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第六天魔王と呼ばれた男 ~VRMMOで魔王やってます~  作者: ネコルク
第二章 月下の因縁
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死闘


 遂に、この身を包んでいた黒いローブを脱ぎ去る。いよいよ『魔王』ノブナガのデビューというわけだ。

 魔方陣と俺がリンクしている、なんていうのはもちろん俺のハッタリだ。こう言えば、ノルン達は俺を無視することは出来ないだろう。だからクロムよ、えっそうだったんですか!?見たいな感じでこっちを見るな!ばれるだろ!


「さぁ、どうする?」


 表情を見るに、まだハッタリだとはばれていない筈だ。いや、ヘレネの方はまったく表情変わらないからわかんないんだけども。表情筋死んでるのかな?


「そう、そういうことならあんたを先にやらせてもらうわ!」


 そう言ってノルンがこちらに剣の切先を向けてくる。ヘレネ含める他のメンバーも、こちらと戦う意思を見せ始めた。よし、喰い付いた!

 ここからノルンとヘレネだけを隔離するには・・・


「そうかそうか、いやぁ有難いな。だが、こちらから誘っておいて悪いんだが・・・・・・俺が戦いたいのは強者(・・)だけでね。弱者(・・)に用は無いんだ。やれ、アンデッドキマイラ。」


 そう言って指を鳴らす。アンデッド・キマイラはこちらの指示に忠実に従ってくれるようで、咆哮を上げながら『ユグドラシル』の面々へと襲い掛かった。


「なっ!?このっ!」


 それを見たノルンは驚きの声を漏らしながらも、味方を救わんと駆け出そうとする。だが、その動きは予想できた。


「おっと、お前の相手は俺だ。」


 味方のほうへ向かおうとするノルンへ斬りつけ、その動きを阻害する。ノルンは舌打ちをしながら、俺の刀を受け止めた。ギリギリと耳障りな音を出しながら、俺の刀とノルンの片手剣が拮抗する(・・・・)

 互いの武器越しに、視線が交錯する。端正な顔つきは敵意に歪み、射殺すような視線が俺を貫いている。


「チッ・・・!あんた達はアンデッド・キマイラを!こいつの相手は私がするわ!」

「良い判断だ。でも、あんた一人じゃぁ役不足だな。」


 そう言い放ち、わざと(・・・)拮抗させていた刀に力を込める。盾持ちであるタンクタイプのケインでも止められなかったのだ。片手剣のみという、アタッカータイプの装備であるノルンに止められる道理は無い。

 力を込め刀を振り抜くと、小さい悲鳴を上げてノルンが吹き飛んでいく。しかし、追撃はしない。俺が注意を引くべき相手はもう一人いるのだ。


「『風刃』」


 刀を振るい、風の斬撃を飛ばす。しかし、飛ばすのはノルンの方ではない。少し離れた場所で、アンデッド・キマイラへと攻撃をしているヘレネの方へと風の刃を飛ばす。


「―っ!」


 『風刃』はヘレネに直撃はせず、足元に着弾し土煙を上げた。直撃させるつもりで撃ったのだが、どうやら『風刃』は距離が離れるほど精度が落ちていくらしい。


「そこの弓使い、お前の相手もこの俺だ。二人がかりでかかってくるといい。」

「いい度胸。私達二人相手に勝てると思ってるの?」


 ヘレネがそう言いながらこちらに弓を向けてくる。しかし、表情が変わらんから何を考えてるのかもよくわからんな。だがまぁ、これで二人の注意は俺に向けることが出来た。

 あとはもう簡単だ。何も考えることは無い。向こうはクロムに任せ、こちらはただこの二人を倒すのみ。


「逆に聞くが・・・、お前達まさかたった二人で俺に勝てると思ってるのか?」


 さぁ、楽しい楽しい戦いの時間だ。




 最初に仕掛けてきたのはヘレネだった。流れるような動きで、3本の矢を連続で撃ってくる。それと同時に、ノルンが地を蹴って駆け出す。互いに何も言わずとも連携が取れているらしい。

 迫り来る矢を刀で弾き、かわし、また弾く。3本目の矢を弾いた直後、ノルンが攻撃を仕掛けてきた。人体の急所である喉、その一点を狙った鋭い突きが繰り出される。しかし、まだ遅い。

 突き出される剣の腹を刀で弾き、突きの軌道を逸らす。そしてその勢いのまま、無防備となったノルンの腹を蹴り飛ばした。ぐうっというくぐもった悲鳴を上げながらノルンが吹き飛んでいく。しかし、追撃はせずにすぐにその場を飛び退く。

 すると、数瞬前まで俺がいた場所を複数の矢が貫いた。その矢の出所であるヘレネの方を見やれば、丁度矢を撃つ瞬間のヘレネと目が合った。どうやら俺が避けることを予想し、避けたところを仕留めようという考えらしい。かなり戦い慣れているな。


「『ストレートアロー』」


 弓に番えた矢が赤く輝き、空気が爆ぜる音とともに矢が射出される。これまでの矢とは比べ物にもならない速さで、赤い閃光に包まれた矢が飛来する。

 だが、まだ見えている(・・・・・・・)。タイミングを合わせ刀を振り、『ストレートアロー』を弾き飛ばす。甲高い音ともに、なかなかの衝撃が刀をつたって手に伝わる。


「今のも弾く・・・、人間業とは思えない。」

「そりゃどう、もっ!」


 そんな事を言いながらも、全く矢を射る手を緩めないヘレネ。こちらもそれを弾き、時にかわしながらそれに答える。正直、普通の矢ならば当たる気はしない。さすがに同時に複数の矢を撃ってきたりすれば話は別だが。


「『クロスセイバー』!」


 復活したらしいノルンが、後ろからスキルによって攻撃してくる。青い剣の輝きが、空中に十字の軌跡を描く。それを難なく受け止める。


「はあぁぁぁぁっ!」


 ノルンは止まらず、激しい連撃を浴びせかけてくる。ノルンだけではない、ヘレネも絶えず矢を射掛けてくる。

 迫り来る剣を弾き、矢を避け、また弾き、そしてまた避ける。そうして続けていると、段々と意識が研ぎ澄まされていく。頭の中のギアが上がり、時間が薄く引き延ばされていくような感覚。考えるよりも先に身体が動いていく。戦闘に必要なモノ以外が削ぎ落とされていく心地よい感覚だ。

 最後にこの状態になったのはいつだったか。漆黒狼(ディアボリックウルフ)との戦いのとき以来かもしれない。

 さぁ、受けに回るのはもういいだろう。今度は、こちらが攻めに回る番だ。







 天上の輝く月が、異形蠢く森を照らしている。森の各所では、プレイヤーとモンスターによる戦いが発生していた。しかし、その中でも最も激しい戦いは、俺の足元で起こっている。アンデッド・キマイラ、クロムと『ユグドラシル』、ノブナガと二人のプレイヤー。俺が陣取っている木の下では、その二つの戦いが同時に起こっていた。

 矢を弓に番え、引き絞る。そして、狙いを付け矢を放つ。やっているのはこれだけだ。他には何も特別なことはしていない。

 今回の俺の役目は、あくまで援護だ。下にいる二人が有利に戦えるようにする、それが目的だ。だから、敵を倒そうなどとは考えずとも、腕や脚なんかに矢を当てて妨害をしてやればいい。

 

 ―――そう思っていた。しかし、蓋を開けてみればどうだ?『魔王』によって強化されたステータスのおかげか、腕や脚に当たるだけでHPの6,7割を減らすことができる。そうなれば、欲が出てきてしまうのが人間と言う生き物である。そして、俺ももれなく人間であった。

 短くなった煙草を捨て、新しい煙草に火をつける。ちなみにこの煙草もどきは、王都の裏路地で売っていた。なかなか味がいいので気に入っているのだが、再び訪れたときにはもう売っていなかった。なので、残りは手持ちの分しかない。


「・・・『鷹の目(イーグルアイ)』」


 スキル、『鷹の目』を発動させる。このスキルは、一定範囲内のプレイヤーやモンスターがある程度強調表示されるスキルだ。おかげで、この夜の森の中でも敵の姿を捉えることが出来る。

 矢を弓に番え、引き絞る。狙うのは、『ユグドラシル』の面々。その中でも足が止まりやすい魔法職だ。狙うは、弱点であるその頭。


「・・・『ストレートアロー』」


 恐らく、魔法職の防御力なら普通の矢でも頭に当てれば殺すことはできる。だが、念には念を入れスキルを使用する。弓に番えた矢が赤く輝き、射出の瞬間を今か今かと待っている。息を深く吸い、そしてゆっくりと吐く。そしてまた吸い・・・そこで息を止める。

 そしてそのまま狙いを定め、矢を掴んでいる指を解き放つ。空気が爆ぜる音とともに矢が射出され、空中に赤い軌跡を描きながら目標へと疾走する。

 『ストレートアロー』はそのまま何者にも妨害されずに、目標の頭へと突き刺さった。というか被弾した頭部が爆ぜていた。そして、矢を頭部に被弾したプレイヤーは、そのまま光の粒子へと姿を変えた。所謂、ヘッドショットというやつだ。

 このまま後衛の頭を順繰りにぶち抜いていけば、アンデデッド・キマイラとクロムの勝利は確実だろう。そうなれば、残るはノブナガのほうだが・・・


「・・・・・・化け物め。」


 あちらは俺の援護など要らないだろう。先ほどから少し戦闘の様子を見ているが、常軌を逸している。矢を避けるならまだわかる。いや、あんなふうに全部避けるのも普通はありえないと思うが、まぁまだわかる。しかし、飛んでくる矢を狙って弾くなど、どうかしている。それに極めつけは、『ストレートアロー』を弾いたことだ。同じ弓使いのプレイヤーとしては、あれを正面から弾くような相手とは死んでも戦いたくないものだ。その点では、ノブナガと戦っている弓使いのプレイヤーには同情を禁じえない。本当に敵でなくて助かった。

 それに、今は防戦一方に見えるが実際はそうじゃないだろう。やつはまだ、戦闘に入ってからスキルを一度も使っちゃいない。スキルを使わずに、攻撃を完璧に凌いでいるのだ。まったくもって本当に――


「・・・・・・化け物だな。」


 奇しくも、先ほど呟いた台詞と同じような台詞を呟いてしまう。ノブナガのほうは、気にしなくていいだろう。こちらは、クロムのほうの援護に集中するとしよう。

 俺は煙を吐き出すと、再び弓に矢を番えた。







 飛来した矢を弾き、そのままの動きでノルンに袈裟懸けに斬りかかる。ノルンは何とかそれを受け止めるが、HPが微妙に減っている。それを確認することなく、俺は次の動きに移っている。この戦いにおいて、足を止めることは悪手だ。足を止めれば、弓のいい的だ。


「ハァ・・・ハァ・・・、なんなのよコイツ・・・!」


 ノルンが悪態をつきながら斬りかかってくる。それと同時に矢が複数飛来する。しかし先ほどからバンバン矢を撃っているが、弾切れとか無いのだろうか。まぁ、実際弾切れになられても興醒めなのだが。

 迫り来る矢と剣、先に俺に到達するのは剣のほうだろう。故に、剣から対処をする。迫り来る剣の腹に刀を当てる。しかし弾くことはせず、ずらすようにして剣の軌道を俺から逸らす。そしてそのままサイドステップで矢を避ける。


「・・・このままじゃ埒が明かない。ノルン、仕掛ける。」

「わかったわ。」


 どうやら攻撃が当たらないことに業を煮やし、なにか仕掛けてくるようだ。ノルンが移動し、ヘレネとは対極の位置に立つ。形としては、俺が挟まれる形になった。


「あなたが矢を弾けるのはわかった。ならこれは?」


 そう言いながら、ヘレネが弓に矢を番える。


「『七条の流星(セブンスミーティア)』」


 瞬間、矢が黄金に輝いた。と同時に背後のノルンも動き出した。


「『聖なる十字架(ホーリークロス)』!」


 ヘレネと同じように、ノルンの片手剣が黄金に輝く。



 そして、俺を襲ったのは、七つの同時に飛来する黄金の矢と黄金の十字架の斬撃だった。



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