言葉にできない想いとできる想い
私はあの時なんで心臓の音が大きくなったのか分からない。
今まで何度か告白なんかもされたけど一度もこんなことはなかった。
なんで彼に、凌平にかわいいと褒められただけでここまで嬉しいのだろう。
彼は他の人達とは何が違うのだろう。私にはそれが分からない。
それに今のこの苦しくも嬉しいそんな共存し得ない感情が同時に存在している。これは一体なんなのだろう。
私には分からない。この感情の正体を知りたい。
でもこんなのおかしい。相反する二つの感情があるこの状況を説明できる気がしない。
本当なら、陽菜や小春さんに話したいがこんな感情、相談できない。
この感情は誰にもバレてはいけないと思う。
「凌平どうだった?好きな人からあーんってされた気持ちは?」
俺に無神経に聞いてくるのは、今日俺の家に泊まっている秀人だ。
俺の心が少し落ち着いた頃に蒸し返して思い出させて来る。
あの時のことなどあまり思い出したくない。
あんな事は外でするものじゃない。もちろん家でも勘弁だ。
「凌平顔赤くなって来てるけど?」
答えない俺に痺れを切らしたのか、追い打ちをかけてきた。
「ちげーよ、これは風呂上がりだからだ」
そう今の俺は風呂上がりで少々火照っているだけだ。
断じて照れているわけではない。
「そういう事にしておいてあげる」
「いや事実だから」
俺が誤魔化しているのではなく事実を述べているだけなのに心外だ。
秀人に俺は聞きたいことがあったのだが、いきなり泊まることが決まったり、ファミレスでのあんなことがあったので忘れていた。
「俺達がここで勉強してる間にリビングで何話してたんだ?」
最初は姉貴が、ただ俺と千佳を二人きりにする為だと思ったが多分違う。
なぜなら俺と千佳がリビングに戻った時スムーズに泊まる流れになったのはおかしい。
秀人だけならともかく、那須野さんと千佳まで泊まるのは流石に違和感を覚えた。
それもこれも姉貴の気まぐれで片付ける事はできるが、それでも違和感はある。
そのことを秀人に問い詰めるとすぐに吐いた。
秀人が言うには俺達が移動したあと…
「よし凌平がいなくなったから作戦会議始めるよ」
姉貴がそういうと、秀人は渋々のったらしい(絶対嘘だ)、那須野さんは乗り気だったという(これも怪しい)
そして今日うちの家族とみんなでご飯に行こうと姉貴が言い出したらしい。
姉貴なら言い出しそうな事だが、これに待ったをかける人がいた。那須野さんだ。
那須野さんはご飯を一緒に食べると、どうしても帰りが遅くなってしまうから、と言い難色を示したらしい。
そこで姉貴がじゃあうちに泊まったらいい、と言ってらしい。
それに那須野さんは乗り気だったという(ここも嘘だ、乗り気だったの秀人だろう)
だがいくらこの二人だから言っても嫌がる人に無理強いはしないだろう(俺意外には)
だから那須野さんも否定的ではなかったのであろう。
だが千佳がすぐに泊まる事を了承しないと、この計画は上手くいかないはずだ。しかしそれについては那須野さんが千佳なら誘われると、必ずオッケーするはずだと言って決まったらしい。
もちろんこの説明は秀人だけからしか聞いていないので、俺の気づかない嘘が紛れているかもしれないが、大枠としては相違ないだろう。
俺への説明が終わると、秀人は今まで逸らしていた目を合わせてきた。
「結局どこが好きなの?」
「っえ?」
俺は不意を突かれて声が漏れてしまった。
この質問に俺は答える義務はないので黙っている事にした。
「黙るって事は特に好きでもないのか、小春さんにも伝えておこう。好きでもない子にちょっかいをかけてるってね」
「ちょっと待て、それはやめろ。」
…………
「分からないんだよどこが好きとか。ふとした時にかわいいと思うし、仕草がかわいいとも思うし、服が似合ってかわいいとも思うし、声がいいとも思うし、優しくて、綺麗で、かわいいくて」
「あーもうそこら辺で大丈夫です。それ以上聞かされると胃もたれするわ」
あれ俺何言って…
そこで俺は凄く恥ずかしくなって部屋を出て一人になる為にトイレ向かった。




