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第六天魔王と呼ばれた男 ~VRMMOで魔王やってます~  作者: ネコルク
第二章 月下の因縁
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星の光

ほんとお待たせしました。待っていてくださった方々本当にすみません。

感想などとても励みになっております、ありがとうございます。

誤字報告などもとても助かります。


 プレイヤー達の活動の拠点でもあり,現在最も大きい都市である王都。その王都の六つある門のうちの一つ,第二門にてとあるプレイヤーが降り注ぐ月光を浴びていた。周囲にはたくさんのプレイヤーがいるが,彼らは全員が知り合いと言うわけでもない。

その集団は複数のパーティーやギルドの集まりであり,彼らの視線は王都ではなく第二門の先,その夜の闇へと注がれていた。

 なぜ自分はこんなところで陣形に加わっているのだったか、と彼は心の中でひとりごちる。

 始まりは確か、グランドクエストの第二回である『月下の異形』が始まってから暫く経ってからだったはずだ。グランドクエストの第二回である今回のクエスト、『月下の異形』の内容は大まかに言えばエリア探索とボス戦といったところだろうか。

クエスト説明には,ボスの存在は明記されていなかった。しかし,グランドクエストが只のエリア探索クエストで終わるわけが無い、必ずボスがいるはずだというのがプレイヤーの認識だった。

 

 そして、クエストが開始してから暫く経ったとき、ある情報が流れてきた。曰く、第一門、第二門の先の探索エリアへ行ったトップギルドのパーティーがどれも壊滅した。かろうじて送られてきた現地のプレイヤーからの情報によると、やはりボスは存在したがその他に複数の謎の人型の敵も存在すると言うことだった。

そんな驚きを禁じえない情報に間髪入れず、事態は次々に進行していった。

 まず、探索エリア内にいたプレイヤーたちが一斉に王都へと送還されたのだ。その後、探索エリア内への侵入が不可能となった。これはどういうことだ、とプレイヤー達は混乱せざるを得なかった。グランドクエストは未だ続いているのに探索エリアには侵入が不可能になった。バグか?などの声もちらほらと上がってくる。

 しかし、決してバグなどではなかった。探索エリアへの侵入が禁止された後数分経たずに、グランドクエストの内容が更新されたのだ。そのクエスト名は、『《EX》在りし日の誓い』。クエスト内容は、次のような内容だった。

 

 『召喚を止めることに失敗した。悠久の時を越え、かの「悪夢」が蘇る。あれを再来させてはならない。王都へと侵入しようとする「悪夢」、及び魔王を撃退し、王都を防衛せよ。』


 「悪夢」とは?それに魔王だって?多くのプレイヤーがそんな疑問に埋め尽くされる中、トップギルドの動きは早かった。各トップギルドのリーダーは直ちに集合し、対策を話し合ったそうだ。その結果、第一門、第二門にて防衛線を張り「悪夢」と呼称されるモンスター及び魔王を迎撃するという対策が取られた。

 しかし、問題が一つあった。先の『月下の異形』において、探索エリア内で死亡したプレイヤーはリスポーンすることが出来ないのだ。プレイヤー側はこんな防衛戦が待っているとは思ってもいなかったため、多くのプレイヤーが探索エリアへと進み、そして死亡していた。

すなわち、プレイヤー側は万全とはいえない戦力で防衛戦を強いられる形となっていたのだった。


 そんな状況であるため、ぼっちで探索エリアに突入するのもなんだかなぁと王都でブラブラしていた彼も、もちろん戦力の一部として半強制的に陣形に加わることとなったのだった。


「来たぞっ!」


 ぼんやりと記憶を辿っていた彼だったが、その声で現実へと引き戻された。急いで周囲のプレイヤーが見ているほうへと視線を向ける。確かに、何かが闇の中で月の光に照らされている。未だ距離があるためシルエットぐらいしかわからない。目を凝らして見ていると、それ(・・)は闇夜を切り裂くような咆哮を上げた。


「GYAAAAAAAOOOOOOOOOOO!!」

「来るぞ!総員、戦闘態勢!」


 後に、『王都防衛戦』と称される戦いの火蓋がここに切って落とされた。







「GYAAAAAAOOOOOOOOOOOO!!」


 ビリビリと大気を振動させるような咆哮を放ち、アンデッド・キマイラはプレイヤー達へと襲い掛かっていった。


「さて、俺達も行くとしようぜ。」

「せ、戦術とかはあるんですか?」


 戦術か、いい質問だ。俺達は『魔王』によってステータスを強化されているとはいえ、いかんせん人数差が大きすぎる。無闇に突っ込んでも勝てはしないだろう。


「もちろんあるとも。いいか、PvPにおいて重要なのは技術だけじゃない。もちろん技術も重要な要素の一つだが、もう一つ重要なものがある。何かわかるか?」

「ぎ、技術の他にですか?えーっと・・・」

「・・・・・・・・」


 クロムだけでなくジルコも考え出す。だが答えは出ないようだ。


「答えは、『情報』だ。まぁ、俺の持論なんだけどな。」

「・・・・・・情報、か。」

「あぁ、情報ってのは重要だ。簡単に言えば、『相手は一体何が出来るのか』ってことだ。これを知っているのと知らないのでは大きく違う。」


 つまりだ。こういったスキル制のMMOでは、スキルが大きな意味を持つ。スキルにも様々なものがある。能力を向上させるものであったり、およそ人間では実現できない動きを可能にするものであったり。後者においては、俺の刀スキルの『夜宵』が良い例だろう。

あれは目で捉えることが出来ないほどの速さの斬撃を放つ技だ。あんな技は現実の俺にはどうやったってできないだろう。ここで問題となるのが、『果たしてこのスキルを知らない状態で、このスキルを防げるか?』ということだ。恐らく、難しいだろう。

では、知っている状態ならば?それならば対処は可能だろう。相手が構えに入ったら距離をとるなり防御するなり方法があるはずだ。これが情報の差と言うわけだ。

 まぁ、雑に言ってしまえば、相手の情報を知らないままわからん殺しされるか、それともきちんと情報を知った上で対策をとるかということだ。


「な、なるほど・・・」


 あまり上手く説明できた気がしないが、どうやら納得してくれたらしい。


「・・・・・・情報が重要なのはわかった。それで?」


 ジルコが続きを促してくる。いつまでもここで立ち話してるわけにはいかんだろうと目で語ってくる。確かに、アンデッド・キマイラをいつまでも一人、いや一体か。一体で戦わせるわけにもいかないからな。


「あぁ、さっきの話はあくまで通常のPvPにおいての話だ。今回は相手の情報を集めてる暇は無いし、そもそも数が多すぎる。だが、条件は相手も同じ。こっちの情報を知ってるやつはいないだろう。なら、どうするか。」


 語りながら刀を抜き放つ。漆黒の刀身は月の光を浴びて鋭く輝いている。


「簡単だ、先手必勝。相手が対処できないうちに叩き潰す。」


 即ち、初手ブッパ(・・・・・)だ。


「『暗黒覚醒(アウェイクン)』」


 ドクン、と何かが脈動する音とともに俺の身体から闇が滲み出していく。『魔王』スキルの恩恵はステータスアップだけではない。それがこの暗黒属性スキル『暗黒覚醒』だ。

と言っても、暗黒属性スキルには現在このスキルしかない。『暗黒覚醒』は既存のスキルを強化するスキルらしい。らしい(・・・)というのは、俺もこのスキルを実戦で使うのは初めてだからだ。それ以前には、雑魚相手に少しだけ試したことしかない。

 全身を闇のオーラのようなものが覆い、揺らめいている。クロムがおおぉーと感嘆の声を上げているが、キミも使えるからねコレ?


「それじゃあ作戦名『ガンガン殺すぜ』でよろしく!」


 それだけ言い放って、勢いよく地を蹴り駆け出す。グングンと加速していき、数十秒とかからずアンデッド・キマイラのところへとたどり着く。案の定戦端は既に開かれているようだ。数人の盾持ちのタンクと思しきプレイヤーがアンデッド・キマイラの注意を引き、他のプレイヤー達が攻撃、支援をする。

定石の戦法だな。だが、その戦法が通じているのは所謂「ヘイト値」をタンクに集中させているからだ。だからこそアンデッド・キマイラの攻撃はタンクへと向かい、他のプレイヤー達は攻撃を受けることなく攻撃や支援に専念することが出来る。

 だが、俺はプレイヤーだ。悪いが、タンクは無視させてもらう。


 アンデッド・キマイラの攻撃を受けているタンク達を完全に無視して、その後方にいる集団へと突っ込む。集団の中の一人がこちらに気づいたようだが、思い切り二度見された。まぁ誰だって全身黒いオーラに包まれた人影がいきなり走ってきたら二度見するよね。俺だってそうする。


「おい!なんかやべーやつ来てるぞ!なんだあれ!?」

「残念、もう遅い。」


 俺に気づいた奴らが周囲に注意を促しているが、もう遅い。既に射程範囲内(・・・・・)だ。

 一際地を大きく踏みしめ、宙へと飛び上がる。そして両手で刀を持ち上段へと構える。『暗黒覚醒』によって強化されたスキルの威力を見るがいい。


「『天断(あまだち)夜叉ノ虚(やしゃのうつろ)』!」


 瞬間、俺の身体から闇のオーラが一際大きく噴出し、刀を伝いその更に上空で凝縮していく。あっという間にそれは巨大な刀を模った。刀をを一息に振り下ろすと、その巨大な闇の刀も連動して振り下ろされ、プレイヤーの集団へと轟音とともに叩きつけられた。同時に土煙も巻き上がる。

『天断・夜叉ノ虚』。名前からわかるとおり、『天断』が『暗黒覚醒』によって強化されたスキルだ。『天断』では刀が擬似的に伸びたが、『天断・夜叉ノ虚』は闇のオーラで巨大な刀を模りそれを叩きつけるようだ。威力もだが範囲もとても広くなっているようだ。

 土煙が晴れ、プレイヤー達の姿が見えるようになる。見た感じ、十人ほどは今の一撃でやったか?まぁいい、こんなもんじゃ終わりじゃないからな。


「な、なんだあいつ!?」

「狼狽えるな!タンクはそのままタゲを保持しろ!ヒーラーはタンクを死なせるな!他の奴らは人型に集中しろ、恐らくコイツが魔王だ!」


 突然の一撃に狼狽えるプレイヤー達だったが、どうやら向こうには優秀な指揮官がいるらしい。即時に指示を出している。

その指示に従ったプレイヤー達が俺目掛けて殺到する。だが、俺にだけ気を取られていていいのか?

 ヒュッと風切音がしたかと思うと、俺へと向かってきていたプレイヤー数人に矢が突き刺さっていた。そう、魔王は俺だけではないのだ。ちらりと後ろを振り返れば、ジルコがこちらへ弓を構えていた。ナイス援護だ。クロムがそばにいるところを見るに、ジルコの護衛をするようだな。視線を前に戻す。さて、暴れるとするか。


 ジルコに矢を射られ気をとられているプレイヤーを数人流れるように切り捨てる。そのまま近くにいたプレイヤーの喉もとを掴み、他のプレイヤーが群れているところへ強引に投げ飛ばす。これがステータス4倍の暴力よ。

振るわれる武器をいなし、受け流し、弾き、返す刀で命を刈り取る。できれば先にヒーラーを潰しておきたいのだが、やはりというかヒーラーは奥のほうにいるようだ。まずは目の前のこいつらを蹴散らさないといけないようだ。まぁ、死ぬのが遅いか早いかの違いだ。ここにいるプレイヤー達は一人残らず殺してやろう。


「とは言え、さすがに数が多いな――っと!」

「がっ!?」


 寄ってきたプレイヤーの首を切り落としながらひとりごちる。もう少し一気に数を減らすか。俺は新たに『暗黒覚醒』によって強化されたスキルを放つ。


「『武突(むつき)影時雨(かげしぐれ)』!」


 右手に逆手に持った刀を思い切り地面に突き刺す。先の『天断・夜叉ノ虚』を放ったときのように、全身から闇が噴出し刀を伝い地面へと恐るべき速度で広がっていく。前方へ扇状に闇が広がり、プレイヤー達の足元を黒く侵食する。そろそろだろう。

右手の刀を、地面に突き刺したまま捻る。その瞬間、広がった闇の至る所から刀のような突起が突き出る。言うまでも無く、広がった闇の上に立っていたプレイヤー達はほとんどが身体を貫かれている。地面から刀を抜けば、広がっていた闇も音も無く消え去る。地面に広がっていた闇から突出していた刀に身体を貫かれていたプレイヤー達は、闇が消えたことで身体の支えを失い地面にドサドサと崩れ落ちそのまま光の粒子となって消えた。

 地面に刀を突き刺している間は任意で範囲を拡張できるのか、かなり便利だなこれ。今の一撃を見たからか、プレイヤー達は怯えたような表情で遠巻きに囲んでいるだけになった。


「おいおいどうした、見てるだけじゃ俺は倒せねぇぞ?」


 そう煽りながらも、脳内では次の攻撃の算段を付け始める。こういう状況よりは乱戦に持ち込んだほうがやりやすそうだな・・・。別に律儀に全員を相手取る必要は無い。最優先はヒーラーを殺し,回復の来なくなったタンクを殺す。そうすればアンデッド・キマイラが暴れてくれるだろう。

しかし、プレイヤー達もそう簡単にやらせてはくれないだろう。さてどうしたものか。

 取り敢えず煽っておくか。怒って突っ込んできてくれたなら儲けものだ。


「見てるだけなら猿でもできるぞ?その剣やら槍やらは何のために持ってんだよ?ほら、誰でもいいぜ。かかってこいよ!」

『ふむ、ではそうさせてもらおう。』

「え?」


 まさか答えが返ってくるとは思っていなかったうえに、脳内に響くような謎の声だったため思わず呆けた声を出してしまった。だが、そんな呆けている暇は無かった。

身体に衝撃が走ったかと思うと、俺はいつの間にか地に膝をついていた。


「あ・・・え・・・?」


 いつの間にか、俺の胸から光るなにか(・・・)が生えていた。


「なんっ・・・!?どこから―!?」


 再び衝撃が身体を突き抜ける。今度は左肩に光るなにかが生えていた。いや、違う・・・。これは剣だ(・・)。光る剣がどこからか発射され俺に突き刺さっている。一体どこから・・・!?


「ノ、ノブナガさん!上です!上!」


 後ろからクロムが叫ぶのが聞こえる。その声に従い上を見上げると空に何かが輝くのが見えた。次の瞬間、俺の身体に何本もの剣が突き刺さっていた。


「がっ・・・、あぁっ・・・!?」

『よりにもよってソレ(・・)を呼び起こすとはな。まぁ、大方何も知らない(・・・・・・)のであろうが・・・』


 夜空に星が煌く。いや、あれは星ではない。その全てが、俺の身体を穿つ為の光の剣―――


『正直言って、不快だ。消えよ。』


 星の如き光の剣が降り注ぎ、俺の身体はあまりにも呆気なく散り散りになった。



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