エピローグ
あれから半年が経った。
フィンは今王都に向かう馬車に乗っていた。
アリシアも通う王都の学園に入学するためだ。
あの後、フィンの日常は一変した。
フィンの元に王都から使いが来たのだ。
学園に通うことになったのも、その使いが伝えた王都の計らいでだ。
使いは、学園に通うための教育係とフィンの護衛も連れてきていた。
これまでただの村の子供でしかなかったフィンにとって、考えられないことだった。
また、村にも変化があった。
森の奥の遺跡調査のため、王都から専門家が派遣された。
調査の結果、遺跡は稼働可能と判断され、村にはこれまでにない大勢の人が来るようになった。
人が集まれば、自然と物も集まってくる。
村と関わりのあったアベル商会がそれを見逃すはずはない。
ただの農村だったミルダ村に、大きな宿が出来、商店が建った。
遺跡の周りは魔物の住む森が広がっている。
宿が出来たことで、魔物を狩るために冒険者たちも集まるようになった。
冒険者達が持ち帰る魔物の素材は、村に新たな産業をもたらした。
村の大人達は昔ながらの農業を続けているが、若者達はこの新たな産業に夢中になった。
その変化はエリスにもあった。
エリスは今、女神アステアを祀る大聖堂にいた。
戦姫として目覚めた彼女は、人々に使徒として崇められている。
だがそれは、彼女の望んだことではなかった。
今までレプリカントとして彼女を扱ってきた国だが、戦姫とわかった今、彼女をどう扱うべきかと意見が割れた。
それは、国防の最高戦力と考えるものと、神の使いとして一国に留めるべきではないと考えるものだった。
その結果、扱いを決めあぐねた王はエリスを教会に預けたのだ。
フィンは今手紙を読んでいる。
村を出る時、ミアに渡された手紙だ。
この半年、学園に入るために読み書きを覚えた。
ミアも手紙を書きたいと言って、フィンと一緒に覚えたのだ。
村を出てから、もう何度も読んでいる。
まだ書き慣れていない、ぎこちない筆跡で書かれた手紙は、所々誤字があった。
それがまた、ミアらしさを醸し出していた。
どんな顔をして書いていたのか、不思議と頭に浮かんでくる。
「からだに気をつけて、必ず返事を書いてね。」
フィンは読み終えた手紙をそっと畳んだ。
王都に着いたら、返事を書こう。
フィンは手紙をしまいながら、そう思った。




