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再会

 村の賑わいは夜まで続いていた。この日ばかりはと、村の大人達は酒を酌み交わし、大いに盛り上がっていた。

子供達も、いつもなら床についている時間だが、まだ起きて村の広場に焚かれた焚き火を囲んでいた。

「アリシアはいつまでいれるの?」

パチパチとはじける焚き火を眺めていたミアがふいにアリシアに問いかけた。

「一週間くらいいたいのだけど、学園があるので明後日の朝には帰らなければいけないわ。」

アリシアは肩を落として残念そうにミアに答えた。

「そっかー、うーん、じゃあ、明日は一日中遊ぼうよ。」

ミアは笑顔でアリシアにそう提案する。

「ええ、そうですわね。明日は一日中遊びましょう。」

アリシアも笑顔で答える。

「もちろん、フィンもね。」

聞いていると言わんばかりにミアはビシッと指をさした。

「ああ、わかってるよ。」

指をさされ驚きながらも、いつもの事だとフィンも答える。

昔からアリシアが村に来た時は三人で遊んでいた。カイルが村にいた時は、無茶をしない様にとカイルがついて来ることもあった。

だが、ミアが調子に乗って無茶をしてしまう。その度にフィン達とカイルは大人から叱られていたのだった。

明日の約束をしたことで子供達の集まりは解散となり、フィンとミアは大人達の笑い声が響く中、自分の家へと帰っていった。


 次の日、村の広場で大人達が話し合いをしていた。

村にアベル商会とは別の来客があったのだ。彼らはシェイドとエマと名乗っていた。

聞くと、彼らはカストリア領防衛隊の魔獣対策分隊に所属している斥候で、どうやら、魔獣対策分隊の本隊が近くまで来ており、これからレプリベラグと一緒にこの村まで来ると言うではないか。

フィンとミアとアリシアは大人達と少し離れたところでその会話を聞いていた。

「ねぇ、カストリア領防衛隊って、もしかして……」

ミアは隣にいたフィンの袖を掴んだ。

「そうだよ、きっとそうだ。」

フィンもミアに向かってそう答えた。

フィンとミアは、昨日のアリシアの話を思い出していた。慕っていたカイルが夢を叶えて領兵になったと聞いたばかりだ。

大人達の話とその話を繋げて考えてしまうのは、無理のないことだった。

大人達はどうする、どうしたらいいと口々にしていた。

不安な表情を浮かべる大人達とは対照的に、子供達はその目を輝かせている。

大急ぎで受け入れの準備を始める大人達を見て、遊びどころではなくなってしまったが、再会への期待がそれを上回る。

子供達は今か今かと待ち望んでいた。そして、その時が訪れた。

低い地響きのような巨大なものの足音が聞こえてきた。遠くに人影の様なものが見えた。

だが、それは明らかに人ではないことがわかる。あまりにも大きいのだ。

村の語り部の婆様がいつも語ってくれる話を思い出す。

昔、世に災いをもたらすため、邪神が現れた。

人々が絶望の淵に立たされた時に現れたのが、女神アステアと十二の戦姫。

女神は人に邪神と戦うための知恵と力を与えてくれた。

そして、女神は英雄と、戦姫は騎士と、神の御業で鍛え上げられた大いなる神の鎧に乗り邪神と戦った。

人も女神から授かった知恵と力で、大いなる鎧を作り共に戦った。

何度も聞いた神話の戦いだ。

遠くに見えた人影はまさに全身に鎧を纏った巨大な騎士のようだ。

「あれがレプリベラグ……」

フィンは初めて見たはずのその姿に、何か懐かしさを感じていた。

「本当に来たぞ、なあ、この村に討伐隊が来るのって、十年振りじゃないか。」

大人達のそんな声が聞こえて来た。

十年前なら、フィンはまだ2歳だ。覚えてなくても当然だ、きっと、幼い自分が目にしていたのだろうと納得させた。

やがて、レプリべラグと討伐分隊の本隊が村に到着した。

子供達は馬車から降りてきた人の中に懐かしい人影はないか探した。

「フィン……いないね。」

さっきまで目を輝かせていたミアだったが、目当ての人影が見つからず、影を落としている。

「気を落とすことはないよ。討伐隊の人だって、何十人もいるんだ。今回はたまたまだよ。」

「そうですわ、領都にいるのは本当ですとも、きっと会えますわ。」

「でも……」

フィンとアリシアはミアを励ますが、期待が大きかった分、その落胆ぶりは激しかった。

「おい見ろよ、人が降りてくるぞ。」

フィンは大人達が指した方を見た。

膝立ちになったレプリベラグの腹部から人が降りてくるところだった。

最初に降りてきたのは、如何にも操縦士という風格を纏った男の人と、綺麗な女性だった。

続いて降りてきた操縦士の姿を見てフィンははっとした。

「ミア、見て!」

俯いていたミアを強引にレプリベラグに向けた。

「あっ!」

ミアから歓声が漏れる。

アリシアも二人に釣られてレプリベラグを見ると、まだ若い男の操縦士と、自分より一つか二つ上にしか見えない少女が降りてくるところだった。

「間違いない、カイル兄さんだ!」

「カイル兄だよ、カイル兄!」

フィンとミアは一目でわかった。若い男の操縦士が成長した今のカイルの姿だと。

ミアは泣いたカラスがもう笑うように、満面の笑みではしゃいでいる。

「本当にカイルさん?……」

アリシアが気づくのに遅れたのも無理はなかった。フィンやミアとは共に過ごした時間が違うのだ。

思い出の中のカイルと立派な操縦士となった今の姿が、すぐには結びつかなかったのだ。

カイル達も村の方に歩いてくる。

「あれって、カイルじゃないのか?」

「カイルって、あのカイルか?」

村の大人達も気づき始めた。

「どうだカイル、久しぶりに帰った村は。」

先を歩くリュークが声をかけてきた。

カイルは自分たちを見ている、見知った村の大人達を見て口にした。

「変わりませんね、この村は。」

五年経っても、この村の空気は変わっていなかった。それがカイルには心地よかった。

村の大人達に混じってこちら見ているフィン達を見つけた。思わず手を振るとフィン達は喜んで手をふり返してきた。

あの跳ね回って喜んでいるのはミアだろう。体でその喜びを表現する様子は昔のままだが、背も伸びて、すっかり成長していた。

「いえ、変わっているものもありました。」

「そうか。それは良かった。」

カイルは、先を歩くリュークの顔は見えなかったが、その声に優しさを感じた。カイルも自然と笑顔になる。

カイルを呼ぶ村の大人達の声がきこえてきた。成長した自分を見せられただろうか、そう思っていると。

「カイル兄さん、おかえり!」

「カイル兄、おかえり!」

フィンとミアがカイルに駆け寄ってきた。

「ああ、ただいま。」

そう言って、カイルは駆け寄ってきた二人の頭を優しく撫でた。


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