次はうちに来てよ
俺達は帰り道である約束をした。明日一緒に夏休みの宿題をすると。
宿題をするには集まる場所が必要である。
だからそれをどこにするかという話になった。
すると千佳が
「この前は凌平の家に行ったし、次はうちに来てよ」
俺は少し考えて断ろうとした。理由は緊張してしまうからだ。
でも断ることはできなかった。
ちょうど千佳が俺に言ってきた時、俺と千佳の帰り道が別れたのだ。
だから断ろうにも断れず俺は、明日千佳の家に行くことになった。
俺が千佳の家に行くために玄関へ向かっている途中で、姉貴に声をかけられた。
「ちょっと、凌平どこ行くのよ。まさか千佳ちゃんとデートじゃないでしょうね」
俺はデートではないと言おうとしたが、よくよく考えてみれば今日は千佳と二人きりなのでデートなのか?
どうせ帰ってきた時にバレるのだから今日は素直に認めることにした。
ていうかなぜ姉貴はここまで鋭いのかよくわからない。
「一緒に宿題するだけ、それじゃあ」
「待てい、髪ぐらい整えなよ。仕方ないから私はしてあげる」
俺は姉貴に言われるがままに洗面所に連れて行かれた。
洗面所に着くとすぐに姉貴は俺の髪をセットしてくれた。
「ありがとう」
「いいってことよ。じゃあ土産話期待してるから」
そういうことか。なぜか異様に優しいと思ったら、しっかりと対価を要求してきやがった。
まあそれについては一旦考えないでおこう。
家に帰ってきた時の未来の俺に託す。
俺の家から歩いて20分ほどのところに千佳の家はある。
千佳の家はここら辺では珍しいマンションだ。
俺は千佳から伝えられた部屋に向かうためにエレベーターに乗る
人の家に行くためにエレベーターに乗るのは新鮮だ。
ここら辺にある集合住宅は、古い団地ばかりでエレベーターなどついている訳もないからだ。
千佳に伝えられた部屋の前に着き、インターホンを鳴らそうとした。
すごく緊張する。ただインターホンを鳴らすだけなのにだ。
俺は緊張しながらインターホンを押すと、すぐに声が聞こえた。
「今行くからちょっと待って」
少し待っているとガチャっという音がしてから扉が開いた。
「おはよう、待ってたよ」
俺も千佳におはようと返した。
「さぁ、早く入って暑いでしょ」
そう、外はすごく暑いのだ。なにせ今日の気温は34℃と以上だ。そして湿度も高く蒸し暑い。
それにこの地域は盆地で熱が籠ってしまって夏は暑く、冬は寒くなりやすいのだ。
良くも悪くも、いや悪くも季節を感じ取りやすい。とりわけ夏と冬はさらに感じやすいのだ。
まあそんなことはどうでも良くて、今俺は千佳の部屋着を見ている。
見ていると言うと誤解されるかもしれないが、千佳が着ている物を見ているだけだ。
この前うちに来た時の様にオシャレをしている訳ではないが、かわいい人は何を着てもかわいいのだ。
「ちょっとその右のリビングで待ってて、部屋準備して来るから」
部屋を準備して来る?
リビングで勉強するのではなく、もしかして千佳の部屋でするのだろうか。
俺は緊張していたが、それを聞いてさらに緊張した。
俺はどうして良いか分からずにリビングで立ち尽くしていた。
「凌平なんで立ってるの座ってればよかったのに。まあいいやこっち来て」
少ししてから千佳が戻って来て俺を部屋と連れて行く。
千佳の部屋は俺の部屋とよく似ていた。
だが俺の部屋にはないぬいぐるみが沢山ある。
要するに女の子らしい部屋だと思った。
俺がそんなことを思っていると千佳にクッションを渡された。
それに座って勉強しろという事だろう。
俺がクッションを置きそれに座って机に宿題を出していると、なぜか千佳が隣に座って来た。
「あの千佳さん?前に座れば良いじゃないでしょうか」
「横に座った方が教えてもらいやすいでしょ」
俺は納得してしまい、なにも言えなくなった。
だから俺は気にしない様にして宿題を始めた。
だが気にしないのは無理だった。
対面にいるのと隣にいるのとでは訳が違う。
千佳の息遣いが聞こえるし、時々彼女が問題を聞いて来る時にいい匂いがしたりするのだ。
ハッキリ言って俺は全然集中出来なかった。
俺は宿題の10%も進まず、千佳は20%も終わっていた。
普段なら俺の方が勉強出来るのに、千佳よりも進んでいないのだ。
それに勉強中に少し話していて聞いのだが、今日この家には千佳と俺しかいないらしい。
俺の集中力はそれを聞いてより下がった。
なにもやましいことがある訳ではないが、流石二人きりとなると解けかけていた緊張も元に戻ってしまい、集中出来なかった。
それに最初から思っていたのだが、今日の千佳はいつもより距離が近い。
これは物理的な距離だけではなく、行動の一つ一つが異性の友達に向けるものと言うより同性の友達に向けるものの様だ。
そんな風に集中出来ない中で宿題をやっていたら、すぐに日が傾きだした。
だから俺は少し早いが帰る事にした。
千佳に伝えると分かったといい片付けを始めた。
片付け終わると俺達は部屋を出て玄関に向かった。
「じゃあまた今度」
「またね凌平」
俺はそれを聞いて家を出ようとした。その時に千佳が俺の手を掴んだ。
「あのさ、また明日勉強教えてくれない。ほら宿題なんて早く終わらせておいた方がいいでしょ。ダメ?」
千佳は初めは小さかった声が大きくなり、最後にはあまえる様に俺に頼んで来た。
俺それは断れるはずもなく、返事だけして帰った。
私なんで引き止めちゃったのか?
メッセージで送れば良いのに。
それに勉強教えてもらうだけなら別に明日じゃなくてもいのに。
でも今日陽菜と話す時みたいに凌平に話してたら全然緊張しなかった。
私は一人になって思っていた言葉が漏れた。
「明日も楽しみだなぁ」
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