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第六天魔王と呼ばれた男 ~VRMMOで魔王やってます~  作者: ネコルク
第二章 月下の因縁
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説明

単純な計算もできない作者がいるらしい

300%なら4倍ですね本当にすみません


 どこか遠くから聞こえる狼の遠吠えが、満月の夜に響き渡る。しかし、それもすぐに夜の闇に溶けて消えた。残ったのは、先ほどから変わらない闇の静けさと二人の人間の話し声だ。


「ジルコは?」


 傍らに立つクロムに問いかける。クロムはこの夜の闇に紛れるかのように黒いローブに身を包んでいた。かく言う俺も、クロムと同じく黒いローブにその身を包んでいる。


「い、位置についたそうです。あと、5分ほどで始まります。」

「よし、そんじゃあいっちょお仕事といきますか。」


 そう言って俺は、不気味なほど静まり返っている森に視線を向ける。その脳内では、数日前の事を思い出していた。あと5分ほどで始まる、第2回のグランドクエストについての説明を受けた時のことを。






「2日後に始まるグランドクエストでは、皆様には2つのグループに分かれていただきます。」


 グランドクエストが始まる2日前。説明のために集められた円卓に座る6人の『魔王』に向けて、アイはそう話し始めた。


「今回のグランドクエストでは、第一門の先の草原地帯と第二門の先の森林地帯が舞台となります。」


 そう言いながらアイが指を鳴らすと、円卓の上に地図が表示された。見てみると、第一門の先の草原地帯と第二門の先の森林地帯が拡大表示されていた。


「ん?この赤い点はなんだ?」


 ブロムが地図を指差しながら訊ねる。ブロムが指差すところを見てみれば、確かに地図上に赤い点が表示されている。それも二箇所もだ。一つは草原地帯の奥まった場所に、そしてもう一つは森林地帯のこれまた奥の方に表示されていた。質問されたアイの方を見やれば、その質問は予想していましたとばかりに笑みを浮かべていた。


「今から説明させていただきます。まず、今回のグランドクエスト名は『月下の異形』です。具体的な内容といたしましては、草原地帯と森林地帯に普段見られないモンスターが異常発生。プレイヤー達はその掃討と原因究明が目標となります。」

「・・・・・・普段見られないモンスターというと?」


 今度はジルコが静かに訊ねる。しかし相変わらず煙草吸ってるんだな。煙も出てるが別に匂いはしないし、すげぇ気になるな。今度どこで買えるのか教えてもらおう。


「はい、今回出現するモンスターはアンデッド系やゴースト系、その他諸々のオカルティックなラインナップとなっております。」

「それで?私たちの仕事は一体何なのかしら?」


 アージが声を上げる。確かにそれは気になるところだ。


「今回皆様にしていただくのは魔法陣の防衛です。先ほど話しに出た地図上の赤い点ですが、そこには魔方陣が設置されています。今回出現するモンスターたちは、その魔法陣の影響で発生しています。」

「つ、つまり魔方陣が破壊すればモンスターたちも発生しなくなるってことですか?」


 クロムが相変わらずおどおどしながら、しかしきちんと手を挙げて発言する。


「そういうことです。しかし我々は『魔王』、破壊されては困るわけです。そこで皆様にはその魔方陣の防衛任務に就いていただきます。冒頭に2つのグループに分かれていただくと言ったのは、魔方陣が2つあるからなのです。」


 なるほどな。つまりは、今回俺達は二手に分かれて魔方陣を防衛。モンスターを掃討しつつ魔方陣を潰しに来るプレイヤーを撃退するって訳か・・・。ふむ・・・。


「二つ、質問いいか?」

「はい、どうぞなんなりと。」


 手を挙げてアイに確認を求める。


「まず一つ。今回のグランドクエスト、魔方陣が潰されればモンスターが湧かなくなるんだろ?なら、俺達の敗北条件は魔方陣が破壊されることか?」

「そうですね。勝敗を設定するとすれば、魔方陣を両方破壊されればこちらの敗北ですね。」


 勝敗を設定するとすれば、か。


「じゃあ二つ目。俺達は六人しかいない。それが二手に分かれるとなれば、三人ずつになる。とてもじゃないが戦力が足りているとは思えない。」

「確かに、頭数が違いすぎるな。」


 俺の疑問にアインが同意を示す。

 こちらは『魔王』を名乗っているとはいえ、性能的にはプレイヤーとほぼ変わりない。プレイヤースキルはこちらが多少上かもしれないが、そんなものは数の暴力で一瞬でお陀仏だ。

 ましてや今回は魔法陣の防衛がある。ただ敵を倒すのとでは難易度が大きく変わるだろう。

 しかしアイは、この疑問も予測していたと言わんばかりの笑みを浮かべて答えた。


「その点についてはご安心下さい。圧倒的とはいかずとも、互角の戦いになることは保証いたします。」

「ほう?それは、なぜ?」

「皆様にはまだ教えていませんでしたが、グランドクエスト中は『魔王』のスキルが特殊な効果を発揮します。皆様、ステータスの『魔王』スキルの詳細をご覧下さいませ。」


 アイの言葉に、全員がステータスを開く。どれどれ?


『【魔王】グランドクエスト中はステータスが300%強化される。また、暗黒属性スキルが解禁される』


「・・・・・・は?」


 そんな、間抜けな声を上げたのは誰だっただろうか。アインだったかもしれないし、ブロムだったかもしれない。もしくは俺だったかもしれないし、六人の『魔王』全員だったかもしれない。


 ・・・・・・いやいやいやいや。待て、待ってくれ。これはおかしいだろう。


「ささささささささ、300%強化、ですか!?」


 クロムがありえないどもりかたをするのも仕方の無いことだろう。300%である。つまり、4倍強くなるのだ。


「えぇ、皆様は『魔王』ですから。弱かったりすれば、拍子抜けもいいところでしょう?」

「アッハッハッハッハッハ!確かにな!魔王が弱かったんじゃあいい笑い者だ!」


 ブロムは相変わらず楽観的というか豪快と言うか・・・。だがまぁ、わからなくはない。確かに魔王だなんだと言ってる奴が弱かったらそりゃ拍子抜けだ。

 今も昔も、魔王とは強いものだ。そういう点では間違ってはいないのだろう。


「確かに、これだけの強化があればそこそこやれるかもな。けど、俺達の頭数が変わるわけじゃない。まだ互角には遠いと思うが?」


 これだけの強化があれば、性能で言えばプレイヤーに遅れを取ることはないだろう。だがしかし、だがしかしである。古来より戦いとは個人の力量よりも数がものをいうのだ。戦いは数だよ兄貴ィ!


「そうですね、ですがそちらに関しても解決策はございます。こちらをどうぞ。」


 そう言いながらアイが取り出したのは、二つの掌大の黒い結晶だった。

 アイから受け取り、掌で転がしながら観察してみるが、これといって特徴は無い。


「これは?」

「切り札、といったところでございましょうか?魔法陣の色が変わったら、魔方陣に投げ込んでみてください。」

「切り札ねぇ・・・、使ってみるまで秘密ってか?」

「うふふ、そうなりますね。ただ一つ言えるとすれば・・・」


 アイはそこで一度言葉を区切り、満面の笑みでこう告げた。


「『戦いは数だ』というのは互いが同等の生物だったときの話であって、例え蟻が100匹群れようが象には敵わないでしょう?」


 ・・・うん、大体分かった。分かってしまった。ていうかその笑顔可愛いなおい。


「ありがとうございます」

「だからナチュラルに頭の中覗くなって。やめてね?ほんと。」


 俺とアイ以外の面々は会話の意味が分からないのか首を傾げている。


「と、取りあえず大体のことは分かった。俺からの質問は以上だ。」


 他に何か質問ある奴は?と周りを見渡すが、誰も質問は無いらしい。


「そうですか、では私からの事前説明は以上となります。グランドクエスト当日にもう一度集まっていただき、グループ分けや細かい説明をしたいと思います。」


 それではお疲れ様でした、とお辞儀をして去ろうとするアイを見て、もう一つ聞いておきたいことがあったのを思い出した。


「すまん、アイ。もう一つだけ最後に聞いていいか?」

「はい、なんでしょう?」


 俺達は『魔王』、そして敵はプレイヤー。『NEXO』というゲームを物語と捉えるならば、主人公はプレイヤー達のほうなのだろう。だが、それでも。



「別に―――、負けてやる(・・・・・)必要はないんだろう?」


 これ以上ないほど不敵な笑みを浮かべた俺の問いに対しアイは。

 

「――――えぇ、勿論でございます。」


 これまた不敵な笑みでもって答えるのだった。


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