もしかして彼女?
今日は月曜日だ。
仕事をしている者、学校へ行っている者が少し憂鬱になる日。
でもこの時期の学校に行っている者は、そこまでかもしれない。
なぜなら、夏休みがドンドン近づいて来ているからだ。
俺も姉貴も家を出る時には上機嫌だ。
まあ俺が機嫌がいいのはそれだけではないのだが。
姉貴とは途中まで一緒に登校している。
なぜなら俺の通っている中学校の途中に駅があるから、そこまでは姉貴とは一緒なのだ。
「いいな凌平だけ千佳ちゃん達と会えて」
「仕方ないだろ、姉貴は高校生なんだから」
そう姉貴は高校生で俺達は中学生。
学校生活では絶対に関わり合いになれないのだ。関わりたくもないが。
姉貴と最後に同じ学校で関わったのは俺が小3、姉貴が小6の時が最後だ。
とは言っても、学年が離れていたから行事の時だけの関わりだ。
その学年の差に姉貴は愚痴を漏らし、俺は喜んでいる。
いつからかは忘れたが、姉貴が俺にダル絡みをしてくる様になってから俺は、本当に家以外で会いたくない。
家以外でもし仮に女子と歩いているところを見れば、その瞬間に寄って来て何かを言ってくるだろう。
それが学校内であっても例外ではなかったと思う。
だから俺はこの絶妙な歳の差に感謝している。これは神の救いだろう。
「あぁあ、千佳ちゃん達がウチの近所にでも住んでたらな、途中まで一緒に行けるのに」
確かにそれは俺としても嬉しい。
姉貴が一緒にいるというのを差し引いたとしてもだ。
まあでもそれは叶うことのない願いなのだ。
俺達の住んでいるこの地域は少し特殊で、小学校が4つもあるのに中学校は1つしか無いのだ。
これにはこの地域特有の理由がある。
俺達の住んでいるところは、今でこそ栄えていないが、昔は石炭が取れてそれなりに栄えていたらしい。
それにその時代は子供も多く、1つの学年は10クラスあった様だ。しかも中学校もこの時は4つあった。
ここまでなら石炭以外はどこにでもあってはおかしく無い。
だがこの街は石炭が取れなくなってから、人の離れが進み子どもが減り、みるみる衰えて行ったのだ。
今この街に住んでいるのは、少しの若者と大勢の老人達だ。
だから子供の数がいないのに、4つも学校が必要ないとなり統合された。
しかしこの理由なら小学校も一緒になりそうだが、それをするにはお金が足りないのだろう。
この町に住んでいるのは少しの若者と大勢の老人である。
しかもこの老人達の多くは生活保護を受けている。
だから町の税金も集まりづらく、学校を建て直すだけのお金がないのだろう。
俺は最初中学から新しい人達と出会うのは、正直嫌だった。
でも千佳と会えたので今はそんな事思いもしない。
俺は駅で姉貴と別れ学校へ向かった。
学校へ向かう途中のコンビニで同じ制服を着た女子がいた。
「凌平〜」
俺のことを手を振って読んでいる女の子は、短いスカートにブレザーのボタンを全開に開けている。しかも学校の前なのにお菓子も買って食べている。いわゆる非行少女だ。
俺は無視して通り過ぎたかったが、進行方向にいたのでそれもできなかった。
「何してんだよ、雫」
彼女の名前は、上条雫。俺の小学校からの友達である。
雫は小学校の頃からあまり良い子ではない。
「何してるって、たむろしてる?」
「いや、お前一人じゃん」
雫はアハハと笑って立ち上がった。
雫もおかしいが、中学校の制服を着た奴に、なにも言わずに売る店員も何を考えているのか。
「凌平行こ」
雫は俺の前に立ち、学校の方へと歩いて行った。
俺も一緒に歩いて行く。
校門の前の長い坂を登った時昨日ウチにいた女の子が見えた。千佳だ。
俺は千佳の事が見えて無意識に少し早足になった。
「ちょっと凌平歩くの速いって」
それを雫に言われて気づいた。
俺は雫に少し謝りさらにスピードを上げる。
「ちょっと謝ったのにスピード上がってるんですけど!」
後ろから聞こえる声を無視して前へ進む。
俺はすぐに千佳に追い付き声をかけた。
「おはよう千佳」
前までなら声をかけなかっただろうが、既にクラスの人には俺が千佳のことを好きなのがバレているし、昨日ウチに泊まったことで仲良くなれたと思ったから、今日初めて俺から声をかけた。
千佳は声をかけられて肩をビックとさせて振り向いた。
「おはよう」
千佳は小さな声でボソッと言った。
いつもは俺に元気よく挨拶してくるのに今日は静かだ。
体調が悪いのだろうか?
「どうした?体調悪いのか?」
「あっ、いや別にそういうわけじゃないんだ」
「そうか?」
でも千佳は見るからに体調が悪そうに見える。
いつもの元気もないし、顔も赤くなっていた。
俺が心配そうに見つめていると千佳は目を逸らした。
体調が悪いことを俺に悟られたくないのだろう。
だから俺はもう聞かなかった。
「ちょっと凌平待ってて」
後ろから雫が追いついて来た様だ。
雫は追いついた時には息が上がっていた。多分少し走ったのだろう。
彼女は息を整えると俺の方を向いた。
「で、凌平その子はなに?もしかして彼女?」
「バカっ!お前そんなんじゃねぇよ」
俺は雫の質問に驚いて言い返した。千佳はなにも言わなかった。
「え?でも凌平その子を見つけた瞬間スピード上げたじゃん」
なぜ俺の周りにはいらないことをよく言う奴しかいないのだ。
クラスではバレているので良いものを、千佳にバレるのはダメだ。
「それは別に彼女じゃなくてもするだろう」
「そうかな?他の人ならともかく凌平がするとは思えないけど」
確かに普段の俺なら絶対にしないだろう。
痛いところをついてくる。
「そんな事どうでもいいだろ。千佳は彼女なんかじゃない」
「まあ一旦そう言うことにしとくよ。じゃ私は先行くから」
そう言って雫は走り去って行った。
「悪かったな、嫌な思いしただろ?」
「いや、大丈夫」
千佳はそう答えが、本当は嫌だろう。
俺としては、今雫に言われた事が現実になればと思うが、千佳は違うだろう。
あれ?そう考えると俺って迷惑?
一緒だけそんなことを思ったが、その考えはすぐになくなった。
でも少しの気まずさが残り、教室までなにも話さずに行った。
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