神竜の婚約者と紫紺の雷龍
久しぶりの投稿。こちらはしばらく不定期更新になる予定。申し訳ありません。
「俺が力を得たいのは、俺のことが好きだと言ってくれたユイに後悔をさせたくないからであり、何より彼女に俺と結婚してよかったと笑ってもらうためだ」
そう行って俺は黒竜に向かって走る。
さーて、カッコつけて言ったことだし。こっちとしてもとっとと技を仕込んでおきますか……
走りながら、俺は自分が今まで持っていた純白の剣に《重力魔法》と《雷魔法》を流し込む。
イメージは暴れるような動きをする雷を強引に力場でうちに留めるような感じで……ん?
……なんでかわからんが俺の心が決まった途端にこの剣との親和性が上がった気がする。なんでだ?
俺が疑問に思いながらも技の準備をしていると、黒竜がフラフラしながらも立ち上がった。
うーん、出来るだけ余裕を持って当てたいのだが、時間がなさそうだな。
『そうですか……なら、こちらとしても負けるわけにはいきませんね』
「ん? どゆこと?」
『いえ、なんでもありません』
本当になんだったんだろうか?
おっ! 黒竜とよくわからない会話をしていたらいつの間にか純白の剣にうっすらと紫色の層が出来上がっている。
よし、本格的に反撃開始と行こうか。
俺は走るスピードを一気に上げる。
『なっ!』
黒竜が驚いたと言うことはうまく行ったのだろうか?
俺が今意識してたのは緩急だ。
遅い動きをした後に速く動くと、目がついていくのに少し遅れるというのを生かす技。野球とかでもよくあるやつな。
実はここまでの逃走劇では全速力で移動してなかったのだ。
《重力魔法》で体を強引に変な方向へ移動させて避けていたのは攻撃に出た時にスピードに慣れさせないためで、うまく行ったようだ。
これによって俺は奴の視界から消えたのだろう。すでに真下にいると言うのに全く気がついていない。
俺はそのまま黒竜の両足を回転斬りで斬りつける。ジュワァッ!と肉が焼ける音とともに足が斬れていく。
「グアァ!」
おや? 普通に声を出してしまっているぞ?
──ってそのまま倒れて来るし!
俺はその場から即座に離れる。
よく考えたらこの剣、さっきからまるで斬っているという感覚がない。どちらかといえば勝手に刃が相手の中に入っていく感じである。
しかもそれが俺の流した魔力で上がっているような感じがするから余計に強力だ。
……さて、そろそろ《雷魔法》と《重力魔法》の併用の感覚がつかめて来たな。
俺は黒竜が動かないことを確認して純白の剣に魔力を現在コントロール出来るいっぱいいっぱいまで溜め込んだ。
と言うか魔力がほとんどなくなってしまった。どうやら逃げるのに大量の魔力を使ってしまったようだ。強敵相手には配分を気を付けないとな。
純白の剣が、紫紺に輝いていく。
魔法はイメージで発動できる。
なら、俺がイメージするのは、ユイ──神竜と対になる蛇型の龍、俺が変化したのは【神龍の血】の影響だから、神々しさすら感じられる龍をイメージする。
ちなみに俺は黒竜の尻尾の攻撃範囲から外れるような場所にいる。
頭が正面にあったらブレスが飛んで来てしまうからな、そんなことがないような位置どりだ。
そして、俺のイメージが固まった。
もともとイメージは得意な方だ。これくらいは出来る。
「さて、何か言い残すことはあるか?」
『……』
黒竜は何も言わなかった。
「じゃあな」
俺は魔法を解き放った。
純白の剣から、黒竜のブレスもかくやというような紫紺の雷で出来た龍が放たれる。
膨大な魔力で出来た龍は黒竜を飲み込みそのまま天まで登って行った。
まあ、これは俺がコントロールしたのだが。
とりあえず疲れた。
俺はその場に倒れこみ、少しの間眠ってしまった。
自分で放った紫紺の雷龍だが、我ながら結構神々しかったなぁ。
…………
頭を優しく撫でられる感覚がある。
うっすらとめを目を開けると、そこには琥珀色の瞳をしたハクがいた。青銀の髪が綺麗だな。
ハクが口を開く。
「最後の魔法は恐ろしいほどに素晴らしかったです」
「そうか、ありがとう」
「あれはなんと言う魔法なんですか?」
「うーん、そうだなぁ……シンプルに──『紫紺の雷龍』かな」
「なるほど、坊ちゃんだけの魔法ですか」
「そうだよ」
あの『紫紺の雷龍』は本来真っ直ぐに進んでいく《雷魔法》を《重力魔法》でコントロール出来るようにしたものだ。雷龍が天に登って行ったのは俺がコントロールしたものだ。そのまま放置したらヤバいことになりそうだったからな。
しかしまさか紫雷になるなどとは思わなかったなぁ。
パアァァッ!
「! 坊ちゃん!」
「うん? ああ、多分これは大丈夫だよ」
俺が《雷魔法》と《重力魔法》の混合──《紫雷魔法》とでも呼ぼうか、について考察していたら、自分の体が輝き始めた。
どうやら最終進化の段階のようだ。
今日はなんだか色々あるなぁ。