第5話 迷い2
「え、う、うん…どうだろう…」
僕はなんて返したらいいのかわからず曖昧な返答をしてしまい、その場がなにか微妙な空気に包まれてしまった。その空気を変えようとしたのか、
「俺もさ、せっかく3人とも同じ高校に行くんだからまた3人で一緒に野球したいけどな。優とまたバッテリー組みたいし!!なんてね、まぁ野球部に入るか入らないかは置いといて、高校でもよろしくな!」
そう言って、力強いボールを僕に投げてきた。
「パチン」
乾いた音が公園に鳴り響いた。
1時間ほどキャチボールをした後、数馬が最近発売した野球のゲームを買ったということで数馬の家でそのゲームをすることになった。
数馬の家が溜まり場みたいになっており、部活がない日や引退してからはよく遊びに行っていた。
家に着くと、数馬の双子の姉である絢がリビングで気持ち良さそうに昼寝をしていた。
僕が見る限り、顔はそんなに似ていないと思う。
性格も全然違う、と僕は思う。
数馬は几帳面な性格でいつも部屋は綺麗に整理整頓されている。
それに比べ、数馬の話によると絢の部屋は洋服やぬいぐるみが散乱しているらしい。
絢も幼稚園から一緒で、中学に上がる前まではよくこの3人と絢の4人で缶蹴りやかくれんぼをして遊んでいた。
中学生なり遊ぶことは滅多に無くなったが、学校で会ったり数馬の家に行くときは普通に会話はしていた。
絢も成岡高校に進学する。
絢を起こさぬよう静かに階段を上がり数馬の部屋に向かう。