神竜の婚約者とエルフの国へ?
「さて、契約条件は──
1.エルフィーノ森皇国側は、俺、カズトに無理のない範囲で便宜を図ること、ただし、無理のない範囲については応相談する。国側が勝手に決めてはならないし、カズト側も勝手に決めてはいけない。
2.1を元にカズトはエルフ側の依頼、エルフの里を脅かす悪しき存在についての対処を全力で行うこととする。
3.カズトが悪しき存在の対処が不可能だと判断した場合は以上の文言を放棄し、互いに不可侵の態度をとることにする。
4.契約の証として、エルフィーノ森皇国側はカズトになんらかの有益なものを与える。ただし、カズトが悪しき存在の問題を解決出来ない場合はそれを返せるものとする。
──と言った感じでいいかな?」
俺とソフィアが《契約魔法》の魔法陣の上に立ちながら、目の前にあるタッチパネル式の透明な板みたいなものに書かれた文章を見ている。
「あ、あの、これは?」
「ん? ああ、これは俺の特殊能力みたいなもんだよ。契約に関しての効果があるんだ」
「そ、そうなんですか……」
「……信用できない?」
「い、いえ! そんなことはないんですが!」
「本音は?」
「……」
ま、そりゃそうだよな。
この状況で信頼せよっていう方が難しいものだ。だって俺も多分ソフィアの視点に立ったら無理だと思うもん。
「──ま、そんなことは俺にはどうだもいいんだけどねー」
「え、ちょ、まっ──!」
「というわけで、【契約する】!」
俺はあっさりとソフィアの懸念を無視して契約をしてしまう。
信用なんていうものは得るのが非常に大変なものだ。それは今後の行動で手に入れるものである。
……そういえば、地位とか金とか、今回の信用もそうだけど、生きて行く上で必要なものって失う時はあっさり失うものだよね。
俺も地位に関してはあっさりなくなってしまったわけだし。世知辛い世の中だ。
俺がこの世の無情さに打ちひしがれている間に魔法陣がまばゆい光を放って消滅した。
そして俺の脳内で契約が無事完了したことが確認される。
「さて、あとはあんたらにエルフの住まう国へ案内してもらうだけなんだけど……」
俺は辺りを見回すと、龍のブレスとか俺が放った炎や雷の魔法の影響でボロボロになった森が存在していた。
「……これはどうにかしないとな」
もともと神竜の試練とやらの影響でこうなったんだ。責任の一端はあるだろう。
となれば……
メーティス、何か植物を生み出したりするようなスキルとかないの?
『今、検索するの!』
そうして俺の脳内に情報が流れ込んできた。
うーん、これが今一番適しているかな?
俺はまた《妄想創造》で新たな力を獲得する。
幸いさっきたくさん妄想ポイントが入ったしな。その辺りについて後でメーティスに聞かなきゃだけど、取り敢えず今は……
「《蒼園降誕》」
俺は地面に手を当ててスキルを発動した。
「あ、あの……何をッ!!!?」
置いてけぼりにされていたソフィアが話しかけてくるが、直後の光景に驚いてしまった。
まあ、突然森が出来上がっていけば驚いてしまうだろう。
俺の考えた《蒼園降誕》は、俺が農業チートを考えた時に思いついた能力で、基本的には「土壌活性化」、「植物生産速度上昇」、「新植物創造」などの能力がある超便利スキルだ。
と言っても、こいつ自体に殺傷能力がなかったり、土に対応している栄養成分地中にない場合は発動できないなどのデメリットがあるせいか、そこまでポイントが高くなかった。《重力魔法》と同程度だ。
ただ、まあここら辺一帯を覆い尽くすくらいのカバー範囲の広さなんかの効果か、特に問題なくこの場所に木々を生い茂らせることができた。
まあ、チートな植物なんかを作らなかったのも要因だろうが、ともかくこの辺りの森林は元どおりである。
これで気兼ねなくエルフの森へ行けるな。
「よし、じゃあ早速だけど案内よろしくな?」
俺が満足げに、エルフの国への期待を込めながら後ろを振り向いてそう言うと、
「あ、あなた様は大地の神様なのですか?」
「おお、我らが神よ……」
キラキラした目のエルフと跪き祈りを捧げるダークエルフがいた。
えと……エルフの国に行けるんだよね?