3/8
第3話 事故――建てた側が壊れる
翌朝、街が騒いでいた。
依頼主の家の前には、魔法補強具と新しい柱。別の業者が夜通しで“建て替え”を始めていた。
雨がその“ふり”を剥がす。
家は傾き、柱はねじれ、床は波打つ。
崩れ方が――王都の城壁と同じだった。
カイルは地面をすくい、言う。
「固める場所じゃない。逃がす場所です」
職人たちを動かし、溝を掘る。水が流れ始めると、家の呻きが少しだけ静まった。
依頼主の男は青い顔で言った。
「……お前の言う通りだったのか」
勝ち負けではない。家族が無事だったことがすべてだ。
娘の目が、怯えから“信頼の端”へ変わるのを、カイルは見逃さなかった。
夕方、街の代表(村長格)が来て言う。
「お前のやり方は遅い。だが、死なない」
カイルは地図を出し、雨水の流れを指でなぞる。
「この街……一部だけ直しても意味がない。水が街の腹に溜まる構造です」
その夜、借りた古い図面の線が、王都事故の線と重なる。
カイルの喉が冷える。
「……同じ線だ」




