乳バンド
皆さんは乳バンドというものを知っていますか?
そうです、一般的には大胸筋矯正サポーターと呼ばれるアレです。
おっと私のご紹介がまだでしたね。私は加藤武、花も恥らう18歳の男子高校生です。
え、男かよ死ねですって? まぁそういわずに話を聞いていってくださいよ。
事の発端はですね、私が学校から帰ってきたときのことです。はい、お察しの取り帰宅部です。まぁ、それは良いじゃないですか、話を続けますよ。
どこまで話しましたっけ? ああ、そうです学校から家に帰ってきたときのことです。私が元気に帰宅の挨拶をすると、居間でソファーに寝転がりながらテレビを見ていた母の豪快な放屁の音に迎えられました。凄いですね、玄関まで聞こえる屁の音なんて惚れてしまいそうになります。嘘ですけど。
それで息をとめつつ階段を駆け上がって私の城である自室へと入ったんですよ。そしたらヤツが居たんです。黒くておわん形をしたアレです。いえ違いますよ、台所の黒い悪魔ことGではありません。ここで冒頭の話に戻るわけです。つまり俺の部屋の床に黒いブ……、ではなく乳バンドが転がっていたのですよ。
健全な男子高校生ならここでやることはひとつですよね? そうです、頭にかぶってネコミミ! ではなく、くんかくんかですよ!! はぁはぁはぁ……。
申し訳ありません、少し興奮してしまいました。それで嗅いだのかって? そこは冷静沈着な私です。3秒だけ嗅いで、その後はぐっとこらえてこれが誰のものかという事を考えたわけです。それにしても不思議なものですよね、同じ乳バンドでも誰のものかと言うだけで家宝から最終兵器まで変わってしまうのですから。
ちなみに私は彼女居ない暦=年齢のごくのーまるな男子高校生なので、え、今時の高校生ならもう童〇を捨ててるですって? アーアーキコエナーイ。
話を戻すと、俺の彼女のものでは無いと言う事になります。居ない人間の物だけがあるなんてホラーですしね。つまり私の彼女の忘れ物説は否定されたわけです。
次なる可能性は敬愛する母上のものかどうかという事ですね。
そうそう、その前に床にあるモノを良く観察して見ましょう。
それは黒い総レースで、ハーフカップっていうんでしょうか? 良くエロ本……、もとい保健体育の教科書に出てくるような性的興奮を高めやすい形状をしています。
大きさは具体的には判りませんが、かなり大きいと思います。いわゆる巨乳向けという奴ではないでしょうか。正常な男子なら思わずかぶりたくなる代物ですね。
さて、ブツの概要を把握したところで持ち主の推察に戻ります。
ちなみに母ですが、当年とって45歳の専業主婦で、食う寝る食うの生活をしています。見た目はそうですね、ジャイ子とジャガー横田を足して割らないような感じでしょうか?おっとどっちも『ジャ』が付きますね、どうでもいいですが。
それでは検証のために目の前の乳バンドと母の姿を脳内で合成して見ましょう…………………………………………………………………………………………………………………。
――失礼、気が遠くなりかけました。結論から言うと無いですね。〇貞力53万の私の想像ではこれは男を誘うために付けるもののはずです。そして母が見せる相手といえば乳、ではなく父だけですから。
もし父があれをつけた母に迫られたら間違いなく土下座して許しを請うと思います。そういう意味では強力な武器かもしれませんが……。
ともかく母のものではありません、無いと言ってください!
さて、母という可能性が満場一致で否定されたところで次に思いつくのは――、弟の雄二でしょうか。雄二は雄々しいという名前と違って小柄で女顔の可愛い奴です。ちょっと萌える設定ですよね? え、設定って何ですか? 私、そんなこと言いました?
さて、雄二は15歳ですが、私の知る限り彼女が出来たことはありません。ただ、やたら仲の良い男子が居るのが気になりますが……。
まぁ、それは置いておいて仮に雄二が何かに目覚めちゃったとしてもサイズが大きすぎるでしょう。雄二じゃ中にジャンボ肉まんでも入れないと合わないと思います。
ということで弟関連ではないということにして次に行きましょう。
しかしもう家族は打ち止めですから、あとは近所から風で飛ばされてきた――。朝からずっと窓は鍵も含めて閉めてありました。
見ず知らずの女性が俺の部屋に侵入して、おもむろにソレを外して置いて行った――。きょうびのエ〇マンガでももうちょっと現実的な話を描くでしょうね。
父が不倫相手を家に連れ込んで私の部屋でハッスルしてしまった――。そんな事が現実にあったら、今頃母に文字通り吊るされているでしょうね。母に睨まれただけで震え上がる父がそんな事をして隠しきれるわけがないですし。
もう後はテレポートしてきたとか、魔法でとか、床から生えてきたとか、私が自分で買ったのを忘れていたとか非現実的な事くらいしか思いつきませんね。
困りましたね、手詰まりです。これがコ〇ン君やら金田〇少年なら突然正解を思いつくわけですが、残念ながら私には無理です。
ところで皆さんはマーフィーの法則というものを知っていますか?
その基本精神のひとつに「うまくいかなくなるいくつかの方法があるとき、そのうちでも最悪のものが起こる」というものがあります。
これはつまり、もっとも当たって欲しくない予想こそが当たると言い換えることも出来るでしょう。
私が何を言いたいのか、察しの良い方ならもうお分かりでしょうか?
そう、現実は何時だって非情なのです。
寝てたら唐突に思いついて、居てもたっても居られずに起きて書きました。