は前回の二倍近くになっておりますのでご注意ください。

 ※久しぶりの挿絵、下手くそですみません。










 独りぼっちの世界で、

 あなたの心にこの手を伸ばすことができるのならば。

 

 独りぼっちの世界にいる君の、

 透明な箱に入っている心に触れることができるのならば――――

 

 

 







挿絵(By みてみん)

 























「うう……」


 少し強くなった日差しが部屋の中に降り注ぐ中、ベットの上で寝ていた少年は呻き声を漏らす。

 そしてゆっくりと眼を開けつつ、自分の頭に手を動かし、さするようにする。


(な、何が起こったんだよさっき)


 突然、脳天から股まで裂かれるような衝撃を受け、意識を失っていったのは覚えているが、どうやら夢の中の出来事おかげなのか、痛みも何もない。

 そんな奇妙な感覚がありながらも、護熾は身体を起こそうとすると、何故か簡単に起きれず、お腹の方に違和感を感じた。

 何かこう、重さ三、四十キロくらいの米袋を乗せられているかのような感じである。


「って、ん?」


 その違和感が気になり、頭を少し起こすようにしてそちらに視線を向けると丁度、護熾の胸に這い蹲るように、大きな瞳が覗き込んでいた。そして少し長めの艶やかな黒髪からは、薄く甘い香水のような匂いがあり、小柄な身体が丁度護熾の身体に乗っかるような状態になっている。


「護熾、護熾」


 そう、ユキナが覗き込んでいるのだ。

 どうやら、彼女の方が先に目覚めて、今の今まで起きるのを待っていたのであろう。

 護熾はそれからチラッと目覚ましの方を見ていると、丁度お昼にはいい時間になっていた。

 それから彼女の方に視線を移すと、ユキナは胸にスリスリと頭を擦る。


「ごはん♪ ごはん♪」

「ん? ごはん?」

「ん。お腹空いたのー」

「何だ、お腹減ったのか? このもちもちほっぺ野郎がー」

「う~」


 自分の胸に顎を付けているユキナの頬を両手で軽くつまんでみせると、彼女は謎の呻き声で答える。

 頬の感触は見た目通りスベスベで柔らかく、まるでお餅のようであった。 


 とイチャイチャ(?)しながらも実は護熾、まったく食欲が湧いていなかったりする。

 もちろん、その理由としては、先程の世界では昼食直後に怪物達が襲撃してきたのだ。

 なので内心彼は昼食作りに何となくげんなりとした心境であったが、目の前の愛すべき少女が空腹であるならば動くしかない。


 と、ここで窓の外が少々小五月蠅いことに気がつく。


「ん? 何か外が騒がしいな」

「うん。実はさっきから大雨になってるの」

「ふーん……」


 護熾はそう生返事を返し、ユキナの頭をなでなでしてみせる。

 彼女は気持ちよさそうに眼を細める。

 そんな子猫のように甘えてくるユキナの艶やかな髪を撫でながら、護熾は少しずつ頭の回転を速めていった。今日朝っぱらから何してたっけ俺?

 起床→朝食作り→皿洗い→洗濯物干し→自主学習→昼寝。

 ああ、うん。こんな感じだよな。ま、休日の午前中なんてこんなもん……。

 っと、ここで護熾はピタッと撫でる手を止めた。

 それから冬なのにじんわりと脂汗をかきはじめると、それに気がついたユキナは訊ねた。


「? どうしたの護熾?」








「むっ、ぎゅっ!」


 ポフンとベットの上に何かが乗っかり、謎の声がした。

 そして海洞家の二階から一階へと何かが喧しく駆け下りていく。


「どわああああああああああああああああああああ!! 洗濯物ぉおおおおおおおおおおお!!」


 ユキナを優しくはね除け(?)、騒がしくドアを開け、ドタドタと脱兎の如く階段を駆け下りる。

 確か今日は晴れのはずじゃねえのか、と頭の中でそう思いながらも、午前中に庭で干している洗濯物達を回収すべく廊下を走って和室に足を踏み入れた時だった。

 

「あ、護兄。雨降りそうだったから一樹とユキナ姉ちゃんと一緒に終わったとこだよ?」

「あれー? 護兄珍しく遅かったね」


 部屋の中を見てみると、丁度最後の一枚を部屋干し用のスタンドに掛けていた絵里と一樹が、襖のところで固まっている護熾にそう言う。


「え? あれ? 洗濯物無事?」

「? そうだけど?」

「雨降りそうだったから帰ってきたらユキナ姉ちゃんがポイポイって部屋の中に入れてたから手伝ったんだよねー」

「…………そうか、よかったぁ~」


 洗濯物がびしょ濡れにならずに済んだことを心底安心した護熾は両膝に手を置いて溜息をつく。

 男主婦にとっては洗濯物の安否は気にするものである。

 すると後からやって来たのか、ユキナが護熾の背後におり、チョイチョイと指で背中を突いて振り向かせると腰に手を当てて得意げな表情で、


「ふっふ~、私が何もしてないとでも思った?」

「完全にそう思ってた」

「む、むー。で、でも護熾は私たちに言うこと忘れてない?」

「ん? …………あ、ああそうだな」


 ユキナに促されて、護熾は洗濯物を取り込んでくれた三人の顔を見据える。


「ありがとな。それと昼飯今から作るから待っててくれ」

「「「はーい」」」

 







「はーむっ。あぐ、むぐ」


 酢醤油にちょんちょんと付けた後に小さな口を大きく開け、ユキナは両手で掴んでいるモノに思いっきりかぶりつく。それは豚肉、タマネギ、タケノコ、干しシイタケなどをみじん切りにして煮たものが入っており、皮の上部にはひねったような模様がつけられている。

 そう、肉まんである。

 護熾達は今、昼食真っ最中であった。

 いつもは材料から昼食を作る護熾なのだが、この日は珍しく市販で買った肉まんである。


「何か珍しいね。護兄がただ温めて済ませるなんて」


 肉まんを半分ほど食べ終えた絵里はふとそう言い、護熾の方に顔を向ける。

 

「ん? まあ、そうかもな。でも今晩に力入れてるし、温め方には工夫はしてるけどな」


 ここで護熾の言う温め方というのは電子レンジを使った一般的なモノではない。

 何故かというと、下手に水に漬けた肉まんを電子レンジに突っ込んで奨励のワットと時間でやってしまうと水分が抜け、ガチガチのミイラ化した物体になるという危険性が潜んでいるからである。

 なので護熾は、中華鍋とフライパンを使った失敗しない方法で肉まん一度に全て蒸し上げる。


 まず、直接中華鍋に押し当てないよう、小皿などを置き、その上に肉まんをできるだけ敷き詰める。

 並べ方は花が咲いたように中心から並べると良い。

 それから水を、肉まんがおおよそ浸かる浸からないくらいの匙加減で入れる。そしてフライパンでフタをし約二十分間、じっくりと蒸し上げる。

 こうすると、多少焦げることは合っても、ほかほかに蒸し上がった美味しい肉まんを食べることができるようになるのだ。

 因みに市販で売られていたモノで、しかも特別で一個増量の六個入りを二袋使用しているため全部で十二個ある。なので一樹が二個、絵里、ユキナ、護熾が三個ずつ食べ、残った一個は最後に決めることにしている。


「あむ、ん、っと。じゃあ今晩って?」

「すき焼きとアップルパイだ」


 そう、護熾は昨日の夜に来た彼女(金曜日の深夜近くにいつも遊びに来るのだ)のために今晩は温かい鍋を。それに今が旬の白菜やゴボウを使いたかったし、この間豚と牛も安かったのだから使わざるを得ない。よって今晩はすき焼きに決定しているのだ。


「すき焼き?」


 っと、ここで三個目の肉まんを食べ終えたユキナが首を傾げる。

 元々すき焼きは家庭の豪華料理なのだし、異世界にそんな料理は存在しないので首を傾げてしまうのは仕方ないが、とりあえず護熾は楽しみにしておけと一言言うと、大皿に残された一つの肉まんに目がとまる。


「一樹、絵里。一個残ってるけど食べるか?」

「え? ううん。夜に備えたいし」

「同じく」


 姉弟は既に晩食とデザートのための胃袋調整に入ってしまっていた。

 料理上手な人間の晩飯をたくさん食べたいと思うのは仕方ないことなのだが。

 そして彼自身も、先程の眠りによるアレの所為で正直三個で胃袋が十分すぎていた。

 すると消去法で残るとしたら、


「ユキナ。喰う―――」

「食べる食べる! あむっ」


 護熾が言い終える前に、待ってましたと言わんばかりにユキナは手を伸ばしてヒョイッと取り上げると口を大きく開けて思いっきりかぶりつく。


「――か? って早っ! お前もうちょい味わって食べろよ~」

「ごくんっ。ん、だって別に護熾の料理じゃないしね」

「―!」


 ユキナの台詞は色々とケンカを売っているように聞こえたが、彼の作る料理はじっくり味わって食べていると主張した。護熾の方はその台詞にいささか問題があるんじゃないかと思いこんだが、愛する彼女にいつも自分の料理をゆっくりと、美味しく味わってもらっていることを面と言われ、何だかこう、怒るに怒れないというか――――嬉しいこと、言ってくれんじゃねえか。


「ところで護熾」

「……ん! って、おお何だ?」

「さっきアップルパイって言ってたけどもしかしてもうあるの?」


 不意打ちのように聞いてきた質問に対し少々驚いた護熾であったが、彼女の質問に対して答える。


「いや。昨日生地はもう作って寝かせてあるからな。だから丁度大雨で外出れねえ午後の間に作ってしまおうかと思ってるんだ」

「えっ、とじゃあ護熾その……」

「ん。どうした?」


 急に少し弱気な声になった彼女に不思議顔で護熾は言う。

 何となくだが、彼女は自分が今から言おうとしていることに躊躇が見られた。しかしまるで告白する一歩手前のようにぐっと息を飲み、それから彼に向かってこう言った。


「その……良かったら、手伝わせてくれない?」

「…………ああ、なるほど。いいよ別に」

「お、よ、よかった~」


 まるで今まで息をずっと止めてたかのように、彼女は溜息をつくと共に胸を撫で下ろす。

 おそらく、ユキナは断られると思っていたのであろう。

 確かに彼女は、護熾が気力の使いすぎで小さくなったとき、そのあまりにもな料理の無知を披露してしまっているのだ。あんな適当×適当=ヘルスブレイカーな物体を彼氏に喰わせた。その事実が不安を生み出すのであろう。

 因みに言ってしまえば、ユキナは現在母ユリアの下で花嫁修業中の身でもある。

 もちろん、それは立派な護熾のお嫁さんになることが最大の目的なので料理上手な護熾の下でも知識や技量などを吸収するつもりなのだ。





 昼食が済み、酢醤油まみれになった小皿を洗い終わった後に一休みし、それからキッチンとテーブルの上に冷蔵庫から取り出された材料達が並べられる。

 材料は紅玉(酸味の強いリンゴ)、レモン汁、砂糖、パイ生地、カスタードクリームである。

 ただ、注意が必要なのはとても美味しいアップルパイを作ろうとなれば初心者ではあまりうまくいかないという点である。理由としてはまず、リンゴは種類や焼き加減で味も歯ごたえも変わるし、アップルパイ自身も焼いた後じゃないと味が確認できないため美味しく作るには試行錯誤が必要なのだ。

 なので今回、ユキナはあまり大きな仕事は果たせないと言うことである。


 そんなこんなでエプロン姿をし、ユキナは三角巾で頭を覆っている姿の中、護熾の説明が終わる。


「っとまあ。アップルパイ自体、作る人によって変わるからな。カスタード使うか使わなかったり、シナモン入れるか入れなかったりな」

「じゃあ護熾のは?」

「俺はシナモン抜き。それから今回はカスタードクリームを完成時にはソースみたいにして切ったらとろっと溢れ出すようにしたい」


 それと付け合わせであんまり甘くないアイスクリームを添えるとさらに良いのだが、いかんせん時期が時期なので控えておくという。さらにアップルパイは冷やして食う方が美味いとも言った。

 因みに護熾の父、武はこのようなアップルパイを作ることができる。

 だからこそ、一種の挑戦みたいなものなのか、息子の護熾が今回は挑むのだ。


「よーし、んじゃあリンゴ切るぞー」

「うん分かった」


 まず最初はリンゴフィリングというアップルパイの主役を作るための作業に取りかかる。

 まな板の上でまず、リンゴは八つ割りにして端から厚さ五ミリくらいに切る。そして切ったそばから鍋に入れてレモン汁を絡める。レモン汁を絡めるのは変色を防止するためである。


 その作業を完了させるために慣れた手付きで包丁でリンゴを切っていた護熾は、やや信じられない光景を隣で目撃していた。それはまるで、奇跡に近いと言えるであろう。

 そう、あの、あの物体Xを作り出した彼女が―――リンゴを綺麗に切っているのだ。


 元々彼女は日本刀をブンブン器用に振り回していた身である。

 なので刃物の使い方は他の人よりは上手ではある。そしてそこに上達したいという揺るぎない意思とそれを手助けする女神の降臨(この場合はユリアを指す)によって今、彼女は人並みにリンゴを八つに切り、厚さ五ミリ感覚で切り、鍋にちゃんと入れているのだ。


(……ユリアさん、ホント感謝します)

「? どうしたの護熾?」

「ん。奇跡についてちょっと考えてた」

「? 変なの」


 そう言いつつも奇跡続行中のユキナは皮を綺麗に剥いてドンドン鍋の中に投入していく。

 そして全てを切って投入し終えた後に、今度は鍋の中に砂糖を加え、煮詰める。このときリンゴの水分が結構出てくるのでその量を見ながらできあがりを計る。

 その間に護熾はパイ皿に一晩寝かせた生地を作る作業に取りかかる。

 上手く均等に伸ばせたら。加熱による膨張で爆発しないようにフォークで何カ所か穴を開けておく。


「護熾ー。言われたとおり良い感じになってきたよー」

「おーし。じゃあ火を止めてくれ」


 見張りをさせていたユキナの手により火は止められ、別の皿に移し替えられる。

 それからこうしてあら熱を冷ましておけば後々リンゴフィリングは黄金色へと変わっていく。

 

「ユキナ。こっち来てみ」

「はーい」


 冷ますまでにはもちろん時間が必要である。そこで護熾は何か考えついたのか、ユキナを招き寄せる。

 ユキナは彼の声に反応してテーブルの方へ行くと、そこには生地が乗ったパイ皿とカスタードが入ったボウルがそれぞれ鎮座していた。


「ふんふん。何か良い匂いする」

「このクリームだな。割と甘めにしてるんだぜ今回は」


 そう言い、護熾はユキナが何か物欲しそうにクリームの入ったボウルを見つめていることに気がつく。

 もちろん、ユキナは甘いモノ大好きな女の子で味見がしたいのであろう。

 ならばここで願いを叶えてあげるというモノが男である。


「ちょっと味見してみるか?」

「え?」


 護熾はそう言うとクリームの入ったボウルに指を入れ、軽く掬い取るとそれをユキナの前に差し出す。

 ふんわりとした黄白で、甘い匂いが鼻の奥を擽ってくる。

 ただ、ユキナの方は何かに戸惑っているらしく、若干だが頬を朱に染めていたりする。


「ん? どうした? 味見してみろよ?」


 そんな彼女の様子を不思議がったのか、護熾は催促するようにそう言う。


「え? あ、じゃ、じゃあ頂きまーす」


 はむっ


 因みに先に忠告しておくが、護熾はユキナが自分の指に付いたクリームを口に含むのは分かっていた。

 ただ、それでも予想外の出来事というモノは起きてしまうモノなのだ。

 ユキナは小さな口で護熾の指を咥え込むと、舌でクリームを舐めとる。

 すると口いっぱいに、カスタード特有の香りと濃い甘みが広がる。


「うみゅ、おいひ(うん、美味しい)」

「そっか。まあ、パイの完成時にはもうちょいサラサラっとした感じになって欲しいんだけどな」


 カスタードの味を確認したユキナがそう言うと、護熾は早速指を引き抜こうとする。

 すると突然、引き抜く力とは逆に、ヒシッとそうはさせまい謎の力が加わる。

 それは見てみると、引き抜こうとした手を両手で掴み、まだ指を咥え続けているユキナであった。


「な、ちょっ、何だ?」

「むう~」


 未だに咥えた状態でいる彼女は、軽く首をブンブンと振る。

 それから今度はゆっくりと、咥えたまま舌をたじたじと動かし始める。


「まはすこひふひへいふ(まだ少しついている)」

「……!」


 ユキナの小さな舌が、まだクリームが残った人差し指を器用に舐めるものだから、護熾はそのくすぐったさに思わず身を引きそうになる。しかしここで、護熾はあるものを見て、石像のようにピタッと止まって固まってしまった。

 

 両手で自分の手を掴み、こちらを上目遣いで見ながら、たじたじと人差し指を舐める彼女は―――





                 

(―――可愛すぎだろが、こんちくしょう……)






「ん、ぷはぁ。うん、美味しかった――」


 ようやく満足したのか、護熾の指から口を離したユキナは満足そうにそう言う。

 そう言って、嬉しそうに、太陽のような微笑みで答えてくれた。

 それがまた何というか、先程のとてつもない、どうしようもない可愛さに胸打たれた護熾にはその笑顔に激しく反応した。

 

 それからふと、彼女の頬に両手が添えられる。


「ほえ? ご、護熾?」


 何故急に手が添えられたのか理解できなかった彼女は不思議顔で彼の顔を見る。

 黒く大きな瞳がこちらを見つめている姿は、とても可愛らしく、護熾はその瞳に吸い込まれるように顔を傾け始める。

 一方、護熾が顔を近づけてきたことに驚いたユキナは、一瞬ビクッとするが、すぐに眼を閉じて、受け入れるかのように淡いピンク色の唇をぷっくりと小さく突き出す。

 そんな彼女に益々、どうしようもない気持ちが込み上がり、唇を重ねようとしたときだった。


「護、護兄とユキナ姉ちゃんが……」

「しっ、一樹ったら見ちゃダメ!」

「「…………!!」」


 まさにその時、今の雰囲気には入ってはいけない声が耳に入り、恋する男女はその発生源にバッと顔を振り向かせる。するとそこには丁度、一樹の両目を片手で隠し、尚かつ自分は頬を真っ赤にしてこちらを凝視している絵里が、半分ほど開いたドアからこちらを覗き見ていた。

 一瞬の凍り付いた空間ができあがり、護熾とユキナはその場から固まって動かなくなる。


「あ、あはは。ど、どうも~」


 こちらに気づかれたことを二人の視線から察した絵里は、そそくさと一樹と共に身を引き、ピシャッとドアを閉めて行ってしまった。

 一樹と絵里が向こうに行ってしまった後も、二人は暫くはその方向に顔を向けていたが、やがて護熾は添えていた手を離し、ユキナも一歩横に下がって距離を取る。

 その両者の共通点を上げるとすれば、両者の顔はこれ以上ないほど真っ赤だったりする。


「え、ええとな。うん」

「~~~~…………馬鹿」

「わ、悪い……」


 真っ赤になっている顔を俯かせ、ユキナは軽く護熾の足を蹴る。

 護熾の方も、彼女の魅力に魅了され、場違いな行動に出てしまったことを反省していた。

 何というか俺も男なんだな、頭のどこかでそう思いながらも、手はパイの制作に取りかかり始める。

 

 ユキナの方も徐々にだが興奮が収まり、嫁修行の一環として小さなお手伝いを再開した。

 しかし、先程の彼氏の突発的な行動に対し、やはり驚きというか、喜びというか、自然と口が綻んでくる。


「もう、護熾の……大胆」

「あ、あのな。忘れてくれさっきのは……」

「ふっふっふ。一生覚えておく」

「お前な~~」


 ニヤニヤと悪戯を思いついたような顔でユキナは護熾を見上げ、彼の方は呆れ顔でポンポンと軽く彼女の頭を叩いてみせる。それから二人は台所に並べられた材料達を見てから、


「よし、それじゃあ一気にやるぞ」

「おー!」


 意気揚々とようやくアップルパイ作りに専念し始めた。






 リンゴフィリングのあら熱が取れたのでいよいよ最終段階に入る。

 まずフォークで何カ所か開けたパイ生地にカスタードクリームを流し込む。それからリンゴフィリングを全て載せ、余ったパイ生地で好きなように乗せる。今回は普通にさいの目状に並べることにしたのでユキナと協力しつつ残りの生地を乗せていく。そして照り卵をし、真ん中と周りに放射状に包丁で空気穴を開けておく。

 そしてオーブンを180℃にし、一時間焼いたら完成である。

 なのでオーブンに入れてしまったら後は暇を持て余すだけである。


「この後最後にアプリコットジャムを塗れば完成だ」

『うん楽しみだねえ。でも冷やす時間もあるから結局夜食べるんでしょ?』

「お前は待ち切れねえのかよ。それと中身がああだから三日くらいしか保たねえんだよな、あのパイ」

『へ~』


 そんな会話を繰り広げる二人は、ただいまコタツでぬくぬくしていたりする。

 季節と大雨の所為かこの地域一帯では気温が異常に下がっており、寒がりなユキナは特にコタツの奥深くへと潜っているので外から見れば護熾がただ一人で足を突っ込んでいるような光景になっている。

 

(……ホント、やることねえ~~)


 オーブンは一時間経てばタイマーで勝手に切れるし、少しほっといてあら熱も取るのでパイの方は心配ない。それに夕飯の支度だって一時半からすることではない。洗濯物は畳んだ。掃除は昨日してしまって埃をすら探すのは難しい。フロ掃除は絵里がするし、外へ行こうにも大雨が降っている。

 完全に暇を持て余している。自分の姉弟達は部屋で漫画などで時間を潰して居るであろう。

 じゃあ自分も部屋行こっかなー、何て考えついたとき、何やらコタツがもぞもぞ動いていることに気がついて視線を下に向けると、


「護熾、護熾」


 丁度足を突っ込んでいる辺りから布をはね除け、ユキナが顔だけ出して足の上に顎を載せ、名前を呼んできていた。どうやら暇つぶしはしなずに済みそうである。

 

「どうした? ユキナ」

「ん。そういえば護熾って自分からみんなを呼ばないの?」


 この質問の意味するところは、護熾が友人達を休日に呼び込まないのかという意味である。

 休日ならばこのような暇もできるし、何より毎週みんなとも会えるからだ。

 しかし護熾は少し息を吐き、顔を覗かせているユキナの頭を軽く撫で始めると、


「確かに毎週お前がウチに来てるって知ったら近藤辺りが喜んで来るだろうな。でもな、」


 そう言って撫でるのを止め、コタツに両手を突っ込むとユキナの両脇を掴む。

 ユキナの方は「ん?」と怪訝そうな声で言うが、そのまま引っ張り上げられると半回転させられ、そのままあぐらをかいた足の上に座らせられるようにする。

 それから目の前で腕が交差し、軽く身体を密着させるようにする。

 つまり、背中から抱き締められたという事実に気がつくまで数秒掛かったのだ。


「俺は、その、こうしてお前と二人っきりの時間が欲しいんだよ。誰にも邪魔されずに、な?」


 そう囁くように言い、ユキナの頭に顔を軽く押しつけるようにする。

 それから抱き締める力も強くし、言葉で伝えるよりも強く、愛してる、と言っているようであった。

 もちろん、このような行為にユキナは内心暴走状態であり、それを言葉にするならば、


(う、うわーど、どうしよう! もういきなり展開が急すぎて頭が、頭が熱膨張起こしちゃってるよ!メルトダウン!? いや何考えてんのよ私!? そもそもメルトダウンってのは炉内の核反応は暴走し、この反応に伴って発生する高熱によって、炉内の温度が急激に上昇して燃料集合体を融かし破壊するものでしょうが! え、え、ちょっ、破壊しちゃダメ! 破壊しちゃダメだってば!! え、えーととりあえずクールダウン。うんクールダウン…………)


 だがここで護熾の台詞の「二人っきりの時間が欲しい」が頭の中で繰り返される。


(う、う~~だから、だから……! う、う~~~~~~~~~~~~~~~~~!!)


 融解点は突破したようである。

 その様子に気がついた当の核爆発の犯人は彼女の顔を覗き込んで心配そうに見つめる。


「お、おいユキナどうした? 顔が今まで見た中でめっちゃ赤いんだが? コタツに入りすぎた?」

「う、う~~~もう、バヵァ……」


 ようやく彼女が絞り出した言葉はこれだけで、あとは大人しく護熾の胸に後ろ頭を小突いて納まっているだけであった。

 ただし、ここで彼女は自分が思いも寄らぬある効果を発揮していたのは気がつくことはなかった。

 その効果の矛先は、もちろん護熾へと向けられていた。その効果はと言うと―――、


(う、眠っ…………)


 何しろコタツの中に居たためにホカホカになった彼女を抱き締めているのだ。

 それはさながらコタツに入りながら冬毛になった猫を抱っこしているのと同じように眠気が瞼と意識に重量を掛けてくるのだ。

 ただ、コタツに入ったまま寝てしまうのは風邪を引いてしまうというリスクが存在する。

 海洞家で家事を担っている護熾が風邪を引いてしまうのは色々と危ない。だが彼女の温もりと、彼女の黒髪から漂う心地の良い甘い匂いがブラックアウトを誘ってくる。


(うおぉ、負けねえ!! まさかユキナを抱き締めるとこうも眠気がすごいもんなのか!? ああ、確かに夜寝るときに抱き締めて寝るとすごい眠れてすっきりした記憶があるようなないような。でも今ここで寝るわけにはいかねえ! ってか午前中に昼寝したのに午後に昼寝ってそんなこと……する……わけには…………やべっ……マジ………………かよ……………………)











 それから数十秒後、ようやく頭が冷静になったユキナは、ふとあることに気がついて顔を振り向かせた。

 その視線の先は彼の顔。だが彼の顔を覗き込んでみると規則正しい息づかいが聞こえた。


「……? あれ? もしかして?」


 大きな黒い瞳で覗き込む限りでは、彼女の予想はほぼ十割正解であろう。

 しかもその表情は、やはりというか、可愛い。なのでもっと構って欲しかったという気持ちと可愛い表情が見られたという嬉しさがこんがらがった複雑な気分であったが、とりあえず不満な方の気持ちに僅かに軍配が上がると、ユキナは頬をプクッと膨らませてこう言った。


「む~、何よ。また寝てるし…………」


 ただ彼女は、このあと起きることについてはまったく予想ができないことに出会すのであった。

 それは、彼が目覚める一時間後のことである。

 彼女にとっては一時間、彼にとっては―――長い一時間となる。














 それはまるで深い闇から、一気に何かに引っ張り上げられるような感覚に近かった。

 そうそれは一瞬の出来事で、重泥の闇から一気に純白の世界へと変わっていくようであった。

 それから自分が何か平坦な固い場所で仰向けになって倒れている感覚が身体全体で感じ取り、空気が静かに流れているのを頭で感じ取り、その感覚を脳に刻みつけながら、ゆっくりと瞼を持ち上げた。


 視界に入るのは、ぼんやりとした蒼黒の星空。ただ、風は冷たくない。

 そうして視界はハッキリし始め、幾億もの星々が瞬いているのまで眼で確認できるようになるとゆっくりと身体を起こそうとしたときだった。


「…………あれ?」


 ここは、と口で言葉にするより早く、護熾はさっさと今の状況を理解した。

 さすがに三度目となれば、もう雰囲気だけで感づいてしまう。

 ここは、過去。二年前の七つ橋町である。

 それからようやくか、自分の頭が包帯で巻かれていることに気がつき、それを手で触れようとしたときだった。


「あ、…………起きた」


 と、そんな護熾の頭上から、少女の声がした。

 護熾は声のした方向に視線を向けると案の定、小柄な少女がすぐ近くにいた。


「待って、まだ動かない方がいいかも……」


 そう言って起こそうとする身体に手を当てて制止を促すようにする。

 護熾は少女の、ユキナの言うとおりに上半身を起こすのを止め、再びコンクリートの地面に頭を付ける。

 正直最初、何故自分がこのような状況に置かれているのかについて理解ができなかったが、この過去の世界での自分の最後の記憶を掘り起こしてみると、その答えは自ずとすぐに見つかった。


「よ、よう。そういえば俺…………」

「うん。ずっと、意識を失ってた。丸一日起きなかったもん……」

「い、一日もかよ……?」


 彼女が嘘をついていなければ、護熾は本当に一日起きず、ここで寝かされていたことになる。

 傍らに座り込みながらユキナはそう言い終え、膝を抱えて少し顔を伏せるようにして、小さな声で何かを呟いたが護熾にはそれを聞き取ることはできなかった。

 だがそれを気にするよりも、護熾は別のことが大いに気になっていた。


「なあ、何で俺こんなことになってんだ?」


 それはもちろん自分が何故あそこで頭から思いっきり鈍器で殴られたような衝撃を喰らって丸一日意識を失っていたのかについてであろう。

 ユキナは少しの間、護熾の訊ねたことが聞こえていなかったような様子でいたが、何かが一区切り付いたのか、伏せていた顔を上げ、護熾の顔を見てから言った。


「鉄パイプ」

「……………………………………………………………………………………………………ん?」

「だから、鉄パイプ」


 何故、この少女がホームセンターなどでも購入が可能な鉄製の棒状な物体のことを言っているのか分からず僅かに首をひねる。しかしその単語に対して、すぐに何かしらの違和感を感じ取った。

 そう、鉄パイプは確か、自分が怪物から人を護ろうとしたときに使ったもんじゃなかったけか?

 そうなると、何故少女は自分が意識を失ったことと鉄パイプが関係していることを言ってくるのであろうか?

 そういえば鉄パイプって、あのとき怪物に弾き飛ばされて上に行ったんじゃなかったのか?

 そんな事を考えているウチに、護熾はだんだん、だんだんと一つの答えへとたどり着いてきた。


(いや、おい、んなまさか、いやでも、)


 もしそうだとすれば、などと想像してみれば、物凄く嫌な汗が出てくるんですけどと、護熾は青筋を立てながらユキナの方に視線だけジロッと動かしてみると、彼女は冷静に言い放った。




「あなたの持っていた鉄パイプが、あなたの頭に落ちてきたの」

「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! やべえええええええええええはずかしいいいいいィィィィィィ!! ていうか、ダセぇ!!」




 彼女の至極冷静な回答に、護熾は頭を抱えて盛大に悶える。

 つまり要約すればこうだ。

 彼は怪物に対して有効な装備を所持していなかったため鉄パイプを拾ってそれで応戦していた。

 しかし一度は不意打ちで顔面にフルスイングを叩き込むことに成功はするがすぐに攻撃に転じられ、その防御として鉄パイプで防いだが真上へと弾かれてしまう。

 だがここでユキナもびっくりの素手での顔面パンチで隙と作ってその場を離脱しようとするが再び攻められ、身を挺して庇うように行動を取る。

 その後ユキナがすぐさま斬り捨て、事なきを得て―――護熾が礼を言おうとしたときだった。

 


 丁度建物が通路を挟むような作りだったので怪物によって打ち上げられた鉄パイプがヒュンヒュンと回転しながら放物線を描き、重力に従って発射地点から少し下がった場所へ落下していた。

 そこには丁度、女性を護ろうとしていた護熾がおり、意識は完全にユキナの方に向いていた。

 ここまで言えば分かると思うが、要は――――自分の使った鉄パイプによって意識を沈められたと言うことだ。


 この屈辱さと恥ずかしさを例えて言うならば、体育の時間などに壁に全力でボールをぶつけ、跳ね返ってきたところを顔面で受け、ひっくり返ったのと同じくらいのものである。




「うわー、この有様かよ……………………ださい以外の言葉が、思い浮かばない」

「でも、目覚めてくれて…………よかった」


 そう言うと、ユキナはソッと手を伸ばして、護熾の手に重ねるようにする。


「カイドウが、このまま目覚めなかったら、どうしようか、って思ってた……」


 護熾の傍らにいる少女の声は、震えていた。


「全然目覚めなくて……揺すっても起きないし……一瞬だけど、死んだかと思ってた……」


 それはこの前まで見てきた冷たさや、眼の使い手だからと言う誇りを持っての冷静さなど無く、ただただ、ただただ、たった一人の小柄な少女としてそこに存在していた。

 今は暗いのでよく分からないが、その表情も何だか泣きそうな感じのようにも思えた。

 そこで、当然と言えば当然だが、護熾はここで一番の大きな違和感を感じ取った。


(何で……こいつ、こんなに……)


 俺のこと、こんなに心配してるんだ?

 今までの彼女の行動を見ていれば分かると思うが、自分がどうなっても彼女は無視したり置いてきぼりにしようとしたりと容赦はなかった。

 だからこそ、こうして介抱を受けていることは不思議なのだ。

 一人を好んでいるのならば、こんなに心配そうにせず、冷たく『役に立たないから帰れ』と言ってくるはずなのに、彼女はこうして何故か手に触れてきている。

 何かを求めようとする手は、温かく、どこか寂しげだった。


「と、とにかく一晩経ったとしてもまだ安静にしていなさい!」


 と、ここで急に思い出したかのように言うと手を離し、プイッと明後日の方向に身体を向ける。

 しかしさらにその態度を変え、急に身体をまた護熾に向き直すと脇に置いてあったビニール袋をゴソゴソし、


「な、何か食べる?」

「ん?」

「そ、その……一日中、起きなかったからお腹空いてるだろうと思って……」

「あ、ああ。ありがと……」


 そう言って受け取ったのは、彼女の好物であるビニールに入ったあんパンであった。

 ここでも護熾は驚いた表情になる。

 彼がよく知っている方のユキナは、自分の好物を食べるときは本当に独り占め状態である。

 しかし目の前にいる彼女は、人の心配の仕方を所々思い出してるかのようにぎこちなく、次いで好物であるはずのあんパンを差し出してくれたのだ。


「な、なあ」

「何?」


 貰ったあんパンを見つめながら、護熾は彼女に尋ねた。


「お前だったら、その……こんな失態やらかしたのに、俺を責めないのか?」

「責めないよ。だってカイドウが頑張ったから、一人助けられたもん。格好悪かったけど」


 それを言うなよ…、と護熾は苦い顔をしてみせると彼女は何だか嬉しそうに自然に微笑んだ。


「ん? そういえばもう、この包帯いらなくねえか?」

「あ、」


 応急処置などを一通り叩き込まれている彼女ならではの丁寧に巻いた包帯に護熾は手に掛ける。

 実際一日寝ていたおかげか、触っても痛くないので内出血もコブすら残ってはいないと思ったのだ。

 しかしその手を止めるように、横から小さな手が伸び、手首を掴む。


「……?」


 急に掴んできた彼女に対して、護熾は不思議そうな眼で見る。

 手首を掴んできた彼女は、少しだけ顔を俯かせ、何か言いたげそうな表情でいた。

 しかし首を少しだけふるふると振ってから顔を上げ、


「明日まで一応付けておいて。明日、ある場所に行くから」

「そ、そうか?」

「うん。じゃ、おやすみ」


 そう言うと彼女は立ち上がり、見張りに行くためかスタスタと屋上のフェンスの方まで歩いていってしまった。その場に残された護熾は、彼女が向こうに行ってしまったのと安静にしてるよう言われてたのでしばらくは夜空を眺めていたが、やがて瞼が重くなるとあっさりと眠ってしまった。(本人は『何回寝る気なんだよ、俺』と呟いていたが)









 彼が寝静まってしまった頃。

 膝を抱え、灯りのみが点る無人の町並みを眺めながら、ユキナは自分が言おうとしていたことを思い出していた。

 そう、本当は彼女は彼に無理をして欲しくはなかった。

 今回のは自業自得でああやって頭をケガしていたが、問題は彼はまともな武術を学んでいない点にあった。さすがに咄嗟に繰り出した右ストレートを顔面にヒットさせた腕前は偶然かどうかは置いといてかなり良かったのだが。

 しかしそれでも、大きなリスクを背負うことには変わりない。

 本来なら彼はこの場にいてはいけない人間の筈。しかし追い返そうにも、彼は異世界の人間ではないことは今まで見てきた様子から簡単に察しが付く。

 

 だからこそ、『あなたが異世界の人間じゃないことくらい知ってるから。無理しないで』と言いたい。

 でも、こんな風にまともに接してきた人に対して、どのように言えばいいか、分からない。

 それに、そのあとに自分が言いたい願いを言ってしまったら、彼はどうするのであろうか。

 

 その返答が恐くて、言えない。

 


 

 今まで出会って来た人の中で、唯一自分の願いを叶えてくれるかも知れない彼を、失いたくないから。




 だがこのとき彼女は気づいてはいなかった。

 日に日に、単独で狩りをするはずの怪物達がグループを成して襲いかかってきていることに。

 それはかつて、二年後に少年が日常を捨てたあの日のように――――。










 次の日。

 朝早くからパトロールのために、護熾とユキナは住宅街の道を並んで歩いていた。

 曜日は先程護熾がちょっと拝借してどっかの家のポストに突っ込まれていた新聞を確認したところ日曜日だと言うことが判明していた。

 

「あと数時間くらいでその場所に行くから」

「分かった。ってか早くこの包帯とっちまいたいんだが?」

「駄目。そこに行くまで駄目」


 二文字の否定言葉で護熾は反論できず、彼女の隣を大人しく歩くことにした。





 それから約束の数時間後。

 護熾達は何故か湯気が出る煙突がそびえ立っている建物の前に来ていた。

 言うなればそこは『銭湯』と言った方が分かり易いであろう。


「あれ? もしかしてお前が連れてきたかった場所って?」

「そう。ここ」


 銭湯の位置口に指さして訊ねてきた彼に対し、彼女はごく普通に首を縦に振った。

 どうやら本当に彼女が連れてきたかった場所はこの銭湯のようである。

 因みにこの銭湯、実は護熾の家の近くにあったりする。彼はこの銭湯を利用したことないのであんまり入り口に足を運ぶ気はなかったが、彼女の方が先に引き戸を開けて中に入ってしまったため、仕方が無く従う方針で同じく中に入っていった。




 お金を払い、男湯と書かれたのれんをくぐった護熾は改めて思った。


「本当に、一番風呂かよ」


 中に入った後、番台さんに『おっ、一番乗りと思ったら今日は珍しく男連れて来たのかい?』と驚いたような声で言ったのでまあこの時間ならそうじゃねえのと思っていたが、いざ自分一人だけの浴場となると何か贅沢のような、物寂しい気持ちが少しはあるのだ。


 因みに少しだけユキナが言ったことなのだが、彼女は数日毎にここに来ているようなのだ。

 そう、彼女は身体を洗うためにここに来ているのだ。

 いかに眼の使い手とはいえ、服と下着は換えがあれば融通が利くが身体を洗うのだけはどうしてもこういう場所に来なければならないのであろう。

 それに普通の日本人なら毎日身体を洗うのが一般的なのでこの少女の習慣にどこか違和感を感じ取るかも知れないが、いつ怪物が現れるかも知れないこの世界においてそうそう入っていられるモノではないのであろう。(注:ワイト人も一応毎日お風呂に入ったりしている)


「なるほどな。んじゃあ早速外させてもらうか」


 そう言って護熾はようやく頭を巻いている包帯に手を掛けると、シュルルっとあっという間に取ってしまい、それを籠の中に服と一緒に仕舞っておく。それから誰もいないがバスタオルを腰に巻き、いざ浴場への扉を開く。


(ってか、そう言えばここって俺ん家の近くだよな? てことは過去の俺がいるってことか……)


 そう言えば今まで中学二年生の自分にはまだ出会ってはいない。

 いやむしろ出会ったらそれこそ取り消しの付かない何かが起こるかも知れないので無闇に会いたいなどという気持ちを湧き上がらせてはいけない。


(そういえばあの頃の俺って、まだ色んな事が未熟だったんだよな……うわ、やべ、恥ずかしいな)


 過去の自分の失態を思い出したのか、身体を洗った後湯船に浸かり、その思考を誤魔化すために顔まで深く身体をお湯に沈み込ませた。





 二十分後、ホカホカの状態で上がってきた護熾が出てくると、丁度フルーツ牛乳を飲んでいたユキナが既にそこにいた。しかもこちらに気がつくまで、結構幸せそうな表情でいたので護熾は訊ねてみた。


「お前、じつは一番の狙いはもしかしてそれだったりする?」

「うん。だって美味しいから」


 それからこの場を後にした二人は、一日中パトロールをしていたが、この日は怪物は出現しなかった。

 こんな日もある、とユキナは言ったので元経験者の護熾もすぐに飲み込み、その日はやることなく過ごしていった。



 怪物が出てこなかったのは、もっと別の理由であることを、二人は知らない



 いや、それは唐突に訪れるものなのだ。

 早すぎるとか遅すぎるとか言うこちらが勝手に決めつけた設定など全てを壊して。








 そしてまた次の日。

 怪物達は昨日も現れることはなかった。


(…………どうなってやがんだ?)


 そう思った彼が考えたことは怪物達のことではなく、自分のことであった。

 彼は歩いている足を動かすのを止めてふと立ち止まり、自分の手を見るようにした。


(いい加減、戻ってもいいはずなのに。何だ?)


 そう、もう二日目なのに彼はこの過去の世界にずっと滞在していた。

 前回の二回は夜に睡眠か途中での休憩であっさりと戻っていたのに、ここのところ寝ても目が覚めたらこの世界のままという状況がずっと続いている。

 自分は確か、アップルパイを焼く一時間を待つためにコタツで昼寝をしたのに、これじゃあ何だか気がおかしくなっちまうじゃねえか。

 しかもこの過去の世界に来るたびに、いる時間が長くなっているような気もする。

 しかし彼がこうして妙に落ち着いているのは、どうやら彼女が一緒にいるからかもしれない。いや、実際いなかったらどうなっていたかは想像も付かない。


「カイドウ? 何してるの?」

「ん? ああ、すまん」


 急に歩くのを止めてしまった彼に向かってユキナが振り返って言う。

 この前の意識不明の状態以来、彼女はこうして置いてけぼりを喰らわせるようなことはしなくなった。

 そんな、ようやく対等と認められたような態度に対し、彼は喜びと言うよりはむしろ驚きの方が上だったりする。


(何だろうな……懐かしい、っつうにはちょっと変か)


 何しろこんな距離関係は二年後の彼女と出会ってすぐ以来の話だ。

 それに、もうここに来てから実質二日なのだから何だか新鮮な感じである。というよりむしろ、いつも会うたびに甘えてくる彼女の姿が何だか恋しいような、と妙な考えをして首をブンブンと振ったので、ユキナはそれを不思議そうな表情で見る。


「それにしても……何だろぅ、」


 ふと、ユキナは独り言を呟くように言った。


「何だ? どうした?」

「うん。何かここ数日、ちょっと変な感じがするの」

「変って、何が?」


 護熾も気になっていることがあったのでそのことについてではないかと思ったが、違ったら困るので敢えて訊ねてみることにする。


「何か、急に……連中の気配が此処一帯だけ消えたような感じなの」


 ユキナの話によると、護熾が意識を失った辺りから、怪物達の気配がこの町から消しているという。

 無論、これは彼女の感覚から得た何の確証もない言葉だが、広い索敵能力を持つ彼女だからこそ言えることであろう。

 それについては護熾も気になっていた。

 まるで、ありとあらゆる影がほんの少しだけその色を薄めたかのような、ざわつきが消えた静寂を。

 しかも、決して良い静けさではなくまるで嵐の前のような、そんな感じである。


 しかし、そんな中でも彼女は冷静でいる。

 何があっても、自分の持てる力で数々の敵を撃破し、彼が知る未来の彼女も相当な強さを振る舞っていた。


(これが、眼の使い手なんだよな……)


 分かっている。これが戦士としてのユキナの、自分の知らなかった姿である。

 独りでずっと、誰とも交わらず、戦ってきた少女。

 こんなすごい少女なのに、自分は嘘をついてその隣にいるのだ。もう開眼も死纏も使えず、ひと一人護るにもドジを踏んで心配させてしまう自分など、足手纏いの何でもない。とか考えても、別に良い案はなく、大人しく彼女についていくしかないのだが。

 それが、妙に無力感を募らせ、胸に小さな針が刺さったかのような痛みが残る。


 何で、こんなにすげえ奴なのに、あいつは俺と一緒に居てくれるんだろうか。


 思えば、自分の気力の高さに気がついて、ユキナがやってきた。それだけの話なのだ。

 しかも彼女は異世界の人間。生きている場所、立っている場所、何もかもが違う世界。

 本来ならば、出会うことは決してなかったのだ。


(…………あぁ~~~~~~~~~~~~~!! そう考えたって仕方ねえ! 今はこの状況においてこいつに協力するのが一番だ!)


 無駄に自信のなくすことを考えていては何も始まらない。

 そう決めた護熾は頭を少し掻き、ユキナの方にこのちょっとした異常について調査した方が良いんじゃないかという提案を伝えようとしたときだった。











 同時刻。

 この世界における非日常が日常に割り込んできていた。

 ただ、それは遠くから、気力を最小限にして大人しくしていた。

 そしてそのガラス玉のような眼に二人を映し込んでいた。

 

「おお、まさかこんなところで……見ーつけた」


 嬉しそうに、そう錆び付いた声で呟いた。













 護熾は大きく目を見開いて、今起こっていることを瞳に映していた。


 二体の怪物が、丁度ユキナの背後に突如出現したのだ。

 しかも、結界から現世に直接飛び出して。

 

 こんな高度な待ち伏せなど、本当ならばこんな連中が行えるはずがないのに。

 だからこそ、その時視界で捉えていた護熾は驚愕の表情へと一変させた。

 それから一瞬後に、ユキナは背後の怪物の気を捉え、同じく眼を大きく開いて表情を一変させる。

 しかし怪物の方がその手に宿る凶器を振り下ろす方が早かった。

 

 ただし――――護熾の方が彼女の肩を掴み、横へ押し退けるのが先であったが。



「え?」


 ユキナは、思わず間の抜けた声で上げた。

 当然ながら、相手を殺すために振り下ろされた二つの凶器は、紛う事なき護熾の真正面から振り下ろされたのだ。そして彼にはその攻撃を防御できるほどの反応速度や手段は存在していない。

 故に、悲劇は訪れた。


 護熾は頭から胴体まで、思いっきり爪で裂かれた。

 そして振り終える時とユキナが尻餅をつく頃には、護熾は大きく背中から仰け反り、何の抵抗もなく地面に倒れ込もうとしていた。

 それから倒れて何度か地面にバウンドした後、何か、結晶がばらまかれたような音が響いた。


「カイ…………ドウ?」


 自分を殺すために振り下ろされた攻撃を生身の人間が受けたのだから、その傷の深さは想像できなかった。


「カ、カイドウ――――――――!!」


 ユキナはすぐさま立ち上がり、目標を誤ってしまって困惑して一瞬隙を生んだ怪物二体に対してすぐさま瞳と髪の色を鮮やかな夕陽に変えると一瞬で抜刀と袈裟切りを行なった。

 怪物達は無論、一瞬の出来事に対抗できず、顔面を斜めと胴体を斜めに切られ、何の抵抗もなく黒い塵へと変わって空気の流れに運ばれて消えていってしまった。


「カイドウ!! カイドウ!!」


 だが、怪物の高度な奇襲を気にするよりも、まるで足の動き方を忘れてしまったかのようなもたつきぶりでユキナが駆け寄る。

 しかし、彼のすぐ側まで行って、彼女は凍り付いたかのようにその足を止めてしまった。

 その表情は、驚愕と何か、――――怯えるような表情。


「つっ…………無事か? ユキナ……」


 そのすぐ後に、護熾はゆっくりとした動作で片目に手を当てながら起き上がる。

 不思議と、痛みはなかった。

 いやむしろ、傷が酷くて痛覚が麻痺してるんじゃないかと妙に冷静な頭でそう思った。

 しかし、実際に痛みはなかった。


「…………? どうした?」


 ようやく彼女の視線に気がついた護熾は、不思議そうに彼女の顔を見る。


「い、や……」

「……?」


 しかし返事の代わりに彼女からは何か怯えるような声が帰ってきた。

 その表情は、ケガが酷くて見ていられないとか言うモノではない。

 むしろ、もっと別の存在を見付けてしまったかのような、そんな表情。



 するとふと、護熾は片目を覆っている手に違和感を感じた。

 自分は確かに、怪物二体から大型ナイフを振り下ろされたように思いっきり裂かれたはずだ。

 なのに痛みはないどころか血が一滴も出てきていない。

 そもそも――――何で覆っていた手を離したのに、『視界』が半分のままなのか……



「え?」



 ここでようやく護熾は気がついた。自分の片目が、無くなっていることに。

 そして、裂かれたと思われる傷口を探して身体を触ってみると、何かこう、溝のようなものがいくつもあるのが手から伝わってきた。

 そして恐る恐る、身体を見下ろしてみると、自分の身体はあった。傷口も、確かにあった。



 ―――ただそこから見えるのは、肉でも血でもなく、結晶のようなものが詰まっていた


(何だ、これ…………)


 もちろん、護熾の方が事情が飲み込めず驚愕の表情で居た。

 よくみれば、地面には自分の欠片だと思われる結晶の小粒がいくつも転がっている。

 何だよこれ、何だよこれ、と困惑している間にも、護熾はさらにもう一つ、気がついてしまった。


「いや、いや、いや…………」


 彼女、ユキナは見てしまっていた。

 そう、まるで信じられないものを見ているように、歯をカチカチと鳴らし、首をフルフルと振って一歩ずつ下がっていた。


「ゆ、ユキナ……?」

「いや……! こないで……」


 立ち上がった護熾に、ユキナは怯える声で制止の言葉を放つ。

 その一言が、護熾の何かを抉っていく。


「何よ……! 何よ、こんなの……」

「ゆ、ユキナ……! こ、これは俺にも分かんねえんだよ!」


 護熾は片手で無くなっている眼を隠すようにして、何とか落ち着いてもらえるように言う。

 自分でも何が起こっているのか分からないのだ。

 しかしその前に、護熾はもっと別の、彼にとって一番起きて欲しくないことが起きようとしているのが嫌によく分かった。

 目の前にいる彼女は、顔を俯かせて身体を小刻みに震えさせながら、


「何よ…………カイドウがガーディアンでないことも兵士でもないこと、知ってたのに……」

「…………!?」


 自分が嘘をついていたことをあっさりと告げられた護熾は言葉を失ってその場に佇む。


「それに、私と同じで独りで…………だから、だから……」


 それから彼女は嗚咽を引くような声になり、グッと息を飲み―――顔を上げてからこう言った。









「ずっと一緒にいてくれると思ったのに!! 何で、こんな化け物なのよ!!」











 顔を上げたユキナの表情を見ながらこう叫ばれた護熾は、ただ目を大きく見開いて立っていた。

 彼女は顔を再び伏せて息を荒くし、逃げようともせずその場に立ったままで居た。

 両者は少しの間、その場所で立ったままだったが、



「…………………………………………………………………………悪りィ」



 やがて、護熾の方から先に立ち去るよう、逃げ出すようにその場から走って居なくなった。

 その場に残された彼女は、ただ俯いて、見送ることもなくずっとそこに立っていた。

 


 




 護熾は必死に走っていた。誰もいない方へ、人気がない方へずっとずっと。



 心が、すごく痛かった。

 彼女からこうして否定されることが、こんなに苦しいとは思わなかった。

 そう、人間としてではなく、人外の存在として。

 彼女が海洞護熾として認めてくれるから自分はこうしていられたのに、過去の彼女とはいえ、全てを否定されてしまったかのような感じであった。

 だからこそ、あの場所にいることが恐くなった。

 確かに自分は、二度も死を知ってなお、この世に存在し続けている。

 だからこそ、自分でずっと抱えていくこととなる不安を、打ち消すことはできない。


 でも、それでも、彼女は受け入れてくれた。愛する人として、ずっと一緒にいたいから、と。




 でも、でも、心は悲鳴を上げていた。




 するといつの間にか、走っているはずの足の感覚がなくなっていることに気がついた。

 それから建物が入り組んだ場所に着くと突然、力が抜けたかのように身体を投げ出して倒れてしまった。横になった地面を見つめながら、それでも護熾は立ち上がろうとしたが、意識が掠めとられるかのように無くなっていき、真っ白な世界が目の前に広がっていった。









「………………」



 護熾は目覚めた。丁度、パイが焼ける一分前に。

 両足がコタツによって妙に温かく、両目はちゃんと、部屋全体を捉えていた。

 両手もちゃんとあり、鼻もパイの焼ける香ばしい匂いを捉えたので五体満足、この言葉が今は似合うであろう。


「あ、起きた?」


 するとすぐ下の方で、少女の声がした。

 そちらの方に顔を下げてみると、ずっと一時間近く座っていたのか、ユキナが振り向いてこちらを見ていた。


「…………」


 彼女の姿を確認し、護熾は徐に自分の身体を触ってみる。

 傷どころか服さえ破れておらず、普通の身体でちゃんとあった。

 それを確認してから、ようやく護熾は口を開いてユキナに訊ねた。


「お前、ずっと座ってたのか?」

「うん。あ、そういえばそろそろ焼ける時間だよー」


 体感時間で二日ぶりにあった彼女は、明るくて、パイが焼き上がるのを楽しそうな笑顔で言う。

 そんな彼女は、本当に愛おしくて、自分がどんな存在でも、愛してくれる。

 そんな彼女に、護熾はどうしようもない気持ちが込み上がってきていた。


「ユキナ…………」

「ん? 何? っておわぁっ!?」


 小柄な身体に二本の腕を回し、護熾はユキナを抱き締めた。

 ユキナの方もまさか彼の寝起き抱擁に驚いて思わず声を上げる。


「ちょっ、もう、護熾ったら……」


 本日三回目の彼からの抱擁にユキナは照れ隠しのつもりか紅くなった頬を少しだけ膨らませてみせる。

 しかしすぐに少し様子が変だなと思った。

 なぜならば、自分を抱き締めている腕が、震えていたからだ。

 まるで恐い夢を見た後の小さな子供のような、そんな震え。


「どうしたの? 何か震えていない?」

「…………ん。何でもねえよ…………何でも、」


 そう言いつつも、護熾は抱き締めるのを止めなかった。

 彼がそう言ったのでユキナは変に詮索せず、抱き締められるままでいた。

 彼が抱き締めている腕の震えは、ずっと止まらなかった。





 やがて、パイが焼けたことを告げるタイマーの音が、部屋に響いた。







っというわけで読了ありがとうございました。

いやー、一週間ほど前に消えてしまったのはすごいショックでしたね。でも一週間でここまでできるんだから本気でやって早く更新しろと言われそうですがw そして今回の話は前半が何か食べ物関係で変な感じだったと思われますが二万文字越えをした甲斐があってか次回でこのシリーズも終了となります。

 次回、そう、ユキナDiary-二周年目となる十二月ですね。

 あれから二年。やはりリメイクしか思い浮かばない自分が情けないですが、っておっと。そういえばガナ編のリメイクをしなくては、って新作の方はすごい長い放置プレイになっていますね。

 猫の手かウサギの手も借りたい今日この頃そんなことを思います。

 では次回もまたよろしくお願いいたします。ではでは~



 ※↑ 十二月中に更新できなくて本当にすいませんでした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ