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ユキナDiary-  作者: PM8:00
13/150

13日目 内なる理

 


 


 風が優しく屋上を吹き抜けていく。

 校舎内では生徒達ががやがやと昼休みを楽しんでいたがその昼休みももうすぐ終わろうとしている。半分開いた屋上の扉が風でキーッと重い音を立ててバタンッと閉まる。

 昼休み終了5分前、誰もいないはずの屋上からまるで空気から浮き上がってきた。

 一人は黒い髪のセミロング、一人は左頬が何か獣の爪みたいので抉られており、そのひっかき傷から血が首に伝わり、コンクリートの床に数滴落ちている。さっきの襲撃で壊れたはずの扉のところの壁は元に戻っており、へし曲げられたフェンスも戻っていた。どうやら本当に周りに被害は与えないようだ。

 ユキナは座り込んで頬のひっかき傷を気にするように触っている護熾に


「護熾……血がでてるよ…………」


 悲しそうな目で言った。

 護熾は声を掛けられたので目を向けて頬から手を放すと床に手をついて立ち上がりながら


「ん? ああ、あとで保健室にでも行くか、それよりお前すげえな! 開眼って状態になるとあんなに足が速くなんのか? まあ守ってくれて、ありがとな」


 自分の尻を手で叩き、ケガなどどうでもよさそうな口調でさっきの戦いでのユキナの姿に感動した護熾は少し微笑んで一歩近づいて自分を護ってくれた少女に礼を言った。

 しかしユキナは悲しそうな表情のまま、一旦視線を右斜め下に落として、それからまた顔を向けると


「私の開眼 “烈眼” 『烈眼』っていうのは私が貰った称号の事なんだけど、これは身体強化と共に足が異常に速くなるのよ。おそらく私の生体エネルギーが下部の強化を行っているのだろうけど………ちょっと顔を下げて」


 護熾に顔を下げるように言ったあと、ポッケからハンカチを取り出し、優しく護熾の左頬を拭い始めた。突然、自分の頬を拭いだしたユキナに驚き顔で固まってしまった。


「…………私はあなたをぜんぜん守りきれていない……ごめんね……怖い思いをさせちゃって…」

「ユキナ、お前――」


 護熾を守る、それが彼女の今の使命だが、軽傷で済んだにしろ結局は痛々しい傷をこしらえてしまったその姿に責任を感じたユキナは潤んだ目で護熾の頬を拭い続けた。

 一方、護熾はというと昨日からユキナにあんパンを食われたり、蹴られたり、後頭部に手刀を食らわせられて気絶させられたり、彼女のせいで惚れた男子共(しかも自分の友達)に追いかけられたりとろくでもない仕打ちを受けていたが、本気で自分を心配してくれているユキナに思わず見とれてしまい、潤んだ目で必死に自分の顔を覗き込みながら頬拭ってくれているその姿にかわいい、と思ってしまった。

 だが神様はこんなときには容赦しない。


 屋上の扉の辺りからバタバタと階段を上ってきてこちらに、屋上に近づいてくる足音に二人は ん?、と声を合わせてそのままの体勢で同時に扉に顔を向けた。

 そして両開きの扉の片方が勢いよく開けられる。取っ手を掴んでいる手が二人の目にまず最初に飛び込んでくる。続いて中を覗き込むようにした顔と目が合い


「あっ」 「あっ」 「あ!!!」


 最後に驚き声で二人に向かって言ったのは沢木だった。取っ手を掴んだまま護熾を見ると


「…………おじゃまだった?」


 と扉を閉めて引き返そうとしたが、突然沢木の後ろを誰かが押して閉めようとした扉が全開になり、まるでさっき扉の前で押し合いへし合いをしてたのか、雪崩のように生徒達が山積みになって二人の目に姿を現した。

 一番下になっている沢木の上に近藤が乗っており、二人の今の姿を見ると一瞬で状況を整理すると


「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ユキちゃん大胆!!!!」


 楽しそうに、甲高い声で茶化すように二人に向かって口の前に手で三角を作って叫ぶ。この山積み状態から何とか解放しようともがいている残りの1−2組の男子女子は一斉に二人に顔を向けると


「てめえ!!! 海洞!!!!! 抜け駆けが!? コノヤロウ!!」

「木ノ宮さん〜〜〜〜〜〜〜〜海洞はやめといたほうがいいよ〜〜〜〜」

「そうだそうだ!!! そんなちょっと料理ができるやつと付き合っちゃダメだぞ!!」


 団子のようになった1−2組の生徒からはわんやわんやと二人に向かって付き合っちゃダメよ! とか海洞ゆるさん!!などなど元気な罵声が屋上に響く中、このまま行くと何が起こるか分かず、不安になった護熾は団子になっている生徒達に


「こ、これは誤解だ! お前ら、何しに来たんだよ!!?」


 とやや慌てた口調でユキナから離れ、生徒達に誤解を解くように促すが、頬の傷は塞がっていないのでハンカチから離した途端、血がまたボトボト頬を流れ落ち、屋上の床に赤い斑点を作ったので、解くどころか新たな誤解を生み出してしまった。

 団子になっている生徒達の後ろから斉藤が避けて、よいしょっ、と屋上に出てきたときに、目の前に護熾がいて、しかも左頬に爪痕をしっかり残して血をダラダラと流しているので手で口を隠すようにして驚くとゆっくりと手を離し、目を見開いたまま心配そうに尋ねた。


「――海洞君! ケガしてるじゃない! 」

「あ、これか、心配はいらねえよ。ちょっと引っ掻いただけだ」

「ほ、保健室に行かなくちゃ! すごい出血よ!! ………大丈夫?」

「まあ、この傷で心配しないほうがどうかしてるかもな……わりぃな、心配かけちまって」


 自分の左頬を触りながら護熾は自分のことを心配している斉藤に少し微笑むように心配させたことを詫びる。斉藤は少し恥ずかしそうに視線を横にずらす。

 因みに団子から抜け出した近藤はそそくさとユキナに近づくと口のとこに壁でも作るようにして耳打ちをしていた。


『ユキちゃんユキちゃん、海洞は千鶴の初恋えものの人だから手をだしちゃダメよ。ほら、いいムードじゃない』

『そう言えばそうだったね。…………でも海洞君がケガをしちゃったのは私のせいだし……」

『あらそうなの? じゃあ、あのひっかき傷はユキちゃんの?』

『………………」


 近藤に屋上に怪物が出て、それを撃破していたら隠れていた一体が護熾を襲って爪で怪我をさせた、何て言えないユキナは黙秘をしていたがそれが間違いだった。

 近藤は『ふっふっふ』と少し含みのある笑いをすると


「襲われそうになったら私に助けを呼びなさい。私が海洞をギタギタにしてあげるからさ♪」


 何とも恐ろしい事を明るく伝えるのであった。

 一方、青春のムードを醸し出す海洞と斉藤を見ていた木村は護熾の頬の傷を観察するようにずっと見ていた。う〜〜んと暫しの間呻くように観察していると突然護熾に指を指して


「海洞!!! お前もしかして――」


 木村は指している指をワナワナと震えさせながら何か自分の大切な物を壊されたような顔をしている。護熾はキョトンとした顔で自分を指さしている木村に


「え、何?」


 と呟くように言った。団子状態から解放された生徒達は全員。木村の次の発言に注目しており、屋上の空気が緊迫した空気に包まれ始めた。

 そして駆け寄ってきて護熾の胸ぐらを掴むと


「木ノ宮さんを襲おうとしただろう!!? 」


 前後に揺さぶってお菓子を取られた子供みたいに叫んでいたのでどうして変な方向にしかもっていけないのかと護熾は頭の中で必死に悩んだ。

 一度ハッ倒したほうがいいんじゃないかと思ったが、それでまた誤解されたら最悪の悪循環になると思ったのでやめた。


「木ノ宮さん大丈夫? 襲われそうになったらおもいきりやっちゃっていいのよ」


 木村の言葉を真に受けた一人の女子生徒が心配そうにユキナに話したので護熾は


「だから襲ってねえって!! 」


 と、言った後『おめえが変なこと言うから妙な誤解を招いちまったじゃねえか〜〜〜?』と木村を羽交い締めにするとギリギリと締め上げたので


「わ……悪い……もう言わない……だから離して〜〜〜」


 さっきの威勢の良さはなくなり蚊の鳴くような声でやめてくれと言った後、護熾はフンッと、鼻を鳴らして下ろした。


「やれやれ、とりあえず保健室行こ――――あ!!」


 とりあえずケガの治療を受けようと扉に向かって歩き出した護熾は道を空けてくれた生徒達の前で驚くように叫んだ。

 急に叫んだのでその場にいる生徒全員がビクッとし護熾に顔を向ける。みんなが顔を向けている中、護熾が次に言った言葉はかなり情けない声で


「俺まだ飯喰ってね〜!! あ、もうやだこんちくしょう 」


 その場にいる全員が一瞬固まるがそのあと呆れた。

 結局、ユキナの結界の説明と怪物の襲撃によって時間がなくなり、ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが学校中に響いた。

 護熾は床に膝と両手をついてがっくりと項垂れて床にガンガンと拳を叩いて屋上に響かせていた。



 時間がなくなったので保健室には行かず、そのまま授業を受けようとした護熾は5時間目が始まるときに、先生に『その怪我どうしたんだ!!』と言われた後、保健室に行けと言われ、でっかい絆創膏を頬に貼って授業に復帰した。クラスのみんなからは指を指されたり、心配されたりしたが適当に答えて席に座り、黒板に書かれてることをノートに急いで書き始めた。

 そして、5時間目が終了した休み時間、護熾が今日、転入してきた美少女を襲ったんじゃないかという話で持ちきり、誤解を解くのに必死だったことは言うまでもない




 



 放課後。

 空が少し山吹色に染まる中、 生徒達が待ちわびていた時間がやってきた。学校という呪縛から解き放たれた生徒達は机の上に帰る準備をしたカバン、若しくは部活に行くために用意した物を置き、帰りのホームルームが始まるのは今か今かと待っていた。そして先生が教室に入り、『テストが終わっても気を抜かないように!』と生徒を見渡すように言った。

 

 ホームルームが終わり、生徒達はカバンを手からぶら下げて教室から出て行く。帰ろうとした護熾に呼び止める声がしたので振り返ると先生から


「ああ〜〜〜海洞君! 木ノ宮さん! 今日、日直だから放課後ゴミ捨てと黒板消しよろしくね」


 日誌と黒板消しを手渡された。護熾は怪訝そうな顔で職員室に向かう先生の背中を見送っていたが、やがて


「あ〜〜やべっ、すっかり忘れてた」


 呆然と手渡された日誌と黒板消しを眺めて呟く。

 今思えば自分のクラスの男子生徒達に追いかけられて日直の仕事どころではなかった。うやむやな気持ちが頭の中を巡るが、ここで怒っても仕方がないことは分かっていたので小さくため息をついた。


「もう、私が黒板消ししたんだから感謝してよね! 」


 近藤は小さくため息をついている護熾に向かって叫んだ。近藤は護熾が毎時間、男子達に追いかけられている護熾の代わりにユキナと共に日直の仕事をしてくれてたらしく、護熾は疲れたような表情を浮かべると


「あいつらに言ってくれ、あいつらに」


 引き戸のほうに固まっている男子達に指を指して睨んだ。ビクッとした男子達はそそくさと静かに階段に向かったが、木村だけは引き戸から顔を覗かせると『お前、木ノ宮さんに手を出すなよ!』と言ってきたので黒板消しを投げて撃退する。

 近藤は帰り際に『じゃあ、海洞とはほどほどに仲良くやってね!』と言い、部活に行く斉藤も


「じゃ、じゃあまた明日ねユキちゃん! そ、それに海洞君も……」


 最後は語尾を下げて恥ずかしそうに名前を言ったが、護熾は『おう、ケガすんなよ』と返事をしてくれたので恥ずかしくなり、その場で土煙を残し、全力疾走で顔を両手で隠しながら先に行ってた近藤を抜かし、行ってしまった。


 誰もいなくなった教室、グラウンドからは野球部の気合いの入った声が響き、武道場からは剣道部の部員が竹刀と竹刀をぶつけ合っている音が聞こえてきている。

 

「さて、ちょちょいのちょいとやって帰るか」


 ひっくり返しても零れ落ちないようにゴミ箱から取り出した袋の空きスペースを利用してゴミ箱をひっくり返して乾いた音を立てながらゴミが袋へと吸い込まれていく。


「そだね…………ところで護熾。怪物をあの時“吹き飛ばしたよね”? あんな力があったの?」


 黒板消しを持って、黒板に押し当てて消そうとしているユキナはゴミ袋をギュッと締めている護熾に向かって昼休みで襲撃されたとき、怪物を殴り飛ばしたことについて尋ねてきた。

 護熾はそのことについては特に気にしている様子はなく


「さあ、なんか咄嗟にでたんだよな〜〜」


 護熾ははっきりしない返事をかえした。実際、あの時には必死だったためよく覚えていないのが正直なところで、自分でもよく判らなかった。

 ユキナは『ふ〜ん、そうなの』と短く言うと日直の仕事を続行する。


 ――護熾の潜在能力なのかな〜〜でなければ普通の人が素手で“殴り飛ばす”なんてことは出来ないからね。


 と、思っていたユキナは横に移動しながら護熾の力について振り返り始めていた。

 

 自分が偶然発見したこの【現世せかい】での一人の少年。理由は分からないが“ステルス”を纏った怪物を結界無しで見破ることが出来て、これは本来【異世界パラ守護者アン】ではなく自分同様の【眼の使い手】でなければ不可能な能力のはずで、しかもその【力】は自分が生命の危機に晒されたときに人並み外れた大きな力を出すことが可能らしい。けれどまだ未熟なのは確かなので少しの間様子を見ることにする。


 こんなことを考えていたがやがて我に返ると黒板の下半分はきれいに消せていたが残りの上半分はユキナから見れば富士山のように高く感じられていた。

 ユキナは“ちっこい”のだ。


「あん、もうっ、届かない!! 理不尽よねこの高さ! 」


 高く飛び上がって上半分を消そうとするが焼け石に水で、ほとんど消せずに無駄な体力だけを消費していた。その様子を見ていた護熾はしっかり縛ったゴミ袋を肩に担いで背中にぶら下げていたが目を横に逸らし


「…………ふっ」


 口元を綻ばせて軽く息を吐くように笑った。ユキナの耳にはちゃんと聞こえたらしく、顔を少し朱に染めながら持っていた黒板消しを投げて、護熾の頭にプラスチックの部分が当てる。

 黒板消しを当てられた護熾は少しくらっとしたがすぐに表情を怒り顔に変えると


「痛ってえぇぇぇーーー!! 当たり所が悪かったらどうするんじゃーーー!! 」


 当たったとこを手で押さえながら護熾は投げ終えた体勢でいるユキナに指をさして怒った口調で叫ぶ。ユキナは体勢を戻すと同じように指を護熾に指し、

 

「あなたが笑うからよ!! この“変な顔”!!! 」


 物理攻撃の次は言葉で攻撃を開始し始める。しばらく二人は口喧嘩のせいで日直の仕事は一旦中止になり、互いが疲れた頃にはすでに太陽が沈み掛けていた。

 二人は残りの仕事をさっさと終えると教室に鍵を掛け、階段を降り、職員室の担任の先生の机に鍵を置いてきて、下駄箱で上履きから靴へと履き替えて校門へ向かって学校を出た。

 夕陽は暖かなオレンジの光を町に照らし、まだ口喧嘩を互いに炸裂させている二人の背中を見送っていた。






「ふぅ〜〜〜〜〜今日はいつもより疲れる日だったなーー。」


 いつもの数倍も疲れた護熾は自宅に着いたという安心感で思わずため息を漏らした。そしてドアを開け、靴を脱いで玄関を上ると元気よくこちらに走り寄ってくる二つの足音。


「護兄ーーー ユキナ姉ちゃん、お帰りーー!!!」


 一樹と絵里の今日の疲れを吹き飛ばす明るい笑顔が二人を出迎えた。護熾とユキナは一旦、顔を見合わせてから同時に顔を向けると一緒に


「よう、ただいま」

「ただいま、一樹君、絵里ちゃん」


 ただいまと一言息を揃えて言った。






 

















 音も何もない暗い世界。

 護熾はその中を彷徨うように歩いていた。時折、地面から光が漏れているようなとこもあり、護熾は一瞬でここは“どこでもない世界”と判断していた。

 自分は確かベットで眠りについたはずだが? そんな疑問を頭に浮かべながらも立ち止まり、床から出ている光を見つめていた。光はまるで火の粉のように宙を舞い、護熾にぶつかりそうになるがぶつかる前に消えて無くなってしまう。その様子はどこか悲しく、儚いものだった。護熾は床を見つめていたがこちらに近づいてくる足音に気がつき顔をキョロキョロさせながら


「なんだ! 誰かいるのか!?」


 叫んで返事を求めるが、返事の代わりに足音が大きくなり、やがて近くで止まった。護熾は音がした方向へ目をやると顔はよく見えないが“それ”は人であり、ユキナより身長が低いと分かった。護熾は安堵の息をついて近づきながら


「なんだ、どうし―――!?」


 声を掛けるが途中で息を詰まらせて双眸を大きく開いた。“それ”に見覚えがあったからだ。何かのキャラクターがプリントされたシャツと半ズボンを履いた“それ”は男の子だった。だがその目には生きている光が無く、無表情で自分を見ている護熾を見返していた。


 ―――こいつ小さい時の自分だ……


 今の護熾みたいに眉間に皺は寄せてはいないが、それは誰がどう見ても小さい頃の護熾だと分かる。護熾は無表情で見返している“自分”の口がわずかに動いているのに気がつき、一歩近づいて目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

 “自分”はやっと聞き取れるくらいの声で何かをしゃべっていた。護熾は耳を澄ます。


「よく来たね。でも君にとって僕はもう用済み。」


“自分”はそう言うと護熾に背を向けて、自分が来た方向へと戻り始めた。護熾は何が何だが分からず、『おい!お前誰なんだ!?俺なのか!?』と叫んで呼び止めようとするが、“自分”は足を止めてさっきより大きな声で、けれど静かな口調で護熾に告げる。


「君はもう“合格”しているよ」

「え?何を?」


そして闇の中へと溶けていくように消えていった。


「おい! ちょっと待て! まだ聞きたいことが……」


 消えた場所へと駆け寄ろうとするが意識がどこかに引っ張られるような感覚に襲われ、気がついたときには自分の部屋の天井が視界に広がっていた。護熾はベットに寝ていた。

 そしてガバッと上体を起こして部屋の周りを見渡すと


「ちょ、ちょっとどうしたのよ護熾。何かあったの?」


 壁に背中を付けて、護熾と対峙するように膝を抱えて座っていたユキナは突然起きたことにびっくりしながらキョトンとした護熾を見ていた。

 夢? それにしては妙に現実感があったな……、護熾はさっきの事についてユキナに聞こうとしたが、何だか疲れたため再びベットに潜り、ユキナからは『びっくりさせないでよ! まったく』と不満を込めた声を浴びせられながらも寝返りをうち、深い眠りへと落ちていった。





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