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第六天魔王と呼ばれた男 ~VRMMOで魔王やってます~  作者: ネコルク
第一章 六翼の魔王
9/28

エリ


 到着したのは、ガゼットの店から程近い場所にあるプレイヤーが経営する店だ。

 ここもガゼットと同じくアインから紹介された店だ。あいつの交友関係の広さには驚かされる。思えば昔からあいつは人と仲良くなるのが上手かった。以前一緒にやっていたゲームでも、アインの交友関係の広さに助けられたことが何度もある。


 今回訪れたのは、防具店だ。防具店といっても、鎧などの金属製品ではなく革や布製品をメインに扱っている店だ。


 店に入ると、カウンターにいる少女が声をかけてきた。


「いらっしゃーい、今日はどんな御用ですか?」


 その少女は白っぽい金髪……いや、こういうのはプラチナブロンドというんだったか?

 プラチナブロンドの髪を腰近くまで伸ばしており、碧眼で可愛らしい顔立ちをしていたのだが、なんというか……小さい。小学生くらいの身長じゃないだろうか?一体何歳なんだ?このゲームは一応15歳以上が対象だったはずだが……。


「なぁ、君なんさ――」


君何歳?と聞こうとして少し思いとどまる。ゲームなどで現実のことを聞くのはマナー違反だ。しかもそれが初対面の場面ともなれば、失礼極まりないだろう。

 だがしかし、年齢が気になるのも事実である。だが、聞くとしても年齢を直接聞くのはアウトだ。もっとスマートに、かつ失礼にならないように聞く必要がある。考えろ、俺。考えるんだ……

 目の前の少女は何か言い掛けたあと考え込む俺を見て可愛らしく首をかしげている。

 少し悩んだ後、俺は――


「なぁ、君ちっちゃいけど大丈夫?」


 考えすぎてよく分からないことを聞いてしまった。なんだ、ちっちゃいけど大丈夫?って。むしろ俺の頭が大丈夫か?


「ち、ちっちゃいって……まぁ言われ慣れてるからいいですけどね。あとなにが大丈夫なのかもよく分からないですけど……」

「あーその、なんだ。小学生がこんなゲームをやるのは感心しないぞ?ちゃんと対応年齢になってから――」

「誰が小学生ですか!!誰が!!私はちゃんと対象年齢超えてますよ!むしろお酒も飲める年齢ですよ!」


 かなり食い気味に否定してきた。本人の発言を信じるなら、この身長で20歳を越えてるのか……


「それはすまなかったな。まぁ、なんだ。強く生きろよ……?」

「なんですかその励ましは……!その生暖かい目を今すぐやめてもらおうか!?」 


 これが20歳以上ってのは未だに信じられないが……、このゲームではキャラクター作成時に体格はほとんどいじれない。なんでも体格に差があると現実に悪影響があるんだとか。

 つまり目の前の自称成人済みは現実でもこのくらいの身長なのだろう。


「まぁいいや、ちょっと防具を作って欲しいんだけど」

「こちらとしては何一つよくないんですけどね!?……はぁ。それで、作って欲しいって事は素材は持ってきてるんですよね?」

「あぁ、これなんだが」


 そういって俺がインベントリから『漆黒狼の上毛皮』を取り出してカウンターに置こうとすると、カウンターにいたはずの少女がいなくなっていた。


「なんですかこれ!?見たことの無い素材!!艶と光沢のあるきれいな毛!ああ!!触りたいモフりたい顔をうずめたいぃぃぃ!!」

「……は?」


 なぜか少女は一瞬で俺の真横に来て、俺の手にある毛皮を見つめながらよくわからんことを口走っていた。

 ていうか目がやばい。なんか息も荒くはぁはぁとか言ってるし。


「おいちょっと落ちつけ」

「はぁ…はぁ……おっと私としたことが。失礼、ちょっと取り乱しました」


 なにが私としたことがだよ。ちょっとよだれ垂れかけてたぞお前。


「ごほんっ。自己紹介が遅れましたが、私がここの店主のエリです」

「あ、あぁ……俺はノブナガだ。よろしく」

「ん……?ノブナガさんってことはアインさんのフレンドの方ですか?」

「あぁ、ここはアインに紹介してもらったんだが俺のことは聞いてるのか?」

「えぇ、アインさんには贔屓にしてもらってます。『そのうち俺の友達のノブナガって奴連れてくるよー』と言ってたので」


 なるほど、アインが事前に言っておいてくれたのか。まぁ確かにこの店は商品なんかもきれいに陳列されてるし、店主のエリは小さいが丁寧だしでかなり好印象なんだが……


 見てる。エリがすっごい見てる。俺の手にある毛皮から一切目を離さない。

 試しに毛皮を動かしてみると、エリの視線もそちらへ動いている。


「あー、そんなにこの素材気になる?」

「はい!それはもう!どこで手に入れたんですか?そんなに綺麗な毛皮見たことありませんよ!」

「これはディアボリックウルフって奴を倒したらドロップしたんだ。これで防具を作って欲しいんだが頼めるか?」

「ええ、大丈夫ですよ!だから素材を!私の手に!ハリーアップ!!」

「テンション高くなりすぎだろ……ほら」


 少し引きながら毛皮を渡すと、エリは満面の笑みでそれを受け取りそのまま頬ずりし始めた。


「あぁこの手触り肌触りたまらない……いつまででもこうしてられる……」

「えぇ……」


 訂正しよう、ドン引きである。すごい表情で頬ずりしてるが、あれは女性がしちゃいけない表情だろう……。


「頬ずりさせるために渡したわけじゃないんだが……?」

「え?」

「え?」

「……あぁ、そうでした!防具でしたね、えぇ少々お待ちを」

「オイコラ、今完全に忘れてたろ」

「……てへっ」

「……」

「いはいいはいはい!無言でほっぺをひっはらないで!!」


 なにが「てへっ」だこの野郎。無駄に可愛いのが更に腹立つわ!

 しばらく引っ張った後、解放してやる。くそ、無駄に柔らかいほっぺしやがって……!


「うぅ……、私のほっぺが伸びちゃう……」

「ここはゲームなんだから伸びねぇよ、それより防具は作れそうなのか?」

「ちょっと待ってください……あれ?レシピが表示されないですね……」

「やっぱりか。さっきディアボリックウルフの他の素材で武器を依頼したんだが、その時もレシピが表示されなかったんだ。レシピ無しの作成で頼んでいいか?」

「構いませんが、失敗する可能性もありますよ?」

「あぁ、ガゼットにも同じようなこと言われたな。それで構わないよ、代金はいくらだ?」

「そうですね……お代は結構です!その代わりに、この『漆黒狼の上毛皮』の余った分を頂ければ結構です!」


 そんなに気に入ったのかその素材……。まぁ防具を作成したら余りは売却するつもりだったし構わないか。


「俺はそれでいいが、失敗しましたとかいって素材ちょろまかすなよ?」

「む、失礼な!さすがの私もそんなことはしませんよ!」

「冗談だって、時間はどのくらいかかりそうだ?」

「そんなにかかりませんよ。どうせなら作るの見ていきますか?」

「いいのか?生産は一度見てみたかったんだ、助かるよ」


 エリに出してもらった椅子に座り、作業を見せてもらう。どうやらエリはそのままカウンターで作業をするようだ。

 エリはしばらく『漆黒狼の上毛皮』を色々な角度から眺めた後、なにやらウィンドウを表示しそれを操作した。

 するとカウンターの上に置いてあった毛皮の一部が一瞬発光した。光が収まると、そこには光を吸い込むような黒さをもった皮があった、いやああいうのは革というんだったか。


「今何をしたんだ?」

「今のは毛皮の一部を『なめす』という処理で革にしたんですよ。ちなみにこれは『裁縫』スキルで覚えられますよ」


 そんな風に、分からないことをエリに聞きながら作業を眺める。エリは俺の質問に答えながらも、作業スピードは一切落ちることなく流れるような動きで作業を進めていった。




「よし、完成!」


 そして作業開始から20分ほど経った頃、エリが立ち上がり防具が完成したことを告げた。立ち上がったのに椅子に座ってるときと身長がほぼ変わってないな。


「もうできたのか、意外と早いんだな」

「まぁレシピによる簡略化はできないけど、それでも現実でやるよりはある程度簡単につくれるようになってますから」


 完成したのは、黒いロングコートだった。『漆黒狼の上毛皮』をなめした革が表面に使われており、現実世界のコートと遜色ない出来映えだった。


「ふふふ……、見てくださいノブナガさん!なんとコートの内側は毛皮を使っているので保温性抜群!さらにモフモフで気持ちいいですよ!」


 エリの言うとおりコートの内側には、漆黒の毛皮が使われていた。

 確かに保温性は抜群だろうが……


「これ内側に毛皮って半分お前の趣味だろ?」

「なぜばれたんですか!?」

「ばれないと思ってたことのほうが驚きだ!」


 まぁ現実世界にも似たようなデザインはあるし、実用性はあるのだろうが……


「なんか実用性があるってとこが逆にむかつくな」

「ひどくないですか!?ノブナガさんって私の扱い割りと雑ですよね!?」

「すまん、なんだかいじりやすくてな。諦めてくれ」


 そんなーっ!と悲鳴を上げるエリを無視して出来上がったコートに袖を通す。確かにこれモフモフして気持ち良いな……。

 このコートのステータスを確認しようとしたが、ステータスが出ない。なぜだ?俺が首を傾げているとエリが声をかけてきた。


「どうしました?」

「いや、ステータスがチェックできなくてな」

「あぁ、私がまだそのコートに名前をつけてないからシステム的にはまだ完成してないんですよ」


 オリジナルレシピの場合、作成したものに名前を付けられるらしい。


「じゃあ名前を付けてくれよ。ちなみにどんな名前にするんだ?」

「そうですねぇ、『エリ特製あったかファーコート』とかどうでしょう?」

「却下」

「にべもない!?」

「当たり前だ!そんなコート恥ずかしくて着れるか!」


 ぶーぶー文句を言うエリを再びほっぺを引っ張ることで黙らせ、2人で名前を考えることにした。そしてやっぱりエリのほっぺは無駄に柔らかかった。


「うぅ……ほっぺが痛い……」

「とりあえず安直に素材名にもあった『漆黒狼』を使って『漆黒狼のロングコート』とかでいいんじゃないか?」

「それじゃつまらないじゃないですか」

「いや、名前に面白さを求めるなよ!ネタ装備じゃないだろこれは!?」

「わかりましたよ!じゃあ間をとってこれにしましょう!えいっ!!」

「ちょ、待て!もしかして決めたのか!?今決めちゃったのか!?」


 クソッ!名前の決定権はエリにあるからどうにもならないか!

 ステータスで名前を確認するのが怖い。装備の名前を確かめるのが怖いってゲームやってきて始めての経験だぞチクショウ!

 震える指でコートのステータスを表示させると、半透明のウィンドウが表示された。

 そこにはこんな名前が表示されていた。



 『エリ特製漆黒狼のあったかロングコート』



 その後、エリのほっぺを泣くまで引っ張ったのは言うまでも無い。



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