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第六天魔王と呼ばれた男 ~VRMMOで魔王やってます~  作者: ネコルク
第二章 月下の因縁
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分水嶺

3ヶ月も空けてしまってすみません


 減ってしまったHPを回復するために、ポーションを呷りながら魔方陣の場所まで戻る。しかし、どうも体力の回復速度が遅い気がする。いつもはこんなに遅くは無かったはずだが・・・?

そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか魔方陣の場所まで戻ってきていた。


 どうやら、こちらの戦闘も既に終わっていたようだった。アンデッド・キマイラが吐き出した炎によって、周囲の木々や地面が所々燃え盛っている。その炎が揺らめいた明かりで照らすのは、異形の怪物のみ。そこに、『ユグドラシル』らのプレイヤーの姿は無い。


「まぁ、予想通りといえば予想通りだな。」


 『ユグドラシル』のメンバー達は、ここでアンデッド・キマイラとクロムに敗れ去ったらしい。よーしよしよくやったえらいぞー、とアンデッド・キマイラを撫でてやる。あ、いやここはダメだな。さっき触ったらネチョってしたし。比較的腐敗が無い部分を選んで思いっきり撫でてやる。よーしよしよしいい子いい子。

 そんなことをしていると、森の中からクロムが出てきた。


「あ、ノブナガさ・・・・・・な、なにしてるんですか?」

「えーっと・・・、コミュニケーション?」

「なんで疑問系なんですか・・・。」


 いや、やっぱりコミュニケーションは重要だろ?今回アンデッド・キマイラはよく働いてくれたし、それに対する労いの気持ちもこめてだな・・・。


「まぁ、それは置いておいてだな。そっちはどうだった?こっちは二人とも倒してきたぜ。ちょっと危なかったけどな。」

「こ、こっちも大丈夫です。二人ほど逃げ出しましたが、きちんと仕留めておきました。」


 なるほど、だから森のほうから出てきたのか。

 とにもかくにも、これで『ユグドラシル』一行はめでたく全滅というわけだな。とはいえ、これが『ユグドラシル』の全メンバーと言うわけでもないだろう。それにトップギルドは他にもある。まだまだ敵はやってくるだろう。勝って兜の緒を締めよとも言うことだ、気を抜かないようにしよう。





 ・・・・そう、思っていたのだが。


「・・・来ないな。」

「そう、ですね・・・」


 ちょこちょことプレイヤーが来るには来るのだ。しかし、それらはトップギルドのメンバーとは思えないのだ。一応、ここまで辿り着けるだけの実力はあるようだが。それでも、そこそこの実力しかないのだ。

 トップギルドがやってくると身構えていた分、なんというか不完全燃焼のような感じだ。いっそ森の中まで探しに行ってしまおうか。そうだ、森の中にいるやつを片っ端から倒していけば、トップギルドの奴らにも会えるかもしれないし魔法陣も守れるしで一石二鳥なのでは?


「・・・やはりサーチ&デストロイか?」

「へっ!?」


 おっと、思わず口に出していたらしい。なんでもないと笑いながら誤魔化す。しかして実際、名案なのではないだろうか?正直に言えば、まだまだ戦い足りないのだ。まだ試していないこともあるし、『魔王』込みでどれくらいのプレイヤーと渡り合えるのかも知っておきたい。

 よし、そうと決まれば早速森の中へ繰り出すとしよう。やることは単純明快、サーチ&デストロイ。これ即ち見・即・斬なり。

 しかし、森の中へと駆け出すことは叶わなかった。高所から周囲を警戒しているはずのジルコが降りてきたのだ。


「ジルコ、どうしたんだ?なにかあったか?」

「・・・森の中にプレイヤーが見当たらなくなった。どうやら・・・」


 もう、終わりらしい。ジルコがそう言ったのと、アンデッド・キマイラが突然動き出したのは同時だった。それまで、まるで銅像のように微動だにしていなかったアンデッド・キマイラがゆっくりと動き出したのだ。のっしのっしというような擬音が似合いそうな足取りで、森の中へと歩いていってしまった。


「ど、どうしますか?」

「・・・追うしかないだろう。」


 俺たち三人は互いに顔を見合わせ頷き合うと、アンデッド・キマイラの後ろを追いかけ森の中へと歩を進めた。






 それ(・・)は、自分が何故ここにいるのか理解してはいなかった。しかし、自らが既に死んでしまっている(・・・・・・・・・)ことは理解できた。肉体は半分ほどが腐り落ちている。しかし、魂は未だこの肉体から離れずにいる。いや、無理やりに(・・・・・)定着させられているようだ。

 つい先ほどまでは、ここまでそれ(・・)の自我ははっきりとしてはいなかった。いや、これが自我と呼べるものなのかどうかすらもはやそれ(・・)にはわからない。果たしてこれは自我か、それとも執着か。

 どちらだろうと構いはしない。先ほどまで自らを縛っていた使命のようなものは、もはや消え去った。自らがその使命のようなものを果たせたのか。それ(・・)にはわからなかったし、興味も無かった。只一つわかるのは、己に課せられた使命は終わり、自らを縛るものはもう何も無いと言うことだ。

 ならば、やるべきことは決まっている。もはやその理由さえあやふやな、擦り切れ磨耗してしまった誓い。しかし、幾星霜たとうともその誓いだけは魂に焼きついている。今のそれ(・・)を動かしているのは、誓いを果たす、ただこの一心だった。

 しかし、と。それ(・・)は思う。もはや誓いの理由さえ忘れてしまったけれど、それでも。先ほどの何者かに優しく撫でられたあの感触は、ひどく懐かしいものだった、と。





 

 闇夜を隔たり無く照らす月が頂点を過ぎた頃、アンデッド・キマイラは森を抜けた。しかし、その足取りは止まらない。まるで、向かう場所が決まっているかのように迷い無く進んでいく。


「ど、どこに向かってるんでしょうか・・・?」

「わからない、けれどこの方角は・・・」

「・・・方角的に言えば、ヤツは第二門のほうへと進んでいる。」


 やはりか。どうもアンデッド・キマイラにはなにか目的があるようだ。しかしその先が第二門、即ち王都のほうだとは。


「このまま進ませるのはまずいか?」

「・・・森にプレイヤーがいなくなったとはいえ、グランドクエストが終わったのかどうかはわからん。」


 確かに、ジルコの言うとおりだ。俺達の任務は魔方陣の防衛だった。それ自体は達成することはできたと言っていいだろう。しかし、魔方陣から出現したアンデッド・キマイラは未だ消滅せずにいる。これはまだグランドクエストが終了していないと判断するべきなのだろうか?


「このまま王都まで進んだとしたら、王都にいるプレイヤーたちと戦闘になる可能性があるな。」

「そ、それってまずくないですか?門にはプレイヤーだけじゃなくて守衛もいますよ?」

「そういえばNPCもいるんだったか・・・。当然戦闘には参加してくるだろうな。」


 さて、どうしたものか。このまま進んでいけば戦闘になるのは火を見るよりも明らかだ。俺達三人と一体で王都に攻め込む形になるわけだ。ワクワクするね!


「・・・なにをはしゃいでるんだ。やるわけ無いだろう。」

「ジルコまで心を読むのは勘弁してくれ・・・」

「・・・お前は考えてることが顔に出てるんだよ。」


 え?まじ?そんなわかりやすく顔に出てる?クロムを見てみればうんうんと頷いている。どうやら俺の考えは顔からダダ漏れだったらしい。


「やっぱダメ?王都にケンカ売りに行かない?」

「ダ、ダメですよっ!流石に勝ち目ないですって!」

「チッチッチ・・・クロムよ。だからこそ面白いんだろ?」

「お、面白い・・・?」

「最初から勝つのが決まってる戦いなんてつまらない。勝利か、敗北か。そのギリギリをいくから面白いんだよ。」

「・・・戦闘狂(バトルジャンキー)め・・・」

「否定はしない。」

「し、しないんですか・・・」


 そんなことを喋っていると、いよいよ王都と森林地帯を繋ぐ第二門が見えてきた。と、そのとき、右手の指に嵌めている黒い宝石がついた指輪が光り、脳内に着信音のような音が流れ出した。この指輪は『六翼の魔王』全員が持っている。確か名前は「魔王の指輪」だったか、そのまんまだな。

 この指輪はそのシンプルな名前とは裏腹に様々な便利な機能がついているらしい。らしいというのは、アイから説明を受けただけで実際に使ったことはほとんど無いからだ。

 アイの説明によれば、確かこれはメンバーとの通話機能・・・だったはずだ。


「あー、もしもし?これでいいのか?」

『――ナガ、そっ――どうな―――の!?』

「アージか?すまん、よく聞き取れない。」


 どうやら通話をしてきたのはアージだったようだ。しかし、アージ声が騒音で掻き消されてよく聞き取れない。というか何の音だ?爆発音や叫び声が混じっているようだが・・・。


『聞こえる!?ノブナガ、そっちはどうなって――くっ!邪魔よ!』

「おいおい大丈夫か?」

『大丈――夫よっ!それで、そっちはどんな状況?こっちはだいぶまずいことになってるんだけど。』

「みたいだな、こっちは魔方陣の防衛は成功。んで今は魔方陣から召喚したモンスターについていってる。」

『そのモンスターの進路って、もしかしなくても王都よね。』

「その言い分だと、そっちそうみたいだな。もしかして・・・」

『もしかしなくても、もうおっぱじめちゃったわよ!あの脳筋二人がね!』


 その後ギャーギャーと脳筋二人への愚痴を叫ぶアージ。まったくもって不憫である。とりあえず手でも合わせておこう、南無南無。


『ちょっと!聞いてる!?』

「聞いてる聞いてる。それで?戦況はどんな感じだ?」

『最悪よ!これ以上無いくらいね!『明けの明星』に『黄昏の森』、それに『アルゴノーツ』までいるのよ!?』

「・・・そりゃ本当か?」

『本当よ!――ちょっとブロム!こっちに抜けてきてるんだけど!あぁもう、『ストームブレード』!』


 その後、雑音が激しくなりアージとの通話は切れてしまった。どうやらアージも戦闘に巻き込まれてしまったようだ。


「・・・・・・アージはなんと?」

「向こうも防衛は成功させたみたいだったが、ブロムとアインの脳筋ブラザーズが王都にケンカ吹っかけたらしい。」

「・・・・・・なんてこった・・・」


 思わずジルコが顔に手をあて天を見上げている。クロムもなんとか笑おうとしているが頬が引きつっている。


「向こうには『明けの明星』、『黄昏の森』、『アルゴノーツ』がいるらしい。ということは、こっちには『ユグドラシル』の残りと『月下の桜』がいると見てよさそうだな。」

「・・・・・・そう見ていいだろう。戦力を二つに分けるとすればいいバランスだろうからな。」


 そしてついに、こちらも第二門の目前に辿り着いてしまった。第二門には、プレイヤーたちが陣形を組んで集っているのがここからでも見える。

 後方を歩いていたジルコに目をやれば、こちらをじっと見返していた。


「・・・・・・こっちの最高戦力はお前だ、ノブナガ。だから、お前が決めろ。俺達はそれに従う。」


 クロムを見れば、静かに頷いている。どうやらジルコと同じ意見のようだ。


「・・・・・・だが、覚えておけ。ここが分水嶺だ。一度決めたらもう引き返せねぇぞ。」

「あぁ、わかってる。」


 ここで戦いを挑めば、トップギルド二つを一気に相手取ることになる。だが、敵はトップギルドだけではない。その他のプレイヤーも大勢いるだろう。ここは退くのが賢い選択だろう。

 しかし、ここで俺達が退いてもアンデッド・キマイラは止まらないだろう。こいつはなにが立ち塞がろうと、己の目的を果たすために進み続ける。不思議と、そんな確信がある。

 思わず、アンデッド・キマイラを見上げて呟いてしまう。


「かっこいい生き様じゃねぇか。」

「・・・・・・もう死んでるがな。」


 やかましいわ。上手いこと言ってんじゃねぇよ。

 だがまぁ、俺の選ぶ道は決まった。アージよ、さっきは散々っぱら脳筋ブラザーズについて愚痴を言っていたがな。

 

 悪いがお前が通話相手に選んだのも、負けず劣らずの戦闘狂(バトルジャンキー)だ。


「行くぞ、王都のプレイヤーどもに喧嘩を売りに行くとしよう。盛大にな。」

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