閑話 「理」にいる「その者」
命栄えぬ暗闇、風もない虚の世界。
暗く、床みたいなところから光でているような空間に“その者”がいた。
その者は石で作られたような豪華な彫刻が施されているイスに座って目の前で片膝をついている怪物を見下ろしていた。様子からしては人間のような風貌であるが、怪物の徒情ぶりからしてよほど高位の人物なのであろう。
「5体もの怪物を送り込んだのですがことごとく何者かに倒されました。報告に寄れば、それは一人の少女だということです。」
両肩に水晶の珠をくっつけたような怪物がその者に現状報告をしていた。
周りにはうじゃうじゃ怪物達が声にならない叫びを発していた。その後ろに連れ込まれてきたのだろうか、意識を失っているかのように倒れている人々が集められるような形で寝かされている。
「ほお、奴らの中で腕のいい奴がいるようだな」
その者は楽しそうに微笑んでその報告を聞いた。影のところにいるので姿がわからない
「どうします?次は少し強いものを差し向けたほうが……」
「そうだな……そいつの力も見てみたいしな……」
「では、知識持ということで…」
報告した怪物はその者に礼をし、その場を離れた。
怪物がいなくなったの見計らってか、その者は深く溜息を付いた。
そして虚空を見つめると
「…………奴が死に際に言った“希望”なのかもしれないな」
その者は誰に言っているわけでもなくそう呟く。
ここは理両方の世界を繋いでいる“橋”であり、この世の“常識”
「また、現れるのだろか……あの大馬鹿者みたいな奴が……」
そう言いながらその者は自分に最期までユキナが持っている日本刀を振りかざし自分のところに迫ってくる“男”を思い出していた。眼と髪が緋色の、若い男を…
この巨大な部屋の中央には白くだが時折様々な色合いの光をみせる巨大な四角い物体がゆっくり回転しながらその場を浮遊していた。それはこの暗闇の世界で唯一、“光”を出し、その周辺を暖かな光で染めていた。
その者はイスから立ち上がり、その四角い物体を眺めるように見た後、撫でるように手をかざすと
「理よ、お前はどう思う?」
理と呼ばれた物体は答えるわけもなくただただ、ゆっくりと回転しているだけだった。
その者はその場から身を翻して部屋から出て行った。




