一つの嘘と大切な友情
俺と秀人は夜食を食べ終えると部屋に戻った。
部屋に戻るとすでにお菓子パーティは始まっていた。
机の上にポテチを広げ、その横に雪の宿を置いていた。
甘いのもしょっぱいのも食べれるのでバランスがいい。
だが姉貴は机の上の物には目もくれず、自分で選んだおつまみを食べていた。
三人とも楽しそうに話して映画を見ていたのに、俺達が入って行くと千佳が話さなくなってしまった。
なぜかは分からない。単に映画に集中したかったのか他に理由があるのか、それを考えたところで分からないので、今はお菓子パーティを楽しむ事にした。
お菓子パーティと一緒に見ている映画は、海外のアクション映画だ。
俺は普段は海外の映画はあまり見ないので新鮮だ。
アクション映画には引き込まれるものがあるので、千佳も映画に集中しているだけなのだろう。
なにせ千佳は身を乗り出して映画を食い入る様に見ている。
「千佳ちゃんって映画好きなの?」
姉貴が少し意外そうに聞くと千佳は、映画を見たまま姉貴の方を向かずに、はいっと答える。
相手を見て話をしないなんて、普段の千佳からは考えられないがそれ程に映画が好きなのだろう。
姉貴は千佳の邪魔をしない為にそれから声をかけなかった。
でも声をかけない代わりに、映画を見ている千佳の口にドンドンお菓子を入れていく。
千佳の食べるスピードよりも早く、千佳の口に運んでいく。
千佳も映画に集中している様で何も言わず、何も抵抗しなかった。
少し経った頃には千佳の口はお菓子でいっぱいで、頬が膨らんでリスみたいになっていた。
姉貴は千佳に見えない様に両手で、どうよっと訴えかけている。
俺は少し癪に障るが、その千佳はかわい過ぎたので親指を立てて感謝をしていた。
なぜだか那須野さんも姉貴に感謝していた。
映画が中盤ぐらいまで進んだ時に机の上のお菓子がなくなった。
なくなったら出すだけだ。第二陣は映画のお供の定番ポップコーンとポッキーだ。
姉貴のおつまみもなくなったのか、新しく柿の種を開けていた。
今の千佳ならなんでも食べると思ったのか、姉貴がワサビの柿の種を3つほど口の中へと入れた。
すると千佳の顔色がみるみる悪くなっていった。
「ちょっと小春さん!なんですかこれ!?めっちゃ鼻痛いんですけど!」
千佳の鼻が少し赤くなっていて、怒っている姿もかわいい。
イタズラした本人は笑いながら謝っている。
那須野さんはツボに入ったのか、お腹が痛くなるまで笑っていた。
みんな何かの反応はするのに秀人だけは、反応しなかった。やはりコイツはおかしい。
流石の姉貴もこれ以降イタズラをする事はなかった。
私は映画に集中しているフリをしていた。
実際のところは凌平と上手く話せる気がしないので、なるべく話さないでいい様に映画を見ていた。
その映画が終わると私たちは、小春さんの部屋に向かった。
部屋に着くと小春さんが余ったお菓子を広げて、二次会をしようと言ってきた。
それを私も陽菜も断る事はなく二次会が始まった。
「千佳ってあんなに映画好きだったけ?」
「っえ、好きだったよ?」
陽菜がいきなり聞いてきて咄嗟に嘘をついてしまった。
まだ自分の中で相談する決心ができていなかった様だ。
「へー千佳ちゃんって映画好きなんだね、まああんなに集中してみるぐらいだし」
私は二人の中で映画好きの女子になったのだろう。
でもそれは違う。二人に嘘をついたままで、これから過ごしたくはない。
些細な嘘だがそれがクセになって、今度は取り返しのつかない嘘をついてしまうかもしれない。
だから今ここで伝えなければならない。
でも伝えてしまうと、嘘をついた理由を説明しなければならない。
そうなると今の私の中の悩みも打ち明ける事になってしまう。
もちろん二人を信用していないわけではない。
陽菜は保育園からの親友だし、小春さんは今日初めて会ったけど良い人だと思う。
だからこの二人になら
「ごめんなさい。私嘘つきました」
「どうしたの?千佳ちゃん」
私が頭を下げて謝ると、小春さんがすぐに駆け寄って来てくれた。
陽菜は私に怒っているのか俯いていた。
「私本当は映画好きなわけじゃないんです」
「知ってる」
陽菜の声は私の胸に響いた。
陽菜は怒っているのだろう。私が親友の陽菜に嘘ついた事を。
だから私は何度も陽菜に謝る。
なぜなら陽菜は私に嘘をつかないし、いつも悩んだ時に助けてくれる。
そんな人に嘘をついてしまった。
私は大切な友情に傷をつけてしまった。
だから私は何度も陽菜に謝る。
彼女が許してくれるまで。
「千佳なんで謝るの?別に謝る程のことじゃないよ」
っえ?
じゃあなんであの時俯いていたの?
なんで嘘をつかない陽菜に嘘をついた私に怒らないの?
怒ってくれないと私はどうしたらいいの?
謝る以外に私はどうすればいいの?
「千佳ちゃん、嘘を重たく捉え過ぎだよ。正直に生きて来た千佳ちゃんだからこそなんだろうけど、千佳ちゃんの親友はそんなことで怒る人?」
それを聞いた時私の心は軽くなった。
今までの暗い気持ちも、いつのまにか流れていた涙も一瞬にして消え去った。
なぜこの人達はここまで優しいのだろう。
そう思うとつい甘えたくなってしまい、私は目の前にいた小春さんに抱きついてしまった。
小春さんは優しく受け止めて私の頭を撫でる。
私はこの時お姉ちゃんができた気がした。
本当はこの話でお泊まり終わらせるつもりだったけど次まで行きます。
これからも「三年間の君への想い」をよろしくお願いします!!
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