表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユキナDiary-  作者: PM8:00
1/150

1日目 異変

 

 え~、この度はユキナDiaryーをお手に取って頂きありがとうございます。

 恥ずかしながら私の処女作、ハッキリ言えば描きたいもの、書きたいものをふんだんに書かせてもらった作品なので面白い面白くないかは読者さん次第です。ハイ。

 この物語はフィクションです。実際に出てくる団体名、町、人々は一切現実には関係ないのでご了承下さい。

 尚、主人公は二人で少年一人、少女一人となっております。

 くれぐれもあんパンを食べながら見るのはご控え下さい。無くなってても作者は責任を取りません。

 

 では『ユキナDiaryー』をお楽しみ下さい、どうぞ。

 


 


 時は現代、人々は知らなかった。

 幾重の時を自らが積み重ねる中、人々は知らなかった。

 知らない方が良いのかも知れない、知っておいた方が良いかもしれない。しかし人々は知らなかった。

 あらゆる命が栄えるこの世界で自分達が何者かに狙われ、何者かに護られているということを、少年は後悔する。

 しかし今は違う、ずっと歩んできた人が隣にいる。

 その人物は少年に向かって何か話しかけてきた。


「どう思う? ○○?」

「どうって………そんなこといわれてもな~~」

「もうっ! 素直に言いなさいよ!!」

「…………牛皮に包まれた○○○」

「何でそうなるのよ!?」

「はいはいはいはい、ごほんっ……きれいだよ」


 こんなやりとりはずいぶん先の話。今はそっとしておこう。





 それは突然邂逅する。風のように、光のように、太陽のように。

 少女は温もりを知らない、少年は真実を知らない。

 きっと互いに、そのチャンスがなかっただけ。だからこそ、世界は二人を会わせてくれる。





 


 夏だった。紛れもなく日本の関東の夏だった。

 陽炎が大地に揺れるその中、季節外れのフード付きパーカーを身に纏い、青いスカートを履いた少女は人で賑わう商店街の中を歩いていた。

 今日は平日。少女の容姿からは学校へ行ってもおかしくないはずなのだが彼女はその必要がない。

 別に不登校でもサボったわけでもないのだ。

 理由は信じられないかもしれないが、少女はこの世界の住人ではないからだ。

 可愛らしい、そしてどこか凛々しい顔立ちで小柄な少女は何かに気が付いたようにピタッと道の真ん中で足を止めた。

 そして何度か誰かに呼ばれたのかのように辺りを見渡し、大きな瞳で周りの景色を映し出すが外れだったようですぐにその場から走り出す。

 

 そして何かの“気”を感じ取った少女はその方向へと体の向きを変えると険しい表情で睨んだ。

 その目に映ったのは『人ならず者』。

 少女はその『人ならず者』に向かって一直線に走ると歩いていた人が忽然と姿を消した。

 しかし少女にとっては当たり前らしく、そんなことをお構いなしで風を切るように地面を蹴って走り、険しい表情のまま近づいていった。

『人間ではない者』は何かを肩に担いでいたがこちらに近づいてくる少女に気が付き、目をやる。

 そこに映ったのは――――





 日本刀を振りかざし、銀色の刀身を商店街内に差し込む日光で煌めかせながら、瞳と髪の色が鮮やかなオレンジ色に染めた少女がこちらに向かって襲いかかってきているとこだった。狩る者と狩られるモノ、その立場が逆転した瞬間さえ理解できずに、人間でない者は数秒後にはそこからなくなっていた。








 こんな日常を繰り返す少女とは対照的に、少年は歩いていた。

 





 暑さが増してくる7月下旬。

 呆れるほど澄み渡った青空は乾いた空気をどこまでも運び、セミはあちこちで木にとまって鳴き、夏本番が近づいているのを知らせていた。 

 そんな中、昼頃にある一人の白い夏の制服を着た少年が川を横切る橋を渡っていた。

 服装と顔立ちからして高校生であろう、歳は十代半ば、普通の高校生なのは分かるのだが眉間に皺を寄せたような表情をしているので不機嫌そうにも見える。

 

「ん~~」


 護熾ごおきはカバンを持っていないもう片方の手で何か半紙みたいのを難しそうな、もっと眉間に皺を寄せた顔でのぞき込み、呻くような声で言った。

 そこにはこう書いてある。


『大特価!! 商店街祭!! 

  こなきゃそんそん 売り切れ必至!! 

    開始時刻は12時から!! すべてが安い!!』


 護熾は紙を翻して裏面も見て、他に何を買うかを検討しながら先に赤ペンで○をつけた自分が買いたい物をもう一度確認した。

 途中、人とぶつかりそうになるがヒョイと避ける。

 護熾がチラシから目を離して前を見たときにはすでに商店街の入り口だった。

 商店街祭りが目的で来ている買い物袋を手にぶら下げたおばさん達が井戸端会議をして時間を潰しているのが目に入る。

 

 商店街の門に飾られている時計を見るともうすぐ12時になる。

 護熾は首を振り、屈伸などの軽い準備体操を始めた。これから起こる壮絶な戦いに向け、思考、判断、視力、そして何より目的の場へ急ぐための全身の筋肉を軽く叩き起すためだ。それから自身のリュックから何やら四角に畳んだ布のようなものを出し、取っ手の部分に手を通すと折り畳まれていた部分が展開し、その姿を現す。

 人はそれを、―――――マイバック(このご時世エコバックともいう)と呼ぶ。戦闘準備完了、スタートラインに並べば、その瞬間から戦士しゅふである。

 刻限が迫ったのか、入り口前は見張りの係員がゾロゾロと真夏だということを忘れたかのように人だかりの誘導や制御に汗を流している。自分より前から来た人は大勢いる。そんで割り込みとかそんなアンフェアなマナー違反しようとは最初から考えてはいない。ここは健全たる男子高校生の肉体で勝負に出る。


 人だかりをある程度宥めた係員達は巻き込まれないように横へと非難し、合図のためのホイッスルを手に持つ。商店街の時計塔が指し示す時刻は11時59分。もうすぐお昼である。

 そして――――ホイッスルが係員の口へ運ばれ、咥えられる。その光景を見て、人だかりの中から生唾を飲み込んだ音がいくつか聞こえた。聞こえたというのはすでにセミの鳴き声しか聞こえないほど静かになっており、いつのまにか緊張を溶かし込んだような空気が辺りを支配していた。

 そしてとうとう、商店街内の時計塔が11時59分から―――――カチッ、12時に切り替わる。


 ピィイイイイイイ―――――――――!!


 響き渡るホイッスル、その瞬間、開始の合図だと捉えた護熾はスタート姿勢を取り、猛烈なダッシュをし、瞬く間に人だかりの中を突っ切り、トップランナーとして一番乗りに商店街へと侵入する。

 後から緊張やらなんやらで反応が遅れた買い物袋を持ったおばさん達が走る。その光景、シティマラソンの間違いでは勘違いをしてしまう。

 走る音が商店街中に響く中、先頭を走っている護熾は曲がり角を上手に曲がりながら、


(―――やべっ、おばはん達にとられる前に全部買うぞ! あの人たちここで無駄に覚醒するから油断したら一気になくなる!)


 心の中でおばさん達の脅威を知っているような思考を広げる護熾は経験から弾き出される一切無駄のない動きで各店の自分が買う物を手に取り、レジへレッツゴー即座に買い、次の店へ行くという端から見ればマラソンと何かを融合した新競技に思えるかもしれない。そんな中、護熾は買いたい品が多く売られている店へ梯子渡りし、15分経過する頃には両手に背中のリュックに戦利品が詰まった状態で満足そうな表情で最後のスーパーから出てきた。どうやら彼はこの手のことは手慣れのようだ。

 

「いやー大漁大漁! この日のために三日前から計画練ってて良かった~!」


 低価格買取戦争バーゲンセールに見事勝利を手にした護熾は両手のエコバックに入った商品トロフィーを持ちながら最後に自分が入ったスーパーから出ようとし、急に足を止めた。

 

「うぉっ!? 明日の昼飯買ってねえや!?」

 

 いくら低価格戦争バーゲンセールで買おうとも、明日のための昼食分ふつうのかいものを考えていないのならば意味がない。そう多少の面倒くささに歯痒さを感じながらもスーパーに180度体の向きを変え、とぼとぼと力を使いきったかのような足取りでいざUターンをする。

 店内に入り、自分の昼食を買おうと入れるための買い物かごを手にしようとしたとき―――少女が横を通り過ぎた…………気がした。

 護熾はふと視界の端に入った少女らしき影が気になり、後ろを振り返るがすでに少女などおらず、未だに戦場で動き回っているおばさん達の奮闘図しか視界に映らなかった。

 気のせいか、と決めつけた護熾は体を前に戻して、手に買い物かごをとって入店していった。

 

 




 人混みを避けながら走っている少女は何か苦々しい表情で時折後ろを見たりと明らかに警戒した様子で前に向き直り、独り言を呟いた。


「何? さっきの……一瞬だけだけどすごく強い気を感じた」


 少女は結局それが何だったのか分からず頭に靄が掛かったような不安と疑問を持ちながら、ただひたすら走り抜けていった。少女の姿はやがて見えなくなった。








「よっしゃ、これで帰れるな」


 入店してから五分後。

 新たに買った商品はビニール袋の中に詰め込まれており、パン類だとすぐに分かる。

 護熾はここにいる理由がなくなったのでカバンに買った商品の内、入るものは入れ、入らないものは手に持ってこの場を後にした。














 その夜のことであった。月が怪しく光り、光を町全体に降り注がせている。

 商店街が少し騒がしかった。 

 一人の中年の男が見てはいけないものを見てしまったような恐怖に歪んだ顔と血が走った目で商店街の裏通りを何かから逃げるように走っている。 途中、ゴミ箱にぶつかり、入っていたものをぶちまける。

 だがそんなことに気にも止めずよろけた態勢を急いで戻して走り続ける。


「ひ……ひ……なんだあれは……!?」


 全力で走っているせいか、息を切らしながらそう言う。

 角を曲がるが行き止まりであった。

 すぐに引き返そうとするが“それ”はもう目の前にいた。音もなく突然現れた“それ”に心臓が飛び出しそうになりながらも腰を抜かして後ずさりをしたが、壁に背中が当たってもう逃げられない状況に自分が追い込まれたと改めて実感したとき、大人とは思えない泣き声混じりの大声で叫んだ。


「うああああぁぁぁ!! やめてくれぇえええええーーー!! だ、だれか、助けてくれ!! 誰かァああああああああ!!」


 両手を光りでも避けるように顔の前に出し恐怖のあまりに助けを求めるが残念ながら誰一人として近くにいなかった。

 それは泣き叫ぶ中年の男の頭を左手で易々と掴んで持ち上げ、無理矢理立たせると男が次に何かを叫ぶ前に左手で腹を殴って気絶させ、ぐったりと体を前に倒した男を抱き留めるとそのまま肩に担いで踵を返し、どこかに連れ去ってしまった。そして静かになり、月は何事もなかったかのように町を照らし続けていた。

 





 ある家の二階では今日の戦利品(明日のための昼食含む)を自分の机の上に並べるようにして置き、数の確認をしている少年がいた。

 そんな少年、護熾は右から順番にメロンパン、あんパン、あんパン、クロワッサン、サンドイッチ(ハムと卵)、を並べ、まるで壺を綺麗に並べてその光景に喜んでいる大富豪みたいに口元を緩め、野菜類はここに戻ってから一緒に摂ればいいやと判断を下すと窓に向くようにベットに座った。

 

 教科書とノートをカバンから取り出しベットに置くようにすると丁度耳障りな、人の悲鳴みたいな声が聞こえたので少し驚いた表情で顔をあげ、窓の方を見た。

 するとやや大きい影みたいな黒い物体が屋根を伝って通り過ぎ、窓のガラスを少し震わせたのを見たので飛び降りるようにベットから降り、急いで駆け寄り、窓を開けて縁に手を掛け、身を乗り出すようにして外を見るが既にいつもの夜景に戻っていた。


「?? 何だ? さっきの? ……もしかして幽霊だったり……」

 

 そんな想像をした後、背中の方がやけに冷たく感じたのであー、やだやだと窓を閉め、カーテンも閉め、ベットにまた座り、今の出来事を忘れるかのように教科書を眺め始めた。

 


 


 

 暗い住宅街の道を一人の少女が走っている。

 その目は真剣そのものですべての感覚を研ぎ澄ませているような顔をしている。

 そして急に道の真ん中で家を飛び越えるほどの、普通の人間ではあり得ないほどの跳躍をして、ある程度の高さまで行くと宙を地面のように蹴って方向を急に変え、ジグザクに上昇していく。

 

 そして宙を蹴るのを止めた少女の姿が一瞬にして変わった。

 瞳の色と黒髪が鮮やかなオレンジへ変わり、変わった瞬間にブワッと髪が舞い上がり、火の粉のようなものが辺りへと散る。その所為か少女の周りにある暗い空間が少しだけオレンジ色に照らされ、一瞬だけ街灯のような優しい光が生まれる。

 少女は空中で変身した後、住宅街の上空を地面のように降り立ち、衝撃を受け流して体を留まらせるとギロッとその両瞳で前方を睨んだ。

 

 少女が睨んだ10メートル先には明らかに人間ではない、異形の姿をした人型の怪物が同様にこちらを睨んでいた。

 暗くてよく判らないがそれは灰色と赤茶色の毛を纏わせた身長二メートルくらいの怪物で見た目はどちらかというとライオンに似ていた。牙を剥き、威嚇をするように唸っている。

 少女は自分が探し求めていたような残酷な表情と憎しみを込めた眼差しで見据え、両足に力を入れると一気に前方へ体を弾き飛ばした。

 

 空中を地面のように疾走し、先に勝負を仕掛けてきた少女に怪物も一回上空に向かって吠え、同じように二足歩行で走り始めた。

 どんどん距離が縮まっていく中、少女と怪物は互いに相手の命を奪い去ろうと一手に懸ける。

 怪物は爪と牙を剥き出しにして迫り、少女は右手を自分の懐に忍ばせる。

 

 そして互いに一歩手前で交錯する刹那、怪物にはスローモーションのような世界にでも迷い込んだようにゆっくりと少女の姿が見えた。

 怪物は振り下ろそうとした爪が真っ二つに斬れていることに気が付き、疑問の思念を浮かべるが次の瞬間、視界が真っ暗になっていった。



「倒したようね。あと一匹」


 少女は何かを確信したかのように、つまらなさそうにそう呟くと怪物の横を通り過ぎた。

 右手にはいつの間にか月光で輝く日本刀が握られており、少女が通り過ぎた直後に怪物は爪と腹を横真っ二つに斬られ、上下に分断されていた。

 

 そして絶命した怪物は断末魔を吠えることもなく塵へと姿を変え、そのまま地面に向かって体を崩しながら落ちていった。

 少女はその姿を見ることもなく戦いが終わったと確信し、オレンジの瞳と髪を元の黒に戻すと同時に握られていた刀も光の粒子へと姿を変え、手元から消え失せた。

 少女は次の相手を探しに、休む暇もなくその場からまた走り出した。

 怪物を斬り捨てた少女は怪物と戦うにはあまりにも幼い姿をしていた。



 



 町は何も知らず、ただ夜が明けるのを待つのみ






 丸々一話お読み頂きありがとうございます。

 次に面白いと思った方、気になる方は次のお話にお進み下さい!

 それでは、ではでは~

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ