姉の顔
あの後も昼食の間は俺以外は楽しそうに過ごしていた。
別に楽しくなかったわけではないが、あんな感じのやり取りが続くと流石に疲れる。
昼食が終わると父さんは部屋に戻り、母さんは片付けをしてそれを千佳と那須野さんが手伝っていた。
母さんは断っていたが二人がどうしても、と言うので手伝ってもらう事にしたらしい。
残りの俺と姉貴と秀人は片付けが終わるのを待っていた。
「で、凌平どうなの?」
「何がだよ、姉貴」
食事が終わって千佳と那須野さんがいなくなってからずっと同じ事を聞いてくる。
もちろん姉貴が聞きたい内容には察しはつくがそれを素直に答えるほどバカじゃない。
さっきの秀人の言いかけた言葉でこの人は分かっている筈なのに、俺から言質を取ろうとしてきているのだ。
わざわざそんな事をするのに意味があるのかと言うと大アリだ。
ここで俺から言質を取れば今日の夕飯はの時に…
「凌平やっぱり千佳ちゃんの事が好きなんだって、凌平が言ってたよ」
「あらそうなの凌平」
って事になりかねない。
こんな未来が待ち受けているのに言質を取られる訳にはいかない。
俺はこの状況になる事が分かっていたので、母さんを手伝おうとしたのだが
「女の子達とお話しするから小春と秀人君と一緒に待ってなさい」
その言葉を聞いた瞬間の姉貴の顔は今後忘れる事はないだろう。
こうなった時点で俺が願うのは、早く二人とも戻って来てくれ。それだけだ。
姉貴は変わらず同じ事を聞いてくるし、秀人もこの状況を楽しんでいる。
なぜこうも俺の周りの人達はいい性格しているのにだろうか。
姉貴なんかどこも両親に似ていない。(見た目以外は)
秀人も連絡取った時は俺の味方になってくれる存在だと思っていたが違ったらしい。
今は敵でも味方でもなく中立であるので気にならない。
しかし姉貴は止まることを知らない。
そんな時姉貴が俺ににじり寄って来た。
「凌平どうなのよ」
俺の両肩を両手で押さえてすごい笑顔で聞いてくる。
だがそれにはもちろん答えはしない。
すると姉貴の手の力がだんだんと強くなるのを感じる。
どうやら俺に本気で言わせたいらしい、千佳の事が好きだと。
そんな時俺にとっての救世主たりうる声が聞こえた。
「何がですか?」
そう洗い物の手伝いを終えた千佳と那須野さんが戻って来たのだ。
やっと姉貴から解放される。
「何がって、凌平が千佳ちゃんのこと」
何言おうとしてんだ貴様!
チラッじゃない。
姉貴はそこまで言って止まった。
それに千佳が食いつかないはずもなく。
「なんですか小春さん!凌平が私のことなんと言ってたんですか?」
千佳は目を輝かせて姉貴に迫っていた。
ここ最近で気づいたのだが千佳は、気になるとすごい勢いで聞いてきたり調べたりする。
良く言えば好奇心旺盛。悪く言えば少し子どもっぽい。
そんな彼女はとてもかわいく、聞かれてしまうとつい答えそうになってしまう。
だから俺は姉貴の手を取り一度リビングを出た。
その様子に秀人以外の二人は少し驚いていたが今は仕方ない。
「おい姉貴、流石に俺も怒るぞ」
「悪かったって、それより千佳ちゃんやっぱりかわいいね」
全然悪びれていない。悪いとすら思っていないのだろう。
だが姉貴の言葉にも一部賛同できる。千佳がかわいいと言う点だけだが。
「おい弟よ」
姉貴が俺のことを弟と呼ぶ時はよくないことの前触れである。
俺は喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
「お前赤くなってるぞ。そんなに千佳ちゃんが好きなのか?」
何を言っている?俺が赤くなっているだと。
確かに自分の頬を手で触ってみれば少し熱くなっていた。
俺はそれに驚き言葉を返せずにいると
「悪かったよ凌平。千佳ちゃんの前では自重するよ」
姉貴はそのまま振り返ってリビングへと帰ってしまった。
姉貴の顔はよく見えなかったが、姉の顔をしていたのでだろう。
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