神竜の婚約者とエルフとの交渉
「──だが断る」
「……………………は?」
一度は言ってみたかったんだよね~
「な! なぜですか!」
「そうですよ!」
俺の痛快且つ丁重なるお断りの言葉に硬直していた姫様エルフと執事ダークエルフが突っかかってきた。
仕方がないので断った理由も教えてあげることとしよう。
「なぜかと言えば、まず報酬の件についてだが、与えてくれると言ったが具体的に何をくれるんだ? そもそもそれが本当にもらえる可能性は? そのあたりについてがあいまい過ぎて人にものを頼んでいるにもかかわらずその態度はどうなんだと思うね」
「うっ」
「ついでに言えばあんたらのその格好がいろいろアンバランスだろ。片方は旅人の格好で片方が執事ってわけわからんわ。普通に怪しいです。そして怪しい人にはついて言っちゃダメというのはどこの世界でも常識だろう」
「ううっ」
「というわけで、以上のことから断らせていただいたわけですが、これで理由をご理解いただけたでしょうか?」
俺はにっこり笑って「これでも文句がありますか?」という意思を伝えた。
「ううう……」
「これは、何も言えませんね」
エルフとダークエルフのコンビが撃沈した。
うん、ここまでへこませたら大丈夫かな?
「──というわけで、契約をしようか」
「契約?」
「そう! ちょっと待ってね」
俺は脳内に新たな妄想で作ったスキルを思い浮かべることにした。
ってなわけで、何か契約にうってつけのスキルない?
『そんなことよりもっと話すべきことがあるの!』
うん? なんだ? そういえばいたな、お前。誰なんだ?
『む~! 自己紹介のタイミングを逃しただけなのにこの扱いは酷いの! 私はメーティスなの!』
……なんか聞いたことある名前だな。
『それはカズトが妄想したナビゲーターだから当然なの!』
ああ、まあそれも当然と言えば当然なのか?
『そうなの!』
うーん。俺はこんな可愛らしいナビゲーターを妄想したことあっただろうか?
……ま、いいか、それよりも契約に関するものはないのか?
『分かったの! すぐリストアップするの!』
そうしていくつかの候補がリストアップされる。
《奴隷契約》 500000pt
《絶対契約》 1000000pt
《主従契約》 1500000pt
《契約魔法》 3000000pt
強制奴隷化 10000000pt
奴隷多くね?
『契約系はこれしかなかったの。これはカズトが妄想したものだから、カズトのせいなの』
そ、それを言われるとつらいのだが。
確かに一度、気に入らないやつは奴隷に落とすとかいうふざけた能力を妄想したことがあったけど、あれはね? 魔がさしたというかね? 不可抗力ってやつですよ?
『どちらにせよ妄想したんだからこれしかないの』
くっ、どうやらこの《妄想創造》の力は自分がやけっぱちになりながらした過去の妄想も暴露してしまうらしい。とんだ黒歴史閲覧である。
ん? そもそも《妄想創造》というで自分の妄想を実現している時点で黒歴史でいっぱいだろって? それは、まあ、それはそれ、これはこれってやつである。
ともあれ、この中だったら《契約魔法》が一番汎用性は高いような気がするし、これでいいかな。消費するポイントも高いわけだから効果もあるだろう。同じポイント消費量の《雷魔法》が便利だったしな。
……《強制奴隷化》は恐ろしい力だけど出来ることは限られるし、もし本当にこんなことしたら犯罪者だ。
……まあそもそもこの世界には《契約》っていうスキルが存在していて、それを使えないからこんなめんどくさいことしてるわけだからな。
ほら、なんか待っててもらっている二人も訝しむ目で見始めてるし。
というわけでメーティス、《契約魔法》を覚えようと思うんだが。というかとっととやってくれ。
『了解なの!』
俺はポイントを消費して《契約魔法》を手に入れた。
「と、いうわけで俺の持ってる《契約》を使えるから、それでお互いに何をするべきか契約しよう」
「……了解しました。変な行為をしたら許しませんからね」
「じゃあ交渉は決裂ってこと──」
「メア! 頼んでいる立場である私たちがそういったことを言ってはいけません!」
「しかし──」
「いいから!」
「……かしこまりました」
うん、メアの態度は主人を守るそれとして正しいんだけどね、人にものを頼む時にはちょっと棘があるんだよな。
子供だからって舐めてんのかね?
「ま、いいか、じゃあ色々と条件をお互いに出して、それで契約しよう」
この後、俺は2人と契約に関する話し合いをした。
実は最初からエルフの国には行くつもりだったんだけど、時々胡散臭い話とかあるからねー。念のためってやつである。
さて、今後どうなることやら。