第6話『星と昔の記憶』
三ヶ月以上遅れました。すみません
――ゾンビもののホラー映画を見て、彩華がガクブルしながら俺の腕にしがみついていた事を聞いた琴音は、涙が出るほど笑い転げている。
「あは、あはははっ! い、彩華お姉ちゃん、その映画って全然怖くなかったよ? あたし前に1人で見たけど全然だったし!」
どうやら俺や彩華が見るよりも前に1人で見ていたようだ。
それを聞いた彩華は、琴音を何か怖いものを見ているような目付きで見ている。
昔から思っていたが、こいつはかなりの怖がりだ。中学2年生の夏休みに俺と琴音、彩華で怖い話をしたり、ホラー映画を見たりしていたが、彩華だけが異常な程に怖がっていた。
「あれを怖くないって言えるのはちょっと理解できない……。ていうか、逸希も全然怖がってなくない?」
「だって怖くなかったし。俺はお前の叫び声に驚いたわ」
「うっさいわね……。あ、そういえば、琴音ちゃん帰ってくるの遅かったじゃん。どうしたの?」
「あ、確かに。どうしたんだよ」
琴音が怖がってる彩華にばかり夢中になっていたせいで、聞きたかったことを忘れていた。
今の時刻は午後六時半だ。
俺らはまだ部活してないため、学校は大体四時くらいに終わる。
しかし琴音は少し遅い時間の帰ってきた。
「柚葉ちゃんたちとカフェに行ってたんだ〜。めっちゃ楽しかったよ!」
「はぁ……めっちゃ心配してたんだけど俺」
「お兄ちゃんはあたしのこと心配しすぎだし〜」
何か事件でもあったのかと心配していたのだが、何事もなくて良かったと思うと同時に隣にいる彩華が驚いた顔をしているのが分かった。
「どうしたんだ?」
「いや別に。あ、ちょっと待って」
突然彩華の電話がなり、電話をする。その相手は彼女の母親からだった。
「え、もうご飯!? あーごめん。お母さんがご飯用意してるらしいから私帰るね。また明日ー」
「バイバーイ彩華お姉ちゃんー」
ガチャンと扉が閉まり、少しだけ沈黙の時間が流れるが、すぐに琴音は俺の腕に抱きついてきた。
「お兄ちゃん今日何食べたい?」
「じゃあカレーで」
「りょーかい。お兄ちゃんも手伝ってよ?」
◆◇◆◇
二十分ほど経ち、カレーが出来上がった。俺も少しは手伝ったが、琴音がテキパキ行動したおかげでかなり早く出来上がった。
「いっただきまーす!」
「いただきます」
テーブルに向かい合わせになって座り、カレーを口に入れる。ほっぺたがとろけるような美味しさに感動した。
「そんなに美味しい? 良かったー」
昔から料理が上手い妹を褒めてカレーを口に運ぶ。
俺も琴音も辛いのはあまり得意ではないのでかなりの甘口だが、俺らからすればちょうど良い味だ。
「お兄ちゃんって何か部活に入る?」
「急だな。まだ悩んでてさ。どんな部活があるか知らないし」
「じゃああたしと一緒に天文部入ろーよ! お兄ちゃん星好きでしょ?」
星か……。琴音の言葉を聞いて俺はそう呟く。星が好きと言っても、元々はゆずちゃんが好きと言っていたから調べるようになっただけだ。
子供ながらにして単純だと思うが、ゆずちゃんが「好き!」と言ったものは調べて会話のネタにできるようにしていた。
「別に。今はそんなに星見てないし」
「うーんそう? でも見に行ってみようよー! そうだ! 明日あたしと彩華お姉ちゃんと柚葉ちゃんと行ってみようよ!」
「彩華も柚葉も連れていくつもりなのかよ」
「え? 当たり前じゃん。友達だもん」
なぜか妹がめちゃくちゃやる気になっているが、これを断るのは悪く感じてしまう。なら、見学に行っても良いだろう。
「分かった行くよ」
「ほんと!? やったー!」
叫び声がうるせーと思い耳を塞ぐ。琴音はその様子を不満そうに頬を膨らませて見つめてきた。
◆◇◆◇
「さーて天文部見にいこっか!」
元気な琴音に反して、そこまで楽しみではない俺と彩華は「はーい」と小声で言う。そんな中、隣の柚葉を見るとワクワクしているようなオーラを出していた。
「柚葉って星好きなのか?」
「うん、好きだよ。綺麗だし、ロマンチックだもん」
「……そ、そっか」
一瞬目を見開いた俺の顔を見たのか、柚葉がキョトンとした顔で見つめてくる。だが、俺は気づいていないように琴音を見る。
柚葉は、綺麗だしロマンチックだから星が好きと言った。確かに、星が好きな人の中でこのような理由は珍しくもなんともないだろう。だが、俺は前にもこの笑顔で同じ言葉を言われたことがある。
◆◇◆◇
それは、まだ小学生だった頃の話だ。ある夏の日、俺はいつもの公園で柚葉と会った。
「ねぇ逸希くん、今日は近くで花火大会があるんだって! 一緒に行かない?」
「花火大会? 楽しそう! 僕も……」
急に言葉を止めた僕を見て、ゆずちゃんは不思議そうな顔をして僕を見てくる。
「妹が病院だからさ、お母さんと看病しにいかないと。あいつのこと好きじゃないけど、俺はお兄ちゃんだから」
「そっか……。あ、そうだ!」
悲しそうな顔をしたゆずちゃんを見て、心が締め付けられる。でも、閃いたように僕の手を握ってくるゆずちゃんを見て身体が熱くなるのを感じた。
「今日は星が綺麗なんだって! 花火は見れないかもだけど、病院からでもお星様は見れると思うよ!」
「すごい! ゆずちゃんそんなこと知ってるんだ!」
「えへへ……だってお星様好きだもん! 綺麗だしロマンチックだもん!」
◆◇◆◇
何気ない会話だったが、俺にとっては、星にそこそこ詳しくなる要因を作った言葉だった。そして、その時の彼女の表情と、今さっきの柚葉の表情が一致した。
――やっぱり、ゆずちゃんを忘れて今の柚葉として見ようとしても、俺の心の中は初恋だったゆずちゃんを忘れることが出来ないのだ。
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