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第5話 対立――領主の「今すぐ建てろ」
王都派遣の技術官は、笑顔が上手かった。
「安心してください。魔法補強で短期間に終わります」
街の人々は安堵する。短期間という言葉は甘い。
だが技術官の笑顔の裏に、カイルは“焦りの匂い”を嗅いだ。
王都で評価されるのは成果ではなく納期。遅れれば切られる。切られれば、次は自分が責任者になる。
技術官が夜の現場で独り言のように言う。
「……間に合わせないと終わる。俺の人生が」
それを聞いた瞬間、カイルの中の怒りが少しだけ形を変えた。
彼もまた“押し付けられる側”なのだ。
だが押し付けられる側が、さらに弱い者へ押し付けたら、街が壊れる。
雨季の前倒し。雷鳴。
掘り返した低地がぬめり、足場が沈む。
崩れない代わりに歪む――数ヶ月後に人を殺す歪みだ。
カイルが叫ぶ。
「全員、退避!」
技術官が反発する。「権限が――」
カイルは言う。
「権限で水は止まりません」
そして領主へ、条件を突きつける。
「街全体を見直すなら引き受けます。部分だけ直して、また壊す工事はしません」
領主は叫ぶ。「金も時間も――」
カイルは返す。
「壊れてから払う金と時間は、もっと大きい」
領主は結局、続行を命じる。
その決断が、街を“王都と同じ分岐”に置いた。
その夜、宿に王都の調査官が来る。
「現場監督カイル。王都より再調査の要請だ」




