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第六天魔王と呼ばれた男 ~VRMMOで魔王やってます~  作者: ネコルク
第一章 六翼の魔王
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黒狼刀

皆様のおかげで、なんとジャンル別ではありますが日間ランキング1位になることができました。

ありがとうございます。感謝の意も込め、本日は17時にもう1話更新します。


「お前これマジでどうすんだよ……」

「いいじゃないですか『エリ特製漆黒狼のあったかロングコート』。なにがいけないんですか」

「なにもかもだよ!なんで間をとって決めた名前が全部乗せのフルコースなんだよ!」

「だはらほっぺをひっはらないでくだはいー!」


 腹いせにエリのほっぺを引っ張ってむにむにする。相変わらず無駄に柔らかいほっぺだな。


「ふぅ……、まぁ決めちまったものはしょうがないか」

「私のほっぺ引っ張って落ち着くのやめてくださいよ……」

「エリのほっぺって無駄に柔らかいんだよな」

「無駄にってなんですか。無駄にって」


 俺は名付けが完了した『エリ特製漆黒狼のあったかロングコート』……って名前長すぎだろ!これからは漆黒狼のコートと呼称することにしよう。

 俺は漆黒狼のコートに再び袖を通した。うん、着心地はかなりいいんだけどなぁ。これで名前さえまともなら……

 元凶に視線を向けると、余ったのであろう『漆黒狼の上毛皮』を嬉しそうに抱えていた。コートの製作に毛皮を5枚ほど使用していたので、余ったのは1枚しか無いのだが。


「そういえば、その余った素材は何に使うんだ?」

「これですか?そうですねぇ、私の防具にちょこちょこ使おうと思います」

「そうか。それじゃあそろそろガゼットも武器を作り終わってそうだし、俺は行くよ。コートありがとな」

「いえいえ、それを商売としてますから」

「またいい素材が手に入ったら来るよ。じゃあな」

「はい、お待ちしています」


 エリに軽く手を振り店を出る。

 さて、ガゼットの店に武器を受け取りに行くか。







「あはははははははははは!!なんだその名前、おもしろすぎだろ!!あっははははは!!」

「いつまで笑ってんだよ……!」

「だってよ、エリ特製漆黒狼のあったかロングコートって…ぶふっ!あははははは!!」


 ガゼットの店に行くと、冒険者ギルドでの用事が終わったのであろうアインが先にいた。

 そこでアインに漆黒狼のコートについて聞かれた。名前についてはぼかして伝えたのだが、「コートのステータスを見せてくれ」と言われ半ば諦めてステータスを表示したウィンドウをアインに見せた。

 するともちろん、ステータスにはこのコートの正式名称『エリ特製漆黒狼のあったかロングコート』という名前が記載されている。

 それを見たアインは腹を抱えて笑い出したというわけだ。


「ははははは!!あー、笑いすぎて腹が痛くなりそうだ。さすがエリちゃんだな」

「さすがエリちゃんって、お前まさか……知ってたんだな!?あいつのネーミングセンスが壊滅的なことを!」

「あぁ、知ってたっていうか俺も体験したっていうか……」


 そう言いながら、アインがなにやらウィンドウを表示してこちらに見せてくる。そのウィンドウを覗き込んでみる。


『モフモフファーバングル:メイドインエリ』


「余ったラピッドビットっていうウサギのモンスターの毛皮で何か作れないか聞いたら、これができたんだよ」

「なんであいつは装備の名前に自分の名前を入れたがるんだ……!?」


 プレイヤーによって作成されたアイテムには、銘というものが刻まれる。例えば俺の漆黒狼のコートのステータスウィンドウには、しっかりと『製作者:エリ』という文言が記されている。

 だというのにどうしてエリは装備の名前に自分の名前を入れたがるんだ……。今度店に行ったときに聞いてみるか。


「しかしエリちゃんのオリジナルレシピは、名前は酷いもんだけど性能はいいんだよね」

「そこがまた悔しいんだよな……、名前は酷いが性能がいいから装備せざるを得ないんだよ。ていうかお前、知ってたなら事前に教えろよ!」

「いやー、そこはほら。道連れというか死なばもろともというか」

「てめぇ……!!」


 そんな風に他愛もない会話をしていると、店の奥からガゼットが姿をあらわした。


「おう、ガゼット。武器の方はできたか?」

「待ってたぜノブナガ。できたっちゃできたんだがな……」


 武器の作成が成功したというのに、ガゼットの表情は嬉しさ半分戸惑い半分といったところだ。


「成功したんだろ?なのになんでそんな浮かない顔してるんだ?」

「それがなぁ……いや、見せながら説明したほうが早ぇな。ほら、こいつが完成品だ」


 そういってガゼットがカウンターの上に置いたのは、黒い鞘に納められた刀だった。鞘にはそこまで派手な装飾はされておらず、一箇所小さな白い刻印がされていた。


「この刻印は?」

「そいつはうちの店のマークさ。俺が作ったものには全てその刻印が入ってる。とりあえず抜いて軽く振ってみてくれ」


 鞘を左手で持ち、右手で柄を掴み一息に引き抜く。


「おぉ……」


 思わず口から感嘆の息が漏れる。その刀は、ただひたすらに黒かった。刀身から鍔、柄の先に至るまで全てが漆黒に覆われていた。

 軽く刀を振ってみる。しばらく振った後、流れるような動きで刀を鞘に納める。


「これはいいな……、重さもちょうど良くて振りやすい」

「おう、気に入ってくれたなら何よりだ。そいつの名前は『黒狼刀こくろうとう』だ。大事にしてやってくれ」


 その言葉を聞いて、俺は思わずガゼットの手を強く握り締める。


「そうだよ……、名前ってのはそんな感じのシンプルなのでいいんだよ……!」

「お、おう……。よくわからんがありがとよ」


 そうだ、名前ってのはこんな感じでいいんだよ!エリにはガゼットのセンスを是非見習ってもらいたいものだ。


「それで、なんで浮かない顔してたんだよ?」

「あぁそれなんだがよ、率直に言うとそいつの性能はバケモンだ」

「バケモン?」

「あぁ、今攻略の最前線がどこか知ってるか?」

「えぇと……」


 ここ数日は森に篭って狩りをしていたため、攻略の最前線がどこまで行っているのか知らない。助けを求める意味でアインに視線を向けると、代わりにアインが答えてくれた。


「確かちょうど昨日、第二門の先にある街に到着したはずだ。名前は確か……『サウイスト』だったはずだ」

「そうだ。それで最前線のギルドの連中なんかがうちに装備を作りに来たりしたんだ。だがな、その『黒狼刀』の性能は頭一つ飛び抜けてるとかそんなもんじゃねぇ。正直今の段階で作れていいものなのか疑問に思っちまうほどのもんだ」

「……そこまでなのか?」

「あぁ。俺の予想が正しけりゃ、こいつはそうだなぁ……第四門、いや第五門の先の素材で作れるような武器と同じくらいの性能だ」

「おいおいまじかよ」


 『黒狼刀』の持ちうる性能にアインも引きつった笑みを浮かべている。第一門の先に出るモンスターの素材でこんなものが出来てしまうとは。もしかしてディアボリックウルフってやばい奴だったのか?


「でも、別に性能が良くて困ることはないだろう?」


 性能が悪くて困ることならいくらでも考え付くが、性能が良くて困ることと言うのは思いつかない。


「それがそうでもねぇんだわ。プレイヤーもいい奴ばっかりとは限らねぇからな。その武器が原因で絡まれたりすることもあるかも知れねぇぞ?」

「そういうことか、まぁそうなったらなったでどうにかするさ」

「そうか。だが気をつけろよ?何かあったら俺に言え。お前の味方くらいにはなってやるさ。ガハハ!」

「……おう、ありがとよ」


 まったく、頼りになる鍛冶師だ。こんないい奴を紹介してくれたアインには後で礼を言っておかないとな。


「それじゃ、代金の10万Gだ。また何かあったら来るよ」

「おう、まいどあり!いつでも来いよー!」


 ガゼットの気持ちのいい挨拶を背に受けながら、俺とアインはガゼットの店を後にした。





 俺とアインは、当初の目的である第一門の先のエリアボスを倒しに行くため、第一門に向かっていた。


「いいなぁ、その刀。俺も会えねぇかなー、そのディアボリックウルフってやつに」

「俺だって会おうと思って会ったわけじゃないからな。そういえばお前なにしに冒険者ギルドまで行ってたんだ?」

「そうそう、一応ディアボリックウルフの情報を集めに行ったんだよ。冒険者ギルドになら知ってる奴もいるかもしれないって思ってさ」

「それで結果は?」

「ダメだった。誰一人知らなかったし、聞いたことがある奴もいなかったよ」

「だとすると、もしかしたらとんでもないレアモンスターだったのかもな」


 そんな会話をしていると、いつの間にか第一門に到着していた。


「そういえば、第二門の先の街に辿り着いたってことは近々グランドクエストがくるんじゃないか?」

「あぁ、掲示板なんかじゃどんなグランドクエストが来るのか話題になってるぜ」

「前回は参加できなかったからな。今回は是非とも参加したいもんだ」


 前回は巨大なドラゴンだったって話だからな。今回は一体どんなクエストになるのやら楽しみだ。


 未だ見ぬグランドクエストに思いを馳せながら歩いていると、唐突に視界にメッセージが表示された。



『 刻は来た 集結せよ 』



 次の瞬間、第一門から俺とアインの姿は消えた。


追記:余った素材の数についてわかりにくかったので、余った素材の数を明記しました

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