「彼」の葛藤
これは小説でもエッセイでもありません。書けるものを書き殴ったお目汚しです。
彼は立ちすくんでいた。
と、言っても実際には自室の真ん中で胡座をかいて座っているのだが。
思考的に立ちすくんでいるのである。
彼の手にはスマートフォンがある。
これを使って彼は小説を書き、あまつさえ投稿しようとしている。
がしかし、これは彼にとって初めての試みなのである。
「一体全体、俺がこれを投稿したら、どうなってしまうのか」
「投稿するのは良いとして、どういうジャンルとして掲載されるのだろうか」
「内容によっては、不適格なものとして弾かれてしまうのではないか」
彼の思考は、その辺りでうろうろと右往左往している。
物語を紡ぎたい、という欲求はあるのである。だが、こういうものは元来ペンと原稿用紙によって成されるものではないのか。それを、こんなに簡単に、手のひらの中のスマートフォンをぽちぽちといじるだけで成してしまえることに彼は戸惑いを感じている。
また、物語の内容も問題であった。
本当は、どえらい官能小説を書いてみたいのである。某有名漫画家もその昔、ものすごいエロ漫画を描いてみたい、と作品上で心境を吐露していたではないか。
その心境、わかる。
某有名格闘漫画家も、単行本二巻分を主人公のセックスに費やしていた。確かそうだったよな。
偉大な先人達の後を、自分も追いかけてみたい。
いや、追いかけることはできるのだ。多分。
追いつけるかどうかは別にして。
とりあえず、一歩は踏み出してみよう。ゼロと一の差は大きいからな。悩んで突っ立っているよりは遥かにマシだ。マシだということにしよう。
そういう決断をした、という時点で、うん、成長したと判断してよい。俺、頑張った。
問題は、この、インターネットで自分の書いた文章を発信するということにある。
どうすればいいんだろう?
適当に、手のひらの中のスマートフォンをぽちぽちいじくれば発信できるのか?
まあ、きっとそうなんだろう。知識ゼロでも何とか発信はできるのだろう。それがたとえ、愚にもつかない駄文であっても、とっ散らかった頭の中から掻き集めた埃みたいな文章でもインターネット様は分け隔てなく掲載してくださるに違いない。
そこはほれ、お試しということで。
うまくいかなくても、命まで取られるわけではない。
じゃあ、投稿してみようか。
うむ、手が止まる。
止まるなあ。
だいたいこの文章、完結してないし。着地点も見えてないし。
そんなもの、投稿していいの?
いいか悪いかは、置いておこうか。
とりもなおさず、投稿してみるという所から始めよう。
ええ、ままよ。
ぽち。
自分の書いたものを公開するって、怖いわー。




