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妄想が世界最強の第一歩?  作者: 上和 逢
プロローグ 妄想家のオーク
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天職は【妄想家】

新しく始めました。拙い文章ですがよろしくお願いします。

 姫騎士は目の前の光景を絶望的な表情で見つめる。


 眼前に迫るは大量のオーク。


 姫騎士は自分が汚されるのを幻視しながら、自らの首に短剣を添える。せめて自分の魂だけは穢されないようにとの僅かな反抗。


 瞳に雫を溜めながら、しかし決してこぼさないようにという意地を抱えて自らの命を絶とうという時、


「大丈夫だよ」


 そんな優しい声が聞こえて、次の瞬間にはすべてのオークの上半身と下半身が離れていた。


「へ?」


 思わず気の抜けた声が出てしまった姫騎士は、自分に声をかけてくれた人物を見る。


 そこにいたのは、手に黄金の長剣を持った、金髪碧眼の少年。鼻筋はスッと通っており、薄い唇は今はやさしく緩んで、姫騎士に安心感と少し妖しさを感じさせる。


 そして思わず姫騎士は思わず涙をこぼし……


「次、オーランド」

「はい!」


 ……良いところだったのに。


 思わず文句を心の中で言いながら、自分が頭の中で構築していた妄想を打ち切って、目の前にある祭壇のに向かって歩いていく。ちなみにこの妄想もあとでノートに記録する予定だ。これで何個目の妄想だったか、一万を超えてからは数えていないな。


『妄想』……これが俺、サクラ王国侯爵家三男オーランド・クラウドの生き甲斐……いや、生きるために必要なものだ。


 ……なんともまあ、うん、とんでもないことを言っているのは理解している。


 だがしかし、デブでブサイクで全くモテない豚貴族な俺としては、せめて脳内だけでも完璧な主人公を夢想してもいいと思うのだ。だいたい名前もオー(ランド)ク(ラウド)って、もろ魔物、適役だし。そういういう意味ではさっきの妄想は完全に自虐だな。笑えないのがなんとも言えないところなのだが……


 ん? なんで自分のことを豚貴族と言うのかって? だって事実なのだかしょうがないじゃないか! ってそういうことじゃないか。


 なぜ自分を豚貴族というのかの答えは俺が転生者だからだ。


 俺は地球の日本と呼ばれる場所に18年間過ごしていたが、交通事故で亡くなり、そのときにこの世界に転生した。


 オタクであった俺は狂喜乱舞したのだが、金髪碧眼なのに、自分の顔面偏差値が最低だと知って絶望してしまった。まあ、この世界にもライトノベルがあったのでそれを読んで、気を紛らせながら過ごしていたから鬱になったりはしていないが。


 あれだ、主人公の可愛い女の子たちとのイチャラブをブヒブヒ言いながら読んでいた感じだ。うん、完全に豚だな。


 冗談はともかくとして、俺が好きなライトノベルはよく強欲な貴族=大抵デブで醜い顔をしているの法則があるから、自分のことをそう自称しているのである。別にこんな身なりに生まれたくは無かったんだけどな。


 だから、せめてもの心の慰めとして妄想をしているのだ。


 さて、そんなどうでもいい事は置いておいて、ちょうど今、自分の人生を大いに左右する重大イベントが始まろうとしている。っと、その前にこれを説明しなきゃな。


『勇者育成学校ブロッサム』


 それが俺の通っている学校だ。


 この学校は、その名の通り才能ある人族の若者を王国を守るための勇者として育成することを目的とした場所で、この世界にいる魔物や魔族と呼ばれる種族を束ねる魔王に対抗するための知識や戦闘訓練を行っている。


 この学校は二百年ほど前に異世界から来たという勇者が作ったもので、市民なんかもここに入る事ができる。


 まあ、今では貴族どもが自分の子供の地位の高さを自慢するために利用されて、誰でもは入れるという、かつての素晴らしい考え方が汚染されてしまっているのだが……また、話が横道に逸れてしまったな。


 ともかく、俺は今年九歳となるのだが、この年がこの学校に置いて最も重要なターニングポイントになっている。……ふむ、この年齢だと俺は子豚か?


 ……っと、話が逸れたが、そのターニングポイントとは、俺たちの天職が決まることである。


 これはこの社会で生きていくための重大ポイントだ。


 大当たりは【勇者】、その次が【聖騎士】や【魔術師】と言ったところか、まあ大抵の天職はライトノベルでいうところのチートの能力が得られるので文句はない。


「お!オーク勇者が天職の選定に入るようだぜ」

「ま、どうせオークだろうけどな。ギャハハ」

「確かにそうだな。ホント、なんであんな奴がサクラ様と同等の実力者なんだか」


 文句をこちらにぶつけてくるのはこの国にある四つの侯爵家のうちの三つだ。

 俺はこの見た目でありながら他の侯爵家の奴らよりも優秀だから、三人で俺を仲間外れにしている。


 なんというか……あいつらが俺みたいな身なりをしてたらまず間違いなく、本の中で真っ先に倒される豚貴族になれそうだ。


 まあ、このくだらない罵倒も、この天職選定が終了すればいいだけの話だ。


 俺が祭壇の中央に立つと、光が俺を包み込む。この光が俺に天職を与えてくれるのだ。


 光が徐々に俺の中に浸透していくのを感じる。天職が手に入らない者はこの光に体を弾かれるそうだが、俺はすんなりと入っていく。まあ、これについては当たり前なのだが、そのことについては置いておいて。


 そして俺の天職が決まった。


 頭に流れ込んできた俺の天職は……


 …………【妄想家】だった。

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