表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

変わる日常

 ミアは家の手伝いをしながら一人考えていた。カイル兄が村に帰ってきてくれたことは嬉しかった。

しかし、アリシアはカストリアに帰ってしまったし、フィンもあんな事があってから、討伐隊のところに行ってしまった。

ミアだけ一人取り残されたような、そんな気分になっていた。

「ミアにだって……」

何が出来るんだろう。考えても何も出てこない。自分は平凡な普通の村人なんだ。フィンだって普通の村人だと思ってた。

だから、このまま普通に大きくなって、この村でずっと一緒に暮らしていくんだと思ってた。思ってたのに。

「うー、ダメだダメだ。よしっ!」

決めた。フィンに会いに行こう。会ったことで何が起こるかなんてわからない。わからないけど、何もしないよりはマシだろう。

ミアはそう決めると、家の手伝いを早々に終わらせてフィンに会いに出掛けて行った。

村人達が討伐隊と呼んでいる魔獣対策分隊は、今、村の外れで野営をしている。

行けば会えると思っていたミアだったが、フィンの姿が見当たらない。

「もー、せっかく会いに来たって言うのに、どこに行ったのよ。」

あてが外れたミアは、思ったことを口に出していた。

「あ〜ら、こんなところで、どうしたのぉ?」

ミアは急に声をかけられ驚いて振り向いた。

そこに立っていたのはセリスだった。

「ヒィ!?」

ミアはセリスを見て涙目になる。

「コラ!何、女の子泣かせてるんや。」

どこからともなくロッタが現れ、セリスの頭をパシッと叩いた。

「堪忍してぇや、こいつ悪いやっちゃないんよ。」

ロッタは屈んでミアと視線を合わせ、そう言った。

「ちょっとぉ、私は何もしてないわよぉ。」

頭をさすりながらセリスはロッタに抗議する。

「ちょっと、黙っといてくれる。あんたの話し方が怖がらせてるんよ。」

ロッタはミアとセリスの間に入り、セリスを黙らせようとする。

「そんなぁ、ねぇ、そんなこと、ないわよねぇ?」

セリスは身体を左右に振りながらミアの顔を見て話そうとするが、ロッタもそうはさせじとセリスに合わせて動く。

セリスはさらに上下の動きまでいれ、ロッタのガードを掻い潜ろうとする。

バシッ!

「あー、もー、鬱陶しい!」

ロッタは先ほどよりも激しくセリスを叩いた。

ミアはポカンとして二人のやり取りを見ていたが、なんだか急におかしくなって、気がついたら笑っていた。

ミアの笑い声を聞き、二人は顔を見合わせて、肩をすくめた。

「ごめんなさいねぇ、なんか怖い思いさせちゃったみたいで。私はセリス。支援魔法士をやってるのよぉ。」

セリスはミアが落ち着くのを待って声をかけた。

「うちの名前はロッタいいます。こう見えて魔法士なんよ。」

ロッタもセリスに続いて名乗った。

「あっ、えっと、私の名前はミアです。」

二人の名乗りを聞いて、ミアも慌てて名乗った。

「ミアちゃんか、ええ名前やね。そんで、ミアちゃんは、どないしてここに?」

ロッタは優しくミアに話かけた。

「……フィンに会いに来ました。」

フィンに会いに来た、そう聞いて二人は顔を見合わせてニンマリする。

甘酸っぱい匂いを嗅ぎつけた二人はミアに詰め寄る。

ミアは二人の勢いに驚き一歩後ずさる。

「そっかあ、ミアちゃんは、フィン君に会いに来たんやね。」

ロッタはうんうんと頷きながらミアに話しかける。

「でもぉ、残念ねぇ、彼、今森の方に行ってるのよぉ。」

セリスは本当に残念そうにフィンの不在をミアに教える。

「フィン、いないんだ……」

ミアはフィンがここにいない事を知って目を伏せた。

「なんであんたは、いっつも余計なことを言うんや。」

落ち込むミアを見てロッタはまたセリスを叩いた。

「でもな、でもな、もうすぐ戻ってくると思うんよ。ほんで、ミアちゃんは、フィン君に会って、どないするつもりやったんや?」

ロッタは慌ててフォローして、話題を変える。

「えっ……」

会ってどうするか、そう聞かれてミアは言葉に詰まらせる。フィンに会った後の事を考えていなかったのだ。

「もぉ、あんただって、何してるのよぉ!」

今度はセリスがロッタを肘で小突いた。すると、「なんやの。」「何よぉ。」とミアを放って二人の言い争いが始まった。

言葉に詰まっていたミアだったが、二人の言い争う姿を見て、慌てて止めに入る。

なんとか強引に間に入って二人を止めたミアだったが、どうして自分はこんな事をしているのだろうと思うと、自然と笑いが込み上げてきた。

笑い出したミアを見て、二人も釣られて笑い出す。

三人は一頻り笑うとお互いの顔を見た。

「私、いろんなことがあって、わからなくなっちゃったんです。フィンに会えば、何かわかるんじゃないかと思って。だから、会ってどうしたいとか考えてなかったんです。」

ミアは、思ったことをそのまま口に出していた。

「せやな。ミアちゃんの気持ち、うちにはようわかるんよ。」

うんうんとロッタは一人で頷いている。

「あの……」

一人で納得しているロッタにミアが話しかけた。

「なんや?」

ロッタはすぐさまミアに向き直る。

「私にも魔法って使えますか?」

「へ?ミアちゃん、いきなりどないしたん?魔法に興味あったんか?」

ミアの唐突な質問にロッタは間の抜けた返事をし、質問に質問を返していた。

「私、何もないから、このままじゃ、フィンだけがどこかに行っちゃうような気がして、だから、何か特別なことが出来ればって……」

ロッタはミアの言葉を聞いて、ゆっくりと話しだす。

「あんなあ、ミアちゃん。ミアちゃんが魔法を使えるかどうかは、正直わからん。魔法を使うには才能も要るけど、ほんまにめっちゃ勉強せなあかんのや。せやかて、その勉強もどこでも出来るわけちゃう。」

ミアはロッタの言葉を黙って聞いている。

「うちもな、ミアちゃんの力になりたいんよ。うちらがおる間なら教えられるかもしれん。けどな、おらんようになったら、教えられんのや。中途半端が一番ようないんやで。わかってくれるか。」

ミアは黙って頷いた。

「しょうがないわねぇ。私がとっておきの魔法、教えてあげちゃう。」

セリスが落ち込んでいるミアに声をかける。

「あんたなあ、うちの話聞いてなかったんか。」

セリスはロッタの言葉を制止して話を続ける。

「いいのよ、だってこれは、女の子だったら誰でも使える魔法なんだから。」

そう言うとセリスは化粧道具を取り出した。

「まずは、綺麗にしないとねぇ。」

セリスは生活魔法を使ってミアの顔を洗う。

「若いって、いいわねぇ。お肌が全然違うわぁ。」

ミアはセリスにされるがままになっている。

「これなら、口紅だけでいいわねぇ。」

セリスは手慣れた手つきでミアに口紅を引いた。

「女の子はねぇ、こうやって自分に魔法をかけるのよ。いい、ミアちゃん。男ってのはねぇ、いい女の元には必ず帰ってくるのぉ。だから、焦って追いかける必要はないのよぉ。だって、私が追いかけると何故かみんな逃げちゃうんだからぁ。」

セリスはミアに手鏡を渡す。ミアは鏡に写った自分の顔を見て自然と笑顔になる。

「いい顔になったわねぇ。」

「ほんまや。」

フィンには会えなかったけど、ここに来て本当に良かったと思った。

フィンにはまた会いに来ればいい。それよりも、今はこの二人に会えたことが何よりも嬉しかった。

ミアはこの出会いを一生忘れないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ