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妄想が世界最強の第一歩?  作者: 上和 逢
第一章 神竜の婚約者
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神竜の婚約者と心の中

『……少し、話をしませんか?』


 緊張感のある空間を打ち破ったのは、そんな黒竜の声だった。なかなか紳士的な声だ。しかも、さっきのやつらよりも理性がありそうである。


「……わかった。じゃあ下に降りてもいいかい?」

『はい。構いません』


 俺と黒い竜は地面に降り立つ。


「で?話ってのは?」

『話をする前に、いくつか質問があるので答えてくださいますか?』

「うん?まあいいけど」

『あなたは何故神竜と婚約したのですか?力が欲しかったのですか?それほどの力がありながらなぜ?力を得て何をしたいのですか?』


 質問ってのはいっぺんにするものじゃないと思うんですよね。


 俺は黒竜のことをせっかちなやつと結論づけて、だったと答えることにした。まだ【神龍の血】の効果が残ってるからな。会話が終わるのは早いに越したことはない。


「うーん、婚約したのは俺のことを面と向かって初めて好きって言ってくれたから。力はまあ欲しいけど、神竜と婚約することで力が手に入るなんて思ってなかったから知らないし、力を得て何をしたいか、か……」


 俺は何をしたいんだろう……


 この世界は前世と違って頑張れば頑張るほど、目に見えて成長が実感できるところだった。


 だから努力するのが楽しくて頑張ってた。

 そこに意味は有っただろうか?

 何かを成すために努力していただろうか?


『ええい!早く答えなさい!』


 俺が最後の質問に戸惑っていると、黒竜が尻尾で攻撃してきた。しまった! こいつせっかちだった!


 黒竜は尻尾をブンブン振り回して攻撃してくるので、とにかくその範囲から逃れる。


 さらにこちらに迫って来れないように、雷の槍を再生して飛ばす。……雷の槍ってなんかあれだから今度名前を付けようかな。


『ええい!珍妙な技を使いおって!』


 黒竜は雷の槍を受けることなく回避に徹する。どうやらこれが鱗を無視して相手にダメージを与えるのを認識しているようだ。


 ちなみにこの世界では雷はちょっと変わった光の柱という認識があって、俺が行こうと思っている学園国家ではこれを再現するために聖魔法の使い手たちが頑張っているらしい。

 つまり俺の雷魔法がこの世界での正真正銘初めて作られた魔法の一つとなるわけだ。


 確か重力の概念もこの世界にはなかったように思う。まあ、俺もそこまで詳しくはないから人のことは言えないから、俺の重力魔法も妄想で作り出したものになる訳だ。


 ――っと、余計なことを考えている間に黒竜が羽ばたき空高く飛ぶ。口には熱量を込めたブレス、しかも黒竜らしく黒い炎が溜まっている。


 俺は目の前の状況をどう回避したものかと頭の片隅で考えながらも、ずっと自分が何を成したいのかについめ考えていた。


 正直俺はそこまで目標があったわけではない。

 前世も普通に学校は行かなければならない場所だから行っていただけだし、正直言えば行きたくないなと思う気持ちの方が強かった。


 こちらの世界も割と似たような感じだ。

 自分が貴族だから、その貴族として頑張った。

 でも無理みたいだったから家を飛び出して、自分に何が出来るのか探そうと思ったのだ。


 そこに何かがあったわけではない、ただ目の前のことをなあなあに受け流してきただけに過ぎないのだ。


 俺は何をしたいのだろう……


 気がつけば解決策も見出せないまま黒竜のブレスのチャージが完了してしまう。

 俺は即座に全力疾走でその場を離れる。


『逃すと思いますか!』


 しかし、それを予想していたのか黒竜はちょうど俺が次の一歩を踏み出そうとしていたところ目がけてブレスを放つ。


 普通では回避できないが……


 俺は純白の剣を持った右手を前方の地面に、左手を後ろにある木の出来るだけ高い位置に向けて、重力魔法を使う。右手は斥力、左手には引力を発生させる形だ。


 今の俺は木を重力魔法だけで動かせるほどこの魔法を扱えてはおらず、この場合引っ張られるのは俺の体。しかも今は前方の地面に斥力を放ち自らの体が斜め上後方に弾かれる形になるので、自然と木の高い位置に到達する。


 その後すぐさまその木からさらに距離をとって回避……したところでブレスが地面にあたり爆発、俺は吹っ飛ばされた。


『今のを躱わしますか!』


 何やら黒竜が驚きの声を上げていた気がしたが、今の俺は、絶賛吹っ飛ばされ中でありながら、やはり自分が何を成したいのかについてのこたえを見つけることに苦心していた。


 今の攻防を経て、俺の中では奴を倒す算段をなんとなくつけることが出来てきたのだ。


 だからこそ、この婚約者の試練と呼ばれるものを本当の意味でクリアするために、俺が何を成したいのかを決めなければいけない気がした。


 そう、これは試練だ。


 試練ならばなんらかの条件をクリアすべきなのだ。

 おそらく、倒した相手のステータスを奪う今の異常な俺みたいな化け物ではなく、普通の人間が五万のモンスターの大群と相対したら命懸けになる。


 そこで神竜と共に歩むために命を賭ける意味を自身で問うことになるのではないだろうか?少なくとも俺は奴の質問を聞いた時にそう思った。

なら俺もそれを考えなければなるまい。


 ――俺はどうしたいのか。


 俺はそれを決める時間を回避するために、このせっかちな黒竜を相手に時間を稼ぐ決断をした。

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