第2話 中学卒業
僕が住んでいるのは、電車が1時間に1本、コンビニへ行くのも車で15分程の、家の周りは畑や田んぼで囲まれているような田舎町である。
この町には高校がなく、進路を決める際に電車で1時間半ほどかかる私立の進学校か、家から一番近い、それでも電車で40分程かかる毎年定員割れしているような公立高校か、僕の中では二択だった。
私立の高校だと、朝の6時前には起きなくてはならないことや、なにしろ合格する自信がなかったので、家から一番近い公立高校を受験しようと思い、両親に相談した。
父も母も
「まぁ、良いんじゃない」
と軽い感じで了承してくれた。
僕は両親に何かを反対された覚えがない。
スイミングスクールに通いたいと言えば通わせてくれたし、英語を勉強したいと言えば塾にも通わせてくれた。
しかし、長続きはしなかった。すぐに辞めたくなり、
「辞めたいんだけど…」
と伝えると
「そっかそっか」
と。決して「続けなさい」とは言われなかった。
そんな僕が唯一続けられているのが「野球」である。
世間一般に言えば、「子どもに甘い親」なのかも知れない。
その高校に落ちたらどこの高校にも入れないと言われているような高校だったので、受験勉強というものは全くしなかった。
なにも緊張することなく試験当日を迎えた。
完璧とまではいかないが大体は解くことができた。
数週間後、無事合格し、僕は公立の成岡高校というところに進学することになった。
あっという間に時が過ぎ、中学校の卒業式を迎えた。
友達も何人かは同じ高校に進むので、涙を流すまでとはいかなかったが、離れる友達もいるので多少うるっとはした。
式が終わり、教室に戻りたわいもない会話をしていた。
「誰か第二ボタンもらいにこないかなぁ」
とか
「呼び出されて告白されないかなぁ」
とか
ドラマや漫画で見たようなシーンを期待し待っていたのだが、
当然そんなことはなく、
「実際そんなことあるわけないよな!!」
と自分に強く言い聞かせ、
先生やクラスメイトとの別れを惜しみながら中学校を後にした。