嫌い嫌いも好きのうち
「待てよ!皐月!」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
あなたの声なんか聞きたくない
あなたの名前なんか呼びたくない
あなたのことなんか見たくない
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い
「待てってば!」
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ
嫌だ
嫌いだ
逃げなきゃ
なのにどうして?
どうしてあなたの声が聞こえるの?
どうしてあなたの名前で頭がいっぱいになるの?
どうして足が止まるの?
どうして…涙が出るの?
「皐月っ!」
声が聞こえる
名前を呼びたい
足が動かない
涙が止まらない
「……晃輔…」
「皐月…っ!」
頭のすぐ後ろから聞こえる晃輔の声
胸の前で交差される逞しい腕
背中から伝わる温かな体温
「うっ、く……ふ…うぁ……っ」
抱き締められてると気づいた瞬間、嗚咽が出てきた
「放してよぉ……ううぅ…」
「嫌だ。お前、絶対誤解してる」
晃輔は私をより一層強く抱き締める
「何よぉ…、私より、あの女の人のほうがいいんでしょぉ…?」
「違うんだ……でも、ごめん。ごめんよ、皐月……」
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿
騙されないんだから
「じゃぁ、何なのよっ!あんなに、仲良さそうに、お店にいたくせにっ!」
そう言うと、晃輔は喋りにくそうに身動ぎした
しかし、もう一度私を強く抱き締め、決心したように体を放した
「お前、自分の誕生日がいつか覚えてるか?」
「……っえ?」
私の誕生日とあの女の人と晃輔が、何の関係がある訳?
「…明後日、だけど?」
そう言うと、晃輔は満足そうに頷いた
何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ何よ
自分で納得しちゃって
「それがなんの関係が―――」
「お前の誕生日プレゼント、買ってたんだよ」
………え?
誕生日プレゼント?
でも、なんでそこであの女の人がいる訳?
「じゃあ、あの女の人は…?」
「あー…あれね……」
晃輔は言いにくそうに頬を掻いた
心なしか、恥ずかし気でもある
「お―――い、晃輔!彼女見つかった?」
「あ、姉貴…」
突然、晃輔の後ろからあの女の人が表れた
…ていうか、姉貴 !?
つまり……
「晃輔の……お姉さん?」
「うん、まぁ……そういうこと…」
「あら、貴女が晃輔の彼女?可愛いわね♪」
え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?
なんで晃輔のお姉さん?
私が一人で混乱していると、晃輔のお姉さんが私に言った
「こいつね、貴女の誕生日に何贈ればいいか分からないからって、私を呼んだのよ?全く、自分の彼女のプレゼントくらい、自分で考えなさいよね!」
その一言で、私はすべて納得した
晃輔は、私のために…
「ごめん、皐月…。俺、どうしても皐月に喜んでほしくて……」
「ううん、ありがとう。私、すごく嬉しい」
そう言うと、晃輔はまた私を抱き締めた
私も、抱き締め返した
晃輔はすごく温かくて、心臓の優しい音が私を安心させる
「晃輔……」
「皐月……」
『大好き』
~おまけ~
「仲直りしたのは良いけど…ここ、町のど真ん中よ?」
『ハッ !?』
周りを見ると、私達を見る生暖かい視線と、恨めし気な視線……
私達は、早足にその場をさった
久々の恋愛短編ー
なんか鬱展開からのスタートで申し訳ない
こういうのも、ありですかね?